第3章 相互の理解と交流 第1節 1
第1節 障害のある人に対する理解を深めるための啓発広報等に係る施策
1.啓発・広報活動の推進
(1)啓発・広報の基本的な方針
「第3次障害者基本計画」の掲げる「共生社会」の実現を図るためには、その理念の普及を図るとともに、障害及び障害のある人に関する国民の理解を促進し、あわせて、障害のある人への配慮等について国民の協力を得るため、幅広い国民の参加による啓発・広報活動を推進することとしている。
第2次計画の後期5か年計画においては、「共生社会」の周知度について、世代全体及び20代の若者に係る周知度を50%とする数値目標を掲げていた。内閣府が平成24年7月に実施した世論調査では、世代全体が40.9%、20歳代が34.8%にとどまったものの5年前の同調査よりいずれも増加しているが、より一層の理解促進を図ることとしている。
(2)障害者週間
障害及び障害のある人に対する国民の関心、理解を深めるとともに、障害のある人の社会参加意識の高揚を図るため、「障害者基本法」において、毎年12月3日から9日までの1週間を「障害者週間」とし、前後の期間も含め、全国で、官民にわたって多彩な行事を集中的に実施するなど、積極的な啓発・広報活動を実施している。
ア 心の輪を広げる障害者理解促進事業
内閣府では、各都道府県・指定都市との共催により、将来を担う若者への啓発・広報活動の一環として、全国の小・中学生等から、障害のある人とのふれあい体験をつづった「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の募集を「心の輪を広げる障害者理解促進事業」として実施している。平成27年度は、作文4,165編、ポスター1,285点の応募があり、この中から内閣総理大臣賞として作文3編及びポスター2点が選ばれ、表彰された。本事業では、ポスター部門の最優秀作品を原画とした「障害者週間のポスター」を作成し、全国の駅等に掲示するとともに、入賞作品集を作成し、全国の小・中・高等学校等に配布する等して、障害のある人への理解促進を図っている。入賞作品については内閣府ホームページに掲載している。
イ 平成27年度における「障害者週間」行事
平成27年度の「障害者週間」行事については、内閣府を中心に、法務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省等の関係省庁、障害者関係団体、企業等の協力の下、「障害者週間」の期間を通じて東京を中心に各地において、多彩な行事を実施した。
東京では、12月3日に「障害者フォーラム2015」を開催した。第1部では「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の最優秀作品の内閣総理大臣表彰、第2部の記念シンポジウムでは「いよいよ施行!障害者差別解消法」をテーマにパネルディスカッションを行った。
また、障害のある人に関する様々なテーマについて関係団体等が交替で連続して行う「障害者週間連続セミナー」を開催した。平成27年度のセミナーにおいては、障害者雇用、発達障害等について、講演やパネルディスカッション等を実施した。
このほか、「障害者週間のポスター」等の原画展を東京で開催した。
また、国、地方公共団体、民間の関係団体等において、地方運輸局等におけるバリアフリー教室等をはじめとして、それぞれ独自の行事や啓発・広報活動が積極的に行われた。
(3)その他の週間・月間等
このほか各種の週間・月間等の活動の中でも、障害のある人への理解を深めるための啓発・広報活動が展開された。
9月1日から30日までの「障害者雇用支援月間」においては、障害のある人の雇用の促進と職業の安定を図ることを目的として、障害のある方々から募集した絵画や写真を原画とした啓発用ポスターが作成され、全国に掲示されたほか、障害者雇用優良事業所等表彰、障害者雇用支援月間ポスター原画表彰及び優秀勤労障害者表彰を始め、各都道府県においても、障害者雇用促進のための啓発活動が実施された。
10月26日から11月1日までの「第63回精神保健福祉普及運動」の期間においては、精神障害のある人に対する早期かつ適切な医療の提供及び社会復帰の促進等について、国民の理解を深めることを目的として、精神保健福祉全国大会をはじめとする諸行事が実施された。
12月4日から10日までの「人権週間」においては、障害のある人に対する偏見や差別を解消するため、人権啓発活動の年間強調事項でもある「障害のある人の自立と社会参加を進めよう」を強調事項として掲げ、法務省の人権擁護機関である法務局・地方法務局及び人権擁護委員等により、全国各地で講演会の開催、ポスター・パンフレットの作成・配布等の啓発・広報活動が実施された。
平成19年12月、国連総会本会議において、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とする決議が採択されたことを受け、厚生労働省では、毎年、自閉症をはじめとする発達障害に関する正しい知識の浸透を図るためのシンポジウム等を開催している。平成28年4月9日には、「つながる、世界とみんなの青い光」をテーマとしたシンポジウムを開催した。
また、世界自閉症啓発デーを含む4月2日から8日までの「発達障害啓発週間」においては、全国の地方公共団体や関係団体等により様々な啓発活動が実施された。
(4)バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者の表彰
高齢者、障害のある人、妊婦や子供連れの人を含む全ての人が安全で快適な社会生活を送ることができるよう、ハード、ソフト両面のバリアフリー・ユニバーサルデザインを効果的かつ総合的に推進する観点から、その推進について顕著な功績又は功労のあった個人・団体に対して、内閣総理大臣及び高齢社会対策又は障害者施策を担当する大臣が、毎年度、表彰を行い、その優れた取組を広く普及させることとしている。平成27年度においては、5団体を表彰した。
株式会社オーエックスエンジニアリング (千葉県千葉市) 【千葉市推薦】 |
車椅子製造事業者の多くが汎用品を海外で製造しているのに対し、材料加工から出荷まで一貫した国内生産体制を構築し、車椅子事業参入前にバイクレースで培った技術を応用して競技用車椅子を開発。 その競技用車椅子で蓄積した軽量アルミやカーボン素材などの材料の選定・加工技術などのノウハウを日常用車椅子にも取り入れることで、ユーザーの体型、筋力や操作技術、障害の種類や程度、使用環境に合わせた軽量・コンパクトで、高い機能性・操作性、デザイン性を兼ね備えた独創的な日常用車椅子を商品化している。 |
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公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 横浜能楽堂 (神奈川県横浜市) 【横浜市推薦】 |
平成12年から年1回、より多くの方へ「能」・「狂言」に触れて、楽しんでいただくことを目的として、障害者も楽しめるよう企画した「バリアフリー能」を開催している。 公演の前後には、各障害者関係団体や鑑賞者の意見を聞き、また、平成24年度からは公演後に鑑賞者を集めた「公演内容向上のための意見交換会」を開催し、障害者にとって公演前や当日に必要な様々なサポートの導入にフィードバックしてきた。 また、公演前に職員全員参加で障害者から話を聞く研修を実施し、ソフト面のサポート体制の充実にも努めている。 |
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川端鉄工所株式会社 (石川県能美市) 【石川県推薦】 |
様々な能力障害への対応を可能とする基盤技術である「定圧ボールジョイント」を開発し、「個々人への適合が不十分」といわれる福祉用具の抱える課題に対応。特注品の作製にとどまらず、利用者の身体特性に合わせて高さや方向を自由自在に微調整できる、利用者本位の福祉用具の自社標準品を開発・販売。 これらは、県のバリアフリー推進工房(県のリハビリテーションセンター、工業試験場、土木部建築住宅課で構成される医工連携組織)との関わりを深める中で、障害者や介助者の多様なニーズを蓄積し、さらに、利用者の個別のニーズの共通項を抽出するなどの地道な積み重ねによって可能となった。 |
株式会社主人公風の子スクエア (愛知県弥富市) 【愛知県推薦】 |
地域に聞かれた就労支援の場作りを目指し、食肉加工工場兼店舗を障害者の就労継続支援事業所としてリノベーションした施設。 現在、特別支援学校卒業後3年目までの男女10人(利用メンバー)が就労。カフェで働く者、多目的ホール内設備の確認をする者など、作業の細分化などにより、全員が能力を効果的に発揮できるようにしている。また、利用メンバーと地域との関係性を深めるために、地域住民の要望を踏まえた各種イベントを開催するなど、地域住民との交流も活発に行われ、障害者との共生社会の実現につながる活動を行っている。 |
地域共生型福祉施設整備協議会 (京都府与謝郡与謝野町) 【京都府推薦】 |
障害・高齢・児童の垣根を越えた新たな福祉基盤を整備するため、平成22年に町の呼びかけにより、福祉関係業務を行う4つの法人が「地域共生型福祉施設整備協議会」を設立。平成25年に「特別養護老人ホーム」、「在宅複合施設」、「障害者就労支援施設ワークセンター」、「訪問看護ステーション」の4つの事業所の複合体である『地域共生型福祉施設「やすらの里」』を竣工・開所。 協議会では、施設の整備内容を検討するため様々な福祉施設の見学や勉強会を実施。 また、設計段階から、これまで培われたノウハウやアイデアを出し合い、エリア毎に認識しやすい木戸のデザイン、各室毎に異なるカラーリング、腰壁と併せて二段になる手摺りなど随所にユニバーサルデザインが施されている。 |
資料:内閣府
平成27年度障害者週間行事
1.「障害者フォーラム2015」
日時:平成27年12月3日(金)13時から17時
会場:中央合同庁舎第8号館1階講堂(東京都千代田区)
第1部 「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」最優秀賞受賞者の表彰式
障害のある人に対する理解を促進するため、全国から募集した「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」最優秀賞受賞者の表彰と受賞者による作文の朗読。
「心の輪を広げる体験作文」 | 小学生部門:加藤 灯 |
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中学生部門:菅 麻菜美 | |
高校生・一般部門:川村 恵子 | |
「障害者週間のポスター」 | 小学生部門:赤坂 優心 |
中学生部門:脇 駿太郎 |
第2部 「障害者週間」記念シンポジウム
「いよいよ施行!障害者差別解消法」をテーマに、平成28年4月から施行される「障害者差別解消法」についての概要説明に続き、パネルディスカッションでは施行に向けての期待と課題について議論を深める機会とするシンポジウムを開催。
- パネルディスカッション
〈概要説明・コーディネーター〉
尾上 浩二 内閣府障害者制度改革担当室政策企画調査官
〈パネリスト〉
石野富志三郎 一般財団法人 全日本ろうあ連盟理事長
大濱 眞 公益財団法人 全国脊椎損傷連合会副代表理事
加野 理代 弁護士
竹下 義樹 社会福祉法人 日本盲人会連合会長
2.「障害者週間のポスター」原画展
日時:平成27年12月4日(金)~9日(水)
会場:東京メトロ銀座駅 日比谷線コンコース 「銀座オアシス」(東京都中央区)
内容:全国の小・中学校等から公募した「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の優秀作品の原画を展示。
3.障害者週間連続セミナー
日時:平成27年12月5日(土)~6日(日)
会場:コングレスクエア中野 ルーム2(東京都中野区)
内容:障害者週間行事の一環として、障害者週間の趣旨にふさわしいセミナーを主催する団体に会場を提供し、障害及び障害者に関する国民の理解を促進するため、連続してセミナーを実施。
12月5日(土)
- <1> 失語症を含む高次脳機能障害者へのより良い支援の在り方とは
主催:特定非営利活動法人 日本失語症協議会
協同団体:日本脳外傷友の会・東京都高次脳機能障害協議会 - <2> 精神障害者雇用は今!~精神障害者の職域拡大の可能性について~
主催:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 - <3> 発達障害児者の育ちと生活支援~総合リハビリテーションとしての課題を考える
主催:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 - <4> 子育て支援からの自閉スペクトラム症支援
主催:一般社団法人 日本発達障害ネットワーク
12月6日(日)
- <1> 障害者差別解消法と読書権保障の実現について考える
主催:特定非営利活動法人 大活字文化普及協会 - <2> 吃音者の人権と合理的配慮を考える
主催:特定非営利活動法人 全国言友会連絡協議会 - <3> オストメイトとは…「オストメイトの生活実態」
主催:公益社団法人 日本オストミー協会 - <4> てんかんを知っていますか-子どもから高齢者まで誰でもかかる病気です
主催:公益社団法人 日本てんかん協会
4.障害者週間の広報
内閣府では、啓発・広報事業として、全国の小・中学生から募集した「障害者週間のポスター」の中から最優秀作品を図案化した啓発ポスターを作成、配布しており、平成27年度は、小・中学校、駅等に27,000枚を掲示した。
また、政府広報等を活用した広報・啓発活動を行い「障害者週間」の周知を図るとともに、障害及び障害のある人に対する理解の促進を図った。
(5)障害者施策に関する情報提供等
各種障害者施策の状況について積極的に情報提供していくことは、施策を進める上で欠くことのできないものである。
平成24年5月に設置された「障害者政策委員会」は全国の障害のある人を始め関係者の関心が高く、会議運営に当たっても情報保障の観点から、平成27年度においても積極的な情報提供に配意している。
具体的には、毎回の会議の開始から終了までの全状況をインターネットによるオンデマンド配信として、動画、音声、手話及び要約筆記の文字情報により一定期間提供している。これに加え、会議資料を当日の会議開始前に内閣府のホームページに掲載し、終了した会議については議事録を掲載している。 また、障害者政策委員会の運営に当たっては、障害のある委員の参画に資するため、視覚障害者のための資料の点字訳の提供、聴覚障害者のための手話通訳者の配置、要約筆記の提供、磁気ループの敷設などの配慮を講じている。
内閣府障害者施策ホームページ
内閣府のホームページでは、上記に加えて「障害者白書」を掲載するとともに、「障害者施策関係予算の概要」、「都道府県・指定都市における障害者施策関係単独事業の実施状況」等について毎年調査し、公表している。また、障害者施策に関する資料、基礎データ、調査、「心の輪を広げる体験作文・障害者週間のポスター」作品集など意識啓発に関する情報なども掲載している。