第3章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 第1節 1

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第1節 広報・啓発等の推進

障害者施策の円滑な推進を実効性あるものにしていくには、幅広い国民の理解を得ながら進めていくことが重要であり、「障害者基本法」(昭和45年法律第84号)及び「障害者基本計画」の掲げる共生社会の実現を目指すためには、行政、民間企業・団体、マスメディア等、多様な主体が連携して、幅広い広報・啓発活動を計画的かつ効果的に推進することが必要である。

2018年3月に閣議決定された「障害者基本計画(第4次)」では、「Ⅱ 基本的な考え方」として「理解促進・広報啓発に係る取組等の推進」を掲げている。この中では、障害のある人と障害のない人が、お互いに、障害の有無にとらわれることなく、支え合いながら社会で共に暮らしていくことが日常となるように、国民の理解促進に努めること、また、本基本計画の実施を通じて実現を目指す「共生社会」の理念や、いわゆる「社会モデル」の考え方について、必要な広報啓発を推進することとされている。

2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の開催を通じて、障害者施策に対する更なる国民意識の醸成が図られるとともに、参加する多くの人々が共生社会に対する理解を深め、その実現の重要性を共有することが期待されている。

1.障害者週間

「障害者基本法」第9条では、毎年12月3日から9日までの1週間を「障害者週間」と規定している。この「障害者週間」は、同法の基本原則である、すべての国民が、相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の理念の普及を図り、障害及び障害者に対する国民の関心と理解を一層深めることを目的として、我が国全体で実施するものである。

また、「障害者基本計画(第4次)」では、障害者施策における「理解促進・広報啓発に係る取組等の推進」として、「障害者週間における各種行事を中心に、一般市民、ボランティア団体、障害者団体など幅広い層の参加による啓発活動を推進する」としており、障害者週間の実施に当たっては、国及び地方公共団体が民間団体等と連携して、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に積極的に参加することを促進するため、毎年、全国各地で様々な障害者週間の趣旨にふさわしい障害者の自立及び社会参加等に関する多様な取組(https://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/index-kk.html)が行われている。

障害者基本法(昭和45年法律第84号)(抄)

(障害者週間)

第9条 国民の間に広く基本原則に関する関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することを促進するため、障害者週間を設ける。

2 障害者週間は、12月3日から12月9日までの1週間とする。

3 国及び地方公共団体は、障害者の自立及び社会参加の支援等に関する活動を行う民間の団体等と相互に緊密な連携協力を図りながら、障害者週間の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。

(1)障害者週間における具体的な取組の推進(内閣府)(https://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/r02shukan/jyokyo.html)

内閣府では、「障害者基本法」の基本理念である、障害の有無にかかわらず、誰もが互いに人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の実現を目指し、同法に規定される「障害者週間」の趣旨を踏まえ、障害及び障害のある人に対する理解促進のための各種広報啓発事業等を行っている。

2020年度においては、新型コロナウイルス感染症対策を講じつつ、次の取組を実施した。

○「障害者週間」関係表彰の実施

○「障害者週間」作品展の開催

○「障害者週間」連続セミナーの実施

ア 「障害者週間」関係表彰の実施

内閣府では、2020年12月9日に「障害者週間」関係表彰式を実施した。

本表彰は、内閣府と都道府県・指定都市の共催事業として、全国から障害のある人とない人との心の触れ合い体験をつづった「作文」、及び障害のある人に対する国民の理解の促進等に資する「ポスター」を募集し、「障害者週間」に合わせて入賞者に対する表彰を行うものである。

<2020年度の実施状況>

○日程 2020年12月9日(水)

○場所 中央合同庁舎8号館1階「講堂」(東京都千代田区)

○次第 ・主催者挨拶(坂本哲志 内閣府特命担当大臣)

・内閣総理大臣表彰(坂本哲志 内閣府特命担当大臣)

〈心の輪を広げる体験作文〉

最優秀賞受賞者4名 [小学生区分/中学生区分/高校生区分/一般区分]

〈障害者週間のポスター〉

最優秀賞受賞者2名 [小学生区分/中学生区分]

・受賞者代表 朗読・挨拶

表彰式で挨拶する坂本哲志内閣府特命担当大臣(写真:内閣府)
  • 坂本哲志内閣府特命担当大臣から表彰状の授与を受ける「ポスター」最優秀賞受賞者の小笠原 七海(おがさわら なみ)さん(写真:内閣府)

  • 「作文」最優秀賞受賞作品(小学生区分)を朗読する受賞者の吉越 帆高(よしこし ほたか)さん(写真:内閣府)

① 対象・表彰種別等

○「心の輪を広げる体験作文」表彰

arrow対象(4区分):[小学生区分/中学生区分/高校生区分/一般区分]

arrow表彰種別:最優秀賞(内閣総理大臣表彰)各区分1名

優秀賞(内閣府特命担当大臣表彰)各区分3名

佳作各区分5名

○「障害者週間のポスター」表彰

arrow対象(2区分):[小学生区分/中学生区分]

arrow表彰種別:最優秀賞(内閣総理大臣表彰)各区分1名

優秀賞(内閣府特命担当大臣表彰)各区分1名

佳作各区分5名

② 募集・応募等の状況

○募集期間

2020年7月1日(水)~9月下旬(※都道府県・指定都市が定める日)

○応募・推薦状況

【心の輪を広げる体験作文】
区分 都道府県・指定都市における応募総数 都道府県・指定都市からの内閣府への推薦数
小学生 279 30
中学生 1,328 52
高校生 644 28
一般 74 27
合計 2,325 137

〈※内閣府へ推薦を行った都道府県・指定都市〉
北海道、青森県、宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、福井県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県、札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、広島市、福岡市、熊本市

【障害者週間のポスター】
区分 都道府県・指定都市における応募総数 都道府県・指定都市からの内閣府への推薦数
小学生 637 40
中学生 547 38
合計 1,184 78

〈※内閣府へ推薦を行った都道府県・指定都市〉
北海道、青森県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、福井県、山梨県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、長崎県、熊本県、宮崎県、沖縄県、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、福岡市、熊本市

○受賞者/入賞作品(https://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/nyushou/r02nyushou.html)

【心の輪を広げる体験作文】
最優秀賞
区分 県・市 氏名 作品名
小学生 富山県 吉越 帆高 知ること、それが第一歩
中学生 仙台市 飛田 愛音 友達として
高校生 広島県 延  泰世 金さんへの誓い
一般 新潟県 山﨑  大 ワタシノイチブニナリユクソイツ
優秀賞
区分 県・市 氏名 作品名
小学生 青森県 金山 聖渚 盲導犬とともにくらす
千葉県 松平 とわ おばあちゃんのヘルプカード
滋賀県 屋宜 チファ みんなと同じ、でもちょっとちがう
中学生 愛媛県 岩﨑 心菜 聴覚障がい者の私の思い
熊本市 清塘 麻央 心の成長
相模原市 志田 識乃 心を守る、皆で支える
高校生 東京都 石川 李津 社会の良心を信じて
千葉県 木下 花乃 ありがとう
北海道 八巻 花音 共生社会のススメのために
一般 香川県 上井 梨瑚 笑顔で頑張る
東京都 北構 健寿 たくさんの「ありがとう」
千葉市 三浦 博子 青いって、なに?
佳作
区分 県・市 氏名 作品名
小学生 鹿児島県 上久保 美穏 気付くことからつながる福祉
京都府 小畑 智啓 伯父さんからのプレゼント
茨城県 澤幡 遼眞 車いすが教えてくれたもの
東京都 白土 治子 言葉がでなくても…
相模原市 向江 由輝也
中学生 大阪府 綾田  暦 ふにゃふにゃの文字
京都市 川江 凰太 生きる理由
香川県 川﨑 由衣 兄ちゃんへ
宮崎県 北村 優羽 「眼鏡」を手放して
静岡市 山内 萌夏 あの一言をかけるため
高校生 川崎市 荒木 唯穏 普通の子と違う子がいる所?
仙台市 坂本 波奈 祖母と私
浜松市 鈴木 悠太 僕は健常者と障がい者
大阪府 林  勇希 僕の見る「障がい」
佐賀県 山口 杏音 先入観にとらわれず
一般 鳥取県 井熊 大輔 見た目で他者を判断する愚かさ
岐阜県 野原 基世美 フィルターの先に見えるもの
広島市 原田  勉 共生社会の実現のためには連帯行動こそ必要
大阪市 門澤 早苗 共に生きる
仙台市 渡辺 伯加 交換日記
【障害者週間のポスター】
最優秀賞
区分 県・市 氏名 作品名
小学生 名古屋市 小笠原 七海 夢の演奏会
中学生 山口県 山根 小春 愛と元気をプラスする
優秀賞
区分 県・市 氏名 作品名
小学生 愛知県 福井 晴基 ぼくにもできるよ。お席をどうぞ
中学生 香川県 奥田 涼世 美しく輝いて
佳作
区分 県・市 氏名 作品名
小学生 浜松市 石津 大暉 共に走る
徳島県 亀割  航 みんなでおどるとたのしいよ
沖縄県 金武 銀杏 心ひとつにかかる虹
香川県 粂井 優志 あなたの手助けが必要です
熊本市 圓山 晴花 つながって広げよう笑顔の輪
中学生 新潟県 井口 慶香 しあわせ
広島市 板垣 心乃 ヘルプマークを知ってほしい
山形県 鈴木 愛佳 視覚障がい者を理解しよう
岐阜県 矢野 未空透 未来へジャンプ!
群馬県 米川 心優 繋がる心で広がる世界

○受賞者/入賞作品に対する表彰等

arrow最優秀賞受賞者[作文:4名/ポスター:2名]に対し、2020年12月9日に開催した「障害者週間」関係表彰式で表彰状及び記念品を授与

arrow優秀賞受賞者に対しては表彰状及び記念品を、佳作入賞者に対しては記念品を推薦自治体経由で贈呈

「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の最優秀賞受賞者と坂本哲志内閣府特命担当大臣(写真中央)、三田誠広審査委員長(写真中央左)(2020年12月9日(水)表彰式/写真:内閣府)

○入賞作品の広報活用

内閣府では、「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の入賞作品を、「障害者週間」等における全国的な広報に活用することとしており、障害及び障害のある人に対する国民への理解促進につなげている。

arrow「作文」「ポスター」の全入賞作品は、「入賞作品集(https://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/r02sakuhinshu/index.html)」として冊子に収め、全国に配付

arrow「ポスター」最優秀賞受賞作品の中から1点を、「障害者週間」の広報用ポスターに採用し全国に配布するとともに、翌年度の「障害者白書」の表紙としても活用

  • 2020年度のポスター最優秀賞受賞作品(「小学生区分」小笠原七海さん)を採用した広報用のポスター(左)と入賞作品集(右)

  • 令和2年版「障害者白書」(2019年度のポスター最優秀賞受賞作品を採用)

イ 「障害者週間」作品展の開催(都道府県・指定都市からの推薦作品の広報活用)

都道府県・指定都市から内閣府に推薦のあった「障害者週間のポスター」の全作品の原画(入賞作品も含む)及び「心の輪を広げる体験作文」の最優秀賞作品については、一般国民に対する障害及び障害のある人に対する理解促進の取組の一環として、「障害者週間」の期間中、「作品展」を開催して展示・公開している。

令和2年度「障害者週間」作品展(写真:内閣府)

ウ 「障害者週間」連続セミナーの実施(https://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/r02shukan/main.html#seminar)

内閣府では「障害者週間」の実施に合わせ、障害者関係団体等と連携し、障害又は障害のある人をテーマとする同週間の趣旨にふさわしいセミナーを一般国民向けに開催し、障害及び障害のある人に対する理解の促進を図っている。

<2020年度の実施状況>

○日時 2020年12月5日(土)10:00~17:30、6日(日)10:00~15:30

○場所 有楽町朝日スクエア(東京都千代田区)

○主催 障害者関係団体等(7団体)

2020年12月5日(土)

主催団体 テーマ
実施概要
1 特定非営利活動法人
カラーユニバーサルデザイン機構
なぜ人間の社会は、人間の多様な色覚に対応してないのか
英国の科学者ジョン・ダルトンが産業革命の中期に「色に関する奇妙な事実」を発表してから220年が経過している。生まれつき人の色の見え方が異なるのは、疾病でなく人間の進化の結果生じた多様性であることがわかった。情報デザインに色を使うなら、より多くの人にわかりやすくするのが当然なはずだ。もしそうなってないなら何が問題でどうすれば良いのかを考える。
2 公益財団法人
日本障害者
リハビリテーション協会
マルチメディアデイジー図書の活用による読みの困難を持つ子どもへの有効な支援の実例と今後について
-国連、持続可能な開発目標(SDGs)の誰も取り残されない社会の実現に向けて-
協会より読みの困難がある児童生徒向けにマルチメディアデイジー教科書を製作・提供。昨年度の利用者は約1万2千人。副読本もデイジー版の読み物を製作・提供開始した。そこで、国連、持続可能な開発目標(SDGs)の誰も取り残されない社会の実現に向けて、デイジー図書の有効活用事例や個別のニーズへの対応の必要性等を専門家と意見交換を行う。
3 独立行政法人
高齢・障害・求職者
雇用支援機構
発達障害者の雇用を促進するために ~若年求職者への支援を考える~
発達障害のある若年求職者への支援に焦点をあて、当事者自身の障害理解や気づき、専門的支援を受ける過程での大学側のサポート、また、職場適応面の課題や対応などをご紹介し、発達障害のある方の今後の支援や雇入れ等の方策について参加者とともに考えます。
4 公益社団法人
日本発達障害ネットワーク
強度行動障害の状態にある方、その家族の支援について
強度行動障害の支援について取組みを行っている障害児支援事業所や障害福祉サービス事業所、学校や家族などの関わり、背景に健康管理面の問題がある場合の「かかりつけ医」の協力などの環境をどう整えていくのが良いか、又「強度行動障害」に代わる新しい表現のしかたがないかなどのテーマについてディスカッションを行う。

2020年12月6日(日)

主催団体 テーマ
実施概要
5 特定非営利活動法人
日本トゥレット協会
チック・トゥレット症を知っていますか? ~正しい理解と支援のために~
不随意運動である音声チックと運動チックを主症状とする「トゥレット症」。自分の意思とは関係なく出現するチック症状で周囲から奇異な目で見られたり、わざとではないかと思われたり、当事者や家族は社会生活の中で様々な困難を抱えています。認知度を上げ、社会の正しい理解と合理的配慮や支援の在り方を参加者とともに考えていきたいと思います。
6 特定非営利活動法人
全国言友会連絡協議会
吃音があっても、豊かに生きる- 「なおす」のではなく、「共に生きる」ために-
私たち言友会は、吃音を「なおす」のではなく、「吃音があっても、豊かに生きる」という方針を掲げ、これまで半世紀以上を当事者団体・自助団体として歩んできた。この歴史の転換点において、改めて、セルフヘルプの有効性と、吃音と「共に生きる」という選択肢の重要さを明らかにしたい。
7 公益社団法人
日本発達障害連盟
『感じるから始める障害の理解!』~「見て」「体験して」「知って」「感じて」ひろげる~
障害を理解するための疑似体験は様々に行われています。今回のセミナーでは、知的・発達障害にスポットをあてて、見たり、知ったり、感じる事から理解できる体験型の障害理解の機会を提供します。また舞台手話通訳や字幕・音声ガイドなどの工夫を加えて創られたバリアフリー演劇では、概要や制作過程の紹介も行い理解の始まりと広がりを伝えます。

令和2年度「障害者週間」連続セミナー(写真:内閣府)

(2)障害者週間における具体的な取組の推進(国(各省庁等)・都道府県・指定都市における取組)

内閣府では、「障害者週間」の全国的な展開を図るため、国(各省庁等)及び都道府県・指定都市と連携・協力を図り、「障害者週間」の実施に合わせた取組を推進している。

全国で「障害者週間」に合わせて行われる行事や取組(https://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/index-kk.html)については、内閣府のホームページで公開しており、一般国民が多くの行事等に参加し、障害及び障害のある人に対する理解を深めることができるよう取り組んでいる。

○国主催行事:39件

○関係機関・団体主催行事:5件

○都道府県・指定都市主催行事:1,191件

※上記件数は、2020年12月時点で内閣府に登録のあったもの

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