第4章 日々の暮らしの基盤づくり 第2節 1
第2節 保健・医療施策
1.障害の原因となる疾病等の予防・治療
(1)障害の原因となる疾病等の予防・早期発見
ア 健康診査
健康診査は、疾病等を早期発見し、適切な保健指導等に結び付ける重要な機会である。
フェニルケトン尿症等の先天性代謝異常や先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)などの早期発見・早期治療のため、新生児を対象としたマススクリーニング検査の実施及び聴覚障害の早期発見・早期療育を目的とした新生児聴覚検査の実施を推進している。
また、幼児期において、身体発育及び精神発達の面から重要な時期である1歳6か月児及び3歳児の全てを対象として、健康診査を実施しており、その結果に基づいて適切な指導を行っている。
教育委員会や学校においては、就学時や毎学年定期に児童生徒等の健康診断を行っており、疾病の早期発見や早期治療に役立っている。
職場においては、労働者の健康確保のため、労働者を雇い入れた時及び定期に健康診断を実施することを事業者に義務付けている。
イ 保健指導
妊産婦や新生児・未熟児等に対して、障害の原因となる疾病等を予防し、健康の保持増進を図るために、家庭訪問等の保健指導が行われている。
身体の機能に障害のある児童又は機能障害を招来するおそれのある児童を早期に発見し、療育の指導等を実施するため、保健所及び市町村において早期に適切な治療上の指導を行い、その障害の治癒又は軽減に努めている。身体に障害のある児童については、障害の状態及び療育の状況を随時把握し、その状況に応じて適切な福祉の措置を行っている。
ウ 生活習慣病の予防
急速な人口の高齢化に伴い、疾病構造が変化し、疾病全体に占める、がん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の生活習慣病の割合が増加している中、健康寿命を更に延伸させ、全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会を実現するためには、若いうちから生活習慣の見直しなどを通じて積極的に健康を増進し、疾病の「予防」に重点を置いた対策の推進が急務である。
このため、主要な生活習慣病(NCDs)である、がん、循環器病、糖尿病及びCOPDの予防等に関する具体的な目標等を明記した「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」(令和5年厚生労働省告示第207号)に基づき、2024年度から「二十一世紀における第三次国民健康づくり運動」(以下本章では「健康日本21(第三次)」という。)を開始している。具体的施策として、企業・団体・自治体と協力・連携し、適度な運動、適切な食生活、禁煙、健診・検診の受診等を通じて健康づくりを進める「スマート・ライフ・プロジェクト」を展開している。
また、国民の健康の増進に関する目標達成のために、地方公共団体の取組に資する具体的な方策等を提示できるよう、健康日本21(第三次)推進専門委員会で議論を進めている。
(2)障害の原因となる疾病等の治療
リスクの高い妊産婦や新生児などに高度な医療が適切に提供されるよう、各都道府県において、周産期医療の中核となる総合周産期母子医療センター及び地域周産期母子医療センターを整備し、地域の分娩施設との連携体制の確保などを行っている。
また、2015年1月1日に施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律」(平成26年法律第50号。以下本章では「難病法」という。)に基づく医療費助成の対象疾病について、これまでに341疾病を指定している。さらに、「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針」(平成27年厚生労働省告示第375号)に基づき、国及び地方公共団体等が取り組むべき方向性を示すことにより、難病の患者に対する良質かつ適切な医療の確保及び難病の患者の療養生活の質の維持向上などを図っている。
また、「難病法」附則に基づく施行5年後の見直しについては、2021年7月に厚生科学審議会及び社会保障審議会において「難病・小慢対策の見直しに関する意見書」が取りまとめられた。これを踏まえ、2022年臨時国会に「難病法」の一部改正を含む「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案」を提出し、成立した。
これにより、2023年10月からは、医療費助成の支給開始日について、支給認定のあった日から一定期間遡ることが可能となった。
(3)学校安全の推進
学校は、子供たちが集い、人と人との触れ合いにより、人格の形成がなされる場であり、そのためには、子供たちの安全が確保されることは不可欠である。
2023年度、文部科学省においては、学校安全の推進に関する有識者会議における議論を踏まえながら、教職員の負担を軽減しつつ質の高い安全点検を行う助けとなる「学校における安全点検要領」を策定した。
また、学校管理下における事故発生の未然予防、発生への備え、事故発生時の適切な対応等を取りまとめた「学校事故対応に関する指針」について、その実効性を高めるため、専門家の意見を聞きながら所要の改訂を行った。
学校安全の充実のため、こうした安全管理の実効性を高める資料等を確実に周知・展開するとともに、安全管理の両輪である安全教育についても、引き続き教育活動全体を通じて実施されるよう取組を推進していく。