第4章 日々の暮らしの基盤づくり 第1節 5
第1節 生活安定のための施策
5.スポーツ・文化芸術活動の推進
(1)スポーツの振興
ア 障害者スポーツの普及促進
平成29(2017)年度「障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究」によると、障害のある人(成人)の週1回以上のスポーツ・レクリエーション実施率は20.8%(成人全般の実施率は51.5%(平成29年度「スポーツの実施状況に関する世論調査」))にとどまっており、地域における障害者スポーツの一層の普及促進に取り組む必要がある。
このため、平成27(2015)年度から、一部の都道府県・政令指定都市において、スポーツ関係者と障害福祉関係者が連携・協働体制を構築し、相互に一体となり障害者スポーツを推進する事業を実施している。
また、平成32(2020)年に全国の特別支援学校でスポーツ・文化・教育の祭典が実施されるための「Specialプロジェクト2020」や、特別支援学校を地域の障害者スポーツの拠点として活用する取組を実施している。
さらに、平成30(2018)年度からは、地域における障害者スポーツの振興体制の強化、身近な場所でスポーツを実施できる環境の整備を図る取組や、障害者スポーツ団体と民間企業とのマッチング等により障害者スポーツ団体の体制の強化を図り、他団体や民間企業等と連携した活動の充実につなげる取組を実施することとしている。
イ 障害者スポーツの競技力向上
平成30(2018)年3月、平昌パラリンピック競技大会が開催され、日本選手団は3個の金メダルを獲得し、また、総メダル数では前回大会を上回る10個のメダルを獲得した。
スポーツ庁では、「競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン)」(平成28(2016)年10月)や「スポーツ基本計画」(平成29(2017)年3月)に基づき、パラリンピックの競技特性や環境等に十分配慮しつつ、オリンピック競技とパラリンピック競技の支援内容に差を設けない一体的な競技力強化支援に取り組んでいる。
具体的には、障害者スポーツの競技団体を含む各競技団体が行う強化活動に必要な経費等を支援する「競技力向上事業」を実施している。
また、「ハイパフォーマンス・サポート事業」により、パラリンピック競技大会でメダル獲得が期待される競技をターゲットとして、多方面からの専門的かつ高度な支援を戦略的・包括的に実施している。さらに、平昌パラリンピック競技大会に際して、同事業においてパラリンピック冬季競技大会では初めて、競技直前の準備のためにアスリート、コーチ、サポートスタッフが必要とする機能を備えた現地拠点であるハイパフォーマンス・サポートセンターを設置した。
さらに、平成29年度から「ハイパフォーマンスセンターの基盤整備」において、2020年東京大会等に向けた我が国アスリートのメダル獲得の優位性を確実に向上させるため、競技用具の機能等を向上させる取組を実施している。
加えて、トップアスリートにおける強化・研究活動拠点の在り方についての調査研究に関する有識者会議「最終報告」(平成27(2015)年1月)を踏まえ、オリンピック競技とパラリンピック競技の一体的な拠点としてナショナルトレーニングセンターの拡充整備に取り組んでおり、平成31(2019)年6月末の完成を目指して整備工事を実施している。
◯全国障害者スポーツ大会
平成13(2001)年度から、それまで別々に開催されていた身体に障害のある人と知的障害のある人の全国スポーツ大会が統合され、「全国障害者スポーツ大会」として開催されている。平成20(2008)年度から、精神障害者のバレーボール競技が正式種目に加わり、全国の身体、知的、精神に障害のある方々が一堂に会して開催される大会となっている。本大会は、障害のある選手が、競技等を通じ、スポーツの楽しさを体験するとともに、国民の障害に対する理解を深め、障害のある人の社会参加の推進に寄与することを目的として、国民体育大会の直後に、当該開催都道府県で行われている。平成29(2017)年度の第17回大会は、愛媛県において開催された。なお、平成30(2018)年度の第18回大会については、福井県で開催される。
◯全国ろうあ者体育大会
本大会は、聴覚に障害のある人が、スポーツを通じて技を競い、健康な心と体を養い、自立と社会参加を促進することを目的として、昭和42(1967)年度から開催されている。
平成29(2017)年度は、第51回となる夏季大会が静岡県で、4年に一度行われる冬季大会が岩手県で開催された。今回の夏季大会では10競技が行われ、選手・役員合わせて約1,500人が参加した。
◯デフリンピック
4年に一度行われる、聴覚に障害のある人の国際スポーツ大会であり、夏季大会と冬季大会が開催されている。夏季大会は1924年を第1回としており、2017年には、トルコのサムスンにおいて開催された。日本選手団として選手・役員合わせて177名が参加し、金メダル6個、銀メダル9個、銅メダル12個を獲得した。冬季大会は1949年を第1回としており、2015年3月28日~4月7日にはロシアのハンティ・マンシースクにおいて第18回大会が開催された。日本選手団として選手・役員合わせて48名が参加し、金メダル3個、銀メダル1個、銅メダル1個を獲得した。
◯スペシャルオリンピックス世界大会
4年に一度行われる、知的障害のある人のスポーツの世界大会であり、夏季大会と冬季大会が開催されている。順位は決定されるものの最後まで競技をやり遂げた選手全員が表彰される、といった特徴がある大会である。
夏季大会は1968年を第1回(米国・シカゴ)としており、次回は、2019年にアラブ首長国連邦のアブダビにおいて第15回大会の開催が予定されている。冬季大会は1977年を第1回(米国・コロラド州)としており、2017年にはオーストリアのシュラートミンクにおいて第11回大会が開催された。
また、スペシャルオリンピックスでは、知的障害のある人とない人が共にチームを組みスポーツを楽しむ取組も進めており、世界大会の種目にも採用されている。
◯パラリンピック競技大会
オリンピックの直後に当該開催地で行われる、障害者スポーツの最高峰の大会であり、夏季大会と冬季大会が開催されている。夏季大会は、1960年にイタリアのローマで第1回大会が開催され、オリンピック同様4年に一度開催されている。2016年には、ブラジルのリオデジャネイロにおいて第15回大会が開催された。次回は、2020年、東京において開催が予定されている。冬季大会は、1976年にスウェーデンのエンシェルツヴィークで第1回大会が開催されて以降、オリンピック冬季大会の開催年に開催されている。2018年3月には、韓国の平昌(ピョンチャン)において第12回大会が開催された。次回は、2022年に中国の北京で開催が予定されている。
平成25(2013)年9月に開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会(アルゼンチン/ブエノスアイレス)において、2020年オリンピック・パラリンピックの開催都市が東京都に決定した。これにより、東京都は史上初めて、2度目のパラリンピック夏季競技大会を開催する都市となった。
パラリンピック競技大会は、世界のトップアスリートが参加し、スポーツを通じて、障害のある人の自立や社会参加を促すとともに、様々な障害への理解を深めることにつながるものである。また、アクセシビリティに配慮した会場やインフラの整備により、東京のまち全体を障害のある人を始めとする全ての人々が安全で快適に移動できるようになり、ユニバーサルデザイン都市、東京の実現が促進されるものである。
2020年パラリンピック競技大会は、8月25日の開会式に始まり、9月6日の閉会式まで13日間、オリンピックと共に30日間の1つの祭典として開催される。大会の新規実施競技については、平成26(2014)年10月の国際パラリンピック委員会(IPC)理事会でバドミントンの実施を、平成27(2015)年1月のIPC理事会でテコンドーの実施を決定し、全22競技が決定した。また、平成29(2017)年9月にはIPC理事会で22競技537種目、選手数の上限を4,400名とすることを決定した。
「全員が自己ベスト」、「多様性と調和」、「未来への継承」を3つの基本コンセプトとし、大会組織委員会が中心となり、東京都、日本オリンピック委員会(JOC)や日本パラリンピック委員会(JPC)、政府が一丸となって大会準備を進めている。平成28(2016)年4月25日には、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のエンブレムが決定し、平成30(2018)年2月28日には同大会のマスコットが全国16,769校の小学生による学級単位での投票により決定した。
オリンピック・パラリンピック競技大会を始めとする国際競技大会における日本代表選手の活躍は、国民に誇りと喜び、夢と感動を与えるものであり、我が国の国際競技力向上に向けた取組を進めていくことは重要である。このため、スポーツ庁では、「競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン)」(平成28年10月)や「スポーツ基本計画」(平成29年3月)に基づき、パラリンピックの競技特性や環境等に十分配慮しつつ、オリンピック競技とパラリンピック競技の支援内容に差を設けない一体的な競技力強化支援に取り組んでいる。(第4章第1節5.(1)イを参照)。
また、2020年東京パラリンピック競技大会を成功に導くためには、将来のパラリンピアンを始め一人でも多くの障害者がスポーツを楽しめる環境を整備することにより、障害者スポーツの裾野を広げていくことが重要である。このため、地方自治体における障害者スポーツ推進体制の整備を推進するとともに、全国の特別支援学校でスポーツ・文化・教育の祭典を開催することとし、この開催に向けた取組を進めていくこととしている。
平成30(2018)年3月9日~18日において、韓国・平昌で開催された平昌2018パラリンピック競技大会では、6競技80種目が行われ、日本からは38名の選手が参加した。
日本代表選手団は、金メダル3個、銀メダル4個、銅メダル3個の計10個のメダルを獲得するとともに、4位から8位の入賞数は、計13に上り、日本パラリンピック委員会が目標としていた前回大会を超えるメダル数を達成した。日本の選手が大舞台で活躍する姿に日本中が沸き返り、国民に感動と希望をもたらしてくれた。
2年後は、いよいよ2020年東京大会が開催される。同大会を契機に、スポーツを通じた健康意識の向上や、心のバリアフリーなど、国民全体に及ぶ「レガシー」を創出するとともに、日本全体に夢や感動を届けられる大会となるよう、国としてもしっかりと取り組んでいく。
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冬季パラリンピックで日本人史上最年少(21歳)で金メダルを獲得したアルペンスキー村岡桃佳選手
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バンクーバー大会以来2度目の金メダルとなったクロスカントリースキー新田佳浩選手
写真:上記全て©フォート・キシモト
スポーツ庁では、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京大会」という。)を契機として共生社会を実現するため、スポーツを通じて心のバリアフリーの理解を促す取組や、スポーツ施設のバリアフリー化を進めている。
心のバリアフリーの取組として、パラリンピック教育を全国で実施し、パラリンピックの価値やスポーツの価値の学びを通して、障害のある方や共生社会への理解等の促進を図るとともに、学校や市民向けのパラリンピックの競技体験等を実施することで、パラリンピックや障害者スポーツへの興味・関心を高め、より多くの方に実際にパラリンピックを観戦していただきたいと考えている。
また、東京大会のレガシーとして共生社会を実現するため、2020年に全国の特別支援学校でスポーツ・文化・教育の全国的な祭典の開催に向けた取組を行っており、特別支援学校の児童生徒とパラリンピアンとの交流や、特別支援学校を活用した地域の障害者スポーツの拠点づくり、特別支援学校を対象としたスポーツの全国大会などを実施している。
スポーツ施設のバリアフリー化については、ナショナルトレーニングセンターをオリンピック・パラリンピックのトップアスリートの共同利用強化活動拠点として拡充整備し、パラリンピック選手の競技力向上とそれに伴う障害者スポーツへの関心の高まりにつなげるとともに、新国立競技場のユニバーサルデザインを推進し、全ての人が安心して快適に観戦できるスタジアムを整備する。
引き続き、東京大会の開催に向け、上記の取組を推進し、共生社会の実現に向け取り組んで行く。
石川県の中学校・高等学校でのパラリンピアンによる競技体験授業
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第2回全国特別支援学校ボッチャ大会
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新国立競技場1層スタンドからの観戦イメージ
(2)文化活動の振興
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、関係者相互の情報共有やネットワークの構築を図るとともに、障害のある人の芸術文化の振興に資する取組について、広く関係者による意見交換を行う「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた障害者の芸術文化振興に関する懇談会」を平成27(2015)年度から文化庁と厚生労働省が共同で開催するなど、障害のある人の芸術文化活動の振興を深める取組を行っている。
厚生労働省では、平成25(2013)年に開催された「障害者の芸術活動への支援を推進するための懇談会」中間とりまとめを受け、平成26(2014)年度からは芸術活動を行う障害のある人やその家族、福祉事業所等で障害のある人の芸術活動の支援を行う者を支援するモデル事業を実施し、事業で培った支援ノウハウを全国展開すべく、平成29(2017)年度からは障害者芸術文化活動普及支援事業を実施し、障害のある人の芸術文化活動(美術、演劇、音楽等)の更なる振興を図っている。
また、障害のある人の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解と認識を深め、障害のある人の自立と社会参加の促進に寄与することを目的として、「第17回全国障害者芸術・文化祭なら大会」(平成29年度)を、国民一般の行っている文化活動を全国規模で発表し、競演し、交流する場である「第32回国民文化祭・なら2017」(平成29年度)と初めて一体的に開催し、障害のある人もない人も共に楽しめる祭典の開催が実現した。
さらに、文化庁では、障害のある人の優れた文化芸術活動の国内外での公演・展示の実施や助成採択した映画作品のバリアフリー字幕及び音声ガイド制作への支援等、障害のある人の文化芸術活動を推進している。このほか、国立美術館、国立博物館においては、展覧会の入場料の無料を実施しているほか、全国各地の劇場、コンサートホール、美術館、博物館などにおいて、車いす使用者も利用ができるトイレやエレベーターの設置等障害のある人に対する環境改善も進められている。
オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典のみならず文化の祭典でもあり、「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」(平成27年11月27日閣議決定)において、日本文化の魅力を発信していくこととしている。平成28(2016)年3月に、関係府省庁、東京都、大会組織委員会を構成員とする「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた文化を通じた機運醸成策に関する関係府省庁等連絡・連携会議」を開催した。その中で2020年以降を見据え、日本の強みである地域性豊かで多様性に富んだ文化を活かし、障害のある人にとってのバリアを取り除く取組等成熟社会にふさわしい次世代に誇れるレガシー創出に資する文化プログラムを「beyond2020プログラム」として認証するとともに、日本全国へ展開することを決定した。平成30(2018)年3月末時点で約4,000件の事業を認証した。
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作品展示の様子
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音楽劇の様子
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車いすダンスパフォーマンスの様子
2020年は、文化プログラムを通じて日本の文化を世界に発信する絶好の機会である。
大相撲では、現状、外国人や障害のある人へ十分な観戦機会の提供がなされていない。こうした現状を踏まえ、2020年に向けて、大相撲の国際発信力の向上や、障害のある人のアクセス性の強化等、共生社会実現に向けた課題解決につながる具体的な取組として、「平成29年度大相撲beyond2020場所」を開催した。
「平成29年度大相撲beyond2020場所」は平成29(2017)年10月に一日特設イベントとして、両国国技館で開催され、外国人や障害のある人を中心に約4,000名が参加した。土俵周りの溜席エリアへの車椅子席の設置、聴覚障害のある人向けの手話通訳の実施や解説用モニターの設置、視覚障害のある人向けの点字プログラムの配布など、障害のある人が観覧しやすいよう配慮した。また、英語対応が可能なスタッフの配置、日英2か国語による場内放送等、外国人への対応を強化した。このように、普段、観戦機会の提供が十分ではない外国人や障害のある人に向けた様々な対応を実施した。
2020年に向けて同様の取組が全国で展開されることにより、日本文化の国内外への発信や、共生社会の実現に繋げていく。
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溜席エリアでの車いすの設置
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手話及びモニターによる解説
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聴導犬とともに観戦
文化庁では、我が国の障害のある方々による優れた文化芸術活動の成果を世界に向けて発信し、国内外への普及を促進することを目的として、平成29(2017)年10月にフランスのナント市において、「2017 ジャパン×ナント プロジェクト」を実施した。プロジェクトでは、障害のある方々による優れた芸術作品の展覧会や、和太鼓、石見神楽、ダンス及び演劇の公演、バリアフリー映画の上映等を行った。このように障害のある方々による複数分野の優れた文化芸術活動の成果を、海外から発信することは初めての試みだった。
展覧会「KOMOREBI」展は、42名の作家による約900点の作品を出展し、3か月で約5万5千人が観覧した。来場者からは、「これだけ多くの日本の障害者による芸術作品を見ることは初めてでとても驚いている」、という声が聞かれた。また、日本の文化、美意識に感心する声なども聞かれた。
このほか、「芸術とケアと市民権」についての国際研究フォーラムも開催し、日仏等の専門家や実演家が各セッションで講演や討論を行った。フォーラムを通して、日本における障害のある方々による文化芸術活動の支援策等を紹介し、多くの方の関心を集めた。
このように、本プロジェクトを通じて、日本の文化芸術への理解を深め、日本文化の評価の向上に繋がる取組を行った。
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演劇公演(劇団「じゆう劇場」)(撮影 松永育子)
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瑞宝太鼓(撮影 大西暢夫)
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石見神楽
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「KOMOREBI」展
厚生労働省では、平成29(2017)年度から「障害者芸術文化活動普及支援事業」を実施している。これは、平成26(2014)年度~28(2016)年度に行った「障害者の芸術活動支援モデル事業」の成果を全国に普及するためのもので、都道府県に障害のある人の芸術活動を支援する支援センターを設置し、相談支援や人材育成、ネットワークづくりなどの必要な支援を行う事業である。また、より多くの障害者の自立と社会参加を促すため、これまで支援してきた美術分野に加え、舞台芸術分野への支援体制づくりにも取り組んでいる。
舞台芸術分野は、ジャンルも幅広く、作品づくりに様々な専門知識や多くの人の時間と労力がかかる点で、「福祉施設では取り組みにくいのではないか」という声がある。しかし、この事業を実施する全国の支援センターは、舞台芸術活動のもつ可能性を探り続け、普及のために必要な支援、課題の解決などを試みている。
また、地域のニーズを把握し、資源やネットワークを活用した、様々な好事例も報告されているので、このうちのいくつかを紹介する。
大阪の支援センターでは、障害のある人もない人も一緒に参加する舞台作品づくりのプロジェクトが行われた。81名の一般参加者のうち、60名に障害があり、その特性も視覚、聴覚、知的、精神、肢体、内部、難病と様々であった。障害のない若手ダンサーらも参加し、障害のある人との作品づくりの経験がある舞台の専門家やスタッフと一緒に稽古を重ね、創造・表現活動のノウハウを身につけた。舞台作品を創るプロセスの中で参加者・関係者がみんなで共に学び表現する体験となった。
滋賀の支援センターでは、県内6地域で障害のある人を対象とした「うた」「打楽器演奏」「ダンス・身体表現」の専門家によるワークショップが、月2回程度開催されている。その成果は毎年の音楽祭を通じて発表され、地域の人と共有されてきた。この企画がきっかけとなり、地域の各事業所でも主体的に身体表現活動のワークショップが行われるようになり、障害のある人の日常生活がより豊かになっている。本番にはプロの音楽家やダンサーも一緒に出演するようになったり、海外で公演する機会も生まれたりするなど、広がりを見せている。
本事業をきっかけに、障害のある人の舞台芸術活動の取組を始めた新潟の支援センターでは、まず、ニーズの把握も兼ねて、障害の有無にかかわらず参加できる「のど自慢大会」のような企画が行われた。出演者の年齢は10歳~78歳までと幅広く、統合失調症、自閉症、脳性麻痺、うつ、ダウン症、全盲、聴覚過敏、発達障害など多様な人が参加し会場一体となって楽しい時間を共有した。披露された芸も歌、ダンス、身体表現、コントなど様々で、応募された中には、手刀で豆腐を切るという、その人の日常生活や障害の特性から生まれたものもあり、表現における新たな気づきや発見をもたらした。
これらの支援センターが共通して指摘するのが、舞台芸術活動を通じて、お互いを尊重し合う関係が生まれるということ、また、障害のある人の日常生活が豊かになり、その表現や行動の価値が見直されるということである。このことは、美術活動においても共通する点であり、厚生労働省では、このような芸術文化のもつ力で、さらに多くの障害のある人が地域社会に参加し、多様な人と喜びや感動をともにできる機会を作っていく予定である。
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大阪・障がい者舞台芸術オープンカレッジ
写真提供:国際障害者交流センター
(ビッグ・アイ) -
滋賀・表現活動ワークショップ
写真提供:(社福)グロー -
新潟・あしたの星
写真提供:(社福)みんなでいきる
文化庁では、「文化財建造物を活用した地域活性化事業」、「歴史活き活き!史跡等総合活用整備事業」を実施しており、所有者等の要望に応じて、文化財の活用のため、バリアフリー化を含む施設・設備の改修等への補助を実施している。具体的には、「重要文化財 旧前田家本邸洋館」について、車椅子対応のエレベーター、スロープ、トイレの整備等の改修を平成27(2015)年度から行っており、平成30(2018)年度に完成予定である。また、文化財の活用のためのバリアフリー化の事例集に掲載する候補の選定を実施している。
さらに、国民が障害の有無にかかわらず文化芸術に親しむ環境を整備するため、障害者等に対応して建築物移動等円滑化誘導基準に適合するバリアフリー改修を行う劇場・音楽堂等に対し、平成30年度より固定資産税・都市計画税の税制優遇措置を創設した。
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重要文化財 旧下関英国領事館
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昇降機の設置
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重要文化財 岩手銀行旧本店本館
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スロープの設置