1.調査の概要

1-1 調査の目的

 昨年度内閣府が昨年度実施した国際調査においてでは、アメリカ及びイギリスにおいて、障害者差別禁止法制の実施に当たり、合理的配慮の提供を巡ってどのような調整が行われているのかを明らかにしてきた。
 当該調査から導き出される知見と現状分析としては、アメリカ及びイギリスにおける障害者差別禁止法制の実施に当たっては、地域における相談体制の整備と、合理的配慮を成立させるための政府によるガイドラインなどの情報の収集・発信が両輪となっている点が挙げられる。我が国においても、地域における相談体制の整備は進みつつあるが、今後、こうした体制の整備を引き続き進めるとともに、合理的配慮の提供や環境整備の促進に向けた情報提供を一層充実させ、これらを車の両輪として施策を進めていくことが重要と考えられる。
 そこで、こうした点の分析や検討に資する情報を収集することを目的として、本調査を実施する。

1-2 調査の背景

 平成28年4月より、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」という。」)が施行された。同法の施行に当たっては、同法第6条に基づく基本方針を閣議決定したほか、国の行政機関の長、独立行政法人、地方公共団体などが職員向けに対応要領を、各主務大臣が所管事業者向けに対応指針をそれぞれ策定・公表しており、さらに、地域においても、障害者差別解消法第17条に基づく障害者差別解消支援地域協議会(以下「地域協議会」という。)の設置が進められている。

 また、我が国は平成26年に国連の障害者の権利に関する条約(以下、「障害者権利条約」という。)を批准し、同条約に基づく初回の政府報告を本平成28年6月に国連に提出した。今後、日本我が国が国連による審査を受ける点を視野に入れつつ、近く国連による審査が行われる諸国における障害者差別禁止法制の施行状況と、国連の障害者の権利に関する委員会(以下「障害者権利委員会」という。)における審査の動向を把握するとともに、日本国内の状況を調査することで、上記の調査目的を果たすこととする。

1-3 調査の枠組み

1)国外調査

 国連障害者権利委員会の最新の会合は、2017平成29年3月にジュネーブで開催される第7回事前作業部会と第17会期会合である。そこで、これらの会合で審議が行われる国の中から、これらの会合における各国の審査ステータスを考慮して、異なる段階の審議が行われる以下の5か国を調査対象とした。

1 包括的な最初の報告に関する事前検討が行われる国
イギリス
2 事前質問事項の検討が行われる国
パナマ
3 包括的な最初の報告に関する建設的対話及び総括所見の検討が行われる国
カナダ、イラン
4 第2サイクルの事前質問事項の検討が行われる国
ハンガリー

2)国内調査

 国内地域における障害者差別解消の取組については、内閣府が実施開催している「障害者差別解消支援地域協議会の設置等の推進に向けた検討会(以下「地域協議会設置等推進検討会」という。)」で多数の事例報告がなされている。そこで、本調査では、同検討会で事例報告を行った地方公共団体の取組に関するフォローアップ並びに詳細調査を行うとともに、その他の地域の中で注目すべき取組を行っている地方公共団体を対象としたヒアリング調査を行った。特に、小規模自治体な地方公共団体での取組の事例情報が少ないため、本調査では小規模自治体な地方公共団体の取組や、小規模自治体な地方公共団体が連合して実施している取組の事例を重点的に収集した。
 調査対象自治体及び地域とした地方公共団体は以下のとおりである。

  • 北海道新得町
  • 茨城県那珂市
  • 東京都八王子市
  • 神奈川県湘南西部圏域
  • 長野県
  • 長野県上小圏域
  • 三重県
  • 大阪府
  • 兵庫県
  • 兵庫県明石市
  • 岡山県総社市
  • 山口県
  • 福岡県北九州市

1-4 調査の手順

 本調査は、資料調査、国内ヒアリング調査、調査検討会での議論によって実施した。具体的な実施手順は、以下のとおりである。

1)資料調査

1 国外調査

 国連障害者権利委員会のウェブサイトより対象国の関係資料を収集・翻訳するとともに、各国の関連ウェブサイトを対象に、調査事項に関連する資料・情報を収集した。

2 国内調査

「障害者差別解消支援地域協議会の設置等の推進に向けた検討会」における事例報告資料を収集するとともに、報告を行った地方公共団体に問い合わせを行い、必要な資料・情報の追加収集を行った。

2)国内ヒアリング調査

 「障害者差別解消支援地域協議会の設置等の推進に向けた検討会」での事例報告地域以外の地域で、注目すべき取組を行っている地域をピックアップし、訪問ヒアリング調査を行った。実施スケジュール及び訪問先は以下のとおりである。

図表1-1 ヒアリング調査の訪問先
平成29年2月3日 長野県木曽広域連合 木曽広域連合健康福祉課長
木曽広域連合介護保険係
長野県健康福祉部障がい者支援課
平成29年2月16日 兵庫県 兵庫県健康福祉部健康福祉局
障害福祉課障害者政策班
平成29年2年17日 長野県 長野県健康福祉部障がい者支援課
平成29年3月7日 長野県上小圏域 上小圏域障害者総合支援センター
平成29年3月14日 北海道新得町 新得町保健福祉課福祉係
平成29年3月29日 茨城県那珂市 那珂市保健福祉部社会福祉課
障がい者支援グループ

3)調査検討会の開催

 資料調査、現地調査と並行して、専門家による調査検討会を開催し、専門的見地から収集情報の検討・考察を行った。
 調査検討会の構成メンバー及び開催日程、検討内容は次のとおりである。

調査研究会構成メンバー
座長 野澤 和弘  (毎日新聞論説委員)
構成員 又村 あおい (平塚市福祉総務課)
西川 恵子  (三重県健康福祉部障がい福祉課)

調査検討会の開催日程、検討内容

第1回:平成29年1月12日

(1) 国外調査の対象国、各国の調査事項の検討
(2) 国内調査の対象地域及び情報収集手法の検討

第2回:平成29年3月10日

(1) 国外調査の進捗状況の確認・検討
(2) 国内調査の進捗状況の確認・検討
(3) 取組事例集の内容・構成等に関する検討

第3回:平成29年3月30日

(1) 報告書素案の検討
(2) 取組事例集の素案の検討

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