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「ナノテクノロジー・材料プロジェクト会合」(第1回)議事概要(案)

日 時:平成13年4月19日(木) 午後2時〜4時

場 所:三田共用会議所3階大会議室C,D,E

出席者(敬称略):

議員:白川英樹、桑原洋

重点分野推進戦略専門調査会専門委員:池上徹彦、中島尚正

招聘者:石原直、井上明久、亀井信一、茅幸二、川合知二、岸輝雄、北澤宏一、榊裕之、中村道治

○議事概要

1.開会および委員の紹介

配付資料の確認、開催経緯説明の後、白川議員からの挨拶。

(白川議長挨拶趣旨)事務局からの説明の通り4月10日の専門委員会で、私がナノテク・材料分野を中心に担当することになった。総合科学技術会議の議員は7名だが、その中で私が一番この分野に近いということでプロジェクトの進行をすることになった。ナノテクノロジーという言葉には10人の人がいれば、10の定義があるような状況だが、皆様の貴重なご意見をいただきナノテクノロジー・材料の推進戦略を検討していきたい。

2.会合の趣旨、運営

(会合の趣旨及び運営要領については特段の意見なし。)

3.検討の進め方

(事務局より資料4を用いた検討に関する説明の後、議論。概要は以下のとおり。)

【川合】3頁にある現状認識と、それにそった推進戦略の検討の進め方に関する方針は問題ない。ただ、一つ考慮すべきことを言えば、科学技術会議でナノテクノロジーに関する報告書を昨年末に出しているので、同報告との連続性を意識する必要がある。

【岸】議論のやり方は説明いただいた順序でよいと思うが、日程を考えるとこのままでは材料の方の議論まで行かないのではないかと恐れている。ナノテクノロジーではない材料に関しても安全空間など、重要性の高いものがあるので、それを忘れないで欲しい。

【榊】今の発言と関係するが、ナノテクノロジーは非常に広い領域と関連するので、バイオやIT分野での研究と、このプロジェクトで策定するナノテクノロジーの推進戦略をどのように整合させるかを考えることが必要。アメリカではバイオの予算はナノにくらべて多い。日本は違うかもしれないが、他の分野との接点を考えて議論をすすめなければならない。

【白川】ナノテクノロジー・材料は他の分野と重なる点が多いことは認識しており、そこは、きちんと意識して議論していくことになる。

【桑原】岸さんのおっしゃるとおり、ナノテクノロジーの方はこのプロジェクトでも力をいれると思うが、一般的な材料、例えば化学系の材料で日本が近年頑張っている分野があり、それを維持する必要があるため岸さんのご意見に賛同して、サポートしたい。

【茅】科学技術会議のナノテクノロジー懇談会で検討をおこなった結果の報告がある。科学技術会議との連続性を考えると、前回の報告に関して、一度説明を頂けるとよい。また、ナノテクノロジー・材料分野となっているが、材料と物質の関連が理解しにくい。また、バルクの物質を議論対象にするのかがよくわからない。

【白川】私も前の懇談会には参加していないが、このプロジェクトでは、物質というよりは材料という観点で議論をしていくことになる。物質という概念では、人間生活に関連した有用性があるかどうかは問われていないが、その物質の中で人間にとって有用なものが材料であるので、それが議論の中心になると思う。この点については、次回以降も考えていきたい。

皆さんから頂いた論点をまとめると、科学技術会議での議論との連続性とナノテクノロジーに偏り材料がおろそかになるのではないかという危惧、特に材料での化学分野の重要性に関する指摘があった。プロジェクトの進行にあたっては、上記のことを念頭に議論を進めていきたい。

物質と材料の関係、A科学技術会議のナノテクノロジー懇談会との議論の継続性の問題については、会合の中で後程白川議員の方から@科学技術基本計画の記述より物質も材料に含まれること、Aナノテクノロジー懇談会構成員が本プロジェクトに継続的に参加していることにより継続性が対応可能であることについての説明があった。)

4.検討の論点等、日米のナノテクノロジー分野に関する競争力の検討

事務局からの説明、亀井委員からの説明に続き、議論。概要は以下のとおり。

【川合】問題やニーズを指向する視点は重要だが、材料開発の歴史を考えるとニーズを考えていないところから数多くのものが生まれている。カーボンナノチューブは星間物質の研究に端を発しており、白川先生のお仕事のポリアセチレンも失敗から発見された。従って大化けするようなシーズ的な基本的なところも考えないといけない。これらは、歴史的に優れた科学をもっているところから出現しているので、これら偶発的な大発見を促進する体制をどうやって構築するかなども今後きちんとした議論を行う必要がある。

【白川】先にスケジュールについて説明があったとおり、5月末までの短期間で一通りの討論をする必要があるので、最初に事務局説明以外も含めて、広く論点を明らかにしていく必要がある。忌憚のない意見をお願いする。

【亀井】今回の検討にあたり、次の2点を提案したい。1つは、日本のナノテクノロジーの再定義を行っていただきたい。日本の独自性を示さない限り米国の後追いとの誤解は解けない。2点目は、ファクトデータに基づいた議論を行っていただきたい。これまでの観念論の議論から脱却すべきである。

【池上】説明で抜けていると思った点として、観測・計測・プロセス技術がある。それらの分野は日本が強いのではないか。それから、今の亀井さんの話からすると、基礎的な件に関してはアメリカにお金を投資して、産業化は日本に投資をするのがよいということなのだろうか。この点については、実は日米での研究者の考えの違いが反映していると思う。米国では例えばNIHなど最終応用をはっきりと意識した上で研究分野を選んでいる。日本では、そのような意識が欠如している。

【亀井】資料を提示したのは、むしろ日本がナノテク戦略として何を狙うのかを明らかにするのかを考えるきっかけとしたかったため。米国の場合には、米国がすべての面で一番で、それをもとに米国が繁栄を続けていくという意識がある。そこで、日本に工業生産のような重要な分野で負けて良いのかという意識があり、米国として他国の台頭を押さえて米国優位の立場を押さえていくことを考えている。それに対して、日本でナノテク戦略を作っていくに当たって何を求めていくのかを考えていかなければならない。例えば基礎が弱いとして、それに対しては金を出しても無駄であるという方向にいくのか、それとも何らかの理由で必要といっていくのかかどうかということである。検討にあたっては総合科学技術会議なのだから、科学的裏付けのある議論を行うべき。

【池上】亀井さんの問題意識には共鳴するところもある。日本では新しいことも提案ベースだ。これに対して、アメリカでは新たな対応についての判断はトップダウンできめる。総合科学技術会議では決定をアメリカ的な方法でやることを期待している。それについては、桑原議員のご意見も伺いたい。私としてはこの場では明確な目的を出し、それをブレークダウンしていくべきだと考えている。

【中村】私はNNIのレポートを見たときに第1印象では10〜20年先のバラ色の世界を見ているような内容だと思った。しかし、そのバラ色の裏で緻密な戦略があるように思い改めた。事務局の資料で論点が示されているが、その14頁で最初に経済社会の持続的発展とそのための対応があるのは重要。日本のナノテクノロジーは、実際にはすでに十余年の歴史があり、成果も出てきているところがあるという認識が重要。アメリカが20年先を目指しているから、日本も同じように20年先を目指すというのではなく、日本の事情を認識してきちんと進めるべき。

【中島】前回のナノテクノロジー懇談会で基盤技術の重要性を考えて、マイクロマシンなどについて関連学会を通してヒアリングを行った。そのときの印象ではマイクロマシンに関しては日本が強かったが、その印象と比べて亀井さんの話は日本にとって厳しい内容になっている。是非、本日の内容を関連学会に伝えてフィードバックを求めて欲しい。

また、精密機械分野で日本が弱いというのが意外だったが、精密機械の定義はどのようにされたのか。

【亀井】大前提として産業競争力と科学・技術競争力の話はまったく別のもので、科学・技術競争力比較に関しては分野における論文や特許数をキーワード検索をもとに抽出して比較した結果である。一方、産業競争力はOECD、総務庁などの統計データを使っており、分類分けについても個別のアイテムでは整理できず、産業分類に従ったもの。精密機械というくくりとしているが、通常の精密機械だけではなく、計測機器なども含んだ広い概念になっている。

【中島】精密機械には半導体微細加工のステッパーも含んでいるのか。ステッパーは日本が強いはずなのだが、それを含んでも日本が精密機械で弱いと言われると意外だ。また、マイクロマシンに関する定義は日本ではMEMSは半導体技術を使ったもので、マイクロマシンは究極のメカトロニクスとしている。定義の齟齬はないか。

【亀井】産業競争力に関連する分類ではステッパーは精密機械に含まれている。それを入れても日本の競争力は弱い。科学・技術比較に関しては、日米での比較を行うために各国での定義を参考にしても、国により定義が異なると比較にならない。そこで、MEMSやmicromachineといった英語のキーワードを表題に含む論文や特許の検索を行い比較検討を行った。

【北澤】ナノテクノロジーが何故出てきたのかという歴史的背景も考えるべき。国際比較をすると米、欧、日でスタンスが違う。米国は「全てに強く」を目指している。それに対して、ヨーロッパ諸国は何でもいいから何か強い分野があればよいという意識がある。日本については、絶対に強くなれない分野が多くあり、唯一強かったのが工業製品だった。これから、その強かった工業製品分野がどうなるのかについて考える必要があり、ナノテクノロジーが無くても工業製品が強いなら、ナノテクノロジーの必要はないはず。しかし、現状で工業製品分野の将来に不安があるから産業界からも工業技術の基本となるナノテクノロジーに金を出すようにすべきという話が出たと理解している。

議論を進めるに当たって忘れてはならないことは、現在日本が強い分野を守らなければならないということ。もし、弱いところを保護しようとする話が出てきて、それが足を引っ張って強いところの補強が疎かになり、結果的に強いところまでもだめになる危険性があるということを心すべき。

ナノテクノロジー分野が日本が強いか弱いかについては、例えば15年前のことを考えると日本は半導体、磁気、光記録に対して走っていたころで、当時の通産省は米国の自尊心を傷つけずに米国に技術移転をすることを考えていた。そのころ米国は日本に工業でやられたことを素直に反省して戦略を立てていた。この戦略で注目すべきは米国が80年代に24のマテリアルセンターを大学に作ったことで、それを起点に、今日の米国の発展がある。80年代の戦略により90年ごろから半導体について米国がシェアをのばし日本がトップから滑り落ちるようになった。こうした歴史的経緯を考えると、ナノテクノロジーに対しては、米国の競争力上昇に対する日本の危機感と、更に米国が日本が唯一強かったものを叩こうとしているという図式ではないか。我々はこれに対して日本がどう対応するかを考えなければならない。

【白川】日本がどうしても勝てないものにはどのような分野があるか。

【北澤】食糧・資源・エネルギーをどうしても輸入に頼らざるを得ない日本は、どうしてもそれに見合った輸出を必要とするが、それを日本のライフラインを支える分野とすると、重点4分野のうち、ナノテクノロジー・材料以外の分野が日本のライフラインを支えていけるとは考え難い。その理由は、バイオについていうと、その技術によって革新の期待される農産物、医療技術、医薬品などについて、土地的・文化的な問題からも日本がそれらを主要輸出品にできるとは思えない。ITに関しては、世界基準という問題があり、むしろ、ハードと組み合わせた形で日本の強さをだしていくことが有効だろう。また、エネルギーそのものを輸出できることはないだろう。結局、日本のライフラインは、優秀な材料技術に立脚したハードウェアに頼らざるを得ない。

【茅】私はサイエンス寄りの人間として発言するが、亀井さんの話で基礎が弱いという話があったが、ナノサイエンスに関して日本は本来先進国だったと思う。1960年に久保先生が非常に先駆的な理論を出され、榊先生のご研究もその流れにある。しかし、日本ではサイエンスとエンジニアリングが乖離する傾向がある。私が日本の大学の理工学部や米国のベル研で働いた経験からすると、日本でも理学系と工学系の交流をもっと考えるべきである。少しでも基礎科学を入れたナノテクノロジーを推進することが工業的な発展のためにも重要であろう。

【井上】 日本が優位に立っているという解析・評価結果が出ている分野に関しては、研究者らが自ら意識して改善に努めた結果優位になっている。例えば、金属材料では自発的にナノテクノロジー的な分析技術の開発やナノ構造・組織制御を行った結果今日の優位性がある。この優位性を持つに至ったナノ材料の開発経緯を追跡調査することは他の分野でも参考になるものと思う。

5.次回会合について

【白川】本日頂いたご意見も整理して次回の議論に活かすことにしますが、これまでの御発言以外があれば私のところか事務局にご意見をお寄せ頂きたい。なお、次回については、ナノテクノロジー・材料関連の取り組みを行っている省庁の推進戦略について事実関係を確認する必要があると考え、事務局に指示し各省庁の政策的取り組みについてご説明頂くことになっている。その内容について事務局から説明する。

(事務局より次回会合で実施する産業界及び関係省庁からのヒアリングについての説明)

5.閉会

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