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第3編 障害者施策の実施状況 第2章 第1節 4

第2章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり

第1節 障害のある子供の教育・育成に関する施策

4.社会的及び職業的自立の促進

(1)特別支援学校と関係機関等の連携・協力による就労支援

障害のある人が、生涯にわたって自立し社会参加していくためには、企業等への就労を支援し、職業的な自立を果たすことが重要である。しかしながら、近年、特別支援学校高等部卒業者の進路を見ると、福祉施設等入所者の割合が約63%に達する一方で、就職者の割合は約29%となっており、職業自立を図る上で厳しい状況が続いている。

障害者の就労を促進するためには、教育、福祉、医療、労働などの関係機関が一体となった施策を講じる必要がある。

このため、文部科学省では、厚生労働省と連携し、各都道府県教育委員会等に対し、就労支援セミナーや障害者職場実習推進事業等の労働関係機関等における種々の施策を積極的に活用することや、福祉関係機関と連携の下で就労への円滑な移行を図ることなど障害のある生徒の就労を支援するための取組の充実を促している。

また、特別支援学校高等部や高等学校等において、労働等の関係機関と連携し障害のある生徒の就労支援を行う就労支援コーディネーターの配置など福祉や労働等の関係機関と連携しながらキャリア教育・就労支援を充実するための研究に取り組んでいる。

(2)高等教育等への修学の支援

障害のある人が障害を理由に高等教育への進学を断念することがないよう、修学機会を確保することが重要である。このため、文部科学省では、出願資格について、必要に応じて改善することや、合理的配慮を行い、障害のない学生と公平に試験を受けられるように配慮することなど、適切な対応を求めている。

平成28年度には「障害のある学生の修学支援に関する検討会」を開催し、障害者差別解消法の施行を踏まえた高等教育段階における障害のある学生の修学支援の在り方について検討を行い、その結果を「第二次まとめ」として取りまとめ、関係者の理解促進や取組の充実を促している。

大学入試センター試験や各大学の個別試験において、点字・拡大文字による出題、筆跡を触って確認できるレーズライター(ビニール製の作図用紙の表面にボールペンで描いた図形や文字がそのままの形で浮き上がるため、描きながら解答者が筆跡を触って確認できる器具)による解答、文字解答・チェック解答(専用の解答用紙に選択肢の数字等を記入・チェックする解答方式)、試験時間の延長、代筆解答の受験上の配慮を実施している。また、平成28年度大学入試センター試験(平成28年1月実施)から、障害のある入学志願者によりきめ細やかに配慮する観点から、拡大文字問題冊子について、14ポイント版に加え、22ポイント版も作成している。

学校施設については、障害のある人の円滑な利用に配慮するため、従来よりスロープ、エレベーター、手すり、障害者用トイレ等の整備を進めるとともに、支障なく学生生活を送れるよう、各大学等において授業支援等の教育上の配慮が行われている。

聴覚障害のある人及び視覚障害のある人のための高等教育機関である筑波技術大学は、障害を補償した教育を通じて、<1>幅広い教養と専門的な職業能力を合わせもつ専門職業人、率先して社会に貢献できる人材の育成、<2>障害教育カリキュラム及び障害補償システムの開発研究等を行っている。

テレビ・ラジオ放送等のメディアを効果的に活用して、遠隔教育を行っている放送大学では、自宅で授業を受けることができ、障害のある人を含め広く大学教育を受ける機会を国民に提供しており、障害のある学生に対しては、放送授業の字幕放送化の推進や単位認

定試験における点字出題や音声出題、試験時間の延長等を行っている。

「平成28年度(2016年度)大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」結果の概要について

独立行政法人日本学生支援機構では、全国の大学、短期大学及び高等専門学校を対象に、障害のある学生(以下「障害学生」という)の修学支援に関する実態調査を実施している。

平成28年5月1日現在における障害学生数は27,257人(全学生数の0.86%)、障害学生在籍学校数は898校(全学校数1,171校の76.7%)で、障害学生数は5,536人増(前回在籍率から0.18ポイント増)、障害学生在籍学校数は18校増(前回構成比から2.2ポイント増)となった。

障害学生数は増加し続けている。「障害者差別解消法」施行(平成28年4月)後、各大学等において、障害学生支援体制の整備や取組が進み、さらに学内連携が整ったことにより、障害学生の把握が一層進んだことが推測される。

※障害学生……身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳及び療育手帳を有している学生又は健康診断等において障害があることが明らかになった学生。

調査概要及び回収状況

  1. (1)目的:障害学生の今後の修学支援に関する方策を検討する上で、全国の大学、短期大学及び高等専門学校における障害学生の状況及びその支援状況について把握し、障害学生の修学支援の充実に資する。
  2. (2)対象:大学(大学院、大学院大学及び専攻科を含む。)、短期大学(大学内に短期大学部を有している場合を含む。専攻科を含む。)及び高等専門学校(専攻科を含む。)
  3. (3)調査方法:悉皆調査
    各学校が日本学生支援機構のウェブサイトより調査票をダウンロード。回答を記入後、メール添付にて提出。
  4. (4)調査期日:平成28年5月1日現在
  5. (5)回収状況:全学校数1,171校(前年度1,182校)(回収率100%)
調査概要及び回収状況 グラフ
(3)地域における学習機会の提供

障害のある子供の学校外活動や学校教育終了後における活動等を支援するためには、地域における学習機会の確保・充実を図るとともに、障害のある人が地域の人々と共に、地域における学習活動に参加しやすいように配慮を行う必要がある。

文部科学省では、公民館や図書館、博物館といった社会教育施設について、それぞれの施設に関する望ましい基準を定めるなど、障害の有無にかかわらず、全ての人々にとって利用しやすい施設となるよう促している。

(4)生涯を通じた学びの支援

誰もが活躍できる全員参加型社会を実現するには、障害者がそのすべてのライフステージにおいて豊かで充実した生活を送れるようにすることが必要である。

文部科学省では、全省をあげて障害者施策の企画立案を進めていくため「特別支援総合プロジェクト特命チーム」を設置し、今後、障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実に向けて、関係部局と連携した進学・就職を含む切れ目ない支援体制の整備、障害のある子供の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援する特別支援教育、障害者スポーツや障害者の文化芸術活動の振興等の施策を横断的かつ総合的に推進していくこととしている。

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