第2章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 6
6.教育・福祉における取組
(1)学校教育における取組-交流及び共同学習の推進
障害のある幼児児童生徒と、障害のない幼児児童生徒や地域の人々が活動を共にすることは、全ての幼児児童生徒の社会性や豊かな人間性を育む上で意義があるだけでなく、障害のない幼児児童生徒や地域の人々を含めた周囲の大人が障害のある子供や障害に対する正しい理解と認識を深める上でも重要な機会となっている。
このため、幼稚園、小学校・中学校・高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等において、交流及び共同学習の機会を設ける旨が規定されているとともに、教育委員会が主体となり、学校において、各教科やスポーツ、文化・芸術活動等を通じた交流及び共同学習の機会を設けることにより、障害者理解の一層の推進を図る取組等を行っている。文部科学省では、こうした取組がより一層進むよう、2019年3月には「交流及び共同学習ガイド」を改訂し、関係者にお示しするとともに、2020年11月には、「交流及び共同学習オンラインフォーラム」を開催し、地方公共団体における実践事例の周知等を行い、教育委員会や学校等に対して積極的な取組を促している。また、2021年6月には、就学先決定やその後の学校生活に当たっての留意事項等を示した「障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~」を改訂し、交流及び共同学習の重要性等について明記している。
文部科学省及び厚生労働省による「家庭と教育と福祉の連携『トライアングル』プロジェクト」の報告(2018年)を受け、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所(発達障害教育推進センター)と国立障害者リハビリテーションセンター(発達障害情報・支援センター)の連携により、教育や福祉の分野における発達障害者の支援に当たる人材が身につけるべき専門性を整理し、各地方自治体において指導的立場となる者に対する研修の在り方など、両省・両者による連携の下、教育や福祉の現場にその成果を普及させる方策を検討することが示された。
これを受けて、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所と国立障害者リハビリテーションセンターは、2019年度に「発達障害に係る教育と福祉の支援人材の専門性と研修の在り方検討報告書」を作成するとともに、支援者の専門性を整理して「連携・協働に関する研修カリキュラム」を作成した。さらに2020年度には、都道府県及び政令指定都市等が研修の実施主体として教育関係者と福祉関係者が対象の研修会を企画・実施するための「研修実施ガイド」を作成した。
上記の取組による成果物は、文部科学省、厚生労働省の協力の下、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所と国立障害者リハビリテーションセンターで運用する発達障害に関するポータルサイト「発達障害ナビポータル」のコンテンツ「教育福祉連携のための研修」として2022年4月より公開中である。そこでは「教育と福祉の連携に係る発達障害者支援人材育成のための研修カリキュラム」から、教育関係者と福祉関係者が連携するに当たり共通に身につけておくべき専門性について、14テーマ、57本の初級者向けのモデル研修(eラーニング)動画集として掲載している。
(https://hattatsu.go.jp/ddnp/training_video_distribution/education_and_welfare_cooperation/)
(2)地域住民への広報・啓発
障害のある幼児児童生徒が、自立し社会参加するためには、広く社会一般の人々が、幼児児童生徒と教育に対する正しい理解と認識を深めることが不可欠である。
社会教育施設等における学級・講座等においては、障害のある人に対する理解を深めることを重要な学習課題の一つと位置付け、青少年や成人一般、高齢者の学習活動が展開されている。
また、精神保健福祉センターや保健所では、精神障害のある人に対する正しい理解を促すため、地域住民に対する精神保健福祉に関する知識の普及・啓発を行っている。