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第1編 共生社会の実現に向けて 第1節 1

第1節 共生社会の実現に向けた取組

1.共生社会の実現の重要性

平成28年7月26日、神奈川県相模原市の障害者支援施設「津久井やまゆり園」(以下「施設」という。)に施設の元職員である男が侵入し、多数の入所者等を刃物で刺し、19人が死亡、26人が負傷するという事件が発生した。

これを受け、様々な観点から必要な対策を早急に検討するため、政府は、直ちに「障害者施設における殺傷事件への対応に関する関係閣僚会議」(以下「閣僚会議」という。)を設置した。また、それを受けて同年8月に設置された「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」(以下「検討チーム」という。)では、事実関係の徹底した検証と、それを踏まえた再発防止策について議論が行われ、同年12月8日に報告書(以下「検討チーム報告書」という。)が取りまとめられたところである(事件の検証及び再発防止については、第2節に記載)。

今回の事件は、障害者への一方的かつ身勝手な偏見や差別意識が背景となって、引き起こされたものと考えられる。こうした偏見や差別意識を社会から払拭し、一人一人の命の重さは障害のあるなしによって少しも変わることはない、という当たり前の価値観を社会全体で共有することが何よりも重要である(「検討チーム報告書」より)。また、今回の事件発生を受け、共生社会の実現とそのための国民の理解促進の重要性が改めて認識されたものと考えられる。

障害者基本法(昭和45年法律第84号)第1条では、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会(以下「共生社会」という。)を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする旨定めている。

それとともに、同法第8条では、国民の責務として、国民は、共生社会の実現に寄与するよう努めなければならない旨定めている。また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)(以下「障害者差別解消法」という。)第4条では、同じく国民の責務として、国民は、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない旨定めている。

国民がこのような責務を果たしていくためにも、政府としては、共生社会の実現を目指す強い姿勢を明確に示しつつ、学校教育の段階からあらゆる場面において共生社会に係る教育を進めること等も含め、障害及び障害者に対する更なる国民の理解が促進されるよう、あらゆる機会を活用して、共生社会の実現に向けた様々な啓発等の取組を粘り強く着実に展開していくことが求められている。

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