平成17年度バリアフリー化推進功労者表彰(第4回)受賞者概要

内閣総理大臣表彰(2件)
東陶機器株式会社(とうとうききかぶしきがいしゃ)
(福岡県北九州市小倉北区中島2-1-1)
【功績の概要】

 昭和30年代中頃から長年にわたり、トイレ・風呂等についてのバリアフリー化に積極的に取組んできた。現在は会社独自のユニバーサルデザイン5原則を設定し、使いやすく快適である製品の開発に努め「一人でも多くのお客様に使いやすい商品とサービス」を提供し、障害がない人だけでなく、高齢者や障害者・妊婦や子供・背の高い人低い人・力の強い人弱い人なども使いやすい機器の開発を通じて、一人でも多く(またはみんな)の人が暮らしやすい社会の実現を目指している。
 製品の研究開発のために、障害者、高齢者、子ども等で構成されるモニターネットワークを構築し、モニターによる実使用、一部模擬使用により器具の利用方法や問題点の検証を行い製品に反映させるとともに、その成果をバリアフリーブックとして昭和49年から現在まで毎年改訂しながら、建築関係者等に無償配布するなど、バリアフリーの普及に積極的に努めている。
 また、視覚障害者、肢体不自由者等から寄せられる公共トイレの不便さについての声などをもとに、公共トイレにおける紙巻器・便器洗浄ボタン・非常呼出ボタンの壁面配置の基本ルールについて大学と共同研究を実施し、同業企業とも協力しながら業界統一ルールとしての普及・推進を図ることとしている。

  • 東陶機器株式会社 事例写真1
    東陶機器株式会社 事例写真1
  • 東陶機器株式会社 事例写真2
    東陶機器株式会社 事例写真2
特定非営利活動法人
大阪障害者雇用支援ネットワーク
(大阪府大阪市中央区北浜東3-14)
【功績の概要】

 障害者が企業で働くことは、生活を維持するための収入を得る手段だけでなく、働くことにより社会の一員であるという自信と誇りを培うなど積極的な意味がある。しかし、企業側には障害者雇用に関する知識や経験不足に伴う不安等がある。 本ネットワークは、平成8年に「大阪を障害者雇用日本一のまちに!」を目標に掲げ、障害のある人の就労支援と雇用拡大を目的に、労働者団体、使用者団体、就労支援機関、労働行政等が連携して結成された。
 毎年9月の障害者雇用促進月間には、労使で参加する「障害者雇用フォーラム」を開催し、大阪府と共催して優良障害者雇用企業の顕彰等を行うとともに、平成17年度の月間では、地下鉄御堂筋線に「地下鉄美術館」と称して企業で働く障害者の模様を紹介する写真等を掲示するなど、障害者雇用に関するノウハウの情報提供や啓発活動を行ってきた。
また、離職・失業した障害者等の再就職のためのインターンシップの実施やインターンシップ体験中の障害者をサポートする市民ボランティアの養成・派遣などを実施するとともに、障害者と市民ボランティア等が交流・情報交換できる機会を提供するなどし、障害者の就労に向けて積極的な活動を行っている。
 さらに、大阪府とともに、企業が主体となり障害者の雇用・就業に関するさまざまな課題について企業相互間の情報交換やコンサルティングを行うことができるネットワークの構築に積極的に取り組んでいる。

  • 大阪障害者雇用支援ネットワーク 事例写真1
    大阪障害者雇用支援ネットワーク 事例写真1
  • 大阪障害者雇用支援ネットワーク 事例写真2
    大阪障害者雇用支援ネットワーク 事例写真2
内閣府特命担当大臣表彰(6件)
大牟田住まい・まちづくりネットワーク
(福岡県大牟田市有明町2-3)
【功績の概要】

 大牟田市の高齢化率(27.1%)は全国平均の15年先といわれるほどの状況である。このため、「住まい」は暮らしの基本であり、まちを創る大きな要素である、とのコンセプトのもと、この高齢社会における住まいづくりに係る人材の育成を目的に、行政、建築関係者、福祉関係者、障害者等により、大牟田住まい・まちづくりネットワークが設立された。
 障害者やその家族からの意見も取り入れつつ、建築関係者や福祉関係者等を対象として、高齢社会における住まいのバリアフリー化について、理解の向上のための講習会を行っている。その実施に当たっては、障害者の身体的特性に合わせた住環境整備の改修方法などの講習のほか、実践を重視し、寸劇によるロールプレイや障害当事者からの体験談話を取り入れるなどカリキュラムに工夫を凝らし、一つひとつ異なるであろう改修プランの検討を行っている。それにより建築実務者(大工さん等)や介護を行う側に対して住宅のバリアフリー化についての知識の普及と意識改革が図られている。また、講習の修了者によるテーブルやイスの製作・寄贈などの地域ネットワーク活動なども広がりつつある。

  • 大牟田住まい・まちづくりネットワーク 事例写真1
    大牟田住まい・まちづくりネットワーク 事例写真1
  • 大牟田住まい・まちづくりネットワーク 事例写真2
    大牟田住まい・まちづくりネットワーク 事例写真2
奥野 花代子
(神奈川県小田原市入生田499 (勤務先:神奈川県立生命の星・地球博物館))
【功績の概要】

 博物館は障害や年齢に関わらずあらゆる人に優しい生涯学習のための開かれた施設でなければならないとの考えのもと、学芸員としてその実現に取り組んできた。
 特に、視覚障害者の案内や交流会等を通じた意見交換などを行う中で、視覚障害者が展示物の大きさを知り、手触りで驚くなど博物館の素晴らしさを知って欲しいと考え、「全国の博物館園における視覚障害者への対応に関するアンケート調査」や「全国の盲学校の博物館利用に関するアンケート調査」、シンポジウムなどを行い、全国の博物館の視覚障害者への対応について状況把握に努めてきた。
 そして、視覚障害者とともに検証をしつつ赤外線による音声歩行案内・解説システム(トーキングサイン・ガイドシステム)等の機器開発・導入を行ってきた。このシステムは先駆的な取組として、他の博物館や公共機関等にも導入されている。
 また、博物館の新設に当たっては、視覚障害者とともに助言・提案・検証等を行うなど、博物館のバリアフリー化に取り組み、「誰にも優しい博物館」を目指している。

  • 奥野 花代子 写真1
  • 奥野 花代子 写真2
東京急行電鉄株式会社
(東京都渋谷区南平台町5-6)
【功績の概要】

 東急世田谷線では、平成8年からの地域の再開発と合わせてバリアフリー化の取組を開始し、平成13年までに、ホームと車両の出入口の段差を解消するためにホームの嵩上げを行うとともに、車いすスペースを備えた低床車両への全面的な更新及びスロープの設置、ホーム屋根の増改築を行うなど、施設面のバリアフリー化を実施してきた。
 また、障害者や高齢者をはじめ誰もが安心して利用できるよう、同線の乗務員全員に対して車いす使用者や視覚障害者などに対する案内方法をはじめ接客サービスの向上のための研修を行い、自らが障害などの体の不自由さについて疑似体験することで思いやりのある運転操作やわかりやすいアナウンスができるよう、常に利用者第一のサービスの提供を目指してる。
 その他の8路線についても世田谷線の取組と並行してバリアフリー化に取り組み、約9割の駅でエレベーターやスロープ等による段差の解消がなされたほか、多機能トイレやホームと車両の段差をより小さくするための新型車両の導入を推進するとともに、駅係員や乗務員に対して接客サービスの向上のための研修を積極的に実施するなど、ハード・ソフト両面におけるバリアフリー化を推進している。

  • 東京急行電鉄株式会社 事例写真1
    東京急行電鉄株式会社 事例写真1
  • 東京急行電鉄株式会社 事例写真2
    東京急行電鉄株式会社 事例写真2
福岡市交通局
(福岡県福岡市中央区大名2-5-31)
【功績の概要】

 平成17年2月に「人にやさしく地域に根ざした公共交通機関」の実現を目指した市営地下鉄七隈線(3号線)(橋本~天神南間、12km)が開業した。本路線は、障害者や高齢者などを含め誰もが安全で利用しやすい、快適性の確保された施設とするべく、交通バリアフリー法に則った整備はもちろんのこと、障害者等を含めたさまざまな利用者、専門家等の意見を反映させながら、長期にわたる継続的な議論を重ね、人にやさしい施設整備を進めてきた。
 駅の平面的なレイアウトはほぼ全駅で共通とし、エレベーターはプラットホームの中心に設置され、車いす使用者等の動線ができるだけ短くなるよう配慮された。鉄道駅の課題であるホームと車両の隙間、段差については、車いす使用者等の利用に配慮し、隙間約50mm、段差約5mm実現させた。また、駅出入口やトイレ前等に音声案内を設け、ホームには転落防止柵(ホーム柵)が設置され、多機能トイレは便器位置が左右対称の2箇所配置を各駅共通仕様とするなどなどさまざまな工夫を施されている。駅舎外からの誘導サインも適切に施されており、高齢者や子どもなども含めたさまざまな利用者にとっても安全で使いやすい施設となっている。

  • 福岡市交通局 事例写真1
    福岡市交通局 事例写真1
  • 福岡市交通局 事例写真2
    福岡市交通局 事例写真2
有限会社 雅樹雅(あじゅが)
(山梨県北杜市高根町清里3545-51)
【功績の概要】

 ホテルなどの元料理人である夫と元看護師の妻がペンションを経営していたが、あるとき障害者関連の雑誌で「障害者が普通に泊まれる宿泊施設が非常に少ない」という記事を見て、障害者や高齢者が安心して泊まれるペンションづくりを決意した。その後、新たに購入した旧清里町内の中古ペンションの改装に着手し、購入時16室の客室を4室に減らし、空間的にも運営的にもゆったりしたバリアフリーペンションを実現させた。
 館内は、車いす使用者が自由に移動できるよう随所で段差の解消(スロープ化)が行われ、車いす使用者対応バスルームも設置された。改修に当たっては宿泊客などからの意見を取り入れながら、高齢者や障害者だけでなく誰もが利用しやすく、快適なインテリア空間を生み出している。現在でも、より利用しやすいペンションの向上に向け、絶え間ない努力が続いている。
 また、平成17年3月からこのバリアフリー化されたペンションを利用した介護保険事業(デイサービス)が開始され、施設の有効活用と地域住民へのサービスが展開されている。

  • 有限会社 雅樹雅 事例写真1
    有限会社 雅樹雅 事例写真1
  • 有限会社 雅樹雅 事例写真2
    有限会社 雅樹雅 事例写真2
有限会社 ハートフル・ウィング
(島根県松江市古曽志町567-362)
【功績の概要】

 ハートフル・ウィングを経営する宇野京子及び中嶋春喜の両氏が、映画好きの中途失明の視覚障害者が映画をもう一度見たいという思いを持っていることを知り、音声ガイド製作のボランティア活動を行ってきたのが活動の発端である。
 映画は人に感動や勇気を与えることができる芸術文化として、視覚や聴覚等の障害や年齢に関係なく誰もが楽しめることが必要であると考え、映画関係者との連携を図り、質の高い音声ガイド(副音声)、字幕を製作するべく会社を設立した。
 そして、ボランティア活動の経験を生かし障害者団体を中心に草の根運動を起こし、地域の行政、経済・文化関係者と連携しつつ、日本初の音声ガイド、字幕を備えたバリアフリー映画「アイ・ラヴ・ピース」の企画・製作に携わった。
 この映画の音声ガイドの製作には視覚障害者が参加し、上映会を通じて得た高齢者からの意見も反映されている。また、この映画は全国で上映され、映画の音声ガイド、字幕の普及に貢献してきた。

  • 有限会社 ハートフル・ウィング 事例写真1
    有限会社 ハートフル・ウィング 事例写真1
  • 有限会社 ハートフル・ウィング 事例写真2
    有限会社 ハートフル・ウィング 事例写真2