第4章 日々の暮らしの基盤づくり 第2節 2

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第2節 保健・医療施策

2.障害のある人に対する適切な保健・医療サービスの充実

(1)障害のある人に対する医療・医学的リハビリテーション

ア 医療・リハビリテーション医療の提供

障害のある人のための医療・リハビリテーション医療の充実は、障害の軽減を図り、障害のある人の自立を促進するために不可欠である。

「障害者総合支援法」に基づき、身体障害の状態を軽減するための医療(更生医療及び育成医療)及び精神疾患に対する継続的な治療(精神通院医療)を自立支援医療と位置付け、その医療費の自己負担の一部又は全部を公費負担している。

また、診療報酬、介護報酬及び障害福祉サービス等報酬については、2024年度の同時改定において、医療保険・介護保険のリハビリテーションと障害福祉サービスである自立訓練(機能訓練)との連携を強化する観点から、自立訓練(機能訓練)について、病院及び診療所並びに通所リハビリテーション事業所において、共生型サービス又は基準該当サービスの提供を可能とするとともに、医療保険の疾患別リハビリテーション又は介護保険の通所リハビリテーションと障害福祉サービスの自立訓練(機能訓練)を同時に実施する場合の施設基準等を緩和した。

イ 医学的リハビリテーションの確保

国立障害者リハビリテーションセンター病院では、早期退院・社会復帰に向けて、各障害に対応した機能回復訓練を行うとともに、医療相談及び心理支援を行っている。また、障害のある人の健康増進、機能維持についても必要なサービス及び情報の提供を行っている。

交通事故や病気等により脳に損傷を受け、その後遺症等として記憶、注意、遂行機能、社会的行動といった認知機能(高次脳機能)が低下した状態を高次脳機能障害という。国立障害者リハビリテーションセンター病院では、高次脳機能障害者や失語症患者への復職・復学を目標としたリハビリテーション、訓練プログラムや家族支援の充実を図っている。退院後も外来や生活訓練・職業訓練を利用して連続した支援を行っている。

高次脳機能障害は日常生活の中であらわれ、外見からは障害があるとわかりにくく、「見えない障害」や「隠れた障害」などといわれている。このため、都道府県に高次脳機能障害のある人への支援を行うための支援拠点機関を置き、①支援コーディネーターによる高次脳機能障害のある人に対する専門的な相談支援、②関係機関との地域支援ネットワークの充実、③高次脳機能障害の支援手法等に関する研修等を行う「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」を開始し、全国で高次脳機能障害に対する適切な対応が行われるよう取り組んでいる。さらに、2023年度から(1)高次脳機能障害の当事者への専門的相談支援及び医療と福祉の一体的な支援を普及・定着させるため、高次脳機能障害の診断及びその特性に応じた支援サービスの提供を行う協力医療機関(医療機関、リハビリ機関等)及び専門支援機関(就労支援機関、教育機関等)を確保するとともに、明確化し、(2)地域の関係機関が相互に連携・調整を図り、当事者やその家族等の支援に資する情報提供を行う地域支援ネットワークを構築し、切れ目のない充実した支援体制の促進を図ることを目的とする「高次脳機能障害及びその関連障害に対する地域支援ネットワーク構築促進事業」に取り組んでいる。

図表4-18 高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業
高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業
資料:厚生労働省

また、国立障害者リハビリテーションセンターに「高次脳機能障害情報・支援センター」を設置し、高次脳機能障害について一般の方への啓発を行うとともに、高次脳機能障害者支援に必要な最新の国内外の情報や研究成果等を集約し、高次脳機能障害のある人やその家族及び支援関係者等に役立つ情報についてホームページ等を通じて発信している。(http://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/)

さらに、国立障害者リハビリテーションセンター学院において、「高次脳機能障害支援・指導者養成研修会」等、現に高次脳機能障害のある人に対する支援を行っている専門職を対象とした研修会を実施している。

障害のある人の健康増進については、国立障害者リハビリテーションセンターに「障害者健康増進・運動医科学支援センター」を設置し、健康の維持・増進及び活動機能の低下を予防するために、運動と栄養の介入や総合検診(人間ドック)を実施するとともに、各地域の専門機関と障害者の健康増進に関する知見の共有を進めている。また、スポーツを通じた社会参加を促進するため、障害のある人のレクリエーションスポーツ指導及びアスリートの運動医科学支援と練習環境の支援を実施している。

刑事施設においては、医療刑務所等にリハビリテーション機器を整備し、受刑者のうち、運動機能に障害を有する者や長期療養等で運動機能が低下した者に対して、機能回復訓練を行っている。

(2)難病患者に対する保健医療サービス

早期に正しい難病の診断ができる体制、診断後はより身近な医療機関で適切な医療を受けることができる体制が整備できるよう、都道府県ごとの難病診療連携拠点病院、難病診療分野別拠点病院整備、難病医療協力病院の整備、保健所を中心とした在宅難病患者に対する地域での支援の強化など、地域における保健医療福祉サービスの提供を推進している。

(3)保健・医療サービス等に関する難病患者への情報提供

難病患者への情報提供について、難病情報センターではインターネットを活用して最新の医学や医療の情報等を提供している。難病患者のもつ様々なニーズに対応したきめ細やかな相談や支援が行えるよう、「難病相談支援センター」を都道府県、指定都市に設置し、地域における難病患者支援を推進している。

(4)口腔の健康づくり

口腔の健康は全身の健康にもつながることから、生涯を通じた歯科保健医療の充実が重要である。2012年に策定された「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」(以下本章では「基本的事項」という。)において、「障害者支援施設及び障害児入所施設での定期的な歯科検診実施率の増加」が目標として掲げられており、基本的事項の最終評価では、「現時点では目標値に達していないが、改善傾向にある」と評価された(直近値77.9%(2019年度)、目標値90%(2022年度))。

2024年度から2035年度までの基本的事項(第二次)においても、「障害者・障害児が利用する施設での過去1年間の歯科検診実施率」を指標(目標値90%(2032年度))として設定している。

「8020運動・口腔保健推進事業」では、歯科疾患の予防等による口腔の健康の保持・増進を図ることを目的として、都道府県等が実施する、定期的に歯科健診又は歯科医療を受けることが困難な障害のある人等に対する歯科保健医療サービスの提供や施設の職員等に対する、口腔の健康の保持・増進及び歯科疾患の予防に係る普及啓発及び指導等に対して支援を行っている。

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