第1章 高齢化の状況(第3節 2(3))

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第3節 前例のない高齢社会に向けた対策・取組の方向性

2 前例のない高齢社会を活力あり安心できるものにしていくための対策と取組の方向性

(3)高齢者がちょっとした手助けを行うことで地域のきずなを再生するための環境づくり

家族による支えは高齢者にとっても基本であることに変わりはないが、現実には家族のあり方や意識が変化した中で、家族に全てを期待するのは現実的に困難である。

そこで地域の役割が期待されるが、従来の地域は担い手が不足することで機能を低下させてきた。今、現実に多くの高齢者が社会参加に対する意欲を持っているのに、現実にはなかなか参加できない状態にとどまっている。高齢者の社会参加意欲の活用は「高齢者にとってのワークライフバランス」を考える上で、高齢者の「ライフ」の充実のためにも重要な課題である。意欲のある高齢者が持っている豊富な時間という資源を、家族や地域で支えを必要とする人に再分配する流れを形成することができれば、支え手の不足は大幅に軽減することが可能となり、高齢者が地域で孤立するような事態も避けることが可能となると考えられる。

具体的には、情報提供・相談窓口の設置、高齢者の出会いの場の提供、地域で求められる人材の育成、地域活動に参加したい人の登録、斡旋、支えを必要とする人への紹介、双方のマッチングなどであるが、こうした取組は、近年、国民に最も近いところにある自治体である市町村においてすでに多く取り組まれている。さらに民間のNPOやボランティアなども加わって、「地域社会の仲人」ともいうべき取組も動き出している。

また、地域で支え手になろうとする高齢者と支え手を必要とする高齢者をつなぐ取組の中で、近年多く見られるようになったのが、地域で生活している高齢者が、高齢者が自分でするのは少し辛い日常のちょっとした手助けをしてもらいたいときに依頼できるシステムづくりの取組である。電球の付け替えや買い物など多くは日常の手間・用事であり、無料の場合もあれば廉価な手間賃を支払っている場合もある。こうした日常の手間・用事を公的システムで手当てすることは困難であるが、こうした支えがあることで地域で生活する高齢者にとっては大きな安心につながっている。手間賃を介在させることについても、利用する側は気兼ねをせずにすみ、支える側はちょっとした生きがいと収入になるという好循環が生まれている例も見られる。しかしながら多くが1対1の人間関係が基本になるため、双方にそれぞれの心構えがないとトラブルにつながるケースもあることに留意が必要である。こうしたことを双方が踏まえつつ取組が拡がっていけば、こうした「ちょっとした手助け」に高齢者が一歩踏み出すことで、地域で暮らす高齢者にとって大きな安心の基盤になることが期待される。

【事例集:(高齢者が地域と結びついて活動している事例)(高齢者と支えを必要とする世代を結び付けている事例)(高齢者が高齢者に日常的な支えを提供している取組の例)を参照】

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