第12回総合科学技術会議議事要旨
(開催要領)
1.開催日時:2001年11月28日(水)17:15〜18:15
2.場所:総理官邸大食堂
3.出席議員
(議事次第)
1.開会
2.議事
(1)平成14年度予算及び平成13年度第2次補正予算の編成に向けて (2)諮問第2号「国の研究開発評価に関する大綱的指針について」に対する答申について (3)諮問第4号「特定胚の取扱いに関する指針について」に対する答申について (4)ITER計画について (5)その他
3.閉会
(配付資料)
(会議概要)
井村議員から、資料1−1(PDF)に基づき、尾身議員と有識者議員でとりまとめた 平成14年度科学技術関係予算の編成に向けた意見案について説明。あわせて、井村議員から、平成13年度第2次補正予算に ついて、3つの観点(@小泉内閣の構造改革の方針に沿うこと、A経済活性化、景気対策にプラスの効果を生み出すこと、B科 学技術の発展を中長期的に支えていくこと)から精査し、メリハリのついた内容となるよう貢献していく旨説明。 「平成14年度科学技術関係予算の編成に向けて(意見)」については、原案どおり決定し、総合科学技術会議から、内閣総理 大臣及び関係大臣に対して意見具申。今後、尾身議員と有識者議員を中心に、本決定に沿って、省庁の枠を越えて総合的に研究開 発が推進され、成果の社会還元が迅速になされるよう、フォローアップを進めることとした。 平成13年度第2次補正予算については、尾身議員と有識者議員で精査をし、メリハリをつけた形で意見をとりまとめて、緊急 対応プログラムを担当する竹中経済財政政策担当大臣を通じて経済財政諮問会議に伝えるとともに、補正予算編成過程において財 政当局との連携を図っていくこととした。 本議題に関する議員の意見は以下のとおり。
(白川議員)
基礎研究の重要性について話をしたい。昨年の私に続き、今年も野依先生がノーベル化学賞を受賞され、日本の科学技術が世界に 認められたことは大変うれしいニュースであった。この受賞のきっかけとなった研究は、私は31歳の時、野依先生は28歳の時で、 いずれも大学院を終えて助手になって間もなくのことであり、当時の教官当積算校費、現在の教育研究基盤校費による研究である。 これは、プロジェクト研究でも、競争的な資金による研究でもなく、自由な発想の下に自発的に使えるお金であり、非常に重要であ るので、今後も教育研究基盤校費については、十分に配慮していただきたい。また、同時に、若い人に「金も出すが、責任も持たす」 ことが大切である。
(平沼議員)
2次補正に関して、科学技術は重点分野の中でも21世紀に向けた発展基盤を構築する上で重要な分野である。2次補正の趣旨に かんがみ、経済活性化、イノベーションの推進、産業空洞化への対応に向けて民間投資を誘発し高い経済波及効果を有する、という 施策を実施すべきである。その意味で、最先端の研究開発、産学官連携拠点の整備等を進めることは当然だが、その際2点お願いし たい。1点目は、今回のNTTの株式による無利子貸付スキームの償還財源については、本スキームが創設された昭和62年度補正 予算の際に次年度以降のシーリングで別枠の措置がとられたが、今回も同様の措置をとっていただきたい。2点目は、対象経費が施 設費となっているが、新技術開発や実用化研究のための設備については、施設と一体となって整備されるものは可能な限り幅広く対 象として認めていただきたい。
(桑原議員)
平沼議員のご発言に関連して、例えば、日本で世界を征する大型ディスプレイができそうなアイデアが大学から出てきており、第 2次補正においては是非設備については柔軟な運用をお願いしたい。 情報セキュリティについて危機感を持っており、e−Japan計画では、14年度から15年度にかけて、セキュリティ準備投資が 出てきているが、研究投資のみではなく強力な組織を作って対応していくことが必要である。例えば、リダンダンシーの観点からも、 日本に2カ所程度セキュリティの維持センターを作って、そこに人材と機材をおいて、攻撃に対する迅速な対応と研究を行う組織を つくって運用していくことが必要である。我々もIT戦略会議等と連携をとりつつバックアップしていきたい。
(遠山議員)
第2次補正は、日本の現在の課題を解決すると同時に、将来の日本のあり方にとって大変重要な予算であり、当省としても、科学技術 振興という観点から、21世紀にふさわしい新たな社会資本となる知的インフラの戦略的な整備を進めるべく真剣に検討している。 要求の考え方は3つある。第1は、大学等の施設整備を通じて、世界水準の学術研究拠点や独創的・先端的な研究拠点の形成を図る。 第2は、産学官連携の推進を図るための卓越した研究拠点を充実する。第3は、ライフサイエンス、ナノテクノロジーなどの重点分野 における研究開発を加速するための試験研究機関の整備を推進するというもの。これらの事業を通じて、民間投資の創出と雇用機会の 増大に資する科学技術の発展に大いに貢献していきたい。
(川口議員)
14年度の概算要求については、環境分野は43.7%の伸びでうれしく思っているが、金額的には516億円とまだ少なく、ライフサイ エンス、ナノテクノロジーといった関連分野も含めて、今後金額的にもっと増やしていく必要がある。 また、環境分野においては、各省間の連携の必要性について指摘を受けているが、特に温暖化問題については、日米間の気候変動に ついてのハイレベル協議の場でも両国の共通関心事項として取り上げられており、環境省としては、温室効果ガスの広域的な循環に関 するモニタリング、温暖化による影響の把握、予測、適応戦略について、各省と連携協力を図っていきたい。 2次補正については、独立行政法人国立環境研究所の施設整備等を検討している。
(遠藤議員代理)
資料1−1の6頁の地域科学技術振興については、国の施策を掲げて地域の活性化の効果をうたうだけでは物足りず、地域自身の自由 な発想、自発的な取組を推奨して新しい産業を興すきっかけにして地域の活性化を図るという角度から地域科学技術を振興することが大 事である。
(志村議員)
科学技術の予算は、大学に関連するところが多いが、日本の国立大学と私立大学に対する財政支出の差は、他の先進諸国に比べて非常 に大きい。日本の大学数、学生数いずれも約7割を占める私学の知的資産をより活用するという点にも配慮していただきたい。
(黒田議員)
第1は、基礎学術研究の充実をお願いしたい。ある程度研究成果を出さないとアイデアのみでは研究費が通らない、あるいは、そもそも 研究費が取りにくい分野がある。全く新しい発想に基づいた基盤特許取得に結びつくような研究成果を生み出すためのシステムをつくって いただきたい。このためには、基礎学術研究の充実が重要であり、さらなるサポートをお願いしたい。 第2は、大学の施設が貧弱であり、世界中からノーベル賞クラスの研究者が来て、短期間共同研究をしたいと言っても実験室、研究室の ゆとりがない状況であり、施設整備を図る必要がある。また、(民営の)宿泊施設、レストランといったアカデミックな雰囲気でちょっと しゃれたものがキャンパスの中にあり、日本の大学の著名な先生のところでは、カンフォタブルな環境で充実した共同研究ができたという ような魅力的な大学をいくつかつくっていただきたい。
(前田議員)
大学の施設整備については、これまで補正予算という形で対応してきており、今回も2次補正で対応するということはありがたいことだが、 継続的なメインテナンスという点からは問題がある。大学はメインテナンスの感覚がないため、老朽化が早くなっており、維持費用をきちっ と使っていかなければ、せっかくの施設がふいになってしまう。15年度予算では、補正予算でなく、当初予算にメインテナンスについても しっかり組み込み、折角作ったものは長続きさせるという思想で予算編成を考えていただきたい。
桑原議員から、資料2−1(PDF)及び資料2−2(PDF)に基づき、 評価専門調査会でとりまとめた答申案について説明した上で、原案どおり決定し、総合科学技術会議から内閣総理大臣に対して答申。 本議題に関する議員の意見は以下のとおり。
(中谷議員)
井村議員から、資料3−1(PDF)、3−2(PDF)、 3−3(PDF)、3−4(PDF)に基づき、生命倫理専 門調査会でとりまとめた答申案について説明の上、原案どおり決定し、総合科学技術会議から文部科学大臣に対して答申。 本議題に関する議員の意見は以下のとおり。
(石井議員)
本答申案の作成に当たっては、井村議員を会長とする生命倫理専門調査会にプロジェクト・チームを 作って集中的に、30時間近く議論を行った。その際は、人の胚を使うという生命倫理的な問題を重要 視する意見と、再生医療をはじめとして多くの人が救われる有益な研究が行われるという意見とが、 がっぷり四つに組んで議論をし、結果として、文部科学省の案をさらに絞り込んで解禁することにした。 今後の進め方についてのコンセンサスは、今回は、議論が熟していないものは強いて結論を出すことはやめ、 意見が一致したもののみ解禁することとするが、引き続き議論を進め、議論が熟したものから、タイミング を遅らせずに認めていこうというものである。文部科学省としても、随時適切に対応していただきたい。
大変熱心なご議論の末、立派な答申をいただきありがとうございます。当省としては、本答申に基づき 指針を策定して告示をします。ヒトクローン胚の作成については、ヒトES細胞の研究の進捗状況、再生 医療の研究動向を勘案しつつ、引き続き検討が必要であると考えているので、今後もご指導をお願いする。
(南野議員代理)
本指針で認められた移植用臓器の作成に関する研究、それを目的とする動物性集合胚の基礎的な研究は、 将来的には臓器移植が必要な疾患の克服に役立つ研究につながる可能性があるということで、厚生労働省と しても、研究の進捗を期待している。
尾身議員と有識者議員によるITER計画の検討状況について、資料4に基づき井村議員から説明すると ともに、遠山議員から、第1回政府間協議の結果及びITERサイト適地調査について報告。本日の報告を 踏まえ、関係各国の動向も注視しつつ、引き続き尾身議員と有識者議員で検討進めることとした。
14年度予算編成については、今までの縦割の弊を排して、有識者議員の先生方に整理していただき、 めり張りのある予算について格段のご協力をいただいており、本当にありがとうございました。 これから編成する13年度第2次補正予算についても、格段のご指導をお願いいたします。 「国の研究開発評価に関する大綱的指針」については、効果的・効率的な研究開発の推進のためには、 評価は極めて大事ですので、各省大臣においては、本指針に沿って、しっかりとした対応をお願いした いと思います。 「特定胚の取扱いに関する指針」については、我々の想像を絶するような技術で、生命倫理の大変大 きな問題だと思いますが、本答申によって、特定胚に関する研究のルールが定まり、現在米国でも問題 になっているヒトクローン胚の研究は当面禁止されることとなります。人類全体に関わる生命倫理問題 の重大さを十分理解し、本答申の示すルールに従って、研究がなされることを期待しております。 これからも、科学技術の重要性をしっかりと認識して対応していきたいと思いますので、皆様方の 格段のご指導、ご鞭撻を今後ともよろしくお願いします。