1-2 調査の背景(包括的な最初の報告の検討の実施手順)

 障害者権利条約の各締約国が包括的な最初の報告を国連障害者権利委員会に提出した後、前述のとおり、国連障害者権利委員会が包括的な最初の報告を検討し、「適当と認める提案及び一般的な性格を有する勧告」を関係締約国に送付することとなっている。国連障害者権利委員会による包括的な最初の報告の検討は、これまでのところ、次の手順で実施されている。

(1) 検討の枠組みの設定

 国連障害者権利委員会のいずれかの会期において、対象締約国を担当する国別報告者が委員の中から指名される。また、事前質問事項の検討、包括的な最初の報告の検討をどの会期に行うかを決定し、これらの情報が対象締約国の中央連絡先に伝達される。

(2) 事前質問事項の検討

 (1)で決定した国連障害者権利委員会会期において、国別報告者を中心として、対象締約国の包括的な最初の報告に対する事前質問事項が検討され、委員会で採択される。事前質問事項の検討の前に、対象締約国の市民社会(NGO、DPO(Disabled People's Organization:障害者団体)、中核障害者団体など)あるいは独立した仕組みから、独自の報告(パラレルレポート)が国連障害者権利委員会に提出されることが多い。また、検討を行う会期中に国連障害者権利委員会が対象締約国の市民社会や独立した仕組みと非公式な接触や会合を持ち、意見を直接聞くこともある。1

 なお、2014年3月31日~4月11日に開催された国連障害者権利委員会第11会期までは、事前質問事項の検討は委員会会期の中で行われていたが、その後、事前質問事項の検討は委員会会期とは別の作業部会(会期前作業部会)で主に行われるようになった。2

(3) 事前質問事項への回答

 委員会会期又は会期前作業部会で採択された事前質問事項は、国連障害者権利委員会から対象締約国の中央連絡先に送付される。また、事前質問事項は国連障害者権利委員会のウェブサイトでも公開される。

 対象締約国政府は、指定された期日までに事前質問事項への政府回答をとりまとめ、国連障害者権利委員会に提出する。また、政府以外に、対象締約国の独立した仕組みや、中核障害者団体をはじめとする主要な市民社会団体が、事前質問事項への独自の回答を提出することもある。

 提出されたこれらの回答は、国連障害者権利委員会のウェブサイトで公開されるが、様々な理由により、後日ウェブサイトから削除される資料もある。

(4) 建設的対話と最終見解の検討

 事前に指定された国連障害者権利委員会会期において、対象締約国の代表団と国別報告者を中心とした国連障害者権利委員会との質疑応答及び意見交換(これは「建設的対話」と呼ばれている。)が行われた後、その内容を踏まえて国連障害者権利委員会による包括的な最初の報告の審査が行われ、国連障害者権利委員会の最終見解がとりまとめられる。これらのプロセスのうち、建設的対話は関係者に公開されるが、その後の審査は非公開で進められる。対象締約国の市民社会や独立した仕組みは、建設的対話にオブザーバーとして参加するほか、会期中に国連障害者権利委員会との非公式会合で意見表明をすることがある3。また、国によっては市民社会からの参加者が、会期中に委員へのロビー活動を行うことがある。

 多くの場合、会期の最終日に対象締約国の包括的な最初の報告に対する国連障害者権利委員会の最終見解が採択される。採択された最終見解は、その後、国連障害者権利委員会ウェブサイトで公開される。


1 2015年3月25日~4月17日の第13会期からは、市民社会や独立した仕組みによるブリーフィングが正規のプログラムとして組み込まれることになった。
2 国連障害者権利委員会第13会期でEUの事前質問事項が検討されたように、例外もある。
3 非公式会合については脚注1を参照のこと。

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