第1章 高齢化の状況(第2節 3)
第2節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向(3)
3 高齢者の健康・福祉
(1)高齢者の健康
ア 高齢者の新体力テストの合計点は向上傾向
高齢者の新体力テスト(握力、上体起こし、長座体前屈、開眼片足立ち、10m障害物歩行、6分間歩行)の合計点は、すべての年代・性別で向上傾向を示している(図1-2-3-1)。
イ 認知症高齢者数の推計
65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症高齢者数462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)であったが、37(2025)年には、約5人に1人になるとの推計もある(図1-2-3-2)。
ウ 健康寿命が延びているが、平均寿命に比べて延びが小さい
日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、平成25(2013)年時点で男性が71.19年、女性が74.21年となっており、それぞれ13(2001)年と比べて延びている。しかし、13(2001)年から25(2013)年までの健康寿命の延び(男性1.79年、女性1.56年)は、同期間における平均寿命の延び(男性2.14年、女性1.68年)と比べて小さい(図1-2-3-3)。
エ 高齢者の受療率が高い主な傷病は入院が「脳血管疾患」、外来が「高血圧性疾患」。死因は「悪性新生物(がん)」が最も多い
65歳以上の高齢者の受療率が高い主な傷病をみると、入院では、「脳血管疾患」(男性398、女性434)、「悪性新生物(がん)」(男性395、女性203)となっている。外来では、「高血圧性疾患」(男性1,373、女性1,682)、「脊柱障害」(男性975、女性961)となっている(表1-2-3-4)。
男 | 女 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
65歳以上 | 65~69歳 | 70~74歳 | 75歳以上 | 65歳以上 | 65~69歳 | 70~74歳 | 75歳以上 | ||
入院 | 総数 | 2,786 | 1,618 | 2,110 | 4,036 | 2,881 | 1,102 | 1,568 | 4,311 |
悪性新生物(がん) | 395 | 282 | 385 | 483 | 203 | 146 | 182 | 240 | |
高血圧性疾患 | 11 | 3 | 4 | 20 | 24 | 2 | 4 | 44 | |
心疾患(高血圧性のものを除く) | 152 | 69 | 99 | 244 | 163 | 23 | 53 | 279 | |
脳血管疾患 | 398 | 190 | 277 | 621 | 434 | 100 | 162 | 714 | |
外来 | 総数 | 10,327 | 7,821 | 10,266 | 12,169 | 10,872 | 8,761 | 11,224 | 11,741 |
悪性新生物(がん) | 487 | 345 | 486 | 590 | 245 | 247 | 263 | 236 | |
高血圧性疾患 | 1,373 | 1,014 | 1,324 | 1,661 | 1,682 | 1,093 | 1,462 | 2,062 | |
心疾患(高血圧性のものを除く) | 384 | 226 | 323 | 535 | 280 | 122 | 183 | 399 | |
脳血管疾患 | 266 | 147 | 223 | 378 | 215 | 87 | 144 | 308 | |
脊柱障害 | 975 | 549 | 963 | 1,290 | 961 | 585 | 1,030 | 1,114 | |
資料:厚生労働省「患者調査」(平成26年)より内閣府作成 |
高齢者の死因をみると、死亡率(65歳以上人口10万人当たりの死亡数)は、平成27(2015)年において、「悪性新生物(がん)」が930.4と最も高く、次いで「心疾患(高血圧性を除く)」532.5、「肺炎」348.9の順になっており、これら3つの疾病で高齢者の死因の半分を占めている(図1-2-3-5)。
(2)高齢者の介護
ア 高齢者の要介護者等数は増加しており、特に75歳以上で割合が高い
介護保険制度における要介護又は要支援の認定を受けた人(以下「要介護者等」という。)は、平成26(2014)年度末で591.8万人となっており、15(2003)年度末(370.4万人)から221.4万人増加している。また、要介護者等は、第1号被保険者の17.9%を占めている(図1-2-3-6)。
また、65~74歳と75歳以上の被保険者について、それぞれ要支援、要介護の認定を受けた人の割合をみると、65~74歳で要支援の認定を受けた人は1.4%、要介護の認定を受けた人が3.0%であるのに対して、75歳以上では要支援の認定を受けた人は9.0%、要介護の認定を受けた人は23.5%となっており、75歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇する(表1-2-3-7)。
単位:千人、( )内は% | |||
65~74歳 | 75歳以上 | ||
---|---|---|---|
要支援 | 要介護 | 要支援 | 要介護 |
245 (1.4) |
508 (3.0) |
1,432 (9.0) |
3,733 (23.5) |
資料:厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」(平成26年度)より算出 | |||
(注1)経過的要介護の者を除く。 | |||
(注2)( )内は、65~74歳、75歳以上それぞれの被保険者に占める割合 |
要介護者等について、介護が必要になった主な原因についてみると、「脳血管疾患(脳卒中)」が17.2%と最も多く、次いで、「認知症」16.4%、「高齢による衰弱」13.9%、「骨折・転倒」12.2%となっている。男性の「脳血管疾患(脳卒中)」が26.3%と特に多くなっている(図1-2-3-8)。
介護が必要になった場合の費用負担について、内閣府の調査で60歳以上の人に尋ねたところ、「特に用意しなくても年金等の収入でまかなうことができると思う」が42.3%、「貯蓄だけでは足りないが、自宅などの不動産を担保にお金を借りてまかなうことになると思う」が7.7%、「資産の売却等でまかなうことになると思う」が7.4%、「子どもからの経済的な援助を受けることになると思う」が9.9%、「その場合に必要なだけの貯蓄は用意していると思う」が20.3%となっている(図1-2-3-9)。
イ 主に家族(とりわけ女性)が介護者となっており、「老老介護」も相当数存在
要介護者等からみた主な介護者の続柄をみると、6割以上が同居している人が主な介護者となっている。その主な内訳をみると、配偶者が26.2%、子が21.8%、子の配偶者が11.2%となっている。また、性別については、男性が31.3%、女性が68.7%と女性が多くなっている。
要介護者等と同居している主な介護者の年齢についてみると、男性では69.0%、女性では68.5%が60歳以上であり、いわゆる「老老介護」のケースも相当数存在していることがわかる(図1-2-3-10)。
ウ 要介護4以上では約半数がほとんど終日介護を行っている
同居している主な介護者が1日のうち介護に要している時間をみると、「必要な時に手をかす程度」が42.0%と最も多い一方で、「ほとんど終日」も25.2%となっている。要介護度別にみると、要支援1から要介護2までは「必要な時に手をかす程度」が最も多くなっているが、要介護3以上では「ほとんど終日」が最も多くなり、要介護4と要介護5では約半数(53.9%、56.1%)が「ほとんど終日」介護している(図1-2-3-11)。
エ 介護や看護の理由により離職する人は女性が多い
家族の介護や看護を理由とした離職者数は平成23(2011)年10月から24(2012)年9月の1年間で101.1千人であった。とりわけ、女性の離職者数は81.2千人で、全体の80.3%を占めている(図1-2-3-12(1))。
介護・看護を理由に離職した雇用者数をみても、平成27(2015)年では女性の離職した雇用者数は66.7千人で、全体(90.1千人)の74.0%を女性が占めている。
また、個人的理由による離職者に占める介護・看護の理由による離職者の割合をみると、平成27(2015)年では男性は1.0%、女性は2.4%であった(図1-2-3-12(2))。
オ 介護施設等の定員数は増加傾向。特に有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の定員が増加
介護施設等の定員数をみると、増加傾向にある。施設別にみると、平成27(2015)年では、介護老人福祉施設(特養)(518,273人)、有料老人ホーム(424,828人)、介護老人保健施設(老健)(368,201人)等の定員数が多い。また、近年は有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の定員数が特に増えている(図1-2-3-13)。
カ 介護に従事する職員数は増加
要介護(要支援)認定者数の増加に伴い、介護に従事する職員数は大幅に増加している。平成27(2015)年度は、12(2000)年度(54.9万人)の約3.3倍の183.1万人となっている(図1-2-3-14)。
キ 依然として介護職員は不足しており、有効求人倍率は全産業に比べ高い水準にある
介護分野の有効求人倍率をみると、全産業の有効求人倍率に比べ、高い水準を維持し続けている。特に平成18(2006)年から20(2008)年までは全産業の有効求人倍率が低下した一方で、介護分野の有効求人倍率は1.68倍から2.31倍まで上昇した。リーマンショック後は、介護分野の有効求人倍率も低下したが、23(2011)年からは全産業・介護分野ともに有効求人倍率は再び上昇し、特に26(2014)年からは介護分野の有効求人倍率の伸びは全産業の有効求人倍率に比べ、高くなっている。28(2016)年の介護分野の有効求人倍率は3.02倍となり、全産業の有効求人倍率(1.36倍)の約2.2倍となった(図1-2-3-15)。
ク 介護を受けたい場所は「自宅」が男性約4割、女性約3割
「日常生活を送る上で介護が必要になった場合に、どこで介護を受けたいか」についてみると、60歳以上では男女とも「自宅で介護してほしい」人が最も多いが、男性は42.2%、女性は30.2%と、男性の方が自宅での介護を希望する割合が高くなっている。自宅以外では、「介護老人福祉施設に入所したい」(男性18.3%、女性19.1%)、「病院などの医療機関に入院したい」(男性16.7%、女性23.1%)、「介護老人保健施設を利用したい」(男性11.3%、女性11.2%)が多い(図1-2-3-16)。
(3)最期を迎えたい場所は「自宅」が半数を超える
「治る見込みがない病気になった場合、最期はどこで迎えたいか」についてみると、「自宅」が54.6%で最も多く、次いで「病院などの医療施設」が27.7%となっている(図1-2-3-17)。
(4)延命治療は行わず「自然にまかせてほしい」が91.1%
高齢者の延命治療の希望についてみると、65歳以上で「少しでも延命できるよう、あらゆる医療をしてほしい」と回答した人の割合は4.7%と少なく、一方で「延命のみを目的とした医療は行わず、自然にまかせてほしい」と回答した人の割合は91.1%と9割を超えた(図1-2-3-18)。