1.調査の目的と背景
1-1 調査の目的
我が国が平成26年2月に締結した、国際連合(以下「国連」と記述する。)「障害者の権利に関する条約」(以下「障害者権利条約」と記述する。)では、第35条第1項において、締約国に対し、「条約に基づく義務を履行するためにとった措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する包括的な報告を、この条約が自国について効力を生じた後2年以内に国際連合事務総長を通じて委員会に提出する」こととなっている。(同条第2項により、その後は少なくとも4年ごとに報告することとなる。)
また、第36条第1項では、国連に設置される「障害者の権利に関する委員会」(以下「国連障害者権利委員会」と記述する。)が報告を検討し、「当該報告について、適当と認める提案及び一般的な性格を有する勧告を行うものとし、これらの提案及び一般的な性格を有する勧告を関係締約国に送付する」こととなっている。
これらのことから、国連障害者権利委員会が各国の包括的な最初の報告をどのように検討するのか、あるいはどのような提案及び勧告を行うかによって、我が国が対応すべき事項も大きく異なることが想定される。また、包括的な最初の報告を提出した後の国連からの事前質問や重点審査項目の提示(以下「事前質問事項」と記述する。)を含む対話の状況、あるいは検討の結果示される最終見解の内容が、その後の政府の障害者施策にも影響を及ぼすものと思われる。
そこで、先行して権利条約を批准した諸外国における包括的な最初の報告の検討状況などを把握することにより、我が国における円滑な包括的な最初の報告の提出へ寄与することを目的として、本調査を実施した。