第5章 住みよい環境の基盤づくり 第1節 7
第1節 障害のある人の住みよいまちづくりと安全・安心のための施策
7.防災、防犯対策の推進
(1)防災対策
ア 防災対策の基本的な方針
「災害対策基本法」の一部改正
2011年3月11日に発生した東日本大震災を経験し、防災対策における障害のある人や高齢者、乳幼児等の「要配慮者」に対する措置の重要性が一層高まったところである。
このため、障害のある人や高齢者などの多様な主体の参画を促進し、地域防災計画に多様な意見を反映できるよう、地方防災会議の委員として、自主防災組織を構成する者又は学識経験のある者を追加すること等を盛り込んだ「災害対策基本法」(昭和36年法律第223号)の改正が行われた(「災害対策基本法の一部を改正する法律」(平成24年法律第41号))(2012年改正)。
その後、2012年改正で残された課題や、「防災対策推進検討会議」の最終報告書(2012年7月31日)等を踏まえ、市町村長に要配慮者のうち災害時の避難行動に特に支援を要する避難行動要支援者について名簿を作成することを義務付けること、主として要配慮者を滞在させることが想定される避難所に適合すべき基準を設けること等を盛り込んだ法改正が行われた(「災害対策基本法等の一部を改正する法律」(平成25年法律第54号。2013年改正。)。
避難行動要支援者名簿は、100%(2023年1月1日現在)の市町村において作成されるなど、普及が進んだものの、令和元年台風第19号や令和2年7月豪雨など近年の災害においても、多くの高齢者等が被害を受けていた。
令和元年台風第19号等を踏まえた高齢者等の避難に関するサブワーキンググループの最終報告書「令和元年台風第19号等を踏まえた高齢者等の避難のあり方について(最終とりまとめ)」(2020年12月24日。以下本章では「最終報告書」という。)等を踏まえ、避難行動要支援者の円滑かつ迅速な避難の確保を図る観点から、避難行動要支援者ごとに避難支援等を行う者や避難先等の情報を記載した個別避難計画の作成を市町村長の努力義務とすること等を盛り込んだ法改正が行われた(「災害対策基本法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第30号))(2021年改正)。
イ 要配慮者対策等の推進
2013年改正を受け、避難行動要支援者名簿の作成・活用に係る具体的手順等を盛り込んだ「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」を2013年8月に策定・公表した。
また、2013年改正においては、避難所における生活環境の整備等に関する努力義務規定も設けられたことから、この取組を進める上で参考となるよう、主に、避難所運営に当たって避難者の支援における留意点等を盛り込んだ、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を策定・公表した。2015年度においては、避難所や福祉避難所の指定の推進、避難所のトイレの改善、要配慮者への支援体制の構築等に係る課題について、有識者による検討会を開催し、幅広く検討を行った。これらの検討を踏まえて、2016年度においては、市町村におけるより一層の取組を促進するため、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を改定するとともに、「避難所運営ガイドライン」、「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」、「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」を策定して公表した。
2021年改正を踏まえ、2021年5月、「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」に個別避難計画の作成・活用に係る具体的手順等を追加する改正を行った。また、最終報告書を踏まえ、福祉避難所に受け入れる対象者を特定する公示制度を創設し、個別避難計画等と組み合わせ、福祉避難所への直接の避難が促進されるよう、2021年5月、「災害対策基本法施行規則」(昭和37年総理府令第52号)、「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」等の改正を行った。
さらに、2022年4月には、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」、「避難所運営ガイドライン」、「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」について、近年、避難所をめぐって、感染症対策、生活環境等の改善、立地状況に応じた適切な開設・防災機能設備等の確保、女性の視点を踏まえた避難所運営等の対応が必要となっていることから改定し、公表した。また、2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震においては、障害者等要配慮者の避難先となる福祉避難所を設置するとともに、一般の避難所においてもニーズの把握を行い、福祉避難スペースを設けるなどの必要な対応を行うよう被災自治体に対して通知した。
市町村が、要配慮者にも配慮した、避難所、避難路等の整備を計画的、積極的に行えるよう、「防災基盤整備事業」等により支援し、地方債の元利償還金の一部について交付税措置を行っている。
また、地域防災計画上、社会福祉施設など要配慮者等の避難所となる公共施設のうち、耐震改修を進める必要がある施設についても「公共施設等耐震化事業」等により支援し、地方債の元利償還金の一部について交付税措置を行っている。
「防災基盤整備事業」の一つとして「災害時要援護者緊急通報システム」の普及に努めるとともに、要配慮者が入所する施設における避難対策の強化等の防火管理の充実について消防機関に周知している。
地域や企業等における各種防災訓練の際に、要配慮者を重点とした避難誘導訓練を実施し、防災意識の高揚を図っている。
各都道府県警察においては、巡回連絡等を通じて障害のある人の防災に関する知識の普及等障害のある人に対する支援体制の整備促進に努めている。
災害時においては、建物の崩壊、道路の損壊等による交通の混乱が予想されることから、プローブ情報を収集できる高度化光ビーコン、交通情報板等の整備を推進し、災害時に障害のある人等を救援するための緊急通行車両等の通行を確保するとともに、災害時の停電による信号機の機能停止に備え、信号機電源付加装置の整備を推進し、障害のある人等の安全な避難を確保するよう努めている。
ウ 要配慮者利用施設等への対策
要配慮者対策を推進するには、まず、地域における要配慮者の状況を的確に把握した上で、社会福祉施設など要配慮者が入所している施設自らの対策を促進するための情報提供等を行う必要がある。
また、要配慮者や要配慮者利用施設への防災情報の伝達体制を整備し、入所者等の避難・救出・安否確認などの警戒避難体制の具体化を促進するとともに、被災した場合の防災関係機関への迅速な通報体制の整備及び避難先における入所者等の生活確保体制の整備を促進する必要がある。同時に、要配慮者利用施設の職員や消防職団員、自主防災組織等が中心となって、地域の実情に応じた支援体制をつくることが必要である。
水災害時における要配慮者利用施設の利用者の円滑かつ迅速な避難を確保するため、2017年に「水防法」(昭和24年法律第193号)及び「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(平成12年法律第57号。以下本章では「土砂災害防止法」という。)が改正され、市町村地域防災計画に位置付けられた浸水想定区域内又は土砂災害警戒区域内の要配慮者利用施設の所有者又は管理者に対し避難確保計画の作成及び訓練の実施が義務付けられた。2021年の法改正(「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第31号))によりそれらの報告を受けた市町村長が施設管理者等に対して必要な助言・勧告を行うことができる制度とし、「要配慮者利用施設における避難確保計画の作成・活用の手引き」を公表することで、施設利用者の円滑かつ迅速な避難の実効性の確保を図るとともに、全国防災訓練では、要配慮者利用施設等が市町村と連携し、地域の実情にあわせた防災訓練等を重点的に実施している。
また、要配慮者の安全かつ迅速な避難が可能となるように、防災情報システム等の整備強化を図ることに加え、洪水、津波、高潮、土砂災害等が発生した場合に備え、過去の災害や危険箇所、情報入手方法、避難場所、避難経路等を具体的に示したハザードマップ等によるきめ細かな情報の提供を推進し、防災意識の高揚に努めている。
さらに、山地災害危険地区等のうち病院、社会福祉施設等の要配慮者利用施設が隣接している箇所において計画的な治山対策の推進を図っている。
エ 水害対策
洪水被害を防止又は軽減することを目的に行う河川整備や、過去の高潮・津波等による災害発生の状況等を勘案した海岸保全施設整備等を積極的に推進することとしている。浸水被害は被災後従前の生活に戻るまでに多大な労力を要し、障害のある人にとって日常生活に著しい負担をもたらすものであるため、そうした被害に対しては、再度災害の防止を図るためのハード整備を着実に推進するとともに、ハザードマップなどの円滑かつ迅速な避難を支援するソフト対策を一体的に行っている。特にハザードマップに関しては、視覚障害者も含めて誰もが水害の危険性や取るべき行動を理解できるよう、「ハザードマップのユニバーサルデザインに関する検討会」を立ち上げ、わかる・伝わるハザードマップの在り方について検討し、2023年4月に報告書を取りまとめるとともに、2023年5月には「水害ハザードマップ作成の手引き」を改定し、全国の市町村へ対して、ユニバーサルデザイン化を促している。
また、様々な河川情報を地方公共団体や国民に迅速かつ的確に伝達するため、インターネットや地上デジタル放送等によりリアルタイムで情報提供しており、特に雨量・水位が一定量を超えるなどの緊急時においては、警報等で危険を知らせている。渇水時においても情報提供を推進しており、国土交通省ウェブサイト「渇水情報総合ポータル」において全国のダムの貯水状況、取水制限、給水制限を受けている市町村に関する情報等の提供を行っている。
オ 土砂災害対策
社会福祉施設等を保全するため、土砂災害防止施設の整備を推進し、激甚な土砂災害を受けた場合は早急に再度災害防止対策を実施する。また、「土砂災害防止法」に基づく土砂災害警戒区域等の指定及び土砂災害ハザードマップ等による土砂災害リスクに関する周知や土砂災害警戒避難ガイドライン及び好事例の公表等による警戒避難体制の構築等、ハード・ソフト一体となった土砂災害対策を推進している。(https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/keikaihinan.html)
さらに、地方公共団体の防災活動や国民の警戒避難行動等を支援し、土砂災害から人命を守るため、「土砂災害防止法」に基づき、気象庁及び都道府県が共同して土砂災害警戒情報の提供を行っている。
カ 防火安全対策
全国の消防機関等では、春・秋の全国火災予防運動を通じて「特定防火対象物等における防火安全対策の徹底」等を重点項目として取り組んでおり、障害のある人等が入居する小規模社会福祉施設等においては、適切な避難誘導体制の確保を図るとともに、消防法令違反の重点的な是正の推進など必要な防火安全対策の徹底を図っている。
キ 音声によらない119番通報
多くの消防本部では、聴覚・言語機能に障害のある人を始めとする音声通話による119番通報が困難な人のために、FAXや電子メールなどの通報手段を提供している。
また、消防庁では、スマートフォン等を活用して、音声によらない円滑な通報を行えるシステム(Net119緊急通報システム)について、2017年3月に標準仕様等を取りまとめ、各消防本部での導入を促進するとともに、厚生労働省と連携して障害のある人への周知・利用促進にも取り組んでいる。
さらに、2021年7月から開始された公共インフラとしての電話リレーサービスによる緊急通報については、サービス開始時点より全ての消防本部で対応可能となっている。
救急現場において、タブレット型情報通信端末やスマートフォンに導入された多言語音声翻訳アプリを利用することで、救急隊員が外国人や聴覚に障害のある人と円滑なコミュニケーションを図ることができる。
多言語音声翻訳アプリ「救急ボイストラ」は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が開発した多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」をベースに、消防庁消防研究センターとNICTが、救急隊用に開発した多言語音声翻訳アプリケーションである。救急ボイストラは、通常の音声翻訳に加えて、救急現場で使用頻度が高い46の会話内容を「定型文」として登録しており、外国語による音声と画面の文字による円滑なコミュニケーションを図ることが可能となっている。また、話した言葉を文字として表示する機能等があるため、聴覚に障害のある人などとのコミュニケーションにも活用できる。定型文対応言語は、英語、中国語(繁体字、簡体字)、韓国語、タイ語、フランス語、スペイン語、インドネシア語、ベトナム語、ミャンマー語、ロシア語、マレー語、ドイツ語、ネパール語及びブラジルポルトガル語の全部で15種類となっている。
消防庁では、2017年4月から各消防本部への提供を開始した。各消防本部において導入されるよう市町村に対する財政措置として、多言語翻訳アプリも利用できるタブレット型情報通信端末等(タブレット端末やスマートフォン)を、救急自動車に配備するために必要な端末費や通信費について、交付税措置を講じている。2022年1月1日時点で92.7%、2023年1月1日時点で94.5%、2024年1月1日時点では95.6%と、導入消防本部数は増加しており、今後も導入率100%を目指し、機会を通じて導入を促進する。最新の導入状況等については、消防庁のホームページに掲載している。
(https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/gaikokujin_syougaisya_torikumi/kyukyu-voicetra.html)
(傷病者に接触した救急隊員が操作)
(翻訳結果を利用して外国人傷病者とコミュニケーション)
Net119緊急通報システムは、聴覚・言語機能に障害のある人など音声通話での119番通報が困難な人が、スマートフォンなどを活用して音声によらずに消防への通報を行えるシステムである。
Net119緊急通報システムでは、スマートフォンなどから通報用ウェブサイトにアクセスして消防本部に通報を行う。
消防本部が消防隊や救急隊をどこに出動させるべきかを判断するために必要な「救急」「火事」の別と、通報者の位置情報を入力すれば、消防本部に通報がつながり、詳細な情報はその後にチャットで確認する仕組みとなっている。
位置情報については、スマートフォンなどのGPS機能で測位した現在位置を用いることができる。
また、事前に自宅住所などを登録しておくことで、GPS信号が届かない屋内などでも「自宅」などのボタンを選択することにより正確な位置を伝えることが可能である。
消防庁では、全国どこからでも、Net119緊急通報システムによる通報を行った際にその場所を管轄する消防本部につながるようにする環境を構築するために、全国の消防本部に対して同システムの導入を促進するとともに、システム面・技術面での環境を整えるために、Net119緊急通報サービスを提供する複数の事業者間で相互接続が可能となるようにサービス提供事業者側にも働きかけを行っているほか、2018年度からは、システムの導入・運用に関する経費について地方財政措置を講じている。
2023年5月1日時点のNet119緊急通報システム導入消防本部数は全国722本部中640本部(約88.6%)であり、最新の導入状況等については、消防庁のホームページに掲載している。
(https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/kyukyumusen_kinkyutuhou/net119.html)
ク 震災における障害のある人たちへの主な支援
東日本大震災、熊本地震及び令和6年能登半島地震に伴い、被災地、被災者に対して講じられた施策のうち、障害のある人への支援の一環として実施してきたものとして、主に次のような施策がある
① 利用者負担減免等
厚生労働省・こども家庭庁は、障害のある人や障害福祉サービス等の提供を行う事業者に対し、以下のような利用者負担の減免や障害福祉サービスに係る措置を弾力的に行うよう通知等を行った。
(ア)利用者への対応について
・被災した障害のある人等にかかる障害福祉サービス等の利用者負担を市町村が免除した場合、この利用者負担額について、国がその全額を財政支援することとした。
(イ)障害福祉サービス等の提供について
・被災者等を受け入れたときなどに、一時的に、定員を超える場合を含め「人員配置基準」や「施設設備基準」を満たさない場合も報酬の減額等を行わないこととした。
・また、やむを得ない理由により、利用者の避難先等において、安否確認や相談支援等のできる限りの支援の提供を行った場合は、これまでの障害福祉サービス等として報酬の対象とすることとした。
・避難所においてホームヘルプサービスを提供した場合も報酬の対象とすることとした。
・さらに、利用者とともに仮設の施設や他の施設等に避難し、そこにおいて障害福祉サービス等を提供した場合も報酬の対象とすることとした。
・介護給付費等の請求について、被災によりサービス提供記録等を滅失又は棄損した障害福祉サービス等の事業所においては、概算請求を行うことができることとした。
・二次避難先での円滑な障害児支援の提供が受けられるよう、避難先市町村において、障害児の把握に努めるとともに、相談対応や円滑な支給決定を行うことができることとした。
(ウ)介護職員等の派遣、避難者の受入等
・各事業所等において、介護職員等が不足している場合には、国や県等の調整を受けて、別の事業所等より介護職員等の派遣を行った。
・また、被災等により利用者の避難が必要である場合には、国や県等において調整を行い、受入先を確保した。
(エ)被災地における障害福祉サービス等の再開支援について
・震災により被害を受けた障害者支援施設等の復旧事業や事業再開に要する経費に関する国庫補助事業を実施し、復旧支援を行った。
・甚大な被害を受けた被災地の障害福祉サービス事業所等が復興期においても安定したサービス提供を行うことができるよう、被災県ごとに支援拠点を設置し、
(a)障害者就労支援事業所の活動支援(業務発注の確保、流通経路の再建等)
(b)福祉・介護職員等の人材確保のための支援
を行うための予算措置を行った。
② 心のケア
東日本大震災における心のケアについては、被災者の生活の場が災害公営住宅や自宅に移った後も、心のケアが必要な人に必要なケアが継続して行き届くよう、岩手、宮城、福島の各県に「心のケアセンター」を活動拠点として設置し、「専門的な心のケア」を提供している。
熊本地震においては、発災直後から精神保健医療ニーズの情報集約、派遣調整を行い、熊本県からの派遣要請に基づき、震災発生当日に災害派遣精神医療チーム(DPAT)を派遣した。現地では、被災した精神科医療機関から県内及び県外の医療機関への患者搬送や避難所の巡回活動等を実施した。
令和6年能登半島地震においても、発災直後から情報集約を行い、石川県からの派遣要請に基づき、DPATを派遣した。現地では、避難所の巡回活動を通じた精神疾患患者の診察や薬剤調整等を実施した。また、中長期における被災者の心のケアとして、石川県が「こころのケアセンター」を設置し、心のケアを必要とする方に対して、専門ダイヤルによる電話相談等の対応を行った。
③ 発達障害のある人への支援に関する情報提供
国立障害者リハビリテーションセンターに設置されている発達障害情報・支援センターでは、2011年に被災地における発達障害のある人のニーズ調査を実施し、調査結果をもとに災害時の支援において大切な要素をまとめた冊子「災害時の発達障害児・者支援エッセンス―発達障害のある人に対応するみなさんへ―」を2013年に作成した。その後も継続的に、災害発生時に障害のある方への適切な支援提供等に資する情報を収集し、ホームページ等を通じて発信している。また、大規模災害発生時には、前述の冊子より被災地等で発達障害のある方への対応の留意点等を抽出してまとめたリーフレット「災害時の発達障害児・者支援について」を、被災地等で支援にあたる方々に向けて提供している(http://www.rehab.go.jp/ddis/disaster/)。
④ 就学機会確保・就学支援等
文部科学省では、これまでの災害対応において、障害のある児童生徒等も含め、被災した児童生徒等の就学機会の確保に努めるとともに、被災により経済的理由から就学困難となった児童生徒等に対して市町村が行う就学援助等への支援を行ってきた。
また特に障害のある児童生徒等への対応に当たっては、令和6年能登半島地震の被災地域に対し、「令和6年能登半島地震における被災地域の児童生徒等の学習の継続について(事務連絡)」等を発出し、障害のある児童生徒等も含め、就学機会の確保とともに、発達障害のある児童生徒等の障害の状態等に応じた配慮事項や、自立活動の継続、個別の教育支援計画・個別の指導計画の活用について周知している(https://www.mext.go.jp/content/20240119-ope_dev03-000033400-2-1.pdf)。
⑤ 教師のためのハンドブック
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所は、東日本大震災に際し、2011年度に「震災後の子どもたちを支える教師のためのハンドブック~発達障害のある子どもへの対応を中心に~」を作成し、関係機関に配布するとともに、ホームページに掲載をした(https://www.nise.go.jp/nc/report_material/disaster/consideration/handbook)。なお、令和6年能登半島地震においても、同研究所ホームページトップに「震災対応関連情報」として、ハンドブックのURLを再掲し、改めて周知を図った。
⑥ 幼児児童生徒の状況把握等
文部科学省及び厚生労働省では、東日本大震災に際し、被災した障害のある幼児児童生徒の状況把握及び支援、教育委員会・学校等が支援を必要とする幼児児童生徒を把握した場合に保護者の意向を確認した上で市町村障害児福祉主管課に連絡するなどの教育と福祉との連携、障害児支援に関する相談窓口等の周知について、各都道府県教育委員会、障害児福祉主管課に対し要請している。
また、令和6年能登半島地震の被災地域に対し、「令和6年能登半島地震における被災地域の児童生徒等の学習の継続について(事務連絡)」を発出し、学級担当等による家庭訪問や避難所等の巡回により、障害のある児童生徒等の状況を把握することや、学校再開までに時間がかかる場合には、障害の状態や特性等にも配慮しながら、訪問教育やオンラインによる指導などを活用いただきたい旨周知している(https://www.mext.go.jp/content/20240119-ope_dev03-000033400-2-1.pdf)。
⑦ 東日本大震災からの復興における事例集の作成
復興庁では、自治体や各地で活躍する方々の参考となるよう、障害のある人やジェンダーの視点を踏まえた東日本大震災からの復興における好事例の収集・発信を行っている。(2024年3月末時点で120事例(2023年度に追加した障害者施策に関する事例1件))
(2)防犯対策
ア 警察へのアクセス
障害のある人は、防犯に関する通常のニーズを満たすのに特別の困難を有しており、また、犯罪や事故の被害に遭う危険性が高く、不安感も強いことから、障害のある人の気持ちに配慮した各種施策の推進に努めている。
障害のある人が警察へアクセスする際の困難を取り除くため、警察では、スマートフォン等を使用して、文字等で緊急通報が行える「110番アプリシステム」を全都道府県警察で運用しているほか、巡回連絡等による情報提供、交番等へのスロープ設置等を行っている。
イ 犯罪・事故被害の防止
障害のある人が犯罪や事故の被害に遭うことの不安感を除くための対策としては、巡回連絡等を通じて、障害のある人の相談や警察に対する要望に応じるとともに、身近な犯罪や事故の発生状況、防犯上のノウハウ等の安全確保に必要な情報の提供に努めていることなどがあげられる。
また、警察では、関係省庁及び関係団体と連携して、住宅等に対する侵入犯罪対策として大きな効果が期待できる防犯性能の高い建物部品の開発・普及を図っているほか、公益社団法人日本防犯設備協会と連携し、同協会が策定した「ホームセキュリティガイド」の中で障害のある人に対応した安全で信頼性の高い機器を紹介している。
内閣府では、「女性に対する暴力をなくす運動」を行い、障害のある人を含む女性に対する暴力の予防と根絶に向けた全国的な運動を推進している。また、障害のある人を含む性犯罪・性暴力の被害者や配偶者等からの暴力の被害者に対する支援体制の充実のため、性犯罪・性暴力被害者支援のための交付金等により性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの運営の安定化及び相談員等に対する研修の充実や配偶者暴力相談支援センター等における相談・支援機能の充実を図っている。
ウ 障害者支援施設等における防犯対策の推進
2016年7月に神奈川県相模原市の障害者支援施設で発生した殺傷事件を踏まえ、障害者支援施設等を利用する障害のある人が安心して生活できるように、厚生労働省では、2016年9月に「社会福祉施設等における防犯に係る安全の確保について(通知)」を発出し、防犯に係る日常の対応や緊急時の対応に関する具体的な点検項目を示し、各施設において必要な取組がなされるように周知した。
また、防犯に係る安全確保のための施設整備の補助を行うための予算措置を行い、安全確保体制の構築を促進している。
110番アプリシステムは、聴覚や言語機能に障害のある人等、音声による110番通報が困難な方が、スマートフォン等を利用して、文字等で警察に通報できるシステムである。
2023年3月のバージョンアップにより、「ひらがなモード」を追加するなど、機能を改善した。