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第1編 共生社会の実現に向けて 第1節 2

第1節 共生社会の実現に向けた取組

2.共生社会実現のための啓発の取組

政府では、全ての国民が障害の有無にかかわらず、互いに人格と個性を尊重し合い、理解し合いながら共に生きていく共生社会の実現に向け、障害者基本法及び障害者差別解消法の理念に沿って、障害及び障害者に対する国民の理解を促進するための広報啓発活動に取り組んでいるところである。

内閣府における取組

今回の事件も踏まえ、内閣府では平成28年度に共生社会の実現に向けたいくつかの具体的な取組を行った。

加藤内閣府特命担当大臣の施設訪問・献花の様子(平成28年8月29日)

(1)障害を理由とする差別の解消に向けた地域フォーラムの開催

内閣府では、平成28年4月から施行された障害者差別解消法に対する理解及び各地域における取組の促進等を図るため、地方公共団体と連携して「障害を理由とする差別の解消に向けた地域フォーラム(以下「地域フォーラム」という。)」を開催している(平成28年度は全国15箇所で開催。詳細は「第3編第1章第5節」及び内閣府ホームページ参照)。

今回の事件後、神奈川県横浜市で開催された地域フォーラム(平成28年9月2日(金))では、加藤勝信内閣府特命担当大臣が出席し、一般の参加者を前に、命の尊さや共生社会実現の重要性について発信を行った。

加藤内閣府特命担当大臣の地域フォーラムでの挨拶の様子(平成28年9月2日)
障害を理由とする差別の解消に向けた地域フォーラム(神奈川)/加藤内閣府特命担当大臣出席
  • 日時: 平成28年9月2日(金) 13:00~16:00
  • 場所: 神奈川県かながわ県民センター2Fホール
  • フォーラムにおける加藤大臣発信のポイント

*  障害者の存在を否定するような発言は、断じて許すことはできない。

*  すべての命は等しく尊いものであり、かけがえのない存在。

*  内閣府として、すべての国民が障害の有無にかかわらず、互いに人格と個性を尊重し合い、支え合いながら未来を築いていく「共生社会」、「一億総活躍社会」の実現に向けて、障害者に対する関心と理解を深めるため、広報啓発など具体的な取組を行っていく。

※加藤大臣挨拶全文:内閣府ホームページ

(2)政府広報を活用した意識啓発

内閣府では政府広報を活用し、障害及び障害者に対する理解促進と共生社会の実現に向けた意識啓発を行った。

(政府広報:新聞広告の掲載)
政府広報内閣府 一人ひとり、かけがえのない命
【新聞突出し広告】
  • 障害及び障害者に対する理解促進
  • 「共生社会」実現に向けた意識啓発

※平成28年9月13日~18日/70紙に掲載

(政府広報:動画番組の配信)
【政府広報番組】
政府広報オンライン
  • 番組名:霞が関からお知らせします2016
  • 放送日:平成28年12月3日(土)
  • テーマ:障害者に対する理解促進
  • 概 要:障害の有無にかかわらず、お互いに人格と個性を尊重し支え合う共生社会。その実現のためには障害のある方に対する理解を深めることが大切である。12月3日~9日に実施された障害者週間にあわせて、障害のある方が利用する施設(重度心身障害者向け施設)を訪問し、障害者の方々の思いや日常の活動、周囲の方との交流の模様を紹介。

※政府広報ホームページ(政府広報オンライン

あしたの暮らしをわかりやすく政府広報オンライン

(3)障害者週間におけるシンポジウムの開催

障害者基本法では、12月3日から9日までの期間を「障害者週間」と規定しており、この期間を通じて、国、地方公共団体、民間団体が連携・協力し、障害及び障害者に対する関心と理解を深め、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野への参加の促進が図られるよう、様々な取組が行われている(詳細は「第3編第1章第1節」及び内閣府ホームページ参照)。

内閣府では、「障害者週間」事業の一環として、真の共生社会とは何かを改めて問うシンポジウムを開催した。

【シンポジウム概要】
  • 開催日時 平成28年12月2日(金)14:30~17:00
  • 開催場所 中央合同庁舎第8号館
  • テーマ  真の共生社会とは何か、あらためて問う-全ての命と尊厳の尊重を
  • 趣旨 「障害者基本法」が掲げる「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される(第1条)」、「全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する(第3条)」等の理念を改めて確認し、全て国民の命と尊厳が尊重されることの大切さを広く共有し、共生社会の実現に揺るぎなく向かっていくことを確認する機会とするもの。
プログラム

<1>基調講演

野澤 和弘 氏((株)毎日新聞社論説委員、障害者政策委員会委員)

<2>パネルディスカッション

  • 久保 厚子 氏(全国手をつなぐ育成会連合会会長、障害者政策委員会委員)
  • 熊谷晋一郎 氏(東京大学先端科学技術研究センター准教授)
  • 藤原 久美子 氏(自立生活センター神戸Beすけっと事務局長)
  • 名里 晴美 氏(社会福祉法人訪問の家理事長)

※コーディネーター:野澤 和弘 氏

「真の共生社会」実現のため、共有された主な課題や認識等
  • 共生社会とは、障害のある人とない人が具体的に接し関わりあう中で、全ての人の尊厳が守られる社会。
  • 具体的に接し関わりあう中で、障害のある人とない人が共に知り合うことが共生社会実現にとって重要。
  • 「障害の有無によって分け隔てられない共生社会」の実現は、全ての人が安心して暮らせる社会への転換となっていくもの。
  • 今後取り組むべき課題の一つとして、学校教育の中で障害者及び障害の社会モデルについて学ぶことが重要。
  • 障害者と接する機会が限られ、障害者のことがあまり知られていないことがある。子供の時から、分け隔てられず接していくことが大切。
  • 障害のある子供を持つ親が経験した苦労や工夫した育児・生活に対する理解の促進(学校教育の中で「心のバリアフリー」を社会モデルとして学ぶことが重要)。
  • 障害者施設と地域住民との交流の重要性(障害者が地域で暮らしている姿を様々な場面で具体的に知ってもらうことが大切)。
  • 障害者が社会参加をして成長し、共生社会を実現するためには、家族も当事者も一歩踏み出すことが大切。行政もそのための取組が必要。
  • 「暴力を受けない」状況をつくること。そのためには頼れる依存先を増やしていくことが必要。誰も取り残されない社会づくりを進めていくことが必要。
「障害者週間」記念シンポジウム 【テーマ】真の共生社会とは何か、あらためて問う-全ての命と尊厳の尊重を

神奈川県相模原市の障害者支援施設で殺傷事件が発生した直後の7月29日(金)に開催された内閣府の審議会「障害者政策委員会」では、冒頭で、石川准委員長が、今回の事件について触れた上で、亡くなられた方々への御冥福と御遺族の方々へのお悔やみ、負傷者とその関係者等へのお見舞いが伝えられ、全委員により黙祷がささげられた。

黙祷後、本委員会の構成員である全国手をつなぐ育成会連合会の田中正博委員より、今回の事件の発生直後に、障害のある人や御家族の不安を少しでも軽減させ落ち着いて暮らしてもらえるよう、団体が発出した声明文(※声明文は「障害のある方」に向けたものを含む2種類)が紹介された(声明文は机上配布)。【声明文は全国手をつなぐ育成会連合会のホームページでも閲覧可能】

声明文①
神奈川県立津久井やまゆり園での事件について(声明文)

平成 28年7月 26日未明、障害者支援施設「神奈川県立津久井やまゆり園」(相模原市緑区、指定管理者・社会福祉法人かながわ共同会)において、施設入所支援を利用する知的障害のある方々が襲われ、19 人が命を奪われ、20 人が負傷するという未曾有の事件が発生しました。被害に遭われ亡くなられた方々に、衷心よりご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆様にはお悔やみ申し上げます。また、怪我をされ治療に当たられている方々の一日も早い回復をお祈り申し上げます。

抵抗できない障害のある人に次々と襲いかかり死傷させる残忍な行為に私たちは驚愕し、被害にあわれた方々やそのご家族の無念を思い、悲しみと悔しさにただただ心を震わせるばかりです。職員体制の薄い時間帯を突き、抵抗できない知的障害のある人を狙った計画的かつ凶悪残忍な犯行であり、到底許すことはできません。

事件は、当会会員・関係者のみならず、多くの障害のある方やご家族、福祉関係者を不安に陥れ、深く大きな傷を負わせました。このような事件が二度と起きないよう、事件の背景を徹底的に究明することが必要です。

今後、事件対応に関わる皆様には、まずは被害者及び被害者の遺族・家族、同施設に入所されている方々のケアを十分に行ってくださるようお願いいたします。その上で、事件の背景・原因・内容を徹底して調査し、早期に対応することと中長期に対応することを分けて迅速に行いつつ、深く議論をして今後の教訓にしてください。加えて、本事件を風化させないように今後の対応や議論の経過を情報として開示してください。

また、事件で傷ついた被害者やご遺族が少しでも穏やかに過ごせるよう、特に報道関係機関には特段の配慮をお願いします。

事件の容疑者は、障害のある人の命や尊厳を否定するような供述をしていると伝えられています。しかし、私たちの子どもは、どのような障害があっても一人ひとりの命を大切に、懸命に生きています。そして私たち家族は、その一つひとつの歩みを支え、見守っています。事件で無残にも奪われた一つひとつの命は、そうしたかけがえない存在でした。犯行に及んだ者は、自らの行為に正面から向きあい、犯した罪の重大さを認識しなければなりません。

また、国民の皆様には、今回の事件を機に、障害のある人一人ひとりの命の重さに思いを馳せてほしいのです。そして、障害の有る無しで特別視されることなく、お互いに人格と個性を尊重しながら共生する社会づくりに向けて共に歩んでいただきますよう心よりお願い申し上げます。

平成28年7月26日

全国手をつなぐ育成会連合会
会長 久保 厚子

■声明文②
つくいやまゆりえんのじけんについて(しょうがいのあるみなさんへ)
津久井やまゆり園の事件について(障害のあるみなさんへ)

7月26日に、神奈川県にある「津久井やまゆり園」という施設で、障害のある人たち19人が殺される事件が起きました。容疑者として逮捕されたのは、施設で働いていた男性でした。亡くなった方々のご冥福をお祈りするとともに、そのご家族にはお悔やみ申しあげます。また、けがをされた方々が 一日でも早く回復されることを願っています。

容疑者は、自分で助けを呼べない人たちを次々におそい、傷つけ、命をうばいました。とても残酷で、決して許せません。亡くなった人たちのことを思うと、とても悲しく、悔しい思いです。

容疑者は「障害者はいなくなればいい」と話していたそうです。みなさんの中には、そのことで不安に感じる人もたくさんいると思います。そんなときは、身近な人に不安な気持ちを話しましょう。みなさんの家族や友達、仕事の仲間、支援者は、きっと話を聞いてくれます。そして、いつもと同じように毎日を過ごしましょう。不安だからといって、生活のしかたを変える必要はありません。

障害のある人もない人も、私たちは一人ひとりが大切な存在です。

障害があるからといって誰かに傷つけられたりすることは、あってはなりません。もし誰かが「障害者はいなくなればいい」なんて言っても、私たち家族は全力でみなさんのことを守ります。ですから、安心して、堂々と生きてください。

平成28年7月27日

ぜんこくてをつなぐいくせいれんごうかい
全国手をつなぐ育成会連合会
かいちょう くぼ あつこ
会長  久保 厚子

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