第2章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 第1節 5
第1節 障害のある人に対する広報・啓発等の推進
5.福祉教育等の推進
(1)学校教育における取組-交流及び共同学習の推進
障害のある幼児児童生徒と、障害のない幼児児童生徒や地域の人々が活動を共にすることは、全ての幼児児童生徒の社会性や豊かな人間性を育成する上で意義があるだけでなく、地域の人々が障害のある子供に対する正しい理解と認識を深める上でも重要な機会となっている。
このため、幼稚園、小・中・高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等において、交流及び共同学習の機会を設ける旨が規定されているとともに、教育委員会が主体となり、学校において、各教科やスポーツ、文化・芸術活動等を通じた交流及び共同学習の機会を設けることにより、障害者理解の一層の推進を図る取組等を行っている。また、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(平成29(2017)年2月20日ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定)に基づき、「心のバリアフリー学習推進会議」を設置し、平成30(2018)年2月に交流及び共同学習の推進方策について提言を取りまとめた。提言を踏まえ、交流及び共同学習を通じた障害者理解を推進するなど更なる施策の充実を図るとともに、教育委員会や学校等に対して積極的な取組を促すこととしている。
(2)地域住民への広報・啓発
障害のある幼児児童生徒が、自立し社会参加するためには、広く社会一般の人々が、幼児児童生徒と教育に対する正しい理解と認識を深めることが不可欠である。
社会教育施設等における学級・講座等においては、障害のある人に対する理解を深めることを重要な学習課題の一つと位置付け、青少年の学校外活動や成人一般、高齢者の学習活動が展開されている。
また、精神保健福祉センターや保健所では、精神障害のある人に対する正しい理解を促すため、住民に対する精神保健福祉に関する知識の普及・啓発を行っている。
~心のバリアフリーの実現に向けて~
「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(平成29(2017)年2月20日ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定)において「心のバリアフリー学習推進会議(仮称)」の設置が明記されたことを踏まえ、平成29年7月に文部科学省において「心のバリアフリー学習推進会議」を設置し、厚生労働省と協力して交流及び共同学習の具体的な推進方策について検討を実施した。
本会議における議論に資するよう、全国の小・中・高等学校における交流及び共同学習の実施状況について調査を実施したところ、特別支援学級との交流が実施されている割合は約8割と比較的高かったものの、特別支援学校との交流は2~3割程度であるとの結果が示された。
小学校 | 中学校 | 高等学校 | |
---|---|---|---|
学校間交流 | 16% | 18% | 26% |
居住地校交流 | 37% | 23% | 4% |
特別支援学級との交流* | 81% | 80% | - |
障害のある人との交流 | 40% | 29% | 21% |
*回答には、特別支援学級が設置されていない小学校(17%)、中学校(17%)が含まれる。
こうした現状を踏まえつつ、先進的な自治体や学校等の事例の紹介を交えながら、全5回にわたって議論を実施し、平成30(2018)年2月に「学校における交流及び共同学習の推進について ~心のバリアフリーの実現に向けて~」を取りまとめた。
本報告は①交流及び共同学習の推進、②障害のある人との交流の推進、③ネットワーク形成の促進、④今後の推進方策という構成になっており、
具体的には、
・交流及び共同学習は、障害のある子供・障害のない子供の双方にとって、豊かな人間性を育むとともに、お互いを尊重し合う大切さを学ぶ機会となるなど、「心のバリアフリー」の実現に向けて大きな意義を有すること、
・現在行われている取組は、単発の交流機会や、障害について形式的に理解させる程度にとどまっている場合も多い。各学校において、その場限りの活動で終わらせないよう、十分な事前学習・事後学習を実施し、日常の学校生活においても障害者理解に係る丁寧な指導を実施することで、年間を通じて継続的な取組として計画的に進めることが重要であること、
・校長のリーダーシップの下、学校全体で組織的に取り組み、全教職員が目的や内容等を共有するとともに、教育委員会は、学校が多様な業務を担い多忙化している状況も踏まえながら、先進的な取組を域内の学校に普及するなどにより取組を推進すべきであること、
・学校において交流及び共同学習や障害のある人との交流を行うに当たり、教育委員会が中心となり、福祉部局、社会福祉法人、スポーツ・文化芸術などの関係団体等のネットワークを形成することが重要であり、このようなネットワークは、障害のある子供の卒業後も見据えた一貫した支援の観点からも重要であること、
等についてまとめられている。
これを受け、文部科学省から各都道府県・指定都市教育委員会等に対し、また、厚生労働省から各都道府県福祉部局に対し、交流及び共同学習の推進等について、積極的に取り組むよう協力を依頼する通知を発出している。
文部科学省においては、心のバリアフリーに関する事業を充実し、事業を行っている学校だけではなく全ての学校が継続的に実施できるよう、全国に取組を普及させるとともに、平成30年度中に「交流及び共同学習ガイド」を学校がより活用しやすいものに改訂し、考え方や進め方を周知する予定である。