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I.自助グループとは

 自助グループとは「同じような辛さを抱えた者同士が、お互いに支え合い、励まし合うなかから、問題の解決や克服を図る」ことを目的に集う活動をいう。


1.意義

 交通被害者(遺族を含む。以下同じ。)は被害後、関係者や周囲の人たちから励ましの言葉をかけられるが、被害を受けた衝撃が大きく、被害に遭った実感も持てないなかで、その声に応えられる状態でなくなる。
 周囲の励ましに応えられない自分を責め、励ましの言葉がかえって苦痛に感じられる。その結果、同じような体験者でなければ自分の悲しみや苦しみは分かってもらえないと思い、本当の気持ちは周囲の人には言えなくなる。
 また、話せたとしても、話を聞いた相手が困惑し、どう応えればいいのか戸惑っていることが直感的に分かるため、結局は沈黙しがちになる。
 激しいトラウマ(心の傷)を負い、極限状態に追い込まれている被害者は、回避症状(被害に遭わなかったことにしたい、自分が被害者になるわけがない、被害については考えたくないなど)が表れ、現実のこととして受け止めることができず、周囲の人たちとはすっかり変わってしまった自分を痛感し、人としての自尊心をも失った結果、将来に対する希望も失いがちになり、自分には未来はないと感じる。
 過覚醒やフラッシュバック等の精神的反応により自分で自分の感情コントロールができず、いらいらして周囲に怒りをぶつけてしまう、眠れない、ちょっとしたことで恐怖や不安を感じる、思い出したくないのに事故を思い出す、怖い夢にうなされるなどといった症状にも苦しめられることがある。
 このようなさまざまな症状は、衝撃を受ければ誰でもが感じることであるが、それを知らない多くの被害者は「自分はおかしくなってしまった」と考え、苦しむことも多い。そのため、安心して話せ、その一言で理解し合える仲間の存在は、被害者の孤立感や疎外感を軽減し、自尊心を取り戻し、被害からの回復に大きな力となるため、存在意義が大きい。


2.目的

(1)自助グループの目的
自助グループを開催する目的は、以下のとおりである。
1) 悲嘆を取り除くのではなく、乗り越えるのを支え合う。
2) 考えや気持ちを素直に語ることにより、新しい被害者と時間が経った被害者とが、交流の中から各々希望が持てる場になる。
3) 回復の過程は似ていても、被害者自身の方法や時間で回復することを実感する場でもある。

(2)参加者の目的
自助グループに参加する者の目的は、以下のとおりと考えられる。
1) 自分自身が抱えている問題に対処する。
2) 破壊された人間や社会の信頼感を取り戻し、健全な自己愛を再構築する。


3.効果

(1)実践活動から
1) 仲間の存在そのものが孤立感を軽減する
被害者は皆、自分でも整理のできない怒りの感情を持て余し、自己嫌悪に陥ることが多いが、被害者であれば当然の感情であると分かるだけでも安心できる。
2) 安心して感情を吐露できる場
話すことにより、自分でも気づかなかった感情に気づくことは回復のために大切なことである。
3) 社会への信頼感を取り戻す場
被害者だけでなく、犯罪被害者相談員や精神科医、警察官、弁護士などが参加するため、被害者支援に取り組んでいる人々とも出会える。その結果、社会に対する怒りを和らげ、"それでもこの世は捨てたものではない"と思える場になる。
4) 新たな被害者が、時間を経た被害者に会い、回復していることを見て希望が持てるような場になる。
5) 自分の体験談が他の被害者に役立つことを実感し、「こんな私でも他の人の役に立てるという実感」を持てることが自尊心を取り戻し、回復に役立つ。
6) 周囲や関係者から受ける二次被害は共通のことと知り、自分だけではないと思え、安心して立ち向かう力をつけることができる。
7) 怒りの気持ちや、悲しみから抜け出せない自分だが、弱いのではなく被害者として当たり前の感情だと分かり、気持ちにゆとりが持てる。
8) 他の被害者がどのようにして回復してきたのか、どのように工夫して生きているかを知り、今後の生き方の参考になる。
9) 仲間の話の中から、自分なりの回復のきっかけを掴むことができる。
例えば、
・カウンセリングを受けよう
・民事裁判をしよう
・持ち物や部屋を片づけよう
・納骨をしよう
・自分なりの法事をしよう
・被害者の実態や命の大切さを社会に訴え、社会を改革しよう など
10) 情報を得ることができる
・被害者支援の現状や動きを知り、今後のことなどを考えることができる。
11) 仲間のなかで対人関係能力が育ち、再び社会や周囲の人に対しての人間関係の再構築と、信頼感を取り戻すための場になる。
(2)調査結果から
 1) 参加前
・自助グループ参加当時は「不安や不眠」、「家事や仕事の能力が落ちたと思う」、「人と会うのがわずらわしい」、「気持ちがうつ的」、「遺族となった実感が持てない」、「故人のことが頭から離れない」、「自分が弱い存在であるように感じる」、「加害者に激しい怒りを感じる」などを訴える遺族が大多数だった。
 2) 1年後
・社会機能障害、抑うつ状態は改善している。
・対人関係では、「近所の人や友人との疎遠な感じ」が軽減された、「社会から疎外されている感じ」が軽減された、「家事や仕事への意欲や興味」を持てる、「喜びや楽しみを感じたり、笑うことができる」などの一般的精神健康状態が回復していた。


4.データからの結論

 自助グループに参加することによって、気分や社会生活が改善していることがうかがわれたことから、自助グループのなかでの感情の表現や安心できる関わり、また社会参加への意欲や将来への希望などがもたらされたのではないかと考えられる。
 このことからも、自助グループはそこで安心できる人間関係、つまり人と人とのつながりを取り戻し、感情の回復や意欲の改善をもたらす効果があると考えられる。


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