平成16年度バリアフリー化推進功労者表彰(第3回)受賞者概要

内閣総理大臣表彰(2件)
湖南市
(所在:滋賀県湖南市中央1丁目1番地)【文部科学省推薦】
【功績の概要】

 障害のある子どもへの対応については、乳幼児期から就労に至るまで、教育や医療等多くの関係機関が関わることとなるが、その場合には、各関係機関が個別単独に実施するよりも、相互の連携協力の下に実施することで、その効果を十分発揮することが期待できる。このため、同市(元甲西町)では、障害のある子ども一人一人のニーズに的確に対応するため、医療、保健、福祉、教育、労働に係る関係機関が一体となって、就学前から就労に至るまでの一貫した支援システムを構築し、子どもの視点に立った有効かつ効率的な支援を実施することにより、子どもの自立や社会参加を促している。
 具体的には、保護者や関係機関との連携の下、学習障害(LD)・注意欠陥/多動性障害(ADHD)・高機能自閉症等を含む障害のある子ども一人一人について「個別の指導計画」及び「個別の支援計画」を作成し、本計画を活用することにより、部門やライフステージの別にとらわれない、関係機関の連携協力を得た的確な支援を実施している。また、こうした支援体制の中心的役割を果たし関係機関の横断的なコーディネートを図るための機関として、行政内に「発達支援室」を設置し、「個別の支援計画」による縦の連携が図られたサービスを提供している。さらに、「個別の指導計画」に基づいた専門的指導の場として「発達支援センター」を市内小学校内に設置し、親子教室や早期療育発達相談室、ことばの教室(幼児・学齢)を開催するなど、支援内容の充実等に取り組んでいる。
 このように、支援を受ける子どもを中心として部門の縦割りを排し、学齢期に限らないライフステージに応じた一貫した支援への取組は、全国に先駆けて同市が進めているものであり、同市の取組は全国に紹介され、地方自治体等の取組に広く影響を与えている。

  • 湖南市発達支援センター全景(市内小学校に併設)
    湖南市発達支援センター全景(市内小学校に併設)
  • 湖南市事例写真
    湖南市事例写真
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南砺市
(所在:富山県南砺市苗島4880)【富山県推薦】
【功績の概要】

 まちの情報を誰もが気軽に発信でき、それを簡単な形で受信できるシステムを構築・運用して、年齢や障害の有無にかかわらず誰もが公平に参加できる情報生活環境を実現し、地域コミュニティの活性化を目指している。
 具体的には、住民が知りたい地域情報(ニュース、イベント、施設案内等)が掲載されたポータルサイトを立ち上げ、家庭でのパソコンはもちろん、同市(元福光町)内の主要施設に設置されたタッチパネル式情報端末等から、ポータルサイトにアクセスすることにより、誰でも必要な地域情報の入手等ができるように整備している。さらに、パソコンを持っていない人でも、家庭で気軽に情報が得られるよう、CATVによるこれら情報の入手を可能とするとともに、CATVには文字の自動読上げ機能を付加しており、より多くの地域住民が活用できるよう工夫している。また、市内各所に設置されている情報端末には小型カメラやカードリーダーが搭載されており、その場でテレビ電話による市役所職員との行政相談、さらには住民基本台帳ネットワークカードを使った図書館の利用や施設予約等を行うことができるようになっているなど、様々な行政サービスの提供を実施している。
 これらのポータルサイトを中心とした情報サービスのネットワークは、ITを用いた地域コミュニティ活性化の全国的な先進事例となっている。また、こうしたネットワークの企画・整備・運営は、まちづくりに主体的に取り組むボランティアなど地域住民が中心となって行っており、地域に根付いた取組となっている。

  • 南砺市事例写真
    南砺市事例写真
  • 南砺市事例写真
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内閣官房長官表彰(8件)
荒 由利子
(所在:〔福島県立双葉高等学校〕福島県双葉郡双葉町大字新山字広町80)【福島県推薦】
【功績の概要】

 高齢者、障害者等が自尊心を持ち、豊かな人生を送ることができるような環境づくりを目指して、教職について以降30年以上にわたり、生徒や地域住民の心のバリアフリーを推進するなど積極的に活動している。
 具体的には、高校教諭という立場を生かし、生徒はもちろん、家庭や地域の住民なども巻き込みながら、使いやすい生活用品の発明や高齢者等へのボランティアの実施、まちのバリアフリー実態調査に基づくバリアフリーロードマップの作成や歩道等のバリアフリー整備に対する協力など、幅広い活動を実施している。生活用品の発明では、そのアイデアが企業の商品に取り入れられたものが複数あり、また、まちのバリアフリー実態調査では、高齢者等が街中を歩く際に気軽に休憩できる場所がないことに着目し、店先に簡易な椅子を設置するよう商店に働きかけを行って協力を得るなど、社会・地域のバリアフリー化に影響を与えている。こうした活動は、同教諭の指導のもと家庭クラブ等の活動の場を通じ生徒を中心に実施されたものが多いが、そのような活動が評価され、同教諭の赴任校が全国高等学校家庭クラブ連盟研究会発表会で最優秀賞(文部大臣賞)を5回受賞するなど、高い評価を受けている。
 なお、これまでの赴任地においては、同教諭の転任後も、こうした活動が継続して実施されており、バリアフリー化への活動の輪が着実に広まっている。

  • 荒由利子事例写真
  • 荒由利子事例写真「店先への椅子の設置」
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伊予鉄道株式会社
(所在:愛媛県松山市湊町四丁目4番地1)【愛媛県推薦】
【功績の概要】

 伊予鉄道松山市駅の既存駅舎(百貨店との複合ビル、昭和46年竣工)は、改札とホームが線路で隔てられた構造であり、ホームへの移動に際し垂直方向の移動が必要であった。しかし、構内に昇降用設備が設置されていなかったため、利用者はいくつもの階段を利用しなければならず、高齢者、障害者等の円滑な利用に多くの支障が生じていた。
 そこで、平成10年の駅舎増築に際し、利用者の動線に配慮しつつ、エレベーターや車両とホームとの段差を解消する車いす乗降装置の設置をはじめ、多機能トイレやコンコースへの総合インフォメーションセンターを整備するなど、既存駅舎の改築を含めた大規模な改善に取り組んだ。また、松山市のイメージの発信という視点から、クラシックなデザインの採用、駅前広場と一体となった公開空地の整備などにも取り組んだ。この改修に際しては、障害者団体等の意見を取り入れ、視覚障害者誘導用ブロックの色や配置、照明器具の照度など、きめ細かな配慮を行った。さらに、こうした駅舎改修に加え、積極的に超低床路面電車やノンステップバスを導入するとともに、ソフト面の取組としてバリアフリーに関する職員教育や利用者からの意見等の全職員共有システムの導入を行うなど、交通結節点として総合的なバリアフリー化を進めている。
 これにより、市民の安全・快適な移動が可能となり、高齢者、障害者をはじめ多くの人々の社会活動範囲を広げ、地域経済の活性化に大きく貢献したことが高く評価された。

  • 伊予鉄道事例写真「松山市駅全景」
    伊予鉄道事例写真「松山市駅全景」
  • 伊予鉄道事例写真
    伊予鉄道事例写真
  • 伊予鉄道事例写真
株式会社イトーヨーカ堂
(所在:東京都千代田区二番町8番地8)【内閣府推薦】
【功績の概要】

 「国連障害者の10年」を契機に、平成3年から店舗整備・運営等の面でノーマライゼーションの理念を導入し、平成6年開店の和光店の整備にあたっては、この理念を具現化した施設の導入に取り組んだ。具体的には、障害者用エレベーターの整備、階段への高低差のある2重の手すりの設置等23項目にわたる店舗施設・設備に対する配慮を行った。その後もさまざまな利用者や専門家の意見等を参考に自主的な検証・改善を継続的に行い、新たに整備される店舗にその成果を反映していった。平成11年からは、ユニバーサルデザインの導入について検討を開始し、平成12年に開店した木場店においては、階段の段毎の色分け、従来の2倍のスペースをもつ試着室(同室内での段差解消、手すり及びベンチ設置)の整備、車いす利用者でも使いやすいおむつ交換台の設置等多数の施設改善を実施し、その後開店する店舗にも順次反映していった。
 また、こうした店舗整備と並行して、手話講習会をはじめ障害者等への接客方法の研修を行う等徹底した社員教育を行うとともに、販売員も含めた障害者雇用の促進、障害者が作成した作品の展示販売、ユニバーサルデザイン商品の販売など、ソフト面の取組みも積極的に行っている。

  • イトーヨーカ堂事例写真
    イトーヨーカ堂事例写真
  • イトーヨーカ堂事例写真
  • イトーヨーカ堂事例写真
株式会社オリエンタルランド
(所在:千葉県浦安市舞浜1番地1)【千葉県推薦】
【功績の概要】

 年齢や障害の有無に関わらず全てのゲスト(来園者)が、楽しみ・喜び・感動することができるようなパーク作りを目指し、「基本生活の環境整備」、「人にやさしい接客」、「遊びの環境整備」を基本コンセプトとして、東京ディズニーシーの整備・運営を実施している。
 ハード面では、テーマを持った施設のデザインとバリアフリー対策とを融合させ、高齢者や障害者等の意見をききながら、誰もが楽しめる施設を計画・建設している。具体的には、アトラクションや劇場、飲食施設などへのスロープや昇降機の設置、多機能トイレやベビーセンターの整備、視覚障害者向けの触知案内板やインフォメーションボードの園内各所への設置、聴覚障害者向けの音声ガイドやアトラクションのストーリーペーパーの配布などを実施している。また、ディズニーシーの開園後も施設の検証を継続的に行い、バリアフリー化のために必要な改修を行っている。
 一方、ソフト面では、カードを見れば求める介助内容等がわかるよう、必要事項が記入されたカードを発行して、その都度キャスト(従業員)に説明しなくても適切な応対が受けられるよう工夫したり、来園前にバリアフリー情報を知ることができる冊子等を作成・送付するなどして、ゲストが円滑に園内各施設を利用できるよう配慮している。さらに、キャストに対しバリアフリーに関する勉強会や手話教室などを実施しており、全ての人に優しい接客に努めている。

  • オリエンタルランド事例写真「東京ディズニーシー」 ©Disney
    オリエンタルランド事例写真「東京ディズニーシー」
  • オリエンタルランド事例写真 ©Disney
    オリエンタルランド事例写真
  • オリエンタルランド事例写真 ©Disney
    オリエンタルランド事例写真
高齢者住宅環境整備ボランティア会
(所在:大分県日田市上城内町1467-6)【大分県推薦】
【功績の概要】

 高齢社会の本格的な到来を目前に控え、地域で生活している高齢者の尊厳と自立を支援するために、複数の建築関連事業者で構成された同ボランティア会を平成7年に結成し、住宅のバリアフリー改修をはじめとして、高齢者の安心・快適な生活環境の整備に関連する活動を継続的に実施している。
 具体的には、日田市在住の高齢者世帯を主な対象として住宅改修等の要望を受け付け、専門的なノウハウを活かして、階段や廊下等への手すり・スロープの取り付けなど軽微なバリアフリー住宅改修を実施している。利用者に対しては材料費程度を求めるのみであり、年間60件程度、これまでに600件程度の住宅改修を行っており、利用者から大変感謝されている。また、住宅改修のほかに、福祉関係者や行政との意見交換会等を実施することにより、相互の知識・技術の向上を目指すとともに、各種セミナーを開催することにより、この種の活動に対する理解や広がりを促すなど、バリアフリーに関する普及・啓発にも努めている。

  • 高齢者住宅環境整備ボランティア会事例写真
    高齢者住宅環境整備ボランティア会事例写真
  • 高齢者住宅環境整備ボランティア会事例写真
  • 高齢者住宅環境整備ボランティア会事例写真
仙台シニアネットクラブ
(所在:宮城県仙台市青葉区春日町2-1)【仙台市推薦】
【功績の概要】

 高齢者がインストラクターとなって、地域の高齢者や小学生向けにパソコン教室をボランティアで開催している。このように、高齢者が高齢者に教えることにより、高齢者の特性に対応したきめ細かな指導が可能となっており、パソコンを敬遠しがちな高齢者が気軽にパソコンに親しむことができ、地域におけるデジタル・ディバイドの解消に貢献している。また、小学校からの要望に応じ、小学生に対してもパソコンを教えているが、この活動により小学生のパソコン技術の習得はもちろん、核家族化が進み日常生活において高齢者と話す機会が少なくなった子供たちに高齢者と話し合う機会を提供し相互理解を促すなど、心のバリアフリー化にも役立っている。さらに、こうしたパソコン講習活動の他に、高齢者の視点を活かしてソフトフェア会社のソフト開発に協力するなど、幅広い活動で情報バリアの解消に取り組んでいる。
 インストラクターを務める高齢者は、同クラブのパソコン教室の受講生であった人であり、パソコン技術の自己研鑽とともに、自らの社会参加・生きがいづくり、また、自らの技能を生かした地域貢献活動として積極的に活動している。

  • 仙台シニアネットクラブ事例写真
    仙台シニアネットクラブ事例写真
  • 仙台シニアネットクラブ事例写真
  • 仙台シニアネットクラブ事例写真
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構/
九州旅客鉄道株式会社
【共同受賞】
(所在:神奈川県横浜市中区本町6-50-1/
福岡県福岡市博多区博多駅前3丁目25番21号)【熊本県推薦】
【功績の概要】

 九州新幹線は、現在、新八代駅から鹿児島中央駅までの先行開業となっており、福岡方面との往来については新八代駅において在来線と新幹線との乗換えが必要となる。このような乗継ぎは、通常、在来線ホームと新幹線ホームが専用改札を隔てて別の場所にある施設配置となっており、利用者は上下移動を伴いながらホーム間を移動しなければならない。しかし、新八代駅では、我が国で初めて在来線と新幹線とを対面同一ホーム乗入れ構造とし、乗換えを水平移動のみで行えるよう整備した。また、乗換え時の座席位置にも配慮した乗車券・特急券チケットの一枚化や乗換え時の乗務員・駅職員による障害者等への乗換えサポート等を行い、運営面における利用者利便の向上にも努めている。
 駅舎自体についても、障害者等利用者の意見を積極的に取り入れながらバリアフリー化を行っており、授乳等が行える多目的ルームや視認性に優れたホーム・エレベーター等を整備するとともに、地元の素材を活用したぬくもりのあるデザインを導入するなど、ユニバーサルデザインにも配慮されたものとなっている。また、九州新幹線に導入された新型車両「つばめ」も、乗降口幅の拡大化や、車いす使用者に対応したトイレ、電話室等の設置などを行っているが、これらはバリアフリー設計と訴求力のある斬新なデザインとが融合した先進的な事例となっている。

  • 鉄道建設・運輸施設整備支援機構
    九州旅客鉄道株事例写真「新八代駅」
    鉄道建設・運輸施設整備支援機構、九州旅客鉄道株事例写真「新八代駅」
  • 鉄道建設・運輸施設整備支援機構、九州旅客鉄道株事例写真
  • 鉄道建設・運輸施設整備支援機構、九州旅客鉄道株事例写真「新八代駅(新幹線・在来線)乗換え概要図」
トヨタ自動車株式会社
(所在:愛知県豊田市トヨタ町1番地)【経済産業省推薦】
【功績の概要】

 ユニバーサルデザインを、年齢・性別を問わず様々な人が快適に、色々なシーンで楽しむことを実現させる活動であると位置づけ、車両の開発における取り組みはもちろん、ユニバーサルデザインに関する各種啓発活動を積極的に行い、その推進・普及に取り組んでいる点が高く評価された。
 車両の開発に際しては、人間工学的視点からの独自の180項目の指標を設定して基本的な使い勝手を評価するとともに、開発車両のコンセプトに応じた使用シーンを開発初期に30項目選び出してシーンや使い方の達成レベルを目標設定し、その達成度合いを点数評価するなど、開発サイクルの中にユニバーサルデザイン実現のための客観的な評価システムを組み込んでいる。平成15年以降発売する全ての車両開発の際にこれらの指標による定量的な評価を行って、高齢者を含めた幅広いユーザーの安全性・快適性の向上を追求するとともに、その結果を公表している。また、人に優しい車づくりを推進する際には、社会全体がユニバーサルデザインに対して正しい理解を深め、必要性を感じることが重要であるとの観点から、ユニバーサルデザインをテーマにした大規模な展示施設「ユニバーサルデザイン・ショーケース」を設けた。そこには、他社・他分野も含めた幅広いユニバーサルデザイン商品と共に、国内最大級の福祉車両の展示および専用試乗コースが備えられている。さらに、各種講演活動等を通して、国内外におけるユニバーサルデザインの普及に努めている。

  • トヨタ自動車事例写真「ラウム」
    トヨタ自動車事例写真「ラウム」
  • トヨタ自動車事例写真「ポルテ(福祉車両)」
    トヨタ自動車事例写真「ポルテ(福祉車両)」
  • トヨタ自動車事例写真「ユニバーサルデザイン・ショーケース」
    トヨタ自動車事例写真「ユニバーサルデザイン・ショーケース」