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第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり > 第1節 障害のある子どもの教育・育成に係る施策 > 2.専門機関の機能の充実と多様化

平成24年版障害者白書

平成23年度を中心とした障害者施策の取組

第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり

第1節 障害のある子どもの教育・育成に係る施策

2.専門機関の機能の充実と多様化
(1)特別支援学校における教育支援体制の整備

ア 障害の重度・重複化への対応

近年、特別支援学校に在籍する幼児児童生徒の障害の重度・重複化が進んでおり、一層きめ細かな対応が求められている。

特別支援学校の学習指導要領等においては、障害の重度・重複化等に応じた弾力的な教育課程が編成できるよう、障害の状態により特に必要がある場合には、各教科の目標及び内容の一部を取り扱わないこととしたり、自立活動を主として指導を行ったりすることができることなど、様々な配慮事項を規定している。また、一人一人の障害の実態に応じた指導を充実するため、個々の児童生徒の実態を的確に把握し、個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成することとしている。

障害のため通学して教育を受けることが困難な幼児児童生徒に対しては、教員を家庭、児童福祉施設や医療機関等に派遣して教育を行っている(訪問教育)。平成23年5月1日現在、小学部1,428人、中学部826人、高等部931人の児童生徒が、この訪問教育を受けている。

さらに、障害の重度・重複化に伴い、日常的にたんの吸引をはじめとする医療的ケアを必要とする幼児児童生徒への対応が求められている。

平成23年6月に公布された「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第72号)による社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により、24年4月から一定の研修を受けた介護職員等は一定の条件の下にたんの吸引等の医療的ケアができるようになったことを受け、特別支援学校等の教員等についても、制度上実施することが可能となる。

これに関して、文部科学省としては、特別支援学校等において安全かつ適切な医療的ケアを提供するために必要な検討を行うため、平成23年10月より「特別支援学校等における医療的ケアの実施に関する検討会議」を開催し、特別支援学校等において医療的ケアを必要とする児童生徒等の健康と安全を確保するに当たり留意すべき点等について整理を行い、都道府県・指定都市教育委員会等に通知した(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1314510.htm別ウインドウで開きます)。

イ 学級編制及び教職員定数

特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級においては、障害の状態や能力・適性等が多様な児童生徒が在籍し、一人一人に応じた指導や配慮が特に必要であるため、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(以下「義務標準法」という。)に基づき、学級編制や教職員定数について特別の配慮がなされている。

<1> 学級編制

1学級の児童生徒数の標準については、数次の改善を経て、現在、公立特別支援学校では、小・中学部6人、高等部8人(いわゆる重複障害学級にあってはいずれも3人)、公立小・中学校の特別支援学級では8人となっている。

<2> 教職員定数

教職員定数については、公立特別支援学校において、障害のある児童生徒の割合が増加していることや障害が重度・重複化していることにかんがみ、大規模校における教頭あるいは養護教諭等の複数配置や、教育相談担当・生徒指導担当・進路指導担当及び自立活動担当教員の配置が可能な定数措置を講じている。

平成23年4月の義務標準法の一部改正では、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒を対象とした通級による指導の充実など特別支援教育に関する加配事由が拡大された。

このような経緯も踏まえ、公立小・中学校における通級指導のための教員配置や、特別支援教育コーディネーターの配置など特別支援教育に対応するための加配定数の措置を講じており、24年度政府予算においては、600人の定数改善を含む5,341人の定数を盛り込んでいる。

ウ 特別支援学校の教科書

特別支援学校の児童生徒にとっては、その障害の状態等によっては、一般に使用されている検定済教科書が必ずしも適切ではない場合があり、特別な配慮の下に作成された教科書が必要となってくる。このため、文部科学省では、従来、文部科学省が著作の名義を有する教科書として、視覚障害者用の点字版の教科書、聴覚障害者用の国語(言語指導用)及び音楽の教科書、知的障害者用の国語、算数(数学)及び音楽の教科書を作成してきた。なお、特別支援学校及び特別支援学級においては、検定教科書又は文部科学省が著作の名義を有する教科書以外の教科書(いわゆる「一般図書」)を使用することができることになっている。

エ 私学助成

特別支援教育における私立の特別支援学校、特別支援学級を置く小・中学校及び障害のある子どもが就園している幼稚園の果たす役割の重要性にかんがみ、これらの学校の教育条件の維持向上及び保護者の経済的負担の軽減を図るため、「私立学校振興助成法」に基づき、国は経常的経費についてその一部の補助等を行っている。

(2)療育体制の整備

ア 福祉施設における療育機能の強化

障害のある児童に対しては、できるだけ早期に必要な治療と指導訓練を行うことによって、障害の軽減や基本的な生活能力の向上を図り、将来の社会参加へとつなげていく必要がある。このため、健康診査等により障害の早期発見を図るとともに、適切な療育を実施する体制の整備を図っているところである。

また、「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律」(平成22年法律第71号)の公布に伴う児童福祉法の一部改正等により、障害児支援については、身近な地域で支援を受けられるようにする等のため、平成24年4月から知的障害児施設等の障害種別に分かれていた施設体系について、通所による支援を「障害児通所支援」に、入所による支援を「障害児入所支援」にそれぞれ一元化し、障害児支援の強化を図っているところである。

さらに、学齢期における支援の充実を図るとともに、保育所等に通う障害児に対して、集団生活への適応を支援するため、「放課後等デイサービス」及び「保育所等訪問支援」を創設したところである。

また、在宅で生活する重症心身障害児(者)に対し、適切なリハビリテーションや療育を提供し、日中の活動の場を確保するため、「重症心身障害児(者)通園事業」を実施してきたが、今般の児童福祉法の一部改正により、平成24年度から予算事業で実施していた重症心身障害児(者)通園事業については、法定化し、安定的な財源措置が講じられることとなったところである。

イ 地域における療育体制の整備

地域で生活する障害のある児童の療育として、児童福祉法に基づく障害児通所支援事業所において指導訓練等が行われている。

なお、平成22年12月の児童福祉法等の一部改正により、各障害種別に分かれていた施設体系について一元化された。このほか、児童相談所等における相談支援等の施策により、障害のある児童とその家族への支援を行っている。これら在宅施策と施設施策を総合的に推進し、障害のある児童が、できるだけ身近な場所で適切な療育を受けられる体制の整備を図っている。

なお、障害のある児童に対する居宅介護や短期入所などの在宅施策については、平成18年4月より、「障害者自立支援法」の障害福祉サービスに位置づけられ、財政的な基盤強化が図られている。

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