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第4章 日々の暮らしの基盤づくり > 第1節 生活安定のための施策 > 6.福祉用具の研究開発・普及促進と利用支援

平成24年版障害者白書

平成23年度を中心とした障害者施策の取組

第4章 日々の暮らしの基盤づくり

第1節 生活安定のための施策

6.福祉用具の研究開発・普及促進と利用支援
(1)福祉用具の普及

福祉用具の公的給付としては、補装具費の支給と日常生活用具の給付(貸与)がある。平成18年10月の「障害者自立支援法」の施行に伴い、それぞれの定義の明確化や給付対象品目の見直しを行った。補装具については、従前の現物給付から同法に基づく補装具費として、購入又は修理に要する費用の支給制度に改めたところである。

補装具費の支給は、身体に障害のある人の日常生活や社会生活の向上を図るために、身体機能を補完又は代替するものとして、義肢、装具、車椅子、盲人安全つえ、補聴器等の補装具の購入又は修理に要した費用の一部について公費を支給するものである。

日常生活用具の給付(貸与)は、日常生活を営むのに著しく支障のある障害のある人に対して、日常生活の便宜を図るため、特殊寝台、特殊マット、入浴補助用具等を給付又は貸与するものである。平成18年10月の「障害者自立支援法」の施行に伴い、日常生活用具給付等事業は地域生活支援事業の一事業として位置付けられ、実施主体である市町村が地域の障害のある人のニーズを勘案の上、柔軟な運用が可能となった。

身体に障害のある人の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する一定の物品については、消費税は非課税とされている。

(2)情報・相談体制の充実

福祉用具の情報については、公益財団法人テクノエイド協会において、福祉用具の製造・販売企業の情報や福祉用具の個別情報にかかるデータベース(福祉用具情報システム:TAIS)を構築しており、インターネットを通じてこれらの情報を提供している。

公益財団法人テクノエイド協会

http://www.techno-aids.or.jp別ウインドウで開きます

(3)研究開発の推進

少子高齢化が進展する中、福祉用具に対するニーズは高まっており、利用者への十分な選択肢の提供や費用対効果等がより重要な課題となっている。このため、研究開発の推進、標準化や評価基盤の整備等、産業の基盤整備を進め、福祉用具産業の健全な発展を支援することを通じて、良質で安価な福祉用具の供給による利用者の利便性の向上を図っている。身体に障害のある人が使用する福祉機器の開発普及等については、真に役立つ福祉機器の開発・普及に繋がるよう、公益財団法人テクノエイド協会に委託して、「障害者自立支援機器の情報収集・発信システム」を運用し、福祉機器のニーズと技術のシーズの適切な情報連携に努めている。

また、平成22年度より「障害者自立支援機器等開発促進事業」の下、障害当事者側の要望を反映したテーマ募集を行い、各種専門職による評価体制と障害当事者の試験評価を組み込み、試作機器等を実用的にする開発費用の助成を行っている。

研究開発については、従来より国立障害者リハビリテーションセンター研究所において、「障害者の自立と社会参加ならびに生活の質の向上」を目的としたリハビリテーション支援システム、支援技術、福祉機器に関する研究開発及び評価法の研究開発を行っている。

平成22年度から、福祉機器の利活用のあり方に関する研究(障害者対策総合研究事業)を行い、機器開発から普及に至るまでの新たな仕組みの検討を行うとともに、新たな研究領域として、軽度認知症者の自立を支援する福祉機器の研究開発(認知症対策総合研究事業)を行っている。

平成5年度より「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」に基づいて、「福祉用具実用化開発推進事業」を推進している。本事業では、高齢者や障害のある人、介護者の生活の質の向上を目的として優れた技術や創意工夫のある福祉用具の実用化開発を行う民間企業等に対し、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて研究開発費用の助成を行い、制度発足以来、23年度までに195件のテーマを採択している。

また、独立行政法人福祉医療機構では、平成22年度より「社会福祉振興助成事業」の先進的・独創的活動支援事業として、日常生活、社会参加等を支援する福祉用具の実用化研究開発に対し助成を行っている。

障害のある人を含め誰にとっても、より安心・安全で、また識別・操作等もしやすく、快適な生活用品、生活基盤、システム等の開発を支援する観点から、個々の人間のレベルでの様々な行動を計測し、理解・蓄積することにより、人間と製品・環境の適合性を客観的に解析し、個々の人間の行動特性に製品・環境を適合させる基盤技術の研究開発を実施している。

また、「新健康フロンティア戦略」においては、障害のある人の社会参加を容易にする技術や身体機能の補完・強化技術等の開発を進めることとしている。

(4)標準化の推進

より優れた福祉用具の開発・普及を推進するためには、安全性を含めた品質向上、互換性の確保による生産の合理化、購入者への適切な情報提供に資する観点から、客観的な評価方法・基準の策定と標準化が不可欠である。このため、次表の通り平成16年度から23年度までに日本工業規格(JIS)を活用した福祉用具の標準化を推進している。

また、補装具費支給制度においては、16年に座位保持装置部品の認定基準を策定(18年度改訂)し、支給品の安全性の確保に活用している。さらに、国際規格作成への貢献も積極的に行っており、国際標準化機構(ISO)の福祉用具技術委員会(ISO/TC173)や義肢装具技術委員会(ISO/TC168)での活動に参加している。23年度には、TC168において試験方法を担当しているWG3の大阪会議を開催するとともに、福祉用具の分類と用語(ISO9999)を担当しているISO/TC173/SC2の幹事国を日本が引き受けており、東京会議も開催している。

平成13年11月に、規格作成時における高齢者・障害のある人への配慮事項を取りまとめた「ISO/IEC ガイド71」が国際規格として制定され、我が国も15年6月に同ガイドをJISZ8071として制定した。現在、これに基づき高齢者や障害のある人にも使いやすい設計とするためのアクセシブル・デザインに関連するJIS 規格の作成が進められており、23年度までにJISZ8071を含めて、33規格を制定している。また、国際規格作成への貢献も積極的に行っており、国際標準化機構(ISO)の包装技術委員会(ISO/TC122)や人間工学技術委員会(ISO/TC159)での活動への参加とともに、これら委員会への日中韓3カ国による規格案の共同提案を行い、23年度までに5規格が国際規格として発行されている。21年度にはアクセシブル・デザインについて、より専門的かつ集中的な議論をするため、我が国からの提案によって福祉用具技術委員会(ISO/TC173)に新たにアクセシブル・デザイン分科会(SC7)が設立され、22年度には第1回東京会議が開催された。

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