第7回総合科学技術会議議事要旨
(開催要領)
1.開催日時:2001年6月26日(火)17:00〜17:50
2.場所:総理官邸大客間
3.出席議員
(議事次第)
1.開会
2.議事
(1)平成14年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針について (2)平成13年度の科学技術振興調整費の配分方針について (3)その他
3.閉会
(配付資料)
(参考資料)
(会議概要)
前田議員(科学技術システム改革専門調査会長)から、大学等の施設整備及び競争的資金に関する調査・検討(資料1−2、資料1−3(PDF))について、井村議員(重点分野推進戦略専門調査会長)から、各分野の推進戦略に関する調査・検討(資料1−4(PDF))について、説明。続けて、井村議員から、両専門調査会の調査・検討結果をもとに、尾身議員と有識者議員で作成した「平成14年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針(案)」(資料1−1(PDF))を説明。 本案につき、審議。各議員の意見は以下のとおり。 本方針については、これらの議論を踏まえ、重点分野推進専門調査会において更に調査・検討を進めるとともに、尾身議員と有識者議員でさらに議論を深めることとし、必要に応じて閣僚議員とも議論した後、次回の総合科学技術会議において最終案を提示して成案を得ることとした。
(遠山議員)
第1に、4つの重点分野は、いずれも我が国にとって戦略的課題として大変重要であり、我が省としても重点を置いて取り組みたい。 第2に、基礎研究は長期的な観点で極めて重要であり、幅広い活用が期待され、将来の画期的なブレークスルーにつながる可能性を持っており、同様に重視していくことが重要である。 第3に、大学の施設整備については、計画どおり遂行するためには、かなりの規模の財源の確保が必要であり、新世紀型の社会資本として特段のご配慮をお願いしたい。 第4に、国策としてのプロジェクトについては、宇宙、原子力、海洋など、国の存立にとって基盤的であり、リスクがあって長期にわたって国として取り組むことが不可欠なものであり、着実に進めることが重要である。 第5に、「大学を起点とする日本経済活性化のための構造改革プラン」を提示し、大学を世界最高水準に育成することにより経済の活性化等に資するため、大学に対する重点投資や産学連携の強化などの施策を取りまとめているところ。本プランの具体化にあたってご支援をお願いしたい。 最後に、平成14年度予算は、第2期科学技術基本計画策定後の最初の予算要求であるので、今後の我が国全体の予算、人材等の配分に当たっては、科学技術基本計画に定められた諸事項を実現するための着実な一歩となるよう十分配慮をお願いしたい。
(泉議員代理)
環境、情報通信などの4つの重点分野については積極的に取り組んでいく。 一方、社会基盤など、国の存立にとって基盤的であり国としての取り組みが不可欠な領域にも、十分な資源の配分が必要であり、国土交通省の取り組むこれらの領域の重要性が広く認識されるよう取りはからってほしい。 環境分野の重点化では、地球温暖化対策等に加え、地球規模の水循環、自然共生型都市や流域圏の再生、化学物質管理などにも積極的な取り組みが重要である。
(平沼議員)
基本的な考え方の中で、産業競争力の強化と経済の活性化を最重要で取り入れていることは非常に時宜を得たことであり、担当省としては、全力を尽くしていく。 重点化の視点の中で、政策の明確な実現目標の設定及び研究成果の社会・産業への迅速な還元は特に重要である。産業構造審議会においても同種の提言をしている。今後、これらの具体化に当たっては、制度上、予算上の仕組みが必要であり、総合科学技術会議の役割は非常に重要だと認識している。 また、遠山議員の御提言は非常に高く評価している。我が国の知的資産の共有財産である大学に競争的環境を整備して、その成果を国民に還元する考え方は非常に重要であり、可能な限り早いタイミングでの実現が重要である。我々も文部科学省と協力し一生懸命努力したい。
(村井議員)
社会基盤の中で防災の問題を大きく取り上げていることはありがたい。重点4分野とはなっていないが、それぞれの分野の中で防災については重点的にお願いしたい。 地震については、従来に比して予知が可能な部分も出てきている。また、阪神・淡路大震災の経験等を踏まえて、科学技術の進展に伴い、予防、応急、復旧、復興の各局面で、新たに効果的な対応が可能なものも数多く出てきている。21世紀は、種々のデータを集積してみると、相当大変な地震が起きる可能性があるということで、特に、東海、南関東は完全に危険水域に入ってきたという議論もある。こうした観点から、地震発生の際のロボット技術、復旧における工事の無人化技術等については十分実現可能な段階になっているので、重点的なご配慮をお願いしたい。
(武部議員)
ライフサイエンス分野において、食料は、医学・医療とともに、国民の生命と健康を支える重要な基盤であり、安心・安全で質の高い生活を実現する上で、食料自給率の向上は極めて重要。基本理念として、食料自給率の向上を図り、安心・安全で質の高い生活のできる国の実現を図ることを明記していただきたい。また、新科学技術基本計画において、食料自給率の向上等に貢献する食料科学・技術は医学・医療分野と同様に重要な領域とされているところであり、平成14年度に重点的に取り組むべき項目として、食料科学・技術を項目立てするとともに、具体的な内容として、イネゲノム解析の早期完了とポストゲノム研究の加速化、自給率の低い作物等の国際競争力のある品質を備えた品種の開発や生産技術の高度化を明記していただきたい。 さらに、環境分野については、経済財政諮問会議の基本方針おいても、自然との共生が可能となる循環型社会の構築への対応に重点的な資源配分が必要であるとされたところであり、これに対応した研究開発が重要。このため、自然共生型流域圏の再生に関する研究を明記していただきたい。
(片山議員)
全体として本方針に賛成である。特に戦略的重点化、めり張りをつけることは是非とも必要であるし、産学官の連携、地域における科学技術の振興を取り上げていることは大変いい。さらに、整理・合理化、削減をしなければならないという考え方が出ており大変結構である。 政策評価法が国会を通過し、各府省が本格的に政策評価に取り組むこととなった。我々が取りまとめを行うが、その中で、公共事業、科学技術振興、ODAを重点項目と考え、法律でも位置づけている。政策評価は、一次的には各府省が行い、総務省が若干の調整や客観性担保を行うが、各府省横断的なもの、大規模なもの、国家的に重要なものは、総合科学技術会議が2次的な評価をするというのはどうか。その評価を概算要求や予算編成の中で活かすという仕組みを入れることによって、今の戦略的重点化や整理・合理化、削減の形が整うと思うので、是非その観点を勘案して欲しい。 経済財政諮問会議、IT戦略本部とも関連づけて、バラバラでないということを示した方がいいと思うので、よろしくお願いしたい。
(風間議員代理)
5月7日の総理所信でも、自然との共生が可能となる社会の構築を掲げており、流域圏を構成する森林、農地、河川、沿岸域、そして都市という全体の環境管理、改善を、生態系と調和してどうやっていくのかという、自然共生型社会を構築する研究を、是非環境分野に加えてほしい。 化学物質管理については、内分泌かく乱化学物質、残留性有機汚染物質等、今は小さな被害ですけど気がついたときには遅くなっていくという可能性があるので、特に人類にとってダメージを与えるものについては、優先順位をつけて取り上げてほしい。
(竹中議員)
経済財政諮問会議において、21日に基本方針(「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」)が答申され、「改革なくして成長なし」という基本的理念とその実現のための道筋を示したが、この中で、科学技術については、知的資産倍増プログラムという形で大変重く位置づけている。ライフサイエンス、IT、環境、ナノテクノロジー・材料の4分野への戦略的重点化を図ることも記している。さらに14年度予算の重点分野についても、同様の重点化を掲げている。 重点分野への重点化ということは、決して分野の聖域化でなく、競争的環境の強化、厳正な評価、プライオリティの絶えざる見直し等により、資源の再配分による構造改革を進めることが極めて重要である。 本方針に則った、まさにめり張りのある14年度予算を実現することが、小泉内閣の改革実現にかける意気込みを国民に伝える一番のメッセージと思っているので、予算等の配分について、戦略的かつ総合的な観点からの審議をお願いしたい。
(坂口議員)
厚生労働省としては、ライフサイエンスを重点分野としていただき光栄である。「資源配分の方針」の中で、「脳、がん等の研究について重点的に推進してきた」と過去形になっているが、脳、がんについてはまだ続けているものがあるので、御配慮いただきたい。
(井村議員)
いろいろな御意見をいただいたが、これらを参考にしてさらに専門調査会で議論をしたい。 第1に、合理化、削減は、非常に重い課題であり、適切に行うためには評価が重要である。桑原議員を会長とする評価専門調査会で現在議論を進めているところであり、総務省とも密接な連携をとっていく必要がある。 「分野別の推進戦略」(資料1−4(PDF))には、例えば武部議員が仰ったこともほとんど書かれているが、「資源配分の方針」(資料1−1(PDF))をまとめる際に、思い切って重点化した。御意見は検討するが、何もかも入れると重点化の意味がなくなるのでご理解いただきたい。 がんについては、日本の死亡率の第1位であり、引き続き研究が必要である。ただ、脳、がんについては、既に一定の研究投資はしてきているし、その他の分野でも、例えば化学物質についても、環境ホルモン、ダイオキシンについては既にかなりの研究投資をやっており、これらを評価して今後どう変えていくのがいいかを検討しなければならないと思う。
(塩川議員)
本配分方針を決めるのは非常に結構であり、特に重点分野として4分野を決めているので予算担当者としては非常にやりやすい。 ここでもう1つお願いしたいのは、是非めり張りをきちんとつけてほしい。横並びで重点というのは非常に困る。また、投資の中身の質と効率性が、国民にわかりやすく説明できるように、注釈をある程度つけてほしい。めり張りとわかりやすさということで、国民にわかりやすく説明する材料を是非出してほしい。
桑原議員から資料2(PDF)に基づき説明。原案とおり決定し、内閣総理大臣に対して意見具申。 今後、課題の審査が、決定した配分方針等に沿ったものであることについて、尾身議員と有識者議員とで確認し、会議に報告することとした。 また、総合科学技術会議が指定することとなっている緊急研究のうち、特に緊急の対応を必要とする事案については、議長が、科学技術政策担当大臣、有識者議員及び文部科学大臣の意見を聴いた上で指定し、直後の本会議で報告することとした。
ITER(国際熱核融合実験炉)計画について、尾身議員と有識者議員との間で進めている検討状況につき、井村議員から報告。 本件に関する審議概要は以下のとおり。 審議を踏まえ、今後も引き続き、尾身議員と有識者議員で、専門家の意見を聴くことも含め、検討を進めていくこととした。
これは国内誘致の話か。
国内誘致と外国設置に参加するという2つのオプションがある。吉川議員が座長をされた原子力委員会ITER計画懇談会においては、日本が設置国になることが望ましいという結論が出ている。
慎重に考えて欲しい。本件は、今回の4つの重点分野に入ってくるのか、それ以外なのか。
予算としては、H14年度よりはもう少し先の問題になる。
文部科学省としては、原子力委員会の決定を踏まえ、他極との協議を行うとともに、サイト適地調査を行うこととしている。さらに、ITER計画をいかに実施していくか、その必要性と安全性を様々な観点から検討していく必要がある。総合科学技術会議においても、総合的な科学技術政策の観点から、8月末を目途に方向づけを行ってもらいたい。 これらの結果を踏まえ、文部科学省としてITERの誘致について判断してまいりたい。
(吉川議員)
ITER計画懇談会では、人類の未来にとって非常に意義あることという結論を出した。我が国が人類の未来に対して貢献する一つの有効な方法であるという意味で、我が国として誘致しようという結論になっている。 米国政府としては撤退しているが、現在でも多くの米国の研究者は協力しているので、是非米国に復帰するよう説得してもらいたい。 5,000億円といっても10年間での経費なので、単年度あたりはそう大きくないということを認識いただきたい。
エネルギーを考えたときに、ITERはすばらしい技術をもたらす画期的なものである。経済産業省にも、複数の地方自治体から誘致したいという熱意あるプロポーザルがきている。経済産業省としても、前向きに見守っている。
(尾身議員)
米国の復帰については、機会ある毎に米国に働きかけることが重要であり、政権も変わったという意味ではいいチャンスだと思うので一生懸命やりたい。
科学技術予算は増えるとしても一律ではないということを念頭においていただきたい。増やすべき予算は増やし、削るべき予算は削るという戦略的・重点的な研究開発投資を進めることが必要である。 来年度予算については資源配分の方針を次回決定したい。総花的な研究開発を改め、めり張りのきいた方針としたい。 科学技術振興調整費については、本日決定された配分方針に沿って対応していただきたい。 ITER計画については、私が初めて当選したときに、一年生議員だけで未来エネルギー研究会をつくって取り組んできた問題だが、30年たっても未だできていない。これは将来の夢のエネルギーとして非常に大事である。こうしたエネルギー分野における長期的な取り組みの重要性にもかんがみ引き続き検討を進めていただきたい。