重点分野推進戦略専門調査会 製造技術プロジェクト 第6回会合
議事概要
日 時: 平成13年9月17日(月)17:00−19:00
場 所: 中央合同庁舎第4号館2階 共用第3特別会議室
出席者: 中島尚正、桑原 洋、前田勝之助、大山尚武、金井 寛、中尾政之、西山 徹、平尾 隆、古川勇二、山田眞次郎、事務局(和田直人、鈴木信邦)(敬称略)
配布資料:
資料1 :分野別推進戦略 (製造技術分野部分抜粋)
資料2 :分野別推進戦略の骨子 (製造技術分野部分抜粋)
議事:
1.開会
○中島リーダーより開会の挨拶。
○事務局より資料確認
2.討議
○中島リーダーより前回会合での経緯・本日の予定の説明
○資料1(推進戦略本文)について事務局より説明
[第1章 製造技術分野の現状]の説明
(意見交換)特に意見なし。
[第2章 重点領域]の説明
[第3章 重点領域における研究開発の目標]の説明
(意見交換)
【桑原】新規需要開拓として、医療・福祉関係と高精度評価の基盤技術しかないのか?
【中尾】第1章の「製造技術分野の現状」と第2章の「重点領域」との対応関係が不明確。第1章(2)B「高齢社会での質の高い生活への対応」が現状としてあって、新規需要開拓の「医療・福祉用機器」が出てきているのだろうが、そうならば、「新規需要開拓」という名称はおかしい。今更、本文の論理構成のことをいっても意味がないので、とりあえず「新規需要開拓」という名称は変更すべき。
【中尾】さらに2章(2)@ウ「品質管理・安全・メンテナンス技術の高度化」という重点領域は1章(2)@ABのどの国家的・社会的要請とも対応しない。
(事務局注:国家的・社会的要請の「高齢社会での質の高い生活への対応」に対して、高齢者の就業環境の視点から「品質管理・安全・メンテナンス技術の高度化」の必要性を位置付けた。資料1にも明記。)
【中島】「新規需要開拓」という名称を変えるべきなのか、それとも例を変えるべきなのか?
【大山】同じA製品技術の新たな領域開拓のうち「ア.高付加価値製品化技術」は研究開発のシーズ
からの流れであり、例えばマイクロからナノへの流れのようなもの。反対に「イ.新規需要
開拓」はニーズからの要請。
【中島】いづれも領域開拓でくくれる。ただし、限定し過ぎ。
【桑原】一時、「新規需要開拓」という名称をやめるべきとも思ったが、代案が浮かばなかった。
【和田】他の分野で医療福祉機器が取り上げられていないので、ここで取り上げてくれという要請が始めにあった。内容が最初にありき。「新規需要開拓」という名称を変えるべきか。
【中尾】名前を変えるべきだ。
【桑原】高齢社会対応医療・福祉機器はネガティブな印象を受ける。ライフサイエンスでは健康寿命を延ばそうという対応。明るく、高齢社会をいきいき生きる方向の表現に変えるべきである。
【金井】一見、医療・福祉が「新規需要開拓」に入るのは変な気もしたが、製造技術の中では新しい技術。また最近の福祉工学は、明るくする方向に向かっている。ネガティブな印象は誤解である。ライフサイエンスで日本は諸外国に遅れを取ってしまったが、医療製造技術分野はまだ望みがある。がんばるべき。
【平尾】1章と2章がうまくつながらないのは、製造技術固有の悩みに起因。製造技術は国力を維持するために大事だとされているが、具体的にどのようなジャンルをやるべきということが、(2)の重点領域の設定に書かれていて、それをどのように強くしていくかが展開されている。例えば、これからの製造技術は生命体と融合していくことが重要であると考えれば、この点で日本は遅れている。こういう捉え方をすると、医療・福祉機械技術は製造技術分野での新規性がでてくる。そうすれば違和感はないのでは。
【古川】この推進戦略自体はよくできているが、一点だけ追加でできないであろうか。文部科学省の未来技術予測が今朝手に入った。製造技術の推進戦略は5年間を考えているのに対して、未来技術予測は20年以上先までも考えているが、立てられている項目は類似している。一般の人には、5年間でどこまで達成できるのかが興味の中心。一般の人には、この10年間の高コスト体制で製造業がどのように生き延びるかといったシナリオがあって、そのためにプロセスイノベーション、プロダクトイノベーションがあるはず。さらに重点領域がどのようなインセンティブ効果を持つか、あるいはどの位のマーケット規模を掘り起こせるか、その辺の付加的説明が必要。そうしないと一般的に書かれているものとなんの変わりもない。
第2に、対地球環境とか高齢化ということが書かれているために薄まってしまっているが、高コスト体制で製造業がいかに生き残るかという点がはっきりしない。付加的説明が欲しい。
【中島】この推進戦略は既に提出したもので、若干の文言の変更はできるがそれ以上は難しい。
【古川】国の予算を使う以上、どのくらいの経済効果が誘起できるかを見積もるべき。そうしないと
納税者は納得しない。
【西山】本文の4ページでは「新規需要“対応”技術」とあるが、骨子の3ページでは「新規需要“開拓”技術」とある。統一すべき。「開拓技術」がよいのでは。
【桑原】現在、基幹技術は日本で開発されるが、その技術を使っての生産は海外で行われる。それらを全て含んで製造技術と捉えていると書くべき。21世紀の製造技術をどう捉えるか書くべき。21世紀での生産は海外が中心になるが、日本で製造技術をやらないということではない。グローバル化の視点を書くべき。
【前田】古川意見に賛成。製造技術分野の推進戦略は以下のようにあるべき。まず最初に製造業の名目GDP、就業者数の位置づけ、そして部分的に雇用問題にも触れる。そして日本の製造業の将来のバランスをどう考えるかが問題。その結果、製造業の基盤の強化、研究開発が必要となり、その中でもとりわけ5年間でこれとこれを重点化して頑張りましょうとなる形が一番いい。確かに昨今、日本経済の危機が叫ばれ、産業の空洞化現象も起こっている。貿易黒字も激減しているが、貿易黒字を稼げるのは製造業のみ。この貿易黒字が大赤字になった時、日本の国をどう考えるかという視点もあり得る。雇用問題は製造業の空洞化問題と結びつく。そういった視点からも製造業はこの5年間名目GDPの25%を維持するのだという主張があり得る。そのためには、IT高度利用により競争力をつけるとか、新規分野もどんどん開拓していくべき。
【古川】前田氏の意見に賛成。私はG7でやっているIMS知的生産政策の国際プログラムを10年以上やっているが、昨年来、中間見直しを行っている。これからの製造業のあり方として、大きく分けて製造業のサービス業体化、つまり製造業にサービス業までつけて付加価値をつけているが一つの方向であり、もう一つはグローバル対応である。この2つに対して、eマニュファクチャリング、Extendedエンタープライズ(拡張企業)をキーワードに21世紀の製造業は語られるべきだと考える。この推進戦略には、製造業のプロセスとプロダクトのみが語られており、それだけでは不十分である。この点を説明で加えて欲しい。
【桑原】2ページ(2)@を前田さん等の意見を入れてを書き直したらどうか?
【山田】5年後に全GDPの25%を製造業が本当に占めるのか。また占めることがいいことなのか、悪いのかをはっきりさせた方がいいのでは。あくまでもコメントですが。
【中島】2ページの(2)@にグローバル化が進展しつつある製造業の基盤強化が必要であること等を書くべき。
[第4章 研究開発の推進方策に関する基本的事項]の説明
【平尾】4章(1)の3番目「外国人労働者等の海外人材の有効活用」は「海外人材の有効活用」だけでよいのではないか。
【桑原】4章(3)の「当該特許による起業時の支援策」の2番目の項目、「実施機関として、民間企業、TLOなどスピーディな対応が可能な方策が必要」は「実施機関として、TLO・民間専門企業などのスピーディな対応が図れるシステム整備が必要。」とすべき。
【西山】産学官の連携につながると思うが、国レベルでのビック・プロジェクトをやることをうたった方がいい。欧米は軍事研究があり、そこから派生した民生技術がある。採算を度外視した軍事研究でないとやれないこともある。そういった研究は企業レベルではできないので、国としての取組みが必要。このような領域は日本の弱いところであり、ある程度金をつぎ込めることが必要。
【桑原】賛成。日本では宇宙開発がそれに当たる。
【西山】牽引するものが必要。
【中尾】製造技術の重点領域を他分野との合わせ技にしてしまったため、本来製造技術と呼ばれてい
た分野の研究者が参加しにくい。「科学として先端的なところまでやったものを実用化する
のが製造技術である」ということをどこかに書いて欲しい。具体的には、3章の「国で行う
べき研究開発」という項目と併記する。さらに4章(1)に、「他の分野とも融合した組織を
作るべき」ということを書く。そうしないと研究を実施するときに大変。
【中島】3章ではなくて、4章の推進方策の部分に書くべき。
【平尾】製造技術分野は他の7分野と異なる性格を持つ。推進方策に他の分野とのかみ合いを明記しておくべき。
【古川】他の分野と製造技術分野との推進戦略の整合性はどうか? また、推進方策には製造技術分野固有の特徴が必要。推進方策(1)「人材の育成、独創性を発揮しうる環境整備」では、製造技術分野の特徴を出すべき。(2)「知的基盤、技術・ノウハウの蓄積」では、ノウハウはまさに製造技術分野の特徴だからよい。(3)「知的財産権に関する戦略」は一般的な話。この記述だと、国が資金を出して、特許の出願からメンテナンスまで見てくれることになるが、面倒見が良すぎるのではないか。サービス過剰。(4)「産学官連携のあり方」は難しい。民間企業の要請と大学の学術研究と直結しなかったり、論文になりにくかったり。そこら辺をどうするかが書かれていない。(5)「知的基盤の整備、標準化の推進」はよい。(6)「ベンチャービジネス化等の実用化への方策」では、製造技術分野でベンチャーをどう育成するかが補足で説明しないと見えない。(7)「経営・ビジネスモデル・科学技術政策上の課題」はよろしい。
【中島】(3)の知的財産権は他の分野でも取り上げているか?
【事務局】内容は違うが、ナノテク等でも取り上げている。
【古川】国としての知的財産支援を行うのだから、それは共通のはず。それを製造分野だったらどのように活用するかということになる。
【事務局】各分野で特徴的な推進方策についてまとめているところ。
【古川】できるならば積極的に書いて欲しい。
【金井】基礎研究や基盤研究という場合、総合的で他の分野も含んでいると私は捉えている。
だから、3章「国で行うべき研究開発について」というところの書き方を少し変えて欲しい。
例えば、「・・・基礎研究の推進」を「・・・総合的基礎研究の推進」のように変えて欲しい。私のやっている医療では、基礎研究というと当然広い範囲が入る。医学も生物も入る。
【中尾】できれば、積極的に書いて欲しい。例えば、メディカルをやるならば、メディカルエンジニアリングという専攻を日本に10大学で作るとか。研究センターを作るとか、その一言を書いて欲しい。
【事務局】推進戦略はまとめの段階なので、ここをどう変更するかを具体的に指摘して欲しい。もし、具体的な案がなければ、こちらにお任せいただきたい。
【中尾】4章(1)に「融合的な研究設備の整備」といった文言を入れて欲しい。
【山田】製品開発技術というのは他の分野に入っているか。
【中島】いない。
【山田】製造技術分野は、ものを生産する技術で、製品開発技術が入っていないようだ。新しい製品を開発する技術を入れるべき。
【平尾】高付加価値製品化技術ではだめか?
【中島】プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションを分けているが、今のご指摘は両方にかかる話。
【事務局】製品を作っていくことは各企業でやる話。共通的なものでなければ、国ではやれない。
【中尾】4章(1)はあまりにもどの分野にもあてはまるような記述ばかりで、製造技術の固有性が表れていない。むしろ3章で決めた研究開発目標をどうやって実行すべきかを書くべきで、他分野との融合、研究環境の整備、などを書くべき。
【事務局】4章(1)に「融合的環境整備」といった文言を入れればどうか。
○資料2(推進戦略骨子)について事務局より説明
【平尾】資料1に対する本日の議論の趣旨を踏まえて整理していただければよいでしょう。
【金井】3ページの2(2)に「高齢社会に対応する・・・」とあるが、こう書くと、高齢社会だけに対応するということになり困る。消すか、もっと上手い表現にして欲しい。
【中島】高度福祉社会ではどうか?
【中尾】ライフクォリティーというのはどうか?クオリティーオブライフ。
【金井】そんなかんじでもいい。上手い言い方を求む。
○今後の予定の説明(専門調査会、本会議)
○今後のプロジェクト会合ですべきことについて
【古川】中島主査に質問。製造技術は他の分野にくらべて、遜色ないか?第2に、この推進戦略は要するに基本戦略、基本的な計画である。5年間の中でこれをどのように実施していくかという実施計画が別に必要。実施計画を残りの3ヶ月の間に検討したらと思う。
【中島】製造技術の8分野の中での位置付けに関する質問だが、まず8分野は対等でないことを申し上げたい。情報通信、ライフサイエンス、環境、ナノテク・材料の重点4分野と、残りの4分野は明らかに地位が異なる。製造技術は一貫してものづくりの重要性をはっきりしたメッセージとして出しており、納税者にもアピールしていると考える。不安は我々が選んだ重点領域に対して、各省から研究提案が上がってくるかという点。
古川委員の2番目の質問とも重なるが、この点をフォローすべきではないか?
【平尾】この推進戦略は、あわただしくまとめたのでフォローをすべき。その議論の受け皿は15年度予算に活かせるのか? 活かせないならば、やる意味がない。
【事務局】事務局では、推進戦略と各省の施策との対応を明らかにする必要があり、現在14年度予算を精査中である。
【平尾】14年度予算にはもう遅いので15年度予算ではないか? 14年度のフォローだけでは意味がない。反映できる場がないならば、やっても意味がない。
【中尾】この推進戦略は個々の文章表現はすばらしいと思うが、国家的・社会的要請と重点領域との関係は明確になっていない。また、今後の進め方は、中島先生が中心になって製造技術分野の重点分野を決めたのだから、先生が中心になって、実際にやっていくための組織作りをお願いしたい。
【事務局】現在、事務局及びその上の専門調査会で今後の活動について議論中。今後12月までの間をどうすべきかというご意見は参考にさせていただく。
【金井】学術会議では研究所を作れといっている。研究所までいかなくてもいいから組織が欲しい。
【金井】話が変わるが、最初の頃のプロジェクト会合で、果たして追いつけない研究開発をやるべきかどうかという議論があった。どこを中心に研究開発を行うべきなのかをはっきりさせて、重点的に行うべき。昔ロケットは日本ではダメだったが、お金さえかければなんとかなってきた。どこを重点化するかが問題。
【大山】実施計画段階のものまでやると、自由な発想を阻害する。主査と事務局にまかせるべき。
【古川】この分野での議論は、継続的には経済省の産業構造審議会で検討していくことになると思うが、本プロジェクト会合は省庁横断的になっている点を評価したい。今後も省庁横断的な組織を作って欲しい。
【中島】受け皿の問題。もし受け皿がなかったら、どのような組織を作るべきかが問題。
状況を見ながら判断する。最終的には私と事務局にお任せください。
3.閉会
○事務局から連絡(前回議事概要(案))
(質問)
【山田】製造技術分野は全体でどのくらいの予算になるか?
【事務局】初期の頃のプロジェクト会合で調べた13年度の政府研究開発予算の製造技術分野の合計は、約300億円。 全分野での予算の総合計は5年間で24兆円となる。
【金井】実際のお金は、NEDOなどを介して配分される。それが上手くいったかどうかを知りたい。その点はどうすればいいか?
【事務局】今後、どうなっていくかをフォローし評価することが、今後の重要な課題であると認識している。
(以上)