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II.自助グループの立ち上げ支援

1.立ち上げ支援の進め方

(1)事前準備
 1)  部屋の鍵を開け、電気をつけ、夏は冷房、冬は暖房を入れ、机を「ロ」の字型に並べる等、迎え入れる準備をしておく。
 2)  机の上には花か植物を飾り、柔らかい雰囲気にするなど環境に配慮する。
 3)  お茶とお菓子などを準備する。
 4)  ティッシュペーパーとゴミ箱の準備をする。
 5)  時計等必要物品を準備する。

(2)開催時
 1)  参加者に自由に席についてもらい、自助グループの運営をつかさどる指導者(ファシリテーター)は最後に空いた席につく。
 2)  ファシリテーター自身の自己紹介をする。
 3)  グループ内での原則を伝える。
 4)  話す順番は、ファシリテーターから遠い席の人から話してもらう。
 5)  会の中の話は会の中だけにして、秘密は守る。
 6)  各人が話す時間は平等になるようにする。
 7)  参加者の自己紹介。
 ・なぜ参加したのか、
 ・被害の内容について、自由に話す。

(3)開催中に留意すること
 1)  参加者の一部が時間を独占したり、不適切な発言をしたときはやめてもらい、次の人に話してもらう。
 2)  できる限り平等に時間を使えるように注意深く配慮する。
 3)  スタッフは複数で入り、参加者に対応する。
 4)  最後は、参加して率直に話してくれたことへのお礼を言い、次回開催日時を伝え、終了する。

自助グループの立ち上げ支援の進め方を以下の表にまとめることとする。

事前準備 開催時 終了時 留意点
  • 支援センター宛の依頼文書作成と送付
  • 支援センター内での周知
  • 事前研修会場の確保
  • 受講相談員への連絡
  • 参加遺族への連絡
  • 資料の作成
  • 会場準備と環境整備を行う(時計・ティッシュペーパー・お菓子・お茶など)
  • 自由に話せる雰囲気作りを工夫する
  • 支援センターと参加者の信頼関係を築く
  • 参加遺族の名札の準備
  • 出席表の準備
  • 資料の準備と配布
  • 必要物品の準備
  • 参加者が率直に話してくれたことへのお礼を言い、次回開催日を伝える
  • 研修参加者への連絡
  • 次回自助グループ開催のお知らせ
  • お茶の準備
  • 会場の撤収
  • 参加者が十分に話せるようにする
  • スタッフは複数で入り、参加者の状況を常に把握する
  • 参加者の希望を聞き、支援センターとしてできることを実施する


2.立ち上げ支援の具体例

(1)NPO法人石川被害者サポートセンター(旧:石川被害者相談室)

1) 事前研修会の実施
日時:平成15年10月9日(木)19時から
場所:NPO法人石川被害者サポートセンター (石川県広坂庁舎2号館1階学習室)
事前研修参加者:(社)被害者支援都民センター3名、NPO法人石川被害者サポートセンター3名、石川県立看護大学2名

 研修会では、本報告書の自助グループを開く意義、目的、効果、立ち上げ支援の進め方をレジュメ(P19:別紙1参照)として配布し、(社)被害者支援都民センター(以下、都民センターと記載)大久保事務局長から講義があり、その後、ビデオで都民センターの自助グループの実際の様子を学び、質疑応答の時間が設けられた。

―質疑応答の内容―
Q.新たな参加者について
A.NPO法人石川被害者サポートセンターからは、既存の自助グループに新たな遺族が加わる際の留意点について質問が出された。それに対し都民センター職員から、グループに長く関わっている遺族も、初めて参加したときは不安をかかえながら参加していたことを、スタッフ自身も認識しながら関わることが重要と返答した。

Q.ファシリテーターの重要性について
A.その他に、ファシリテーターの重要性についてとりあげられた。センター職員からは、参加者が安心して話せる雰囲気作りを心がけることと、遺族を救済しようと考えてはいけないこと等を説明した。特にファシリテーターの役割を遺族が担う場合には、少なくとも被害から3年以上が経過していることが必要と考えられており、ファシリテーター自身が回復していない状況でグループの進行に関わると、ファシリテーターにとっても参加者にとってもマイナスになることを知っておく必要がある、という説明も補足した。

Q.参加者の適性について
A.また、自助グループに参加する遺族については、事前に電話相談や面接相談をし、グループへの参加が適しているかを判断することが重要であると説明した。参加希望者の中にはグループが有効ではないと考えられる人や逆にグループにとり不適切であると予想される人もいる。どちらの場合にも、この判断を誤ることでグループの効果が損なわれることも考えられるため、慎重に行わなければならないことが再度話し合われた。 自助グループの立ち上げに関する具体的な質問はあまりなかったが、上記に記した内容の他に、被害者支援における基本的な支援者の姿勢等についての話し合いがなされた。

2) 第一回自助グループ
日時:平成15年10月30日(木)14時から16時
場所:NPO法人石川被害者サポートセンター
自助グループ参加者:自助グループメンバー5名、都民センター3名、NPO法人石川被害者サポートセンター3名、精神科医師1名

第一回自助グループの進行は、まず参加している支援センター職員(都民センター・NPO法人石川被害者サポートセンター)が自己紹介し、それに引き続きファシリテーターから、準備されているレジュメ(P19:別紙1参照)を読み上げる形で、自助グループの目的、その原則について説明が行われた。その後、参加遺族全員が自己紹介及び被害概要等の話をした後下記のようなことが語られた。

3) 第一回フォローアップ
日時:平成15年10月30日(木)19時から20時30分
場所:NPO法人石川被害者サポートセンター
フォローアップ参加者:都民センター3名、NPO法人石川被害者サポートセンター3名

 第一回自助グループ終了後、石川・東京両センター職員6名により第一回自助グループ実施に対するフォローアップが行われた。NPO法人石川被害者サポートセンター職員からは、実施前に多くの不安があったものの、実際に開始してみると、「自助グループを始めることの意義が参加者の反応からも実感できたので、自助グループを開始してよかった。」という感想が述べられた。「実際に実施するまではわからないことが多かったが、実施したことで自助グループが必要なことやグループ開催時に必要とされることや配慮すべき点等が理解することができた。」との意見も出された。

4) 第二回自助グループ
日時:平成15年12月11日(木)14時から16時30分
場所:NPO法人石川被害者サポートセンター事務所
自助グループ参加者:自助グループメンバー5名、都民センター3名、NPO法人石川被害者サポートセンター3名、精神科医師1名、石川県警被害者対策室1名

 前回同様に職員側の自己紹介やグループの原則が説明され、グループが開始される。グループで発言することに躊躇する雰囲気が、初回に比べやや軽減された様子が伺われた。

5) 第二回フォローアップ
日時:平成15年12月11日(木)16時40分から17時40分
場所:NPO法人石川被害者サポートセンター事務所
フォローアップ参加者:都民センター3名、NPO法人石川被害者サポートセンター3名

 終了後、両センター職員により第二回自助グループ実施に対するフォローアップが行われた。今回のフォローアップでは、前回と異なりNPO法人石川被害者サポートセンターのスタッフから質問が出される形ではなく、二回の自助グループ実施を通し感じたこと等について、都民センター職員との意見交換の場となった。

6) 実施団体職員による感想
 NPO法人石川被害者サポートセンターの職員3名から、自助グループ立ち上げに関し感想文が寄せられた。以下に内容をそのまま記載した。

自助グループ設立の必要性について
事務局長  吉田詔子
 被害者支援との関わり7年目で念願である自助グループを立ち上げ、そしてこの度、運営の足がかりを内閣府と都民センター事務局長大久保氏の指導のもとで、開催することが出来ました。サポートセンターを運営するには自助グループの存在が重大であることや、自助グループを私達支援者がより効果的に運営をする為にはどのようにしたらよいかを学びながら、自助グループの必要性を考えより良い支援の方向づけを模索したいと思います。

自助グループ設置までの戸惑い
 自助グループの必要性を認め十分理解をしていたが、いざ立ち上げるとなると非常に難しく思えた。例えば地域性を一つ取り上げても、この金沢の様な閉鎖的な地域で果たして立ち上げる事が出来るのか、ファシリテーターは誰がするのか、専門家との連携は・・・等考えだすと次から次と進むべき道が閉ざされていくのを感じました。準備の段階で支援者側として自助グループをどのような形で計画運営すべきか、その対応について話し合いを持ちました。以前より現在活動している「小さな家」「緒あしす」「なごみの和」などの自助グループとの交流の中で、多くを学び、そしてお会いした被害者遺族の方のお話をお聞きし、共に同じ時間を共有することで、被害者支援の充実に大きな力となることや、そこから真の被害者支援を学び取り被害者の声が生かされるのではないか等設置に際しての学習会を数回持ちました。私達支援者は被害者と常に車の両輪であり、決して救済者ではないことを確認し合いました。

サポートセンターとしての自助グループの設置の意義
 同じ体験をしたもの同士が理解し支え合うことで、自分が抱えている問題を共感してもらえることや、相互扶助の環境の中で個人のメンバーが自らの自己治癒力を発揮していける場所であること、そして社会の信頼感を回復する為の社会生活の場所、情報が得られる場所等がサポートセンターとして自助グループ設置の目的ではないかと考えました。

自助グループ実施後の反省(精神面について)
 サポートセンターとしての取り組み方に関しては、事前学習・指導面のサポートがありスムーズに開催できた様に思えました。ただファシリテーター側に精神的な課題が残りました。ファシリテーターの経験不足ということもあるが、被害者の話を聞いて自分自身が落ち込んでしまい、「こんな精神力では相談員として欠格ではないか」との問いかけがありました。私たちの話し合いの中で、相談員としてつらい話しをきいても少しも感情が動揺しない人は、その人こそ支援者には向いていないのではないか、自分が傷ついていることを感じないようにしたり、無視したりごまかしてしまっている人は、傷つく気持ちに鈍くなり、被害者の感情も敏感に共感できないのではないかと考えました。支援者はつらいと思う感情を大切にしなくてはいけないと考えます。素直に感じた心こそがファシリテーターとして大切であり多くを学ぶことができたのではないかと話し合いました。

自助グループの今後の課題として
 事前研修、サポート研修そして2回の自助グループの開催の中より、

 1) ファシリテーターの育成についての必要性を強く感じました。そのため、年に最低でも1度は自助グループ主催者及び開催希望者に対する研修会の実施を強く希望します。又無理ならば指導者を派遣し、ケアをすることが大切ではないかと考えます。
 2) 自助グループ同士の交流会を持つこと
 3) 専門家の人たちと連携をとること
 4) 運営面での資金及び場所の提供について

このような4点を考えてみました。最後に被害者をただ集めるだけでなく、いかにグループ全体をリードするかがサポートセンターとしての大切な役割と考えました。

以上

ファシリテーターをして
支援相談員  八尾章子
 昨年10月末、NPO法人石川被害者サポートセンターの支援する自助グループの第一回の集いを無事開くことができました。その記念すべき第一回の集まりで、ファシリテーターをさせていただきました。事前に事務局長の方からお話をいただいた時は、勉強不足な上、遺族の方の心に直接ふれる機会をあまり経験していなかったこともあり、できるのか・・・と不安になりました。遺族の方が書かれた本を何度も読み、ファシリテーターの役割を復唱しながら、心の置き所を探しました。表面的な言葉ではなく(ファシリテーターは話をしないのですが)、緊張しながら心を開き、感情の渦の中でも巻き込まれず、共に揺れながら、その場所にいることができる自分に成長していきたいと思いました。そしてただ「遺族の方に安心して話ができる場所を提供する、それしか、できないのだ」とも感じました。集いが終わってからも、自分の中では納得のできないものが残ったり、気持ちが落ち着かなかったりと、様々な心の変化を感じました。
 この経験は、私自身の浅さに気付かせてくれるものでした。「ヒトの心は限りなく深いものである、しかし又同時に限りなく浅いものである。その浅さで、ヒトは生きていけるのだ」というある写真家の言葉にふれて、浅く生きてきて、喜んだり悲しんだりしていた自分が深く生きている人に出会い、深く生きていくことの辛さを少しでも知るようになりました。私自身もできるなら辛くても深く生きることを選びたいと思っています。これから石川被害者サポートセンターの一員として、原点である遺族の方の心を忘れず、支援していけるよう、努めていきたいと感じています。

ファシリテーターをして
支援相談員  小川雅子
 しっかりテキストを頭にたたき込んで臨んだ第二回目の自助グループの会のはずでした。時計の針を目の端に入れながら、しかし私はかなり動揺していました。ある遺族の方の、悲痛な心の叫び、激しい語調の鋭い指摘の言葉の前で、否応もなく深く傷ついてきた彼女の傷口を目のあたりにすることとなったからです。涙ながらにほとばしり出てくる彼女の言葉に私も又、激しく打ちのめされる思いで身体が硬くなってしまいました。正視を避けて全身を耳にして遺族の方のお話を聞き入る。一段落した頃合いに私も呼吸を整える様に少しの間を置いて言葉を発する。一人の方の発言に呼応するかのように別の遺族の方が話し始める。伺いながら、やはり私はだんだん苦しくなってくる自分を少し持て余す。こんなに動揺している自分はファシリテーター失格だな、頭の片隅でそんなことを考えている生身の私。遺族の方々が今まで抑えていた心の扉を少し開けてその感情を吐き出す。ほぼ二時間が経過した時、そろそろ終了宣言かなと思いつつ次回未決定に気付き又してもあわてふためいてしまい一体全体この時のこの二時間は速かったのだろうか、それとも長く感じたのだろうか、まだよく分からない。その後のフォローアップで「むずかしかったです」と発言したが自分自身に対する課題は時間を経るにしたがって増えていく。臨機応変な対応や全体を見ながらの気働きのなさを改めて思い知った次第である。他のスタッフの方々の言葉にしっかり耳を傾けてこの自助グループの成長と共に自分自身を育ててゆきたいものと考えております。

7) 今後の課題
 NPO法人石川被害者サポートセンターから、二度の自助グループ実施を通し、今後自助グループに必要と考えられる点があげられた。


(2)(社)いばらき被害者支援センター

1) 事前研修会の実施
日時:平成15年10月21日(火)18:00〜20:00
場所:常磐大学 007号室
事前研修参加者:(社)被害者支援都民センター職員 4名、(社)いばらき被害者支援センター支援活動員 15名

 事前研修会では、本報告書の自助グループを開く意義、目的、効果、立ち上げ支援の進め方をレジュメ(P19:別紙1参照)として配布し、(社)被害者支援都民センター(以下、都民センターと記載)大久保事務局長から講義があり、その後、ビデオで都民センターの自助グループの実際の様子を学び、質疑応答の時間が設けられた。

―質疑応答の内容―
Q.自助グループ開催時間や会場について
A.自助グループへの参加遺族から意見を聞きながら無理がない運営が必要である。会終了後も参加遺族が、その会場において緊張を和らげることができる30分位の時間の余裕が適切である。

Q.参加遺族への連絡方法について
A.都民センターの連絡方法を例に上げながら、年間行事計画を年度初めに通知するとともに、開催時にもその都度通知する。参加遺族からは「気が重く参加できないことが度々あったが、連絡をもらえると一人ではないことを実感でき、何年たっても参加していいんだという安心感がもてた」という声が多くあり、密な連絡が大切である。

Q.自助グループへの参加をどのように募っているのか。
A.電話相談やカウンセリングを行う中で、自助グループへの参加が適当と判断したとき伝えている。また自助グループへの参加が有効な被害者と逆に不適切な被害者がいることも念頭に置きながら判断することが大切である。

Q.その日自助グループで話し合うテーマを、どのように決めたらいいのか
A.当日の自己紹介等の中で多かった内容などを参考にしながら、参加遺族から自然に話題が出てくるのを待つ姿勢が大切である。

Q.ファシリテーターの役割について
A.ファシリテーターは、参加遺族が安心して話ができる場を提供できること、平等に話せるようにすること、話題が自助グループの目的から逸れた時は、軌道修正する等、自助グループの促進者として心がけること。

以上、被害者支援の基本理念を確認する場として熱心な話し合いが行われた。

2) 第一回自助グループ
日時:平成15年11月27日(木)10:40〜12:30
場所:水戸市福祉ボランティア会館 第三ボランティア室
自助グループ参加者:自助グループメンバー 3名、(社)いばらき被害者支援センター職員 4名(含 精神科医師)、都民センター職員 3名

 第一回自助グループは、上記日時、場所にて開催された。参加者は、(社)いばらき被害者支援センターで電話相談や直接支援を受けているご遺族であった。
 ファシリテーターから、開催に先立ち、参加遺族に手渡されていた自助グループ参加時の注意事項が書かれたパンフレットを読み上げ始まった。
 その後ファシリテーターの促しによって参加遺族から発言があり、それを機に今まで言葉にできなかった思いを次々と語り、会が進行していった。
 参加遺族は、事故からあまり時間が経過していない人が多かったため、刑事裁判についての話題が多く出た。
 また、それぞれ今まで誰にも言えなかった辛い気持ち、例えば事故に対する自責の念に駆られていること等の話しも出た。
 司法・行政機関等への不満として、事故当日の説明が不十分だったことや、記録の閲覧には時間がかかり過ぎること等語られ、参加遺族の多くが同調していた。
 初めての自助グループの開催であったが、会の終了後は、参加遺族同士で情報交換する姿があり、目的の一つである"仲間同士の交流"が活発になされていた。

3) フォローアップ
 同日、場所を(社)いばらき被害者支援センター所在地に移し、(社)いばらき被害者支援センター職員及び専門医師、都民センター職員によりフォローアップが行われた。
 (社)いばらき被害者支援センター職員からは、自助グループ開催までの準備期間には、職員で何度も話し合いを重ねたこと、また事前研修で学んだ「進め方の実際」や「開催中に留意すること」には特に気を遣って開催に臨んだとの話があった。
 参加者が安心をして気持ちをだして話している様子に開催してよかった、また、自助グループの必要性を肌で感じたという感想が出た。実際に開催するまでは何ができるだろうか、果たしてメンバーは嫌な思いをせずに帰ってもらえるだろうか等多くの不安があったが、実施した結果、自助グループの必要性が(社)いばらき被害者支援センター職員の間でも明確になりよかったとの意見がでた。
 支援者側の役割のみならず、心穏やかに時間を過ごせるよう、机の配置、方法、開催場所の決定、会場の照明や室温・お花等、快適な環境を整えるため慎重に準備を行った。特に場所は、(社)いばらき被害者支援センター所在地が、常磐大学内「犯罪被害者学研究所」と同棟にあり、その名称が遺族にとって抵抗感があるのではないかと考えられたため、支援センター内ではなく、参加遺族が集いやすい場所であるJR駅舎に併設の建物内で行った。
 更に、支援者の心のバランスの取り方や支援者が泣くということが、参加遺族にどのように影響するのか等の質問が出た。都民センター職員から、「人間として心が動くということは、大切だし当然のこと。泣く・泣かないということより、安心して話せる場を提供することが大切で、そのことを忘れてはいけない。」と助言した。また、専門医師からは「ファシリテーターの役割について」というアドバイスがあった。参加遺族は押し込めていた感情を吐露したいという思いが支援者側に伝わってきて、今後も自助グループを効果的に継続できる手応えを感じて終了した。

4) 第二回自助グループ
日時:平成16年1月23日(木)10:40〜12:30
場所:水戸市福祉ボランティア会館 第二ボランティア室
自助グループ参加者:自助グループメンバー 4名、(社)いばらき被害者支援センター職員 4名(含 精神科医師)、都民センター職員 3名、内閣府職員 1名

 第二回自助グループは、開始時間を参加遺族の都合を優先し、更に当日交通機関の遅延のため、10時49分から開催された。参加遺族に新たに1名が加わり、また内閣府から職員1名が参加した。
 第一回同様、職員及び参加遺族の自己紹介が行われ、会が進んだ。前回も話題として上がった刑事裁判についての話が中心になった。参加遺族は事故からあまり時間が経過していないこともあって、事故当時の警察の扱いや裁判で被害者が上告できないことや加害者への怒りよりも狂った世の中への怒りの方が大きいという、社会や刑事司法に対する怒りが非常に強く語られた。内閣府職員が参加しているということもあり、運転免許を与える公的機関は、責任を持って免許の交付をして欲しい(年齢の上限を設けるとか、事故を起こした人への更新時期について等)、事故車両は加害者の責任の下で裁判が終わるまで保管する義務を科す、どのような状況でも横断歩道では歩行者が守られるように、たとえ初犯であっても厳しい罰則を設けて欲しい等、法整備について政府で積極的に関わって欲しいという要望が出された。
 会終了後、参加遺族と(社)いばらき被害者支援センター職員が今後の自助グループの開催について時間・場所等の打ち合わせをして終了した。

5) フォローアップ
 同日、14時30分から16時30分まで、前回同様、(社)いばらき被害者支援センター所在地に移動して第二回自助グループ開催のフォローアップが行われた。
 (社)いばらき被害者支援センター職員からの自由な感想や意見をもとに今後の課題などについて次のような質問があり、都民センター職員から答えた。

<質疑応答>
Q.自助グループを開催するたびにルールを説明するが、毎回必要なものか
A.毎回説明するのは、自助グループに参加する時の基本的な約束を参加遺族全員が理解することで、安心で安全な場であることを確認するために大切なことである。

Q.毎回自己紹介をすることの意義について
A.自己紹介は、ウォーミングアップであり、自助グループの扉と自身の心の扉を開けることになる。

 参加者遺族から口々に言われた「時間が短かった」ということについては、参加者遺族は話せる場所を探していたという現れでもあり、安心して話せる場として自助グループの必要性を改めて感じたと意見が出された。前回に比べて参加者遺族から次々に話が出されたが、裁判や刑事司法に対する疑問点や社会に対する怒りが中心に進んだことは、果たして今後の自助グループのあり方としてどうだろうかと疑問点があげられた。都民センター職員から、自助グループは気持ちを分かちあう会であるという認識で、いつでも変わらない姿勢でいくことが大切と助言された。
 (社)いばらき被害者支援センターでは、今後検討を重ね、自助グループが地域に根付くように努力をすると職員お互いの意思を確認して、新たな一歩を踏み出すことになった。

6) 実施団体職員による感想 (担当:照山美知子、大都智子、森田ひろみ)

 (社)いばらき被害者支援センターでは、設立以来、自助グループを立ち上げることを目標の一つに掲げてきた。しかし、立ち上げ方、その後の運営などわらないことだけであった。特に、センター主導ではなく、被害者の方からの要望があってから立ち上げるものであり、その中核となる方がいなければできないものと思っていた。そのような足踏み状態を続けてきた中、今回、内閣府と都民センターから、交通事故ご遺族を対象とした自助グループ支援事業があるとお話しを頂き、第一歩を踏み出すことができた。
 まず、都民センターから大久保事務局長以下4名の職員を招いて、事前研修会を開催した。支援活動員を対象としたこの研修会はとても効果的であった。できるのかと不安でいっぱいだったが、この研修により自助グループの意義や具体的な取り組み方が見えてきたことが、大きな支えとなった。
 また、参加してくださる交通事故ご遺族がいるのか、無理なお誘いをして嫌な思いをさせるのではないかということが、一番の心配事であった。しかし事前研修時に都民センターの大久保事務局長から「何人でもいいから無理をしないで勧めてください」との助言に肩の力を抜くことができた。
 11月27日第一回自助グループを開催し、ご遺族3名が参加、関係者の方が多くて話しづらいのではないかと心配したが、予想以上にいろいろな思いを語ってくださり、ご遺族の皆さんは、やはりこのような語れる場を望んでいたのではないかと感じた。今回参加されたご遺族は被害から2年以内の方ばかりだったので、都民センター自助グループから参加された方の存在はとても重要で、お話の内容からも癒され、励みになったと思われる。
 年が明け、1月23日に第二回自助グループを開催。前回より1名増えて4名の方の参加であった。前回参加したご遺族の情報から参加希望と聞き、コンタクトをとって参加となった。会も2回目となって話しやすくなったのか、前回よりも怒り・悲しさ・辛さ・要望など多くが語られた。
 この二回の自助グループ開催により、多くのことを学んだ。被害者の方々にとって安心して思いを語れる場が必要であることを改めて実感した。様々なプロセスがあり、そのことによって回復への道を歩み出せる方がいるということが私達支援者を頑張らせてくれる。
 三回目は、2月中旬以降に、立ち上がった会を今後どのように進めていくかをご遺族の方々とセンター職員では話し合うことになっているが、その前にセンターとして自助グループをどのように位置づけていくのかをしっかり話し合う予定である。また、具体的には、場所・時間・経費等の問題についても検討し、自助グループの意義を十分踏まえた上で、良い支援ができるように努力をしていきたい。
 内閣府の支援事業ということで、第二回目に内閣府職員が参加してくださったことで、ご遺族の、司法・行政への不満・怒り・要望を伝えることができたことも含め、自助グループ立ち上げをサポートして頂いたことに感謝している。被害者が失っていた社会への信頼を少しずつ取り戻していくきっかけになったのではないか。
 これからも原点を見失わずに支援活動を進めていく決意を新たにした。

7) 今後の課題

 以上のように、厳しい課題が残されているが、自助グループの必要性を重視し、今後は地域別の課題と向き合っていかなければならない。

(3)立ち上げ支援の課題
 立ち上げ支援の課題は、以下のとおりにまとめられると考える。

 1)  民間支援センターが関わらず、被害者自らが運営する自助グループ(全国に20数カ所あると思われる)では、被害者個人の努力によってのみ行なわれている場合が多いため、主催する被害者の経済的、精神的負担が大きい。
  • 連絡方法
  • 会場確保
  • 協力者の確保
  • 財政的基盤
 2)  自助グループの効果的な運営に関する研修の機会もなく、自己流で行ない、被害者同士で傷つけてしまうこともあるため、主催者に対する研修の機会を提供することが必要である。
 3)  気軽に参加できるためには、もっと身近なところで参加できる自助グループを、各地の民間被害者支援組織、自治体や関係者が援助して作る必要がある。
 4)  ファシリテーターを育成する。
 5)  男性や子供も参加しやすい内容や開催日時の工夫(夏休みのサマーキャンプ、野外活動など)をする。
 6)  小さな子供を持つ被害者も参加しやすい、保育体制を確立する。


別紙1

パートナー事業報告書

1 はじめに

2 事業概要

3 ネットワーク機能

4 自助グループ立ち上げ支援(分担 大久保)

(1)自助グループを開く意義
 交通被害者(以下「遺族を含む」)は被害後、関係者や周囲の人たちから、励ましの言葉をかけられるが、被害を受けた衝撃が大きく、被害に遭った実感も持てず励ましに応えられる状態でなくなる。 周囲の励ましに応えられない自分を責め、励ましの言葉がかえって苦痛に感じ、同じような体験者でなければ自分の悲しみや苦しみは分かってもらえないと思い込み、本心は話せない。
 激しいトラウマ(心の傷)を負い極限状態に追い込まれている被害者は、回避症状(被害に遭わなかったことにしたい・自分が被害者になるわけがない・被害については考えたくないなど)が表れ、人としての自尊心をも失い将来に対する希望も失いがちになる。
 過覚醒やフラッシュバック等の精神的反応により自分で自分の感情コントロールができずいらいらして周囲に怒りをぶつけてしまう、眠れない、ちょっとしたことで恐怖や不安を感じる、思い出したくないのに事故を思い出す、怖い夢にうなされるなどといった症状にも苦しめられることがある。
 このような、様々な症状は衝撃を受ければ当然のことであるが、「自分はおかしくなってしまった」と考え苦しむことも多い。
 そのため、その一言で理解し合える仲間の存在は被害者被害からの回復に大きな力となるため意義が大きい。

(2)自助グループの目的

 1) 悲嘆を取り除くのではなく、乗り越えるのを支え合う
 2) 考えや気持を素直に語る事により、新しい被害者と時間が経った被害者が交流の中から各々が希望が持てる場になる。
 3) 回復の過程は似ていても被害者自身の方法や時間で回復することを実感する場でもある。
 4) 被害者自身が抱えている問題に対処する。
 5) 破壊された人や社会への信頼感を取り戻し健全な自己愛を再構築する。

(3)自助グループの効果
 (1)自助グループの実践から

 1) 仲間の存在そのものが孤立感を軽減する
 2) 安心して感情を吐露できる場
 3) 社会への信頼感を取り戻す場
 4) 新たな被害者が時間が経った被害者に会い、回復していることを見て希望が持てるような場になる。
 5) 自分の体験談が他の被害者に役立つことを実感し、「こんな私でも他の人の役に立てるという実感」を持てることが自尊心を取り戻し回復に役立つ。
 6) 周囲や関係者から受ける二次被害は共通のことと知り、自分だけではないと思え、安心して立ち向かう力を付けることができる。
 7) 怒りの気持や、悲しみから抜け出せない自分だが弱いのではなく被害者として当たり前の感情だと分り、気持にゆとりが持てる。
 8) 他の被害者がどのようにして回復してきたのか、どのように工夫して生きているかを知り、今後の生き方の参考になる。
 9) 仲間の話しの中から、自分なりの回復のきっかけを掴むことが出きる
例えば
  • カウンセリングを受けよう
  • 民事裁判をしよう
  • 持ち物や部屋を片付けよう
  • 納骨をしよう
  • 自分なりの法事をしよう
  • 被害者の実態や命の大切さを社会に訴え社会を改革しよう等
 10) 情報を得ることが出来る
  • 被害者支援の現状や動きを知り、希望を持てる場になる。
 11) 仲間の中で、対人関係能力が育ち、再び社会に対してや周囲の人に対しての人間関係の再構築と信頼感を取り戻すための場所になる。

 (2)遺族へのアンケート調査結果から

1) 参加前
2) 参加してから一年後

 (3)まとめ

 1) 自助グループに参加することによって、グループの中で感情の表現や安心できる関わりを持てるため気分や社会生活が改善する。
 2) 社会参加への意欲、将来への希望などがもたらされる。
 3) 安心できる人間関係を取り戻し、感情の回復や意欲の改善をもたらす効果がある。

 (4)立ち上げ支援の進め方

事前準備開催時終了時留意点
  • 支援センター宛の依頼文書作成と送付
  • 支援センター内での周知
  • 事前研修会場の確保
  • 受講相談員への連絡
  • 参加遺族への連絡
  • 資料の作成
  • 会場準備と環境整備を行う
    (時計・ティッシュペーパー・お菓子・お茶など)
  • 自由に話せる雰囲気作りを工夫する
  • 支援センターと参加者の信頼関係を築く
  • 参加遺族の名札の準備
  • 出席表の準備
  • 資料の準備と配布
  • 必要物品の準備
  • 参加者が率直に話してくれたことへのお礼を言い、次回開催日を伝える
  • 研修参加者への連絡
  • 次回自助グループ開催のお知らせ
  • お茶の準備
  • 会場の撤収
  • 参加者が十分に話せるようにする
  • スタッフは複数で入り、参加者の状況を常に把握する
  • 参加者の希望を聞き、支援センターとしてできることを実施する

 (5)立ち上げ支援の実施

1) 自助グループ実施計画表


3 被害者に接する時必要なこと(MADD資料より)

(1)支援者の質について

1) 自分自身が健康であること
  • 相手の言うことを冷静に聞ける
  • トラウマを支援することにより、自分が痛みを感じるようであれば支援に適さない。
2) 支援者であり救済者ではないことを自覚して被害者に接する
  • 支援者は被害者の持つ自己回復力を引き出す。
  • 救済者は短期的には良いが、長期的には自己回復力を損なってしまう。
1) 支援者として活動することは、悲嘆の中に置かれる上、怒りや復讐心を持つ被害者に接するため、被害者自身も混乱しやすい。そのため、なぜ自分は被害者支援に関わっているのかを自覚している必要がある。
2) 自分の人生観をしっかりと持ち、自分のできる限度を知っていることが大切。
3) 時間的、経済的にゆとりがあり、被害者を真に気遣い、共感することが出来、ある程度の期間は特定の人に関われることが望ましい。
4) 自分の体験や経験を持ち出さない
5) 被害者支援者は被害者支援に専念出来る人が望ましい。
  • 各種のボランティアを兼ねていない

(2)被害者支援者の役割

1) どんな感情を持っても「それで良い」と知らせる。
  • それは異常な出来事に対する正常な反応。

資料 被害者支援者選択のガイドライン(MADDより)

以上のことを一言で言うと「支配したい」という強力な願望を持っている。
支配的行動に出る人は自己評価が低く、自分自身の価値に関して問題を抱えていることが多い。
その他

 被害者に接する時は、このようなことがないかをいつも自分に問いかけながら、被害者に向き合う姿勢が大切。

5 おわりに

 被害者は大きな衝撃で物を考える力や行動する気力を無くしているが適切な支援があれば、時間はかかっても、もともと持っている自己回復力で自分なりに何とか立ち直っていけます。
 そのためには、被害者に関わるすべての人々が自分の価値観や道徳観を押し付けることなく、目の前にいる被害者をそのまま受け止め必要な支援を行うことが大切。
 被害者支援に関わる人は、単に被害者を支援することではなく、人間として生きていく上で本当に大切な価値は何なのかに気付いて、弱い立場の人が泣き寝入りしないですむ文化をこの日本に作り、根付かせることでもあると考える。


自助グループ実施計画表

場所
担当者
事前準備(9月) 10月 11月 12月 1月 2月 3月
石川

大久保
望月
正木
久保田(遺族)
石川相談室から3名
講師:奥田


電話等による連絡等
事前研修会
大久保・久保田
外山・中村
・自助グループの意義
・グループ実施方法

実施予定日
10月9日
 19:00
第1回 自助グループ
大久保・鷲尾・久保田 講師:奥田
実施予定日
第1回 フォローアップ
大久保・正木・久保田

実施予定日
10月30日

第2回 自助グループ
大久保・正木・久保田 講師奥田
実施予定日
第2回フォローアップ
大久保・正木・久保田

実施予定日
12月11日

報告書準備 報告書作成
大久保
正木
備考
・自助グループ開催場所―石川被害者相談室
・各回共、1泊2日で実施
いばらき

大久保
望月
鷲尾
小畑(遺族)
いばらきセンターから3名
講師:中島


電話等による連絡等

事前研修会
大久保・望月・鷲尾
小畑
・自助グループの意義
・グループ実施方法

実施予定日
10月21日
  18:00
第1回 自助グループ
望月・鷲尾・小畑
講師:中島
実施予定日
第1回 フォローアップ
望月・鷲尾・小畑

実施予定日
11月27日

第2回 自助グループ
望月・鷲尾・小畑
講師:中島
実施予定日
第2回 フォローアップ
望月・鷲尾・小畑

実施予定日
1月23日
報告書準備 報告書作成
大久保
鷲尾
備考
・自助グループ開催場所―いばらき支援センター
・各回共、1泊2日で実施


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