社会福祉法人 愛知たいようの杜
(所在:愛知県長久手市)【愛知県推薦】 |
【概要】
- 子供から高齢者まで多世代が共に生きるコミュニティの実現を目指し、社会福祉法人愛知たいようの杜は、特別養護老人ホーム「愛知たいようの杜」、ケアハウス「ゴジカラ村雑木林館」、「もりのようちえん」、看護福祉学校「もりのがくえん」等からなる「ゴジカラ村」を創設した。また、ゴジカラ村の各施設、また周辺施設である多世代共同住宅「ぼちぼち長屋」等と様々な場面で連携を図りながら、子供から高齢者、障害者にそれぞれの役割と居場所を提供している。
【特に顕著な功績・功労】
- 特別養護老人ホームは、床や壁は自然の木を使っており、関わる全ての人たちが心地よい空間を創出している。中庭が託児所の遊び場になっていることから「もりのようちえん」の子供たちが遊びに来たり、職員も子連れで出勤しており、入居者は、子供と交流をすることで役割ができ、職員にとっても働きやすい職場になっている。
- 高齢者の自由な外出を認めている。施設に閉じこもりがちな高齢者も外に活発に出ることで、自然や地域住民と接する機会が増え、自分も地域の一員だという認識に繋がり、自分の存在を確かめるきっかけとなっている。
- 高齢者は自立意欲を出し、ごみ出しや掃除など自分でできることは自身で行っている。
- 定年退職等によりリタイアした地域住民からなる男性の有償ボランティアグループ「きねづかシェアリング」は、長年社会で培ってきた各人の能力を活かし、職員だけでは対応困難なゴジカラ村の雑務、送迎車の運転、安全を守るための巡回、見学者の案内、餌やりなど行い、時には職員の悩みを聞くなどボランティアグループにとっても新たな生きがいの場となっている。
- ゴジカラ村の中にある古民家の1つである「どんぐりの杜」では、地域住民が、敷地内の諸施設や近隣で働く方の子供を預かっている。運営は、職員一人を除き全員有償ボランティアで行っており、高齢者を中心に、学生ボランティアや子連れで参加しているボランティアもおり、20代から80代までの多世代が活躍している。子育て中の保護者の支援だけでなく、幅広い層の居場所も創設している。
- 多世代共同住宅「ぼちぼち長屋」は、1階に介護が必要な高齢者、2階に独身女性や子育て家族が入居できる。介護等が必要な高齢者の方には話し相手や一緒に夕食をとる人ができるだけでなく、独身女性等にも高齢者と居住空間が一緒であるということで、親近感が沸くなど、一人暮らしの女性や子育て家族にとって「安心」が生まれている。
- 子供から高齢者まで多世代共生、そして地域が共に生きるコミュニティを目指した施設である。一人ひとりに役割と居場所があるという理念のもと、定住者、日中の利用者、園児やその保護者、施設職員やボランティアなど多いときには約1,000人もの人々が生活をともにしている。
子供から高齢者にいたるまで、施設に関係ある者に限らず近隣住民も含め大勢の人々が積極的にこのコミュニティに関わりを持ち、年齢や障害の有無にかかわりなく、すべての人が、安全で快適な生活を送ることができるというユニバーサル社会の理念を実現している。
昭和56年から活動を開始しており、築きあげられてきた信用、実績も十分なものであり一つの成功事例となっている。
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明石市
(所在:兵庫県明石市)【厚生労働省推薦】 |
【概要】
- 明石市は、こども施策の充実を図るだけでなく、バリアフリー・ユニバーサルデザインの考えを基にした福祉施策を推進していくにあたって、誰もが暮らしやすいまちの実現に向けた5つのSTEP(①手話言語の確立、②多様なコミュニケーションの促進、③障害差別解消条例の制定、④合理的配慮への公的助成、⑤誰もがくらしやすいまちへ)を掲げ、独自又は先進的な事業を多数進めている特色のある市である。
【特に顕著な功績・功労】
- 障害を理由とした差別を解消していくことによって、障害のある人もない人も共に安心して暮らせる共生のまちづくりを進めていくために、「障害者に対する配慮を促進し誰もが安心して暮らせる共生のまちづくり条例(通称「明石市障害者配慮条例」)」を制定し、以下の具体的かつ先進的な取組みを実施している。
- 合理的配慮の提供を支援する公的助成制度
障害のある人の暮らしにくさは障害のある人の責任ではなく行政(明石市)の責任であるという考えに基づき、平成28年度に全国で初めて公的助成制度を創設。事業者等に合理的配慮の提供をお願いするだけでなく、環境整備については行政(明石市)が責任を持つという姿勢を示すための補助金事業としてだけでなく、合理的配慮の提供の具体的なイメージを事業者に伝える啓発事業を兼ねる形で実施。助成メニューは3つあり、コミュニケーションツール作成費用が上限額5万円、物品購入費用が上限額10万円、工事施工費用が上限額20万円。
- タブレット端末の設置
市内の市民センター、総合福祉センター、観光案内所、あかし総合窓口にタブレット端末を設置。手話を主たるコミュニケーション手段とする聴覚障害者が手続き等に来た時にタブレット端末から本庁につなぎ、遠隔で手話通訳者を介して窓口の職員とやりとりを行う。また、電話リレーサービスの利用や市役所への問い合わせができるよう、聴覚障害者にタブレットを貸与している。
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ユニバーサルモニター制度
障害当事者の声を反映したユニバーサルデザインのまちづくりを進めていくために、平成30年2月よりユニバーサルモニター制度を創設し、障害当事者26人がモニターに就任。モニターは、公共施設や宿泊施設、飲食店等のバリアフリー環境や情報アクセスについて、当事者目線で気づいた具体的な提案をすることができる。
- 明石市では、SDGsにも掲げられた「誰も置き去りにしない社会」をつくるという理念のもと、市長の強いリーダーシップにより、まちづくりが行われている。特に「暮らしにくさ」を多く抱える障害者に対しては、その原因を個人の問題にせず、「社会の環境にある」という考えを徹底させ、市民に近い基礎自治体としての責任をまちづくりを進める中で具体的に果たしている。また、行政、事業者、市民が一丸となってまちづくりを進めていく重要性を強く意識し、様々な改革や体制整備に取り組んでおり、自治体の姿勢として高く評価できるものである。
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合同会社 Chupki(チュプキ)
(所在:東京都北区)【厚生労働省推薦】 |
【概要】
- 視覚障害者の映画鑑賞をサポートする活動から始め、平成28年6月にクラウドファンディングを実施し賛同者を募り、同年9月に、日本初の常設のユニバーサルシアターを東京都北区に開館した。年間300日、1日4回、年間60本程度の作品を上映するほか、音声ガイド製作者養成のためのワークショップ開催、シアターレンタル(映画館設備の時間貸し)等を行っている。
【特に顕著な功績・功労】
- すべての上映作品に、視覚障害者や聴覚障害者対応の音声解説と日本語字幕をつけている常設の映画館であり、定員20人ながら、年間1万人を超える観客を動員。
- 日本映画にも日本語字幕を付加。音声解説と日本語字幕の付加されていない作品は、独自に制作している。
- 館内はバリアフリーへの配慮が行き届いており、入口からトイレ、客席後方の車椅子スペースまで車椅子に乗ったまま移動が可能となっている。
- 防音ブースの親子鑑賞室を設置。子供同伴の観客は親子鑑賞室に入れば、周囲を気にすることなく映画を鑑賞できる。
- 座席には、音量調節機能のあるヘッドフォン端子が備わっており、持参や貸し出しのイヤホンで音声解説を聴くことができ、耳のきこえが良くない人は映画の音をイヤホンで増幅して聴くこともできる。また、振動で音を聴く「抱っこスピーカー」を用意し、利用者にあわせて提供する工夫をしている。
- この映画館には、社会的バリアとなる「障害」そのものがないため、チケット代金の障害者割引もない。その代わり、ヘルパーパスの発行や(ヘルパーの料金は免除となるカード、利用者がヘルパーの分まで負担しなくてもよい。)や、障害が理由で職に就けず、経済的貧困を抱えたお客様には、「プアエイド」という割引サービスを行っている。
- 障害者にとって映画を楽しむという新たな娯楽の機会が増え、生活の質の向上にも繋がっている。
- 健常者も障害者も誰もが安心して一緒に映画を楽しむことができる、全ての人に開かれたユニバーサルシアターである。この映画館は商店街の中の建物の1階にあり、気軽に立ち寄れる雰囲気。街の人々が障害を持った人との関わりに慣れ、学び、交流するきっかけになっている。
アニメファンに人気の作品や声優による音声ガイドなど新しいファン層を広げる工夫を継続して行うとともに、地方の映画祭、地域の上映会のユニバーサル化への協力も積極的に行っており、今後の波及効果も期待できる。
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