第3章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 第1節 2

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第1節 広報・啓発等の推進

2.各種の広報・啓発活動

(1)各種の週間・月間等の取組

このほか各種の週間・月間等の活動の中でも、障害のある人への理解を深めるための広報・啓発活動が展開された。

9月1日から30日までの「障害者雇用支援月間」においては、障害のある人の雇用の促進と職業の安定を図ることを目的として、障害のある方々から募集した絵画や写真を原画とした啓発用ポスターが作成され、全国に掲示されたほか、障害者雇用優良事業所等表彰、障害者雇用支援月間ポスター原画表彰及び優秀勤労障害者表彰を始め、各都道府県においても、障害者雇用促進のための啓発活動が実施された。

毎年、10月の「精神保健福祉普及運動」の期間においては、精神障害のある人に対する早期かつ適切な医療の提供及び社会復帰の促進等について、国民の理解を深めることを目的として、精神保健福祉全国大会を始めとする諸行事が実施されている。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響により開催が中止されたが、精神保健福祉事業功労者に対して厚生労働大臣表彰が実施された。

12月4日から10日までの「人権週間」においては、世界人権宣言の趣旨及びその重要性を広く国民に訴えかけるとともに、障害のある人に対する偏見や差別を解消することを含め、人権尊重思想の普及高揚を図るため、法務省の人権擁護機関である法務局・地方法務局及び人権擁護委員等により、全国各地で講演会の開催、ポスター・パンフレットの作成・配布等の広報・啓発活動が実施された。

2007年12月、国連総会本会議において、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とする決議が採択されたことを受け、厚生労働省では、毎年、自閉症を始めとする発達障害に関する正しい知識の浸透を図るためのシンポジウム等を開催している。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響によりシンポジウムの開催を中止し、シンポジウムで実施予定であった内容を、世界自閉症啓発デー日本実行委員会のホームページ(http://www.worldautismawarenessday.jp/htdocs/)で動画配信した。

また、世界自閉症啓発デーを含む4月2日から8日までの「発達障害啓発週間」においては、全国の地方公共団体や関係団体等により様々な啓発活動が実施された。

(2)バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰

高齢者、障害のある人、妊婦や子供連れの人を含む全ての人が安全で快適な社会生活を送ることができるよう、ハード、ソフト両面のバリアフリー・ユニバーサルデザインを効果的かつ総合的に推進する観点から、その推進について顕著な功績又は功労のあった個人・団体に対して、内閣総理大臣及び高齢社会対策又は障害者施策を担当する大臣が、毎年度、表彰を行い、その優れた取組を広く普及させることとしている。2020年度においては、9個人・団体を表彰した(図表3-1)。

バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰式(2020年12月/写真:内閣府)

図表3-1 令和2年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰 受賞者
○内閣総理大臣表彰
株式会社 アステム
(大阪府大阪市)
【厚生労働省推薦】
株式会社 アステムは、1974年の設立直後から行政や団体のビデオ映像による広報制作に取り組み、1995年の阪神・淡路大震災でテレビの音声情報を得られない聴覚障害者の苦難を知り、手話と字幕で情報を得ることができる「目で聴くテレビ」の設立に参加、障害者の声を踏まえた技術や工夫により、ニュース番組や動画、シンポジウム、セミナー等において、字幕・手話通訳・音声解説を付与し、様々な局面でのSDGsの理念に対応した情報アクセシビリティの向上に寄与している。
東急電鉄株式会社
(東京都渋谷区)
【国土交通省推薦】
東急電鉄株式会社は、全ての人に安全・安心で快適な鉄道を利用していただくために、ハードとソフトの両面から安全確保やバリアフリーの取組を行っている。ハード面に関しては、東横線・田園都市線・大井町線・目黒線の全ての駅にホームドアを設置し、池上線・東急多摩川線では全ての駅にセンサー付き固定式ホーム柵を設置している。ソフト面に関しては、駅係員同士の連絡ミス防止による車椅子利用者へのサービス向上を目的としたアプリの開発や、全ての駅係員や乗務員のサービス介助士の取得等、様々な利用者に対して接客技術の向上を目的とした取組も実施している。
○内閣府特命担当大臣表彰 優良賞
岡山放送株式会社「手話が語る福祉」制作チーム
(岡山県岡山市)
【岡山市推薦】
岡山放送「手話が語る福祉」制作チームは、1993年から手話付きのニュース特集の放送を実施している。「手話という言葉」を大切にし、聴覚障害者と「手話放送委員会」を立ち上げ制作にあたっており、画面の中の手話も通常の手話通訳者ではなく聴覚障害者自身が担当している。これは「手話を言語」として生きる聴覚障害者とテレビを共有することの象徴であり、全ての人に正確な情報を伝えたいというメッセージである。また、手話講座や手話歌の制作など様々な取組を行い、手話への理解・普及に貢献している。
セイコーウオッチ株式会社
(東京都中央区)
【厚生労働省推薦】
セイコーウオッチ株式会社は、腕時計の企画・開発・販売を行っており、その事業の一環で、視覚障害者のためのバリアフリー腕時計として、触れることで時刻を知ることのできる「触読時計」、時刻を音声で知らせてくれる「音声デジタルウオッチ」の企画・開発・販売も行っている。同社のバリアフリー時計開発の歴史は古く、1939年、戦時中に負傷した軍人将校のために開閉蓋を設けた提げ時計タイプの触読時計を支給したことが始まりとなり、その後、現在に至るまで商品開発を続け、バリアフリー時計の普及活動に従事してきた。
Palabra株式会社
(東京都新宿区)
【文部科学省推薦】
Palabra株式会社は、視聴障害者団体と共同で長年にわたって映画鑑賞における情報保障の在り方を研究・開発してきた経験をもとに、2013年、バリアフリー字幕・音声ガイドの制作専門とする会社として設立された。従来のバリアフリー映画では、スクリーンに字幕を投影したり、副音声を同時に流す等の対応が一般的で、非常に限られた上映しか出来ていなかったが、同社の取組は、特殊な技術等によって最小限の機器があれば、健常者と障害者が違和感なく一緒に鑑賞可能な工夫をしている。また、「文化芸術をすべての人に開かれたものにする」をスローガンに、現在は映画のみならず、演劇を始めとする文化芸術分野において、バリアフリー化推進のための活動を続けている。
○内閣府特命担当大臣表彰 奨励賞
奥山 梨衣
(京都府木津川市)
【京都府推薦】
奥山梨衣氏は、寝たきり全介助の重度心身障害児である長男の気管切開により、痰の吸引が常時必要となったことで、医療的ケア児者の生活をサポートする「SKIP&CLAP」(スキップアンドクラップ)を立ち上げ、当事者である母親目線で、使いやすさと品質を兼ね備えた吸引器用バッグ「CARErry BAG」を自ら開発した。自身の外出する機会が減り、引きこもりがちになった経験から、他の医療的ケアが必要な子どもを持つ母親と出会い、交流することをきっかけに他人と社会と繋がることの大切さを実感し、子どもにもそして悩める母親達にも笑顔を取り戻したいという強い思いを込めて活動している。当事者として考えた新しいアイデアで在宅生活を快適に豊かにし、子どもの病気や障害を機に社会から離れてしまった母親達の社会参加に貢献している。
神奈川トヨタ自動車株式会社
(神奈川県横浜市)
【神奈川県推薦】
神奈川トヨタ自動車株式会社は、2017年、トヨタ自動車株式会社から販売されたユニバーサルデザインタクシー「JPN TAXI」の普及のため、「社会に貢献できるような新サービスを開発できないか」、「ユニバーサルデザインのタクシーを販売するのであれば、ドライバーマナーのユニバーサルデザイン化が必須」という発想のもと、「ユニバーサルエスコートマナー講習」の実施や「神奈川トヨタ方式」を開発し、移動円滑化の促進に貢献している。
大日本印刷株式会社
(東京都新宿区)
【福岡市推薦】
大日本印刷株式会社は、高齢者、障害者、妊婦や子供連れなどの「手助けを求める人」と「手助けできる人」をマッチングする機能を中心に、手助け行動を促進・可視化するソーシャルアクションサービス「May ii」(メイアイ)を提供している。同アプリは、“手助けしたい気持ちはあるけど躊躇してしまう” という誰もが持っている「心のバリア」を取り除き、気軽に“May I helpyou?” を言える日本人を増加させるために開発されたものである。同アプリを利用することで、手助けを求めることも手助けすることも気軽にできるだけでなく、手助けした人の多くが手助けのハードルが下がり、周囲の困っている人や街のバリアに気づくようになるなど、意識・行動の変容にもつながっている。
特定非営利活動法人福祉住環境ネットワークこうち
(高知県高知市)
【高知県推薦】
特定非営利活動法人福祉住環境ネットワークこうちは、誰もが暮らしやすい、出掛けやすい、訪れやすいまちを目指し、医療・福祉・建築について体系的で幅広い知識を身につけ、各種の専門家と連携をとりながら適切な住宅改修プランを提示する「福祉住環境コーディネーター」を配置し、高齢者や障害者に対して住み慣れた地域で住みやすい住環境を提案し、その活動を起点として、「タウンモビリティ事業」や「バリアフリー観光相談事業」へ活動を広げることで、まち全体のユニバーサルデザイン化に貢献している。
資料:内閣府

(3)世界メンタルヘルスデーイベントの開催

世界精神保健連盟(WFMH)が、1992年より、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として、10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定めている。その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、正式な国際デー(国際記念日)とされている。

厚生労働省では、精神疾患やメンタルヘルスについて、国民に関心を持ってもらうきっかけとして、2019年から世界メンタルヘルスデー(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/
hukushi_kaigo/shougaishahukushi/World_mental_health_day.html)に合わせて、精神障害者に対する理解を深めるためのシンポジウムなどを開催しており、2020年においては、シルバーリボン運動にちなんだ東京タワーのシルバーライトアップなどのイベントを実施した。

  • 東京タワーライトアップ点灯式で挨拶をする田村厚生労働大臣
    (2020年10月10日/写真:厚生労働省)

  • 東京タワーのシルバーライトアップ
    (2020年10月10日/写真:厚生労働省)

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