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重点分野推進戦略専門委員会 製造技術プロジェクト 第1回会合

議事概要

 

日 時: 平成13年5月14日(月)16:30−19:30

場 所: 物産ビル別館8階委員会会議室

出席者: 中島尚正、前田勝之助、石井紫郎、瀬谷博道、河内哲、金井寛、大山尚武、中尾政之、西山徹、畑村洋太郎、馬場錬成、平尾隆、古川勇二、事務局(和田直人、鈴木信邦)(敬称略)

配布資料:資料1:検討参加者

資料2:会合の趣旨

資料3:製造技術プロジェクト会合運営要領

資料4:検討の論点等

資料5:経済産業省の取組・考え方

資料6:文部科学省の取組・考え方

資料7:厚生労働省の取組・考え方

資料8:農林水産省の取組・考え方

資料9:関係省庁説明者

参考資料:科学技術基本計画

議 事:

1.開会

事務局より、1月6日内閣府内に総合科学技術会議が発足し、1月18日第1回会議、4月10日第1回重点分野推進戦略専門調査会が開催されたことが報告された。製造技術プロジェクトリーダーの中島委員より、積極的な支援をいただきたい旨挨拶があった。

事務局より本会合に出席された方々が紹介された。会合の趣旨(資料2)について説明があり、運営要領(資料3)が了承された。運営要領に基づき一般傍聴者が入場した。

 

2 本プロジェクトの進め方、検討の論点について

事務局より、資料4に基づき、製造技術分野の現状認識について説明があった。次いで、検討課題抽出及び推進戦略の視点について事務局案が説明された。

 

[平尾]「主要国の科学技術系論文の提出数」(資料4、12ページ)のグラフでは、論文数よりも、論文引用数を評価するべきではないか。また、「資金面からみた産業界の国内外研究機関等に対する評価」(資料4、14ページ)において、海外への研究委託が増加しているのは,研究内容のミスマッチが原因であり、望むものが国内にないということで、質というよりも対象がないということではないか。

[古川]「主要国の科学技術系論文の提出数」(資料4、12ページ)のデータソースに疑問がある。基本的に英語で記述されているものであり、製造技術分野において現場で書かれるものはISIに入っていないのではないか。文部科学省における論文はきちんとした学会において査読が付いているものであるのに対し、米国では内容があれば論文と見なされる。日本における「組織」,米国における「個人」の考え方が出てこのようになっているのではないか。

[河内] 製造技術の場合,研究内容をノウハウとして社内にしまっておこうという考え方があることも影響していると考えられる。

[西山] グローバルに通用する技術がもっとも望ましいが現実にはむずかしい。相当考え方を変えていかないとうまくいかない。

推進戦略の視点における、高付加価値製品について、次のように区分して考えることができる。(1)グローバルで高付加価値なものはR&Dとの接点が大であり、新たな製造業も起こりうる。(2)グローバルであるが、低付加価値なものは、企業化が難しいが、ユニクロのような例もある。ユニクロの製造は中国で行われる。雇用の創出が必要。雇用を日本の中だけで閉じないで,8割は現地の雇用,2割は日本のためにということであれば、現地にも歓迎される。(3)日本のローカルでしか通用しないもの(和食etc.)は低付加価値であるが雇用は確保できる。

[平尾] 製造技術は加工に力点がある。素材を加工して流通させることで製造技術がまわっている。加工に耐えうる材料も必要となる。ナノテクとのリンクを考えておく必要がある。

[中島] 本プロジェクトで扱う範囲はアセンブリ型だけではなく材料も含まれる。他分野とのオーバーラップがあってよい。

[大山] 指摘はその通りであり、具体的に進めていく際に実質融合していくことになる。戦略の進め方について、事務局案は技術的な側面からのものであり、人間との調和も考えないといけないのではないか。

[金井] 安心安全な社会を形作るのは国の役割だが、規制の影響は大きい。遅れている技術を推進しようとしても規制のために進められなくなることがある。

 

3.関係府省の取組・考え方の把握

 経済産業省(資料5)、文部科学省(資料6)、厚生労働省(資料7)、農林水産省(資料8)より、製造技術分野における取組・考え方について説明があった。質疑応答のまとめは以下の通り。

 

     経済産業省

今後の製造技術分野の推進に関する展望ではビジネスモデルの確立(資料5、19ページ)が掲げられている。そこでは、ビジネスモデル自体を研究していく。

 

     厚生労働省

医療機器関連予算は現在3億円。経済産業省と連携していく。福祉用具関連予算は4億2千万円。ライフサイエンス分野との重なり、NEDO予算を入れると30億円となるなど、重複部分をどのように整理していくか課題である。

医療機器輸出入額の推移(資料7、3ページ)において、輸入と輸出の差が開いていくことに対する分析は済んでいない。保険制度の関連もあり、どのような振興策を立てるか検討中。

[前田] 技術はあっても,メーカー責任の問題があり,やらなくなってしまったということもあるのではないか。差の分析が不十分であり、解析が必要である。

[金井] テーマを決めるときに,日本でやらなければならないことを大所高所で検討し進めてほしい。

 

     農林水産省

予算はライフ関連等と重複部分がある。製造技術関連の研究者は数百名。大学、民間との連携は進んでいる。紹介した研究の一部は実用化している。バイオファクトリは研究開発レベルである。

 

4.ディスカッション

[中尾]「製造技術の新たな領域開拓」を推進すべき。大学や国研にミッションを与えて1億円つけても使うことのできる人材は10〜20名程度しかいないであろう。それ以上予算をつけても無駄である。よくするためには、企業で1億円研究した実績のある人を入れる必要があるのではないか。例えば、寄付講座等で企業から人を持ってくるなどして。一般に大学の製造技術分野の研究者はのんびりしている。

[西山] 書かれている領域はいい線いっているか。

[中尾] いい線いっていない。米国100点とすると日本は60〜70点。やること自体はいい。

[古川] 推進戦略の視点(資料4、17ページ)と重点領域の設定(19ページ)は技術的なものを切り口とした視点である。推進戦略の視点としては、単に技術的ばかりではなく、例えば企業活動(グローバル化を含む)やマーケットリクワイヤメントなど、いくつかの視点から見て、マトリックス的にからめた結果21ページの施策のどれに相当するのかという見方が必要。技術的視点からは結びつきにくいものもある。全体的にいくつかの視点を混ぜ合わせたときに、新しい技術を創出するためには技術者を人材育成すべきであり、環境負荷最小とかマーケットの要求という視点では異なる。その仕組みとして産官学をどうするのかということになる。

すでに経済省等で進めている知的基盤の整備をどうするか。ベンチャービジネスについては中小企業をどうするか。経営ビジネスモデルをどうするのか。日本の保守・管理は強いがそれに重点をおいたビジネスモデルをどうするのか。プロセスのノウハウをデジタル化するためのビジネスモデルは何か。等、抜けのないように整理していただきたい。

[中島] 製造技術分野ではイノベーション課題をあげるだけではいけない。他の分野と異なり施策を出さないとだめだ。

[古川] 国家産業戦略機械分野の委員長のときの経験から,視点が技術に偏りすぎたかなという反省もある。総合的な製造技術をどういう切り口でみていくか整理して,そこに必要な施策の出し方を整理していくべき。

[畑村] 今日の議論には出てこないけれども上位レベルで考えるべき問題として、国のセキュリティの問題としてのエネルギー,食料の問題と製造技術とどう関係するのか。個々の小さい話はあったが、大きいところを製造技術として考えておくべきではないか。

医療機器の輸出入の差について、もっと高齢化社会と保険の破綻という問題を絡めて考え薬品の輸出入も含めると、製造技術で今のうちに考えておかないとたいへんなことになるように思われる。もう少し,上位の制約条件を押さえて考えないと,先ほどの医療機器の問題は答えがなかったように、抜けが出てしまうのではないか。

[石井] 製造技術の問題を科学技術政策の中でどう位置付けるかが重要。寄付講座等は科学技術システム全体の問題である。科学技術振興調整費は今まで国研を念頭においたものであったが、大学も含めたものになっている。今年度から寄付講座を作ることができ人材を育成することができる。システム全体の問題に位置付けながら検討すべき。

[西山] 総合科学技術会議でサイエンスとテクノロジーを扱うならば、従来よりは市場のニーズ等に踏み込んで総合のサイエンスとテクノロジーの施策をどうするかを検討すべき。国の産業政策において製造技術の重点がいまいち定かでなく、民間から鮮明に見えてこない。例えば、産業側からはバイオテクノロジー、総合科学技術会議ではライフサイエンスと言葉1つとっても国として統一されていない。製造技術はとくに産業政策との関係が必須である。先端的な技術を開発しなければ大きな市場は開拓できない。競争力が生まれない。バイオの場合、基盤となる安全をだれがどの負担で市民に説明し、どのくらいのデータを日本が持っているのかと考えた場合、圧倒的に基本的データをNIHに依存している。先端的なことをしようとするとそれがネックとなり、結局、産業や製造に跳ね返ってくる。製造だけやっていればいいと思うかもしれないが制約因子となる。医療機器の問題もそういうところに原因があるかもしれない。そういう点も含めて考えるべきである。

[金井] 日本ではペースメーカだけでなく人工血管も製造できない。技術的には古い技術である。新たな領域の開発というよりは基盤技術を確立することが重要。企業がにげていくのをどうすればいいかという問題が重要。企業もやりたくないことを、国が一カ所に集めてやらないと解決できないのではないか。MRIの最初の頃は米国に追いついていたが、追いつかなくなってしまった。今は20年遅れている。一番楽なのはシーメンスとか外国と提携すること。追いつかないと次のものが開発できない。それが心配である。

[馬場] 個々の技術で日本が先行しているとか遅れているとかの問題ではなく、製造技術に対する国の戦略はもっと大きな視点から見ないと効率が悪い。IT産業革命で、ITという新しいツールを手にして従来の製造技術と結びついたときどのような技術革新を起こすか。技術革新は発展途上であるため、陳腐化していくことが多数起こりうる。したがって、3年、5年、10年を見通しながら、行く末をみながらでないと戦略といえない。具体的には、IT産業革命で2つのキーワードある。

・高度な生産性の確立。製造プロセスの技術革新のこと。金型,工作機産業は世界一であり、この基盤を活かしてITというツールを融合して高い生産性のある製造現場を世界に先駆けてつくっていく。その中にビジネスモデル特許がでてくる。テクノロジー・イノベーションだけではなくノンテクノロジー・イノベーションが非常に重要。ここにも経営戦略が入ってこないととてもできない。テクノロジーだけにとらわれずノンテクノロジーに波及するような政策、製造プロセスの技術革新という大きな流れで考えてほしい。

・知的財産権の確立。日本は海外で権利を確立することが遅れている。外国への特許出願数は、95年から米国は急激に増やしているが、日本はそれほどでない。日本の大企業では外国に特許を出願するインセンティブがあいまいであることが多い。今年は知財関係の予算が余っているから出すかとかやっていては遅れてしまう。国が助成した研究開発で生まれた知的財産権については、確立する費用は国が後付で面倒見てやる、あるいは企業化に国がなにがしかの支援をしてやる等,追い風をふかせるような施策ができないだろうか。97年の米国の技術貿易は3兆円を特許で儲けている。製造業であれば60兆円売らないと出てこない利益に相当する。ロイヤリティ収益も考えていかなければならない。

西山委員の「海外移転の中で雇用創出」の考え方はユニークで共鳴する。日本が進出して儲けるというのではなくその国に貢献するという目標をかかげていけば受け入れられる。いいことである。

[大山] 歴史からの視点も重要である。昭和12年に機械試験所が設立され、基盤技術として工作機、先端技術として自動車を国産化し高度化することが目標であった。戦後の復興に寄与した。キーとなるのはIT化であった。工作機であればNC工作機。工作機は昨年度まで18年間出荷額世界一。一方、自動車産業の力がついてきてからカーエレクトロニクス,カーナビ,ITS。これまでは高性能化と低コストで欧米に追いつけ追い越せであった。今度は、目標が競争力強化だけでなく持続的発展も両立させるべきである。ここで掲げられている推進戦略の三番目の環境負荷最小技術は歴史的に重要な意味を持っている。地球温暖化防止技術のひとつになると思うが、固定発生源は工場であり、マイクロファクトリがシーズとなる。評価基準が高性能、低コスト、省エネ、省資源、ゼロエミッションで評価基準が内部化されてくる。外部的エネルギー技術は強くそれを土台として内部化された場合にけた違いの省エネルギー等の新しい技術の可能性が出てきている。ビジネスモデルの話がでているが、ビジネスも産業構造もがらっと変わってくる。そういう意味で、産業界、行政も協力してそのような技術を世に出していくための政策や、そういう意味での経営的なものとの融合も大切ではないか。

[中島] 製造技術分野のプロジェクトでは、単にイノベーションのための課題を示すだけではなく、どう施策に結び付けていくか、あるいはイノベーションを経済成長に生かすためのインフラをどうとらえていくかという議論が戦略とは切り離せない。総合科学技術会議の中の重点分野の一般的なミッションはイノベーションの課題にプライオリティをつけて出すことである。施策的なことは別の専門委員会で扱うことになっているが、製造技術が扱われることは期待できない。どう扱えばよいか。

[和田] とりあえず、5月の末あるいは6月の始めまでに,製造技術については具体的に来年度予算にどのように反映させるか出さなければならないため、22日にご意見を伺いたい。その後には、製造技術を突き抜けて、日本の製造業はどうあるべきか、医療機器をどう扱うか等について、本年12月までプロジェクトを存続させ皆様に考えていただいて提案を,総合科学技術会議を経由してどのように国の施策に反映させていくかを考えていきたい。製造業全体に反映させていきたい。

[中島] 概算要求という絶対的な時間的制約があるため、重点課題については決めざるを得ない。

[和田] 23ページに主要な取組経緯がついている。今まで、産業競争力会議、ものづくり基盤、国家産業技術戦略、あるいは経団連より産業競争力についての提言があり、それらを集合させて、ご議論いただいたことを施策つなげていくか考えたい。

[瀬谷] 製造業を活性化させていくには技術のレベルアップが必要であるが,バックグランドが必要。日本の高コスト構造をどう改善していくかが課題。関税,物流,労働力など桁違いであり、これらの問題をどのように解決していくかを検討しないと、技術だけ進んでも具現化されない。総合的に製造業を発展させるにはどうすればよいか。

[馬場] 規制緩和,天下り受け皿となっている外郭団体と企業との癒着等、技術革新を阻害しているものが多数ある。この場で話題にして議事録に残して上にあげてやることが必要。

[平尾] 製造業のあり方をとらえることは大賛成。

推進戦略の視点について、この問題は座標軸が一元だけでは検討できない。国際競争力を持てる対象、それを支援するものを横軸,時間軸をつければ三次元となる。複相的な頭の整理をしないと本当の位置付けがわからなくなるのではないか。

知的基盤は国際競争力をつけるのに必要なベースとなる。私共の業界では二元合金の状態図が十分な形で整っているのだろうか。目標が明確なものに対するアイテムはでてくる。それに対して、下積みで支えている日の目を見るかわからないけれども準備しなければならない技術に米国は糸目をつけずに金をかけているように思える。我が国もスポットライトあてる必要はないのか。

[石井] 社会が変わらないと,科学技術だけでは変わらないと言い続けていた。オールユニクロの危機にさらされている方々がお集まりになっている。ここのプロジェクトは貴重である。研究開発だけで推進することは、大きなダンプをF1エンジンで動かそうとしているようなものである。是非ここで議論していただきたい。

[古川] 日本の国家戦略は明示されているように思う。5悪高(土地費高、人件費高、運輸コスト高、エネルギー高、円高)の中で,我が国を産業立国化するにはどうすればよいかという課題に対しての視点として。工業製品で見れば1グラム当たり1円以下、1〜1,000円、1,000-10,000〜円の産業に分類できる。1〜数百円のものが強く世界を席巻している。自動車はグラム1円。鉄鋼は何十銭。ペースメーカは数百円〜千円。AV機器は数百円。工作機、ロボットは2円、そのような強い分野ではイノベーションというよりインプルーブメントで行くべき。LSI、ナノ、バイオメカトロニクスなどのグラム千円〜数万円のものについては、イノベーティブで開発すべき。それが次の10,20年後日本をリードするという施策がある。それに対して、設備のある素材産業を戦略的に保つという明確な指針がある。

それとは別に成熟している産業では作り込み技術が進んでいる。その製造プロセスについて総合的に知的財産化するのか。それをビジネスの道具にするのかということが明確に見えつつある時代になってきたのではないか。

[中島] 製造技術を発展させるため、多様な視点を整理してまとめて、

・イノベーションの課題をどうあるべきか。概算要求にあわせる努力をしたい。

・技術と社会の観点から製造技術の施策,社会基盤、知的基盤をつくる技術革新、技術開発から距離をおいたところにも大いに踏み込む必要がある。

まずは、概算要求に合わせて課題を整理する必要がある。本日は、技術課題の設定について十分な議論の時間がなかった。22日までにご意見をいただきたい。

[鈴木] 22日に予算関連のまとめを行いたい。切り口の整理についてもご指摘があったが、仮に既存、新規、環境と分けた場合、重点領域として行うべき領域についてご意見をいただければ,22日までに事務局で整理し、当日討議していただきたい。今週の終わりまでにご意見、重点領域の例示等について書面でいただきたい。

[中島] 経済省の新しい製造体制もプロジェクトの対象となるならば提案していただきたい。

次回は22日の17:00-19:00。                                                以上

内閣府  科学技術政策・イノベーション担当
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