障害者権利条約

我が国の条約締結までの経緯

 国連では、1970年代から障害のある人の権利に関して、『精神遅滞者の権利に関する宣言』(1971(昭和46)年第26回国連総会にて採択)、『障害者の権利に関する宣言』(1975(昭和50)年第30回国連総会にて採択)、『障害者に関する世界行動計画』(1982(昭和57)年第37回国連総会にて採択)、『障害者の機会均等に関する標準規則』(1993(平成5)年第48回国連総会にて採択)などいくつもの宣言・決議を採択してきたが、これらの宣言・決議は法的拘束力を持つものではなかった。

 2001(平成13)年12月、第56回国連総会において、メキシコ提案の『障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的・総合的な国際条約』に関する決議案が採択され、条約作成交渉のための「障害者の権利条約に関する国連総会アドホック委員会」の設置が決定された。そして、2002(平成14)年以降8回にわたるアドホック委員会における条約交渉を経て、2006(平成18)年12月、『障害者の権利に関する条約』(以下「障害者権利条約」という。)が第61回国連総会で採択され、2008(平成20)年5月に発効した。

 障害者権利条約は、障害者の人権や基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進するため、障害者の権利の実現のための措置等を規定し、市民的・政治的権利、教育・保健・労働・雇用の権利、社会保障、余暇活動へのアクセスなど、様々な分野における取組を締約国に対して求めている。我が国は、本条約の起草段階から積極的に参加するとともに、2007(平成19)年9月28日に署名した。

 国内では、条約締結に先立ち、国内法の整備をはじめとする諸改革を進めるべきとの障害当事者等の意見も踏まえ、政府は2009(平成21)年12月、内閣総理大臣を本部長、全閣僚を構成員とする「障がい者制度改革推進本部」を設置し、集中的に国内制度改革を進めていくこととした。これを受け、『障害者基本法』の改正(2011(平成23)年8月)、『障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援する法律』の成立(2012(平成24)年6月)、『障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律』の成立及び『障害者の雇用の促進等に関する法律』の改正(2013(平成25)年6月)など、様々な法制度等の整備が行われた。

 これらの整備により一通りの国内の障害者制度の充実がなされたことから、2013(平成25)年10月、条約締結に向けた国会での議論が始まり、同年11月19日の衆議院本会議、12月4日の参議院本会議において、全会一致で承認され、2014(平成26)年1月20日、障害者権利条約の批准書を国連に寄託、同年2月19日に我が国について発効した。

締約国会議

 障害者権利条約の各締約国による会議が、毎年6月、国際連合本部(ニューヨーク)で開催されている。

政府報告

 各締約国は、国連の障害者権利委員会」に対し、定期的に政府報告を提出することが義務付けられ(初回は条約発効後2年以内)、かつ、政府報告の作成に当たっては、公開された透明性のある過程を踏むよう検討することが求められている。

 我が国では、初回の政府報告の作成に当たり、障害者政策委員会の意見を踏まえ骨子を作成するとともに、同委員会における「第3次障害者基本計画」(対象期間:平成25~29年度)の現時点における実施状況の監視を通じて同委員会から意見を聴取し、政府報告案に反映した。

 さらに、重点課題を掘り下げて議論するため、ワーキング・セッションを開催し、これらを含め計13回の審議を経て、「議論の整理」を取りまとめ、政府報告に添付した。また、平成28年1月にはパブリックコメントを行い、幅広く意見を聴取した。

 その上で、我が国は、平成28年6月に初回の政府報告を国連に提出した。

第1回政府報告