4-2 カナダの包括的な最初の報告の国連審査状況

 カナダは、国連の創設メンバーとして、これまで、障害者権利条約など、7つの主要な人権条約、規約を批准している。カナダは、2010年3月11日に障害者権利条約を批准し、2010年4月12日に施行している86。また、2016年8月の第16会期会合でカナダに対する事前質問事項が提出され、2017年3月の第17会期会合で包括的な最初の報告、市民社会の報告などが検討され、障害者権利委員会の総括所見がまとめられる予定である。

(1) 審査プロセスの概況

1)障害者権利条約の批准

 カナダは、州、準州、先住民(アボリジニ)自治政府、カナダ人(特に障害者コミュニティ)との協議を経て、2010年3月11日に障害者権利条約を批准した。カナダは、2007年3月30日に条約に署名した最初の締約国の1つである。87

2)障害者権利条約に基づく報告

 カナダ政府は、2014年に包括的な最初の報告を提出している。包括的な最初の報告には、カナダにおける条約の実施に関する情報が含まれており、障害者権利に関する主要な連邦、州、準州(F-P/T)法、政策、プログラムについて説明している。第1部は条約第1~7条、第12条、第31~33条に関するすべての管轄区の情報を提供し、第2部は、主題ごとに分けて、各連邦-州・準州政府による特定の措置に焦点を当てている。88
 カナダに関しては、これまで、包括的な最初の報告及び共通基幹文書を提出しており、これに対する事前質問事項が2016年9月に出されている。
 2017年2月から3月にかけて、市民社会、カナダ人権委員会などから多数のパラレルレポートや情報提供資料が提出された。また、事前質問事項に対するカナダ政府の回答が2017年3月3日に国連障害者権利委員会に提出された。

図表4-3 カナダの報告書提出状況 (図表4-3のテキスト版

(出所:障害者権利委員会サイト及び各資料より作成)

3)市民社会からの情報

 カナダの市民社会からの情報は、これまで、独立した仕組みからの報告、パラレルレポートを含めて、17件提出されている。

図表4-4 障害者権利委員会へ報告書を提出した団体
団体名 提出日
「カナダ市民社会パラレルレポートグループ(the Canadian Civil Society Parallel Report Group) 2017/2/27
カナダ人権委員会 2016/7、2017/2
Autistic Self Advocacy Network Canada 2016/8/1
Canadian Civil Society Report Group
Mad Canada Shadow Report Group 2016/7
Mad Canada Shadow Report Group 2017/2/2
Disabled Women’s Network of Canada-Réseau D’action des Femmes Handicappées du Canada (DAWN-RAFH Canada)
Disabled Women’s Network of Canada-Réseau D’action des Femmes Handicappées du Canada (DAWN-RAFH Canada) 2017/2
Global Initiative To End All Corporal Punishment of Children
Ontario Network of Injured Workers Group (ONIWG) 2017/2/6
Action Canada for Sexual Health and Rights 2017/2/27
Autistic Minority International-Canada 2017/2/27
Canada Without Poverty 2017/2/27
Egale Canada Human Rights Trust 2017/2/28
Income Security Advocacy Centre 2017/2/28
Group of Canadian civil society organizations on Canada 2017/3/15

(出所:障害者権利委員会サイトに基づき作成)

 ここでは、これらの報告書のうち、2017年2月27日に提出された、カナダ市民社会パラレルレポートグループのパラレルレポートについて概説する。

Parallel Report for Canada89

 この報告書は、16の障害者団体(DPOs)及び「横断的に障害のあるカナダ人を代表している支援者から構成されている特別な(アドホックな)グループである「カナダ市民社会パラレルレポートグループ」によって作成されている。報告書を策定した団体は、以下のとおりである。

  • ARCH Disability Law Centre
  • Canada Without Poverty
  • Canadian Association for Community Living
  • Canadian Association of the Deaf
  • Canadian Council on Rehabilitation and Work
  • Canadian Centre on Disability Studies
  • Canadian National Institute for the Blind
  • Canadian Labour Congress
  • Council of Canadians with Disabilities
  • Disability Rights Promotion International, York University
  • DisAbled Women’s Network
  • Independent Living Canada
  • MAD Canada
  • Ontario Network of Injured Workers
  • Participation & Knowledge Translation in Childhood Disability Lab, McGill University
  • People First Canada

 報告書では、「カナダは、比較的裕福な国であり、社会保障政策及びプログラムを策定し、憲法上の権利及び自由を守り、法の支配を尊重している。それにもかかわらず、カナダでは、障害者は、健常者に比べて、貧困率、失業率が高く、教育からの排除、差別を経験している。この報告書に寄与したDPOsは、現カナダ政府が実施した障害者の人権保護、促進の措置により、非常に勇気づけられている。しかし、我々は、カナダにおいて、多くの障害者権利条約の一般的義務及び特定の権利が、実施、実現されていないと懸念している。カナダにおいて、障害者の完全なアクセシビリティ、包容、真の市民権を達成するために必要なことは、まだ多くある。」と述べている。
 その上で、パラレルレポートでは、以下のことをカナダ政府に求めている。

  • カナダは、条約を促進、保護、監視するため、カナダ人権委員会を独立した仕組みに指定しなければならない。委員会が適切にその役割を果たせるようにするため、この指定に伴い、追加の資源が必要となる。
  • カナダは、条約の設計、実施、監視においてその役割を果たすために、障害者団体を支援する資金を指定しなければならない。障害のある子供、若者、障害のある先住民、聴覚障害者、障害のある女性が監視及び実施の取組に参加する十分な資源、機会を有するよう、特に注意を払わなければならない。
  • カナダは、既存の連邦、州、準州の仕組みを通じて、障害者コミュニティと協議し、共有した条約実施の計画を策定し、実行しなければならない。

(2) カナダの審査プロセスにおける主な論点

 ここでは2017年3月までに提出されたイギリス政府、市民社会、カナダ人権委員会からの報告及び障害者権利委員会がまとめた事前質問事項並びに事前質問事項に対するカナダ政府の回答について、主要条項に関する論点のポイントを示す。

第5条 平等及び無差別

 包括的な最初の報告では、カナダ権利自由憲章第15章で障害者の平等及び無差別が確立されていると述べる一方、ここでは「障害」の定義はなされていないとしている。ただし、障害については最高裁判所によって幅広く解釈されてきたと述べている。また、合理的配慮義務に言及しているが、この義務がどの法律によって裏付けられているのかは示していない。
 パラレルレポートは、障害のある先住民が複合的・横断的な差別に直面し十分なサービスを提供されていないことや、差別に関する苦情申立てのほぼ半数が障害者からの苦情であることを指摘した。
 事前質問事項では、次世代の障害(障害の可能性がある胎児など)への差別が人権法の対象になっているか、先住民などへの複合的差別をなくすための措置、障害に基づく差別に対する救済について情報提供を求めた。
 カナダ政府の回答は、次世代の障害への差別は、人権法と憲章で禁止されているという解釈を示し、また複合的差別については人権法が明確に禁止していると述べる一方、差別に対する具体的措置については言及せず、「部門を横断した政策の作成を検討している」と述べるにとどまっている。

第6条 障害のある女子

 包括的な最初の報告は、性別に基づく差別は憲章や各州などの人権法で禁止されていること、女性地位庁が障害者のある女性の支援プログラムに資金提供していることなどを指摘した。これに対しパラレルレポートは、女性障害者の多くが複合的差別を実際に経験していること、教育達成度や雇用の水準が低いことなどを指摘した。
 事前質問事項は、障害のある女性・女児の具体的な支援プログラムや、障害のある女性への昇進・能力開発・権限付与のための措置について情報を求めた。
 カナダ政府からの回答では、カナダ政府は障害のあるすべての女性に手を差し伸べているとし、特に女性障害者ネットワークカナダ(DAWN)の活動を支援していることを挙げている。

第9条 施設及びサービス等の利用の容易さ

 包括的な最初の報告では、アクセシビリティに関する措置は基本的には各州などの法律などで定めるものであるとした上で、連邦政府所管の不動産や輸送サービス、放送・長距離通信について連邦政府が実施している施策を紹介した。
 事前質問事項は、各分野のアクセシビリティ改善の実施を監視する措置と、アクセシビリティ要件を遵守しない場合の制裁について情報提供を求めた。
 カナダ政府の回答では、アクセシビリティ要件の不履行に対する措置の例として、個人の苦情申立て、業界報告を通じた監視、報告指示や罰金などを挙げている。さらに、オンタリオ州やマニトバでの施策例を紹介している。

第12条 法律の前にひとしく認められる権利

 カナダは障害者権利条約第12条を留保している。包括的な最初の報告では無能力の判断について、障害の有無によってではなく個人の実際の意思決定能力の有無を根拠とすべきと述べ、無能力の判定そのものは否定していない。さらに、すべての州・準州に、代理意思決定に関する法律があることが報告された。パラレルレポートでも、大部分の州・準州が代理意思決定に関する法律を有していることが指摘されたが、幾つかの州ではこれらの法律改革の取組が進んでいることも紹介された。
 これらを受けて事前質問事項は、後見や代理意思決定の対象となっている成人障害者数、代理意思決定でどのような決定がなされているか、代理意思決定数の推移、支援付き意思決定のサービスを受ける障害者数、これらに関するプロジェクトや研究の状況について情報提供を求めた。
 カナダ政府の回答では、後見制度、代理意思決定制度、支援付き意思決定制度それぞれの下にある成人障害者数を州・準州別に具体的に報告している。それによると、後見制度の下にある成人数は州・準州によって大きな差がある。また、ケベック州など複数の州・準州で後見を受ける人数が増加している一方、ブリティッシュコロンビア州では後見を受ける人の数が減少しており、施策の方向性が州によって大きく異なっている現状が報告されている。革新的プロジェクトとしてはニューブランズウィック州の支援サービス提供プロジェクト、ケベック州で新しい援助された意思決定(new assisted decision-making)に関する関係者協議が始まったことなどを挙げている。

第19条 自立した生活及び地域社会への包容

 包括的な最初の報告では、障害者の生活のあらゆる面で包容・参加・自立の促進のため、課税控除・収入補助・社会給付やサービスを提供していると述べ、少数民族の地域介護プログラムや退役軍人向け補助金などの例を挙げている。これに対しパラレルレポートは、障害者、特に知的障害者が隔離された環境や施設で生活していること、地域社会での生活や社会参加への支援が欠如していること等を指摘した。
 これらを受けて事前質問事項では、居住型施設の数とそこに居住する障害者数及びその増減の状況、地域社会に基づく自立生活支援サービスへの予算配分状況、脱施設化に関する最近の取組などについて情報提供を求めた。
 カナダ政府の回答では、居住型施設の現状について州・準州別の具体的な状況を報告すると共に、生活支援プログラムにカナダ政府が1億400万ドル提供したことを報告している。ただし、この予算の半分は施設環境での介護に提供されたとも述べている。

第21条 表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会

 包括的な最初の報告では、カナダ政府が公表した情報を障害者に配慮した複合的な形式で提供することを政策としているとし、WCAG2.0(ウェブアクセシビリティ)を考慮し、作成したすべての資料について、「要求に応じて」点字・拡大文字・音声などの代替形式で提供することなどを挙げた。
 包括的な最初の報告は、一般向けの情報が前述の補助的・代替的コミュニケーションによって障害者が利用可能になっているのかを尋ねた。
 カナダ政府の回答では、政府は一般向け情報のアクセシビリティを保証しているとして、手話によるビデオリレーサービスへの支援、新しいコミュニケーション政策の実施といった取組を挙げている。

第24条 教育

 包括的な最初の報告では、教育は主に州・準州の管轄であると断った上で、カナダ政府は障害のある学生の高等教育を支援していると述べている。その取組として、宿泊費・授業料・手話通訳・介助者・ノートテイカーなどにかかる教育関連費用への補助金など、専ら経済的支援を挙げた。
 これに対しパラレルレポートでは、障害のある学生・生徒の多くが平等な教育を受けることができておらず、地域から離れたり、通信教育を受けたりしていると指摘した。一方で、ろう者や難聴者の多くが特殊教育センターの閉鎖に反対してきたことを指摘し、その理由として、教育施設の利用に障壁があること、手話による教育が促進されていないことなどを挙げた。さらに、障害のある先住民の子供の多くが、支援サービスの欠如のために学校で教育を受けられないことを指摘した。

 これらを受けて事前質問事項では、隔離された環境で教育を受ける障害学生・生徒の状況、盲人・ろう者・盲ろうの学生・生徒の状況、障害のある学生・生徒に対するインクルーシブ教育や合理的配慮に関する政府の考え方、先住民の子供への支援の考え方などについて情報提供を求めた。
 カナダ政府の回答では、障害のある学生・生徒はインクルーシブ教育のための配慮と支援を提供されており、「極端な状況」においてのみ隔離された学習環境に置かれると説明している。先住民については、特別居留地の先住民の盲人・ろう者・盲ろうの学生・生徒に対し助成を提供すると述べている。さらに、各州・準州の取組や考え方を個別に紹介しているが、それによると、ニューファンドランドやラブラドールのように隔離された学校が完全に閉鎖された州がある一方、ケベックやヌナブト、プリンスエドワード島では一部の障害のある学生・生徒は普通学校から離れた環境で教育を受けていることが示された。

第33条 国内における実施及び監視

 前述のとおり、カナダ政府は独立した仕組みについて特定の組織を指定していない。包括的な最初の報告では、「第33条2項に応じたカナダの枠組みは幾つかの要素で構成されている。これらの仕組みは共同で、条約に挙げられた諸権利の推進・保護・監視の役割を果たしている」と説明した。これに対しパラレルレポートでは、カナダ人権委員会を監視の仕組みとして指定すべきと指摘した。
 これらを受けて事前質問事項では、政府が実施した独立した仕組みを確立するための措置、障害者の参加を保証するための措置について情報を求めた。
 カナダ政府の回答では、「促進・保護・監視の枠組みは、様々な仕組みで構成されている。カナダ政府は引き続き、これらの既存の仕組みに信頼を寄せている」として、包括的な最初の報告で示した考え方を再提示している。また、障害者の参加については、まさにこれらの仕組みを通じて政府の取組の監視に参加できるとし、さらに障害者団体は独自に政府の措置を分析し、その結果を議会や政府に対し報告できる、と述べるにとどまっている。

図表4-5 カナダの審査プロセスにおける主要論点
項目 包括的な最初の報告のポイント パラレルレポートでの指摘 事前質問事項での情報提供要求事項 事前質問事項への回答
第5条
平等及び無差別
  • カナダには障害者の平等及び無差別の保護があり、憲章第15章で確立され、F-P/Tの人権に関する法律で規定されている。
  • カナダ人権法で、「今後の(次世代の)障害」に関する差別が対象になっているか。
  • 遺伝子性のものなどを示す「次世代の障害」については、国内の人権法と検証で「障害」に基づく禁止事由に網羅されていると理解している。
  • 憲章第15章では「障害」の定義がなされていないが、広く発展的な範囲を取り込む形でカナダ最高裁によって幅広く解釈されてきた。
  • カナダ人権法(CHRA)は障害に基づく差別を禁止している。この法律はカナダ政府、ファーストネーションズ政府、連邦政府によって所管される民間の業務に対して適用される。すべての州・準州には類似の人権法がある。
  • 障害のある先住民は、複合的・横断的な差別に直面している。
  • 多くの事例で、ファーストネーションズに対するサービスには少額の資金しか提供されておらず、サービスはしばしば利用不可能で、質が低い。
  • 障害のある先住民を含めて、障害者に対する複合的な差別をなくすための措置について。
  • すべてのレベルで提供される効果的な救済と補償について。
  • カナダの法制度は、複合的な差別事由の結合がより大きな影響を与えることを認識している。カナダ人権法は、複合的な事由に基づく差別を明確に禁止している。連邦-州・準州政府も、複合的な差別により特定のグループが攻撃されやすいことを明らかにするため、部門を横断した政策の作成を検討している。
  • 合理的配慮義務は、健康、安全、費用などの面を考慮した場合に、過度な困難が発生する場合を除いて、障害のある従業員や利用者が必要とする支援に対し雇用者やサービス提供者が配慮を提供することを求めている。
  • カナダ全土で、他のどのグループよりも障害者から、差別に関する申立てを多く受ける。カナダでの差別に関する苦情申立てのほぼ半数が障害に関連している。
  • 障害のある学生の多くは、教育で適切な配慮を受けていない。障害者は雇用で差別を経験している。障害のあるカナダ人が経験する差別の度合いは、政府・州の人権委員会または裁判所に申請された差別に関する苦情申立ての数に現れている。
  • 障害に基づく差別に対し利用可能な法的救済と実際に行われている救済について。
第6条
障害のある女子
  • 憲章及び連邦-州・準州の人権法では性別に基づく差別を禁止している。障害に基づく差別において、男女ではその経験に違いが出る可能性があると認識している。
  • 障害のある女性及び女児は、複合的な差別を経験している。障害のある女性は基本的な介護も拒否され、あるいは手荒な扱いを受ける可能性がある。
  • 障害のある女性と女児を支援するために立案され、実施されているプログラムについて。
  • 例えばカナダ政府は、ろう者、先住民、移民、LGBTTQ、高齢女性、シングルマザーを含め障害のあるすべての女性に手を差し伸べている、女性障害者ネットワークカナダの活動を支援している。
  • 女性地位庁(SWC)は、障害者を含むすべての女性の平等と完全な参加を促進している。女性地位庁は障害のある女性を支援するプロジェクトに投資している。
  • 障害のある女性及び女児では、教育達成度や雇用配置は低いレベルにある。
  • 障害のある女性や女児の昇進、発達、権限付与のための措置について、特に先住民の女性や女児に対するものについて。
第9条
施設及びサービス等の利用の容易さ
  • 連邦-州・準州の人権に関する法律などで定められる義務、規則などの一連の措置を通じて、施設及びサービスの利用の容易さを扱っている。
  • 条約のすべての領域についてアクセシビリティに関する実施を監視する措置と、アクセシビリティ要件の遵守が不足している場合の制裁について。
  • アクセシビリティ要件の不履行に対する措置の例は以下のとおりである。
  • 雇用や製品、サービス、施設などにおいてこのような障壁を経験した場合、個人の苦情申立てを可能にする。
  • ラジオ・テレビについては公衆から受けた苦情申立てや業界報告を通じて監視される。不履行への対処は、報告指示や行政上の罰金など様々な手段で行われる。
  • オンタリオ州は同州アクセシビリティ法(AODA)の下、基準を満たしていることを確認する監査を行う。AODAまたはその規則を遵守していない場合、検査、罰金、起訴など幾つかの強制ツールを利用することができる。
  • マニトバのアクセシビリティ法では、20人以上の職員を有する公共部門、民間部門の組織は、アクセシビリティ基準を遵守するためにとる措置を文書化しなければならない。不履行の場合は行政処罰、罰金が課される。
  • カナダ政府の不動産アクセシビリティ基準は、連邦所有不動産へのバリアフリーなアクセスと使用についての最低条件を規定している。
  • カナダ政府は、連邦所管の輸送サービスのアクセシビリティを向上させる多くの戦略、政策、規則、指針などを有している。
    ・カナダ政府は障害者の移動をより容易にするため、補助金、サービス、支援を提供している。
  • カナダラジオ・テレビ・電気通信委員会は、長距離通信事業者に対しリレーサービスの提供を求めている。電話会社と通信事業者に対し、緊急長距離通信サービス向けのテキストメッセージングのサポートを指示している。放送事業者に対しては放送番組の100%に字幕をつけることを求めている。
第12条
法律の前にひとしく認められる権利
  • カナダは、法律の前にひとしく認められる障害者の権利を強く支持している。無能力であるという判断は障害の有無によってではなく、個人の実際の意思決定能力のみを根拠になされるべきである。法的行為能力を行使するにあたって支援が必要な者は、適切な規則と保障を条件に必要な支援が利用可能であるべきである。
  • 女性障害者ネットワークカナダ(DAWN-RATH)は、代理意思決定ではなく、支援付き意思決定のために個別相談員を利用することは、障害者に対する配慮として重要だと信じている。
  • 後見人の保護または代理意思決定と同様の管理制度下にある成人障害者の人数について。2010年以降、障害者に代わってどのような決定がなされたか。何人の障害者が支援付き意思決定サービスを受けているか。2010年以降、代理意思決定は減少しているか。この点について、革新的なプロジェクトや研究はあるか。
  • 最初の報告の情報に加えて、2016年の後見制度、代理意思決定制度、支援付き意思決定制度の下にある成人数について概説する。(略)
  • 2010年以降、障害者に代わって行われた意思決定は、主に介護と財政に関するものを扱っている。
  • 革新的プロジェクトとしては:
    1 ニューブランズウィック州の障害者のための新しい支援サービス提供プロジェクト
    2 ケベック州が着手した、新しい援助された意思決定手続の妥当性と実現可能性に関する利害関係者の協議
    がある。
  • カナダの解釈宣言及び第12条に関する留保では、その条文によって生ずるカナダの義務に対する理解について示されている。すべての州・準州には、乱用に対する保障を伴った代理意思決定及び/または支援付き意思決定に関する現地法がある。
  • 法的行為能力は、州・準州の法的管轄下にある。大部分の州や準州は、いまだに代理意思決定の法律を有している。幾つかの州では、代理意思決定を改革するための法律改革プロジェクトが進行中である。
第19条
自立した生活及び地域社会への包容
  • カナダ政府は、障害者に対して生活のあらゆる側面での包容、参加、自立を促すため課税控除、収入補助、社会給付やサービスを提供している。
  • 障害のあるカナダ人、特に知的障害者は、しばしば隔離された環境や施設に住んでいる。国全体で同様の状況がある。
  • 居住型施設に住んでいる障害者・児の人数、このような居住型施設がどれくらいあるのか。施設にいる障害者の数は、2010年以降、減少あるいは増加しているか。
  • 居住型施設に関するデータは以下のとおり。(略)
  • カナダ政府の生活支援(AL)プログラムは年間1億400万ドルを提供している。ALプログラムの予算の約半分は自宅に居住する人の社会支援に、残りの半分は施設環境での介護に提供されている。
  • 例えば、ファーストネーションズとイヌイットの在宅・地域介護プログラム、支援生活プログラム、カナダ退役軍人局による退役軍人向け補助金や課税控除がある。
  • カナダの障害者の社会参加に関する最近の研究によると、アクセシビリティの不足と地域社会での生活や社会参加に対する十分な支援の欠如は、尊厳及び自律の欠如を経験することを意味していた。
  • 自立した生活をする人のための地域社会に基づいたサービスに支払われる公的な予算はどのようなものか。脱施設化や地域社会に基づいた生活施設に対する2010年以降の措置について。
第21条
表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会
  • カナダ政府のコミュニケーション政策は、連邦省庁及び機関に対し、公表された情報を障害者に配慮した複合的な形式で利用可能にすることを求めている。ウェブアクセシビリティ基準は国際的に認知されたWCAG2.0を考慮することを求めている。
  • カナダ政府は、その形式に関係なく、作成されたすべての資料を公衆が容易にアクセスできるようにしなければならない。これは要求に応じて情報をブライユ式点字、拡大文字、音声といった代替形式で確実に取得可能にすることを含んでいる。
  • 一般向けの情報が、手話、わかりやすい版、点字、音声、補助的・代替的コミュニケーションなどによって障害者が利用可能か。
  • カナダ政府は、障害者のために一般向けの情報のアクセシビリティを引き続き保証している。例えば
  • カナダはマラケシュ条約に加盟した。
  • カナダ政府の支援を受けて、手話利用者が音声電話利用者と通信できるビデオリレーサービスが開始された。
  • カナダ政府は、コミュニケーションに関する新しい政策を実施した。それは連邦政府各省庁に、要求に応じて障害者が利用可能な形式で、公表された情報を提供することを求めている。
第24条
教育
  • カナダの教育制度は主に州・準州が管轄しているが、カナダ政府は障害のある学生の高等教育支援を提供している。補助金を通じて、宿泊費、授業料、手話通訳、介助者、ノートテイカーといった例外的な教育関連費用を賄うための経済的支援を提供している。
  • カナダ学生ローンプログラムは、障害のある債権者に対して債権放棄を行っている。
  • カナダの障害学生の多くは、平等な教育の機会を得ていない。小学校、中学校、高等教育のレベルで、障害者の完全な参加や包容を妨げる多くの障壁がある。
  • 障害者の10%以上が、学校に通うため故郷の地域社会から離れた。また15%が、自分の障害のために通信教育課程を受けている。
  • 隔離された環境で教育を受ける障害のある学習者について、各州・準州の最新情報。
  • 多様なニーズを有する障害のある学生は普通学級へ包容されるよう配慮と適切な支援を提供されており、極端な状況においてのみ隔離された学習環境に置かれることになっている。
  • カナダ政府は、ファーストネーションズがインクルーシブ教育学校での合理的配慮や支援措置を提供することを助けるため、特別保留地に住むファーストネーションズの学生のうち盲人、ろう者、盲ろう学習者などに対して助成を提供している。
  • 各州・準州と大西洋州特殊教育局は、ろう、盲ろう、盲の21歳までの学習者に対し、広範囲のプログラムとサービスを提供している。
    (各州の学習者に関するデータは略)
  • ろう者や難聴者の多くは、公立学校で手話サービスの不足を指摘する一方、障害者向けの特殊教育センターの閉鎖への反対を支持してきた。
  • ろう者は教育施設の利用障壁があり、平等なアクセスが十分に保護されていない。例えばオンタリオ州では、教育言語として手話を認めているがそれは促進・保護・奨励されていない。オンタリオ州は、聴覚障害のある学生に対し、いまだに発話訓練を奨励している。
  • ろう、盲ろう、盲の学習者の状況について。
  • 障害のある女性及び女児では、教育達成度や雇用配置は低いレベルにある。
    近年、全寮制の学校よりも福祉サービスの介護を受ける先住民の子供が多い。これらの子供の多くは障害があり、先住民の地域社会で適切な支援サービスが欠如しているため自宅から引き離されている。
  • 高レベルの支援が必要な子供に対するインクルーシブ教育に向けて、締約国がどのように働きかけているか。また障害のある学習者のための合理的配慮と支援措置について、特に先住民の子どもに重点を置いて。
第33条
国内における実施及び監視
  • 第32条(2)に応じた枠組みは、政府、連邦-州・準州の人権委員会及び裁判所、公的後見人、オンブズマン、市民社会団体など、幾つかの要素で構成されている。
  • 条約に関して、カナダ政府は第33条(2)で課せられる義務を果たすために既存の仕組みを維持し活用することを決定した。
 
  • 第33条(2)に従った、独立した仕組みを確立するためにとられた措置について。
  • 第33条(3)に沿った、障害者の参加を保証するための措置について。
  • カナダの促進、保護、監視の枠組みは、障害問題担当室、省庁間・政府間フォーラムを含む、政府内のすべてのレベルにおいて、様々な仕組みで構成されている。カナダは引き続き、これらの既存の仕組みに信頼を寄せている。
  • 障害のあるカナダ人及びその団体は、上記の仕組みを通じて、政府の取組の監視に参加できる。また、障害者団体は政府の措置についての分析を独立して行い、その結果を議会、政府、委員会に対し報告できる。

86 カナダ政府サイトhttp://www.canada.pch.gc.ca/eng/1448633334025
87 カナダ政府サイトhttp://www.canada.pch.gc.ca/eng/1448633333956/#a7
88 CRPD/C/CAN/1 paragraph4
89 INT/CRPD/CSS/CAN/26744/E

前のページへ次のページへ