第5章 住みよい環境の基盤づくり 第2節 1

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第2節 障害のある人の情報アクセシビリティを向上するための施策

1.情報アクセシビリティの向上

(1)障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律に係る取組

障害のある人が社会を構成する一員として、社会、経済、文化等あらゆる分野の活動に参加するには、情報へのアクセシビリティの向上やコミュニケーション手段の充実が不可欠であり、より一層の施策の推進が求められる。

「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」(令和4年法律第50号。以下「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」という。)では、情報の取得・利用及び意思疎通に係る施策に関し、基本理念や施策の基本となる事項を定めている。具体的には、障害者の情報取得にかかる機器・サービス等の助成、防災・防犯及び緊急通報の迅速な情報取得のための体制整備、意思疎通支援者の養成・確保・資質向上などの施策の推進が定められている。

同法では、施策を障害者基本計画に反映することとしており、「障害者基本計画(第5次)」(令和5年3月14日閣議決定)には、障害者に配慮した情報通信機器及びサービス等の企画・開発・提供促進、電話リレーサービスの利活用推進や意思疎通支援者等の養成・派遣等の「情報アクセシビリティ・意思疎通支援の充実」に係る施策が盛り込まれている。「障害者基本計画」については、障害者政策委員会で毎年度フォローアップしており、2023年度の取組については、2024年10月に政策委員会で議論されている。

(2)障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律第11条第3項に定める「協議の場」の2024年度における取組

「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」においては、「障害者による情報取得等に資する機器等の開発及び普及の促進並びに質の向上に関する協議の場」を開催することとしている。「協議の場」には、視覚障害や聴覚障害のある人などの障害当事者団体のほか、情報取得等に資する機器開発等を行う事業者や関係団体、内閣府、デジタル庁、総務省、厚生労働省、経済産業省が参集し、情報共有や意見交換等を行っている。2024年度は、同年5月に開催され、2023年度の施策の実施状況について関係府省庁から報告と意見交換を行った。

図表5-12 障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律の概要
資料:内閣府、デジタル庁、総務省、厚生労働省、経済産業省

(3)総合的な支援

厚生労働省では「障害者総合支援法」に基づき、障害のある人の情報通信技術(ICT)の利用・活用の機会の拡大を図るため、ICT関連施策の総合サービス拠点となるICTサポートセンターを、2024年度末現在36都道府県、8指定都市、1中核市で運営している。このほか、パソコンボランティア養成・派遣等の取組を支援している。

総務省では「デジタル活用共生社会実現会議」を開催し、年齢、障害の有無、性別、国籍等にかかわらず、デジタル活用の利便性を享受し、又は担い手となることで、誰もが豊かな人生を送ることができる「デジタル活用共生社会」の実現を目指すべきであるとした「デジタル活用共生社会の実現に向けて~デジタル活用共生社会実現会議 報告~」を2019年4月に公表した。この報告に基づき、企業等が自社で開発するICT機器・サービスの情報アクセシビリティ基準(JISX 8341シリーズ等)への対応状況を自己評価する「情報アクセシビリティ自己評価様式」を普及促進する取組や、情報アクセシビリティに配慮したICT機器・サービスの活用、これらの開発を促進するためのデータベース(情報アクセシビリティ支援ナビ(Act-navi))による障害関連情報の提供をそれぞれ推進している。

(4)障害のある人に配慮した機器・システムの研究開発

情報通信の活用によるメリットを十分に享受するためには、障害のある人を含め誰もが、自由に情報の発信やアクセスができる社会を構築していく必要がある。

障害のある人の利用に配慮した情報通信機器・システムの研究開発は、その公益性・社会的有用性が極めて高い一方、収益性の低い分野であることから、国立研究機関等における研究開発の推進や体制整備等、民間事業者等が行う研究開発に対する支援が重要である。

また、家電メーカーや通信機器メーカーにおいては、引き続き障害のある人や高齢者に配慮した家電製品の開発・製造に努めているところである。

(5)情報アクセシビリティに関する標準化の推進

情報アクセシビリティに関する日本産業規格(JIS)として「高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス」(JIS X8341シリーズ)を制定している。具体的には「共通指針」、「パーソナルコンピュータ」、「ウェブコンテンツ」、「電気通信機器」、「事務機器」、「対話ソフトウェア」、「アクセシビリティ設定」について制定している。

また、国内の規格開発と並行し、国際的な情報アクセシビリティのガイドライン共通化を図るため、JIS X8341シリーズのうち、「共通指針」、「パーソナルコンピュータ」及び「事務機器」について国際標準化機構(ISO)等へ国際標準化提案を行い、それぞれ国際規格が制定されている。2022年に、「事務機器」のJISを改正するとともに、電子書籍のアクセシビリティを評価するJIS X23761を制定している。また、2024年に、「共通指針」のJISを改正している。

国際標準化機構(ISO)及び国際電気標準会議(IEC)の合同専門委員会(JTC1)は情報通信機器等のアクセシビリティを含む情報技術に関する国際規格を作成しており、我が国としても、引き続き国際標準化の議論に参画していく。

図表5-13 アクセシビリティに関する規格体系
資料:経済産業省

(5)ホームページ等のバリアフリー化の推進

各府省は、障害のある人や高齢者を含めた全ての人々が利用しやすいものとするため、ウェブコンテンツ(掲載情報)に関する日本産業規格(JIS X8341-3)を踏まえ、ホームページにおける行政情報の電子的提供の充実に努めている。

総務省では、公的機関がウェブアクセシビリティ(障害のある人や高齢者を含め、誰もがホームページ等で提供される情報や機能を支障なく利用できること)の向上に取り組む際の手順書となる「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を策定し、ウェブアクセシビリティの確保・向上に取り組んでいる。2024年度は、本ガイドラインの一部改訂を行うとともに国、地方公共団体等の公式ホームページのJIS対応状況調査並びに公的機関向け講習会を開催した。

デジタル庁では、ウェブアクセシビリティに取り組む行政官や事業者向けに、ウェブアクセシビリティの考え方や取り組み方のポイントを解説する「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」を民間専門人材の知見を活かして作成、2022年12月にデジタル庁ウェブサイトにおいて公開し、随時更新を行っている。加えて、行政機関のウェブサイトが様々な人にとって使いやすい状態で提供されることを促すため、2022年12月、アクセシビリティ等に配慮したデザインを実践するための仕組みである「デザインシステム」のベータ版を公開し、随時更新を実施したほか、2024年5月には、データ等の再利用性を高めるため、デジタル庁デザインシステムをウェブサイト化して公開し、随時更新している。

ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック:https://www.digital.go.jp/resources/introduction-to-web-accessibility-guidebook)

デジタル庁デザインシステムベータ版:https://design.digital.go.jp/)

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