目次]  [前へ]  [次へ

第3編 障害者施策の実施状況 第4章 第1節 5

第4章 住みよい環境の基盤づくり

第1節 障害のある人の住みよいまちづくりと安全・安心のための施策

5.安全な交通の確保

(1)安全かつ円滑な通行の確保
ア 生活道路対策の推進

全交通事故死者に占める歩行者の割合は3割を超えており、歩行者の安全を確保することが重要な課題であることから、障害のある人を含むすべての人が安全に安心して道路を通行できるよう、生活道路等において、都道府県公安委員会と道路管理者が連携し、信号機の新設・改良、歩道等の整備、車両速度を抑制するような物理的デバイスの設置等の対策を推進するとともに、最高速度30km/hの区域規制や路側帯の設置・拡幅等により区域内における速度抑制や通過交通の抑制・排除を図る「ゾーン30」等の面的かつ総合的な事故抑止対策を推進している。

イ 利用する視点からの歩行空間の整備

歩行空間の整備に当たっては、様々な利用者の視点を踏まえて整備され、整備後も、不法占用や放置自転車のない歩行環境が確保されるよう、行政と住民・企業など地域が一体となった取組を行っていく必要がある。このようなことから、様々な利用する人の視点に立って道路交通環境の整備が行われ、適切な利用が図られるよう、「交通安全総点検」の点検結果を新規整備の際に活用するなど計画段階から住民が参加した整備を推進している。

また、平成25年に交通の方法に関する教則(昭和53年国家公安委員会告示第3号)を改正し、自転車を駐車する際には点字ブロック上及びその近辺に駐車しないようにすべきことについて明記した。

ウ 障害のある人等の利用に配慮した信号機等の設置

音響により信号表示の状況を知らせる音響式信号機、信号表示面に青時間までの待ち時間及び青時間の残り時間を表示する経過時間表示機能付き歩行者用灯器、歩行者・自転車と車両が通行する時間を分離して交通事故を防止する歩車分離式信号等のバリアフリー対応型信号機等の整備を推進している。

エ 障害のある人等が運転しやすい道路交通環境の整備

障害のある人を含むすべての人が安心して運転できるよう、ゆとりある道路構造の確保や視環境の向上、疲労運転の防止等を図ることとし、道の駅等の休憩施設の整備、付加車線(ゆずり車線)の整備、道路照明の増設を行うとともに、高速自動車国道等のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)、自動車駐車場等において障害者用トイレや障害者用駐車スペース等の設置を実施しているほか、信号灯器のLED化、道路標識の大型化・高輝度化、道路標示の高輝度化、交通情報提供装置の整備、道路情報板、情報ターミナル等の道路情報提供装置やそれを支える光ファイバ網等の情報通信基盤の整備を推進している。

また、「道路交通法」(昭和35年法律第105号)においては、肢体不自由を理由として免許に条件を付された者が、身体障害者標識を表示して普通自動車を運転している場合には、他の運転者は、危険防止のためやむを得ない場合を除いて、その普通自動車に対して幅寄せや割込みをすることが禁止されている。

さらに、同法においては、身体に障害のある歩行者等その通行に支障がある歩行者が道路を横断し、又は横断しようとしている場合において、当該歩行者から申出があったときその他必要があると認められるときは、警察官等その他その場所に居合わせた者は、当該歩行者が安全に道路を横断することができるように努めなければならないこととし、車両等の運転者は、身体に障害のある歩行者等その通行に支障のある者が通行しているときは、その通行を妨げないようにしなければならないこととされている。

聴覚障害のある人については、ワイドミラー又は補助ミラーの装着を条件に、すべての普通自動車を運転することができ、平成28年12月末日現在、1,059人がこの条件で普通自動車免許を保有している。

なお、平成29年3月12日からは、後方等確認装置の使用による条件で運転することができることとなったほか、同日に新設された準中型車についてもワイドミラー、補助ミラー又は後方等確認装置の使用による条件で運転できることとなった。

また、大型自動二輪車、普通自動二輪車、小型特殊自動車及び原動機付自転車の免許について、適性試験における聴力が廃止されており、聴覚障害のある人も運転できることとなっている。

さらに、平成28年4月1日から、補聴器を使用して一定の音が聞こえることを条件に、聴覚障害のある人についても、タクシーやバス等の旅客自動車を運転することができることとなっている。

聴覚障害のある人が普通自動車を運転する際には、聴覚障害者標識の表示が義務付けられており、聴覚障害者標識を表示した自動車に対する幅寄せや割込みは禁止されている。

警察では、聴覚障害者標識に関する広報啓発を行うとともに、聴覚障害のある人が安全に運転できるよう、関係団体と連携し、免許取得時の教習等の充実や周囲の運転者が配慮すべき事項についての安全教育に努めている。

さらに、警察では、高齢者や障害のある人が安全で余裕のある駐車ができるよう、都道府県公安委員会が交付した専用場所駐車標章を掲示した普通自動車に限り、指定された区間・場所に駐車又は停車することができる高齢運転者等専用駐車区間を整備している。

オ 走行音の静かなハイブリッド車等への対 策

ハイブリッド車や電気自動車は、「音がしなくて危険と感じる」との意見が寄せられていることを受け、国土交通省においては、学識経験者、視覚障害者団体、自動車メーカー等からなる「ハイブリッド車等の静音性に関する対策検討委員会」の結果を踏まえて、平成22年1月に「ハイブリッド車等の静音性に関する車両接近通報装置のガイドライン」を定めるとともに、自動車メーカー等の関係者に周知し、対策の早期普及を促してきた。更に、本ガイドラインを基に、国連において日本が策定を主導してきた国際基準が平成28年3月に成立し、同年10月に発効したことに合わせ、ハイブリッド車等に車両接近通報装置を義務付ける法令を公布した。

(2)歩行者に対する保護意識の高揚等

運転者に対しては、障害のある人を含む全ての歩行者に対する保護意識の高揚を図るため、運転者教育、安全運転管理者による指導その他広報啓発活動を推進している。

また、障害のある人に対しては、字幕入りビデオの活用や参加・体験・実践型の交通安全教室の開催等により、交通安全のために必要な技能及び知識を習得できるよう、障害の程度に応じたきめ細かい交通安全教育を推進している。

(3)電動車いすの型式認定

「道路交通法」上、一定の基準に該当する原動機を用いる身体障害者用の車いすを通行させている者は歩行者とされるが、平成28年度において、その基準に該当する5型式が型式認定された。

(4)運転免許取得希望者への配慮

身体に障害のある運転免許取得希望者の利便の向上を図るため、各都道府県警察の運転免許試験場に、スロープ、エレベーター等を整備することに努めているほか、運転適性相談窓口を設け、身体に障害のある人の運転適性について知識の豊富な職員を配置して、運転免許取得に関する相談を行っている。

また、身体に障害のある人が、身体の状態に応じた条件を付すことにより、自動車の安全な運転に支障を及ぼすおそれがないと認められるときは、身体に障害のある人のために改造を行った持込み車両等による技能試験を受けることができることとしているほか、指定自動車教習所に対しても、身体に障害のある人の持ち込み車両による教習の実施や、身体に障害のある人の教習に使用できる車両や取り付け部品の整備、施設の改善等を指導している。

このほか、知的障害のある運転免許取得希望者の利便の向上を図るため、学科試験の実施に当たり、試験問題の漢字に振り仮名を付けるなどの対応をしている。

■図表3-4-10 条件付運転免許の保有者数(平成28年)
条件 人数
補聴器の使用 39,899人
補聴器の使用(使用しない場合はワイドミラー又は補助ミラーと聴覚障害者標識を付けた普通自動車に限定) 512人
ワイドミラー又は補助ミラーを付けた普通自動車に限定 1,059人
身体障害者用車両に限定 199,693人
義手、義足又は装具の条件 3,925人
合計 245,088人

注:上記区分中、2種類以上の条件が付されている場合は、表の上側となる区分に計上。
資料:警察庁「運転免許統計平成28年版」

身体障害者標識・聴覚障害者標識
■図表3-4-11 バリアフリー対応型信号機の設置状況(平成27年度末現在)
種類 基数
高齢者等感応信号機 6,783基
歩行者感応信号機 1,364基
視覚障害者用付加装置 19,219基
音響式歩行者誘導付加装置 3,414基
歩行者支援装置 572基

資料:警察庁

目次]  [前へ]  [次へ