第4章 障害のある人がその人らしく暮らせるための施策 第1節 7
第1節 生活安定のための施策
7.サービスの質の向上
(1)障害福祉人材の処遇改善
障害福祉サービス等利用者の障害種別ごとの特性や重度化・高齢化に応じたきめ細かな支援が可能となるよう、障害特性に応じた専門性を持った人材の確保策を講じていく必要がある。
障害福祉分野の福祉・介護職員の処遇改善については、2009年以降累次にわたる職員全般の処遇改善を図る取組を行ってきたところであるが、更なる処遇改善として、2021年11月に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」に基づき、2022年2月から9月までの間、収入を3%程度(月額平均0.9万円相当)引き上げるための措置を行うとともに、この措置が一時的なものとならないよう、2022年10月以降について臨時の報酬改定を行い、同様の措置を継続した。
そして、2023年11月に閣議決定された「デフレ完全脱却のための総合経済対策」に基づき、2024年2月から5月までの間、収入を2%程度(月額平均0.6万円相当)引き上げるための措置を行っている。2024年度の報酬改定においては、既存の加算の一本化による新たな処遇改善加算(福祉・介護職員等処遇改善加算)を創設し、障害福祉の現場で働く方々にとって、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップへと確実につながるよう、配分方法の工夫を行うこととされた。
加えて、2024年11月に閣議決定された「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」に基づき、福祉・介護職員等処遇改善加算を取得している事業所のうち、生産性を向上し、更なる業務効率化や職場環境の改善を図り、介護人材確保・定着の基盤を構築する事業所を支援するための経費を措置した。
(2)第三者評価事業
第三者評価事業については、事業の更なる普及・定着を図るため、2004年5月に、福祉サービス共通の第三者評価基準ガイドライン、第三者評価事業推進体制等について示した指針を各都道府県に通知し、2018年3月に評価の質の向上と一層の受審促進が図られるよう見直した。これを受け、2020年3月には、障害者・児福祉サービス固有の状況を踏まえた評価が適切に実施されるよう、障害者・児福祉サービスに係る共通評価基準及び内容評価基準等についても、見直しを行っている。
(3)障害福祉サービス等情報公表制度
障害福祉サービス等を提供する事業所数が大幅に増加する中、利用者が個々のニーズに応じて良質なサービスを選択できるようにするとともに、事業者によるサービスの質の向上が重要な課題となっていたため、2016年の「障害者総合支援法」及び「児童福祉法」の一部改正に伴い、施設や事業者が事業の内容等を都道府県知事へ報告し、報告を受けた都道府県知事がこれを公表する仕組みである「障害福祉サービス等情報公表制度」を創設し、2018年9月末より、独立行政法人福祉医療機構において、障害福祉サービス等事業所情報を公表している。
厚生労働省では、2018年度から「共生社会等に関する基本理念等普及啓発事業」を実施している。
この事業は、2016年7月に神奈川県相模原市の障害者支援施設で発生した殺傷事件(※)を踏まえ、「障害者基本法」及び「障害者総合支援法」の共通の目的である「全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」ため、「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念」等について、障害福祉従事者等が改めて学び、それを実践につなげていくことを目的とした研修を実施している。
共生社会等に関する基本理念等の普及啓発に向けた広報のため、2024年度は「共生社会フォーラム」を全国3か所で開催した。このフォーラムは、誰でも参加できる一般向けプログラムと障害福祉従事者等を対象とした研修プログラム及び企業経営者・管理職等を対象とした企業向け研修プログラムを設けている。
厚生労働省としては、障害福祉従事者等が、共生社会の理念を理解し、障害のある人やその家族の意思を尊重しながら必要な支援を行うことができるよう、今後も研修の実施等を進めていくこととしている。
(※)2016年7月26日未明、神奈川県相模原市の障害者支援施設「津久井やまゆり園」に元施設職員の男が侵入し、多数の入所者等を刃物で刺し、19人が死亡、26人が負傷した事件。

(大阪会場)


