第5回総合科学技術会議議事要旨
(開催要領)
1.開催日時:2001年4月19日(木) 9:00〜10:00
2.場所:官邸大客間
3.出席議員
(議事次第)
1.開会
2.議事
(1)平成14年度資源配分の方針に関する今後の進め方について (2)専門調査会の活動について (3)諮問第3号「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針について」 (4)最近の科学技術の動向について (5)その他
3.閉会
(配付資料)
(会議概要)
井村議員から資料1(PDF)及び資料2(PDF)(頁1)に基づき説明。(2)とあわせて審議。
桑原議員から評価専門調査会について資料2(PDF)(頁2)に基づき説明。前田議員から科学技術システム改革専門調査会について資料2(PDF)(頁3)に基づき説明。科学技術システム改革専門調査会に関連して、文部科学大臣から「国立大学等施設緊急整備5か年計画」(PDF)の策定について報告。 (1)及び(2)についてあわせて審議。資源配分の方針については原案通り進めることを決定し、まず6月目途の分野別推進戦略の作成に向け、各専門調査会が十分連携して調査・検討を進めることとした。 審議の概要は以下のとおり。
(谷津議員)
ライフサイエンスや環境等の重点分野については、農林水産研究開発が担うべき役割が大きく、農林水産省としては積極的に貢献していきたい。今般、農林水産研究・技術開発戦略を策定して、主要分野毎に今後5年間及び10年間の具体的な達成目標水準と推進方策を明確にし、研究開発の重点的かつ計画的な推進を図ることとしている。また、28試験研究機関を再編して8独立行政法人が発足した。今後、独立行政法人制度の特色を生かし、柔軟で機動的な運営と研究結果の厳正な評価を行うことにより、効率的・効果的な研究を実施することとしている。
(片山議員)
今後のこの会議の成果は、いかに実効性ある資源配分の方針を決め、決めたものがどう守られるかであると思う。経済財政諮問会議やIT戦略本部との関係はどうするのか。また、「重点的に推進すべき事項」、「重要な施策、資源の配分に関する考え方」はどの程度の細かさなのか。
(井村議員)
経済財政諮問会議との関係は非常に重要。すでに有識者議員同士で一度話し合ったが、今後も適当な時期に両方で話し合っていきたい。重点分野については、プロジェクトを作り議論している。分野毎に重要課題、重要施策、問題点を明確にしていき、6月を目途にまとめ上げて本会議に報告したい。
これを決めると、だいたい予算額のイメージは浮かぶような細かさか。
課題毎におよその額がある程度わかるようにしたい。
行政評価法案を本国会に提出しているが、ここでの評価と政策評価の分担関係はあるのか。政策評価も研究開発評価は大きい部分である。
評価については、評価専門調査会において考えていく。研究費については、配分の際に事前評価を行うので、事後評価が主である。ただし、非常に大きなプロジェクトについて、例えばITERなどについては事前評価を考える必要があると考える。したがって、総務省の政策評価とはよく連携をとっていくことが必要である。
(平沼議員)
アメリカでは、ホワイトハウスを中心に、各省が連携して、ライフサイエンスやナノテクノロジーといった強力な体制ができている。我が国では、アメリカ以上に強力な体制を組んでしっかり進めていくことが必要である。また、大学の問題については、総花的に整備することも、基盤をつくる意味では必要であるが、日本の中で総合的に力の強い大学を一つつくっていくことも非常に重要であると思う。
前者については、例えばミレニアム・プロジェクトの中で、既に省庁横断的なチームを作り現に研究が進んでいる。今後もできるだけ省庁横断的なチームを作って進めていく必要がある。その中心として総合科学技術会議が重要な役割を果たしていくべきである。後者については、重点の一つとして、いい研究をしている大学の施設を改善していくことになると思う。
(町村議員)
確かに重点的に進めたいところもあるが、それ以前にひどい研究施設もある。極めて老朽化した施設についても、きちんと整備する必要がある。
(白川議員)
老朽化は時間の経過との関係で仕方ないが、狭隘化については、もともとの基準面積の見直しが必要であり、お願いしたい。
(桝屋議員代理)
厚生労働省は、ライフサイエンス分野については力を入れている。特に生命倫理の問題があるので、専門調査会の横の連携を是非お願いしたい。産学官の共同研究を推進するため、ゲノム科学やたんぱく質科学を利用した創薬研究を行う医薬基盤技術研究施設の整備に着手している。ナノテクノロジーも含めて、新たな分野も視野に入れて取り組んでいきたい。
(沓掛議員代理)
環境分野の推進戦略の策定にあたっては、環境省としても、地球温暖化、化学物質による環境汚染、循環型社会の実現、生物多様性の保全等、技術開発の具体的な課題及びこれらを重点的・戦略的に行うための方策について、中央環境審議会において検討することをはじめとして、できる限りの協力を行うこととしている。これらの研究は歴史も浅く、待ったなしの施策であるので、資源配分の方針の審議にあたっては配慮いただきたい。我が国は、改良的な発明は進んでいるが、創造的な発明は非常に遅れている。限られた資源は、ハードよりもソフトに重点を置いて欲しい。例えば、若い研究者から、自らやりたいことを集めて、その中ですばらしいものがあれば、外国における研究や勉強の機会を与えてあげるということを行えば、刺激にもなるし、こうした交流を通じて研究ポテンシャルがあがることになる。
(高橋議員代理)
重点8分野の中で、社会基盤分野は国民生活を支える基盤的分野であり、情報通信や環境分野とともに、安全・安心で活力ある社会を実現するために、技術研究開発を着実に進め、成果を社会に還元することが極めて重要である。国土交通省としては、引き続き住宅、社会資本及び交通分野における技術研究開発を推進し、安全・安心で活力ある社会の形成に貢献したい。
諮問第3号について、文部科学大臣から資料4−1(PDF)に基づき説明。関連して、井村議員から生命倫理専門調査会の活動について、資料2(PDF)(頁4)に基づき説明。以下の意見を踏まえ、本諮問については、生命倫理専門調査会において調査・検討し、その結果を踏まえ総合科学技術会議で審議・答申することとした。
厚生労働省としては、ヒトES細胞の活用は、特に再生医療の分野で応用が期待されており注目している。再生医療の臨床研究のあり方について、厚生科学審議会においても検討することとしており、再生医療の臨床研究が円滑に進むよう取り組んでいきたい。
今般の指針案は、主として研究用である。研究がある程度進んで実用化の目途が立つと、今度は患者さんに使うこととなるので、更に新たな検討が必要となる。その点で生命倫理専門調査会と協力して進めていきたい。
資料5−1(PDF)に基づき、井村議員から、主要国等の科学技術政策における重要課題、国の試験研究機関の独立行政法人化、口蹄疫、の3点について説明。口蹄疫について、谷津議員から以下の発言あり。 また、黒田議員及び町村議員から以下の発言があり、場を改めて討論することとされた。
最近の欧州における口蹄疫の発生に対しては、農林水産省では迅速に発生状況を把握し、発生国からの偶蹄類の動物、畜産物の輸入を直ちに停止するとともに、動物検疫所において、旅行者に対して水際での侵入防止措置の徹底を期している。我が国においては、昨年の3月から5月にかけて、宮崎県と北海道において92年振りに発生が確認されたが、的確・迅速にまん延防止処置をし、わずか4件の発生に抑えることができ、国際的にも高く評価された。さらに研究開発面においても、平成13年度から新たな取り組みを行っており、より万全な家畜防疫体制の構築に努めて参りたい。
(黒田議員)
科学技術の研究開発には重要な要素が2つあり、一つは環境で、もう一つは人材である。環境については、町村文部科学大臣からもあったとおり、今後施設・設備を充実するということで大変ありがたい。人材については、アメリカが理数の英才教育を推進しているのに対して、日本では新しい学習指導要領で30%の内容の削減、厳しい教科書検定が行われており将来を心配している。学習指導要領は下限だけではなく上限も決めており逸脱すると教科書から削除させられ、教科書にゆとりがない。上限が定められて選択の余地のない一律の教科書では、自然を愛し、自然に興味を持ち、深く自然を探求し、社会や環境との関係も考えられるような理数系のリーダーが標準の学校教育では育たないのではないかと心配している。
この議論は、場を改めてゆっくりと議論すべき大変重要な問題である。学習指導要領の基本的な性格は、最低基準を定めていることである。これは教科書ですべてを学ぶわけではなく、副読書、副教材を使ってどんどん先に進むことは何ら妨げていない。最低限のものは必ずやってみなさい、すべての人が理解するように努めて下さい、という学習指導要領であることをご理解頂きたい。
笹川議員から、平成13年度科学技術振興調整費について、文部科学省が作成した実施要項及び公募要領について、笹川議員と有識者議員で、その内容が「平成13年度科学技術振興調整費の配分の基本的考え方」に沿ったものであることを確認した旨の報告を行った。 最後に、第3回総合科学技術会議議事録について原案(PDF)通りとし本会議後公表することを議決。
○議長(内閣総理大臣)しめくくり挨拶(別紙(PDF))