目次]  [戻る]  [次へ

第2章 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて

平成25年9月に開催された国際オリンピック委員会(以下「IOC」という。)総会において、東京都が平成32年(2020年)オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「2020年東京大会」という。)の開催都市に決定した。オリンピック・パラリンピック競技大会の開催は,国際親善・スポーツ振興のみならず、日本全体に大きな活力を与えることが期待されている。特に、パラリンピックの開催を契機として共生社会の実現を目指すことは、超高齢化社会を迎える我が国においては大変重要な課題である。

第1節 2020年東京大会招致決定後から現在までの動き

アルゼンチンのブエノスアイレスでのIOC総会(現地時間平成25年9月7日)において開催都市が決定された後、国内では、2020年東京大会に向けた準備がスタートした。9月13日には、安倍内閣総理大臣から下村文部科学大臣に対し、東京オリンピック・パラリンピック担当大臣(以下、「担当大臣」という。)の発令がなされた。

また、2020年東京大会の開催に向けては、関連施策が府省庁にまたがって存在することから、2020年東京大会の円滑な準備に資するため、また、行政各部の所管する事務の調整を担うため、内閣官房に「2020年オリンピック・パラリンピック東京大会推進室」(内閣オリパラ室)が10月4日に設置された(図表5)。

図表5 2020年東京大会に向けた政府の体制図

平成26年4月22日には、安倍内閣総理大臣を議長とし、全閣僚で構成される「2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等に関する閣僚会議」が開催された。同閣僚会議は、2020年東京大会について、その前年に我が国で開催されるラグビーワールドカップ2019との一体的な準備に配意しつつ、その円滑な準備に資するよう、これらに係る重要な問題の協議や連絡調整を行うことを目的としている。第1回の閣僚会議においては、「大会開催基本計画の推進等円滑な準備に向けて国の対応が期待される事項」(以下、「国の対応が期待される事項」という。)がまとめられ、下村担当大臣より、各大臣に対して重点的な取組を依頼した。国の対応が期待される事項は、「1.セキュリティ・安全安心」、「2.復興・地域活性化」、「3.輸送」、「4.外国人旅行者の受入」、「5.バリアフリー」、「6.スポーツ」、「7.文化・環境」、「8.その他」の8項目で構成されている。同閣僚会議は平成26年度では計3回行われ、その都度この8項目についての進捗状況の報告がなされてきた。(詳細については官邸ホームページ(PDF形式:10.4MB)別ウィンドウで開きますを参照。)

今後の大会開催準備の基礎となる計画として、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会(以下、「組織委員会」という。)において、大会開催基本計画を策定し、平成27年2月末にIOC及びIPC(国際パラリンピック委員会)に提出した。今後、同大会開催基本計画を出発点として、組織委員会が中心となり、具体的実施内容について検討していくこととなる。同計画は7章構成になっており、その主な部分の内容は以下のとおりである。

第1章には「全員が自己ベスト」、「多様性と調和」、「未来への継承」の3つを基本コンセプトとする大会ビジョンが掲げられ(図表6)、また、パラリンピック・ムーブメントの発展や共生社会の実現についても明記されている。東京は同一都市で初めて2回目のパラリンピック大会を開催する都市であり、パラリンピック・ムーブメントのさらなる発展に貢献していきたいという点も強調した基本計画になっている(図表7)。第4章には大会を支える各種機能として、主要目標、主要業務、役割について記載されている。「輸送」、「セキュリティ」、「出入国」、「文化」、など政府の役割が期待される事項も多く盛り込まれており、各省庁での取組を加速していく必要がある。第6章には大会のレガシーを残すためのアクションを具体化する5本の柱として、「スポーツ・健康」、「街づくり・持続可能性」、「文化・教育」、「経済・テクノロジー」、「復興・オールジャパン・世界への発信」が設定されている(図表8)。平成28(2016)年中期にまでに、平成28(2016)年から平成32(2020)年までの具体的なアクションと平成32(2020)年以降のレガシーが、「アクション&レガシープラン」として取りまとめられる予定であり、国としてもこの「アクション&レガシープラン」の検討には積極的に関わっていく予定である(図表9)。

図表6 大会ビジョン
図表7 大会開催基本計画(抜粋)
図表8 5本の柱
図表9 「アクション&レガシープラン」の検討スケジュール

第2節 2020年東京大会に係る障害者関連施策

1 会に向けたアクセシビリティの実現

障害の有無に関わらず、全ての人々にとってアクセス可能でインクルーシブな2020年東京大会を実現するべく、平成26(2014)年11月、組織委員会、国の関係行政機関、東京都、関係地方公共団体、障害者団体及び障害者スポーツに関わる団体等が連携し、バリアフリーの取組を促進する東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたアクセシビリティ協議会(以下「協議会」という。)を設置した。協議会は、組織委員会が関係行政機関や関係団体等の参画を得て「Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドライン」を策定し、国際パラリンピック委員会の承認を得た上で大会関係施設の設備設計や大会運営に反映させることに加え、公共交通事業者等が管理するアクセス経路におけるバリアフリー化や、幅広い関係者による心のバリアフリーに向けて働きかけを行うことを目的とする。

また、協議会の下に部会を設置し、実務者による協議及び調整を開始した。(図表10、11)

図表10 協議会の概要
図表11 協議会委員の構成
  1. <1> 建築部会(平成26(2014)年11月~)

    2020年東京大会の各会場における通路・手すり、エレベーター、駐車場、客席、トイレ、更衣室等におけるバリアフリーの技術仕様を中心に協議

  2. <2> 交通・アクセス部会(平成26(2014)年11月~)

    2020年東京大会へのアクセス経路に関わる空港・駅・港湾・道路・バス停における通路・手すり、エレベーター、駐車場、待機場所、トイレ等のバリアフリーの技術仕様や、2020年東京大会に関わる電車・バス・専用車等の輸送車輌におけるバリアフリーの技術仕様を中心に協議

  3. <3> コミュニケーション・サービス部会(平成27(2015)年5月~)

    宿泊・食事関連施設内の設備、組織委員会による情報発信・標識掲示・各種受付等の技術仕様や、スタッフ・ボランティアを始めとした幅広い関係者による誘導等に関わるトレーニングの指針を協議し、併せて心のバリアフリーに向けた活用方法について協議

2 そのほかの施策

(1) バリアフリー対策の強化:国土交通省等

1日の乗降客数が3,000人以上の旅客施設、特定道路について、2020年度までに原則100%のバリアフリー化など、バリアフリー法の基本方針に定める整備目標の着実な達成に向けて取組を推進中であり、特に、空港アクセスバスのバリアフリー化に向けては、関係者が連携した取組を推進中である。国土交通省内に設置(平成26年9月)した「バリアフリーワーキンググループ」において、大会を契機とした鉄道駅・空港における複数ルートのバリアフリー化など、今後重点的に取り組むべき施策について検討中である。

(2) 新国立競技場:文部科学省等

新国立競技場におけるバリアフリー環境の詳細について、関係機関・関係団体等の意見を踏まえつつ、平成26年8月に着手した実施設計作業の中で、車椅子利用者の観戦場所や動線の確保等に関し、引き続き検討を行っていく。

(3) ICT化を活用した行動支援の普及・活用:国土交通省、総務省

「ICTを活用した歩行者移動支援の普及促進検討委員会」を平成26年6月に設立し、歩行者移動支援の普及促進に向けて検討すべき論点(案)及びロードマップ(案)を提示した。また、関連するプロジェクトについても検討を開始し、さらに、社会全体のICT化の推進方策について、産学官共同で検討する「2020年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会」を立ち上げ、検討を実施している。

目次]  [戻る]  [次へ