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第3編 障害者施策の実施状況 第2章 第1節 3

第2章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり

第1節 障害のある子供の教育・育成に関する施策

3.指導体制の整備と研究の推進

(1)学級編制及び教職員定数

公立の特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級においては、障害の状態や能力・適性等が多様な児童生徒が在籍し、一人一人に応じた指導や配慮が特に必要であるため、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号)(以下「義務標準法」という。)に基づき、学級編制や教職員定数について特別の配慮がなされている。

<1> 学級編制

1学級の児童生徒数の標準については、数次の改善を経て、現在、公立特別支援学校では、小・中学部6人、高等部8人(いわゆる重複障害学級にあってはいずれも3人)、公立小・中学校の特別支援学級では8人となっている。

<2> 教職員定数

公立の特別支援学校における児童生徒数が増加していることや障害が重度・重複化していることに鑑み、大規模校における教頭あるいは養護教諭等の複数配置や、教育相談担当・生徒指導担当・進路指導担当及び自立活動担当教員の配置が可能な定数措置を講じている。

平成23年4月の義務標準法の一部改正では、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒を対象とした通級による指導の充実など特別支援教育に関する加配事由が拡大された。

また、平成29年3月の義務標準法の一部改正により、平成29年度から公立小・中学校におけるいわゆる通級指導など特別な指導への対応のため、10年間で対象児童生徒数に応じた定数措置(基礎定数化)を行うこととしている。この他、特別支援学校のセンター的機能強化のための教員配置など、特別支援教育の充実に対応するための加配定数の措置を講じている。

(2)教職員の専門性の確保

特別支援教育担当教員の養成は、現在、主として大学の特別支援教育関係の課程等において行われている。また、幼稚園、小学校・中学校及び高等学校の教員養成においても、教職に関する科目において、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」について取り扱うこととしているほか、特別支援教育について学ぶ科目を開設している大学もある。

また、研修を通じた資質向上を図るため、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所においては、特別支援教育関係の教職員等に対する研修を行っているほか、独立行政法人教職員支援機構(平成29年4月に「独立行政法人教員研修センター」から名称変更)においても、各地域で中核となって活躍する管理職を育成する学校経営研修において、特別支援教育に関する内容を盛り込んでいる。さらに、都道府県等教育委員会においては、小学校等の教諭等の初任者研修や10年経験者研修においても、特別支援教育に関する内容を盛り込んでいる。この他、放送大学において、現職教員を主な対象とした特別支援学校教諭免許状取得のための科目が開講されている。

また、教員免許更新制における免許状更新講習においても、必修領域の事項の一つである「子どもの発達に関する脳科学、心理学等における最新の知見(特別支援教育に関するものを含む。)」の中で特別支援教育に関する内容を扱うことが規定されている。

(3)免許制度の改善

平成19年度より、従来、盲学校・聾学校・養護学校ごとに分けられていた教諭の免許状が、特別支援学校の教諭の免許状に一本化されている。同時に、特別支援学校教諭免許状の取得のためには、様々な障害についての基礎的な知識・理解と同時に、特定の障害についての専門性を確保することとなっている。また、大学などにおける特別支援教育に関する科目の修得状況などに応じ、教授可能な障害の種別(例えば「視覚障害者に関する教育」の領域など)を定めて授与することとしている。

ただし、特別支援学校教諭免許状については、教育職員免許法(昭和24年法律第147号)上、当分の間、幼・小・中・高等学校の免許状のみで特別支援学校の教員となることが可能とされているが、専門性確保の観点から保有率を向上させることが必要である。

特別支援学校の教員の特別支援学校教諭等免許状の保有率は、全体で75.8%(平成28年5月1日現在)であり、全体として前年度と比べ1.5ポイント増加しているが、特別支援教育に関する教員の専門性の向上が一層求められている中で、専門の免許状等の保有率の向上は喫緊の課題となっている。このため、各都道府県教育委員会等において教員の採用、配置、現職教員の特別支援学校教諭免許状取得等の措置を総合的に講じていくことが必要である。

(4)特別支援教育の関係機関等
ア 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所

国立特別支援教育総合研究所は、我が国における特別支援教育のナショナルセンターとして、国の政策課題や教育現場等の喫緊の課題等に対応した研究活動を核として、各都道府県等において指導的立場に立つ教職員等を対象に、「特別支援教育専門研修」や「インクルーシブ教育システムの充実に関わる指導者研究協議会」を実施しているほか、インターネットを通じて、通常の学級の教員を含め障害のある児童生徒等の教育に携わる幅広い教員の資質向上の取組を支援するための研修講義の配信や特別支援学校教員の免許状保有率の向上に資する免許法認定通信教育を実施している。また、全ての学校をはじめとする関係者に必要かつ有益な情報を提供するため、インターネットを活用し、発達障害に関する情報提供等を行う「発達障害教育情報センター」、合理的配慮の実践事例の掲載等を行う「インクルーシブ教育システム構築支援データベース」及び支援機器等教材活用に関する様々な情報を集約した「特別支援教育教材ポータルサイト」などにより情報発信を行っている。さらに、東京都内で「研究所セミナー」を開催しているほか、「教材・支援機器等展示会」を地域で開催するなど各地域で理解啓発活動も行っている。

このほか、平成28年度に「インクルーシブ教育システム推進センター」を設置し、地域や学校が直面する課題を研究テーマとし、その解決を目指す「地域実践研究」、諸外国の最新情報の発信やインクルーシブ教育システムの構築に関する相談支援等を通して、地域や学校における取組を強力にバックアップしている。

イ 特別支援教育センター

都道府県の特別支援教育センターにおいて、当該都道府県における特別支援教育関係職員の研修、障害のある子供に係る教育相談、特別支援教育に係る研究・調査等が行われている。

特別支援教育におけるICTの活用事例について
(「障害のある児童生徒のためのICT活用に関する総合的な研究-学習上の支援機器等教材の活用事例の収集と整理-」におけるICT活用に関するアンケート調査より)

独立行政法人国立特別支援教育総合研究所では、平成26、27年度において「障害のある児童生徒のためのICT活用に関する総合的な研究-学習上の支援機器等教材の活用事例の収集と整理-」を実施し、実践事例の整理・検討を行った。

特別支援学校や通常の学級における活用事例(一部抜粋)

〇タブレットPCの「筆順辞典」アプリを活用した事例(視覚障害)

弱視児童がタブレットPCの拡大機能と「筆順辞典」アプリを用いて漢字の書き取りを行った。弱視の児童生徒は、漢字の細部を見分けることが困難であるために、拡大機能を用いて線の突き抜けの有無、線のつながりの有無等を確かめながら、筆順に注目して漢字を書いている(図1)。

〇携帯情報端末を活用した意思の伝達に関する学習(知的障害)

自分の考えや要求を言葉で伝えることが難しいという課題のある児童生徒に対して、携帯情報端末に直接、平仮名を入力して音声出力する学習を行うことにより、自分の食べたいものやしたいことを伝えられるようになった。家庭との連携により、さらに使える場面や語彙の数も増やしていくことに取り組んでいる(図2)。

〇読むことが苦手な子供に対するペン型音声再生機を使った教科書の読み上げ(通常の学級)

初出の漢字や慣れない言い回しなど「読むこと」が苦手な子供に対して、読みの難しい箇所にペン型音声再生機で触れることで、文章の内容を音声で読み上げる。読み方を学習するとともに、内容の理解にもつながる(図3)

図1、図2、図3

○特別支援教育でICTを活用しよう(パンフレット)

障害のある児童生徒のためのICT活用に関する総合的な研究(研究成果報告書)

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