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第33回総合科学技術会議議事要旨

 


(開催要領)

1.開催日時:2003年12月26日(金)14:06〜14:51

2.場所:総理官邸4階大会議室

3.出席議員

   議長 小泉 純一郎 内閣総理大臣
   議員 福田 康夫 内閣官房長官
 同
茂木 敏充 科学技術政策担当大臣
 同
麻生 太郎 総務大臣
 同
谷垣 禎一 財務大臣
 同
河村 建夫 文部科学大臣
 同
中川 昭一 経済産業大臣
 同
井村 裕夫  
 同
阿部 博之  
 同
大山 昌伸  
 同
薬師寺泰蔵  
 同
黒田玲子  
 同
松本 和子  
 同
吉野浩行  
 同
黒川 清 日本学術会議会長
  (臨時)    
   議員 坂口 力 厚生労働大臣
 同
亀井 善之 農林水産大臣



(議事次第)

1.開会

2.議事

(1)平成16年度の科学技術関係予算案について
(2)科学技術関係人材専門調査会の検討状況について
(3)「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」(中間報告書)について
(4)その他
   ・科学技術振興調整費について
   ・ITER計画について

3.閉会



(配付資料)

(配付資料)
資料1−1 平成16年度の科学技術関係予算案について(PDF)
資料1−2 平成16年度政府予算案における科学技術関係予算(府省別内訳)[速報値](PDF)
資料1−3 平成16年度予算案における科学技術関係予算への優先順位付けの反映について(PDF)
資料1−4 平成16年度概算要求における科学技術関係施策の優先順位付けについて(PDF)
資料1−5 平成16年度予算案における重点分野等に係る主な施策の位置付け(PDF)
資料2−1 科学技術関係人材専門調査会の審議における主な論点について(要旨)(PDF)
資料2−2 社会の変化と人材(PDF)
資料2−3 科学技術関係人材専門調査会の審議における主な論点について(PDF)
資料3−1 総合科学技術会議 生命倫理専門調査会「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」
(中間報告書)について(PDF)
資料3−2 ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方(中間報告書)(PDF)
資料4−1 平成16年度の科学技術振興調整費の基本的考え方等について(PDF)
資料4−2 平成16年度の科学技術H振興調整費の配分の基本的考え方(案)(PDF)
資料5 国際熱核融合実験炉(ITER)の状況について(PDF)
資料6 第32回総合科学技術会議議事録(案)(PDF)



(会議概要)

1.議事概要

(1)平成16年度の科学技術関係予算案について

「平成16年度の科学技術関係予算案」について、資料1−1(PDF)から資料1−5(PDF)に基づき、阿部議員から説明。
関係大臣においては、今回の科学技術関係予算案が活きた投資となるように、御尽力いただくこととした。
  本議題に関する議員の意見は以下のとおり。
 

【谷垣議員】
平成16年度予算は大変厳しい財政事情の中での作業であったが、活力と安心に向けたメリハリづけという視点と、我が国の発展の基礎となる科学技術の振興を図らなければいけないという観点から、科学技術振興費は主要経費中で最大の4.4 %の伸びとすることができた。
科学技術予算の中でのメリハリづけ、あるいは質的向上といったことも、私どもとしても意を用いており、今年も茂木大臣、それから会議の議員の先生方の御尽力により決定したSABCを活用し、評価の高いプロジェクトの予算を拡充する一方で、そうではないものは思い切った合理化、効率化を図った。その他のポイントとして、我が国経済の活性化と21世紀のリーディング産業の芽を育むという観点から、経済活性化プロジェクトを大幅に拡充した。
アルマ計画、ニュートリノ、南極観測などの国家的、国際的に重要なプロジェクトについても、国際競争力強化、国際協力の観点から積極的に取り組むこととした。
科学技術システムの改革を推進するために、競争的資金を前年度から3.3 %増の3,606 億円に拡充したほか、不正経理問題への対応を強化した。
政策群、モデル事業といった新しい予算編成のアプローチを活用し、施策の重複排除、あるいは明確な研究開発目標の設定を心がけた。
科学技術予算については、量的、質的に拡充を図ったが、厳正な評価に基づく予算の効率的配分のさらなる推進に積極的に取り組む必要がある。
すなわち、事前、中間、事後の評価を適切に実施し、その結果に基づき新規プロジェクトの厳選と、既存プロジェクトの見直し、場合によっては中止も行っていくことが必要であると考えており、総合科学技術会議、関係各省庁の積極的な取り組みを期待する。
来年度予算の編成に当たりまして、総理の大きなリーダーシップと関係各大臣、総合科学技術会議議員の先生方の多大な御協力に対し、この場をお借りして心から御礼を申し上げる。


【麻生議員】
この前の会議で述べたが、SABC等々のランクづけに関し、きちんとした優先順位を付けていただく答えが出たことに関しては、関係各位の御努力に感謝する。
前回、同じように申し上げたが、今回の科学技術振興費の4.4 %増はいいところだが、科学技術関係予算のうち重点4分野が占めるシェアは、この14年度から15年度のときには、総額で37.3%から38.7%と、各分野全部足しても1.4%増にしかならず、何のための重点といっているのか、意味がないじゃないかと申し上げたが、今回、そこそこの増加が出ているが、重点4分野の増加率について調べて教えて欲しい。


【河村議員】
これからの日本にとって大きな意味を持つ科学技術関係予算が確保されたことはありがたい。
 特に重点4分野で、ライフサイエンスを始めとする4分野の文部科学省の予算は、5.5 %増の2,134 億円と伸ばしていただいた。
 また、競争的研究資金については、私どもの方では4.1 %増の2,825 億円になっている。
 更に、独立行政法人の予算は効率化の上、重要な新規・拡充施策を実施するための増額を図ることができた。
 重要な施策を着実に推進できることになり、ハリを付けてもらったことはありがたい。
個別には、南極観測船、ニュートリノ実験施設、先端計測分析技術・機器開発、ITER計画にも所要の予算を付けていただいた。
文部科学大臣としても、政府全体の科学技術関係予算の63%を担当しているので、今回の予算を受け、その責任をしっかり受け止めて科学技術創造立国を目指して、更に頑張ってまいりたい。


【阿部議員】
麻生大臣の前回御指摘の件、重点4分野にどれだけのお金が配分されているかは、まだ精査ができておらず、できるだけ早くこの会議で御報告をさせていただき、御意見をいただきたい。


【中川議員】
 経済産業省の立場からは、経済に不透明感がある中、企業の研究開発費という問題もあるが、基礎研究だけではなく、それが実証され、実用化となるために、産業界、官界、学会の一層の連携が必要である。
その意味で、競争的研究に緊張感を持ち、ただ予算が付くのではなく、メリハリを持った予算の執行に是非御配慮をいただきたい。


【茂木議員】
科学技術基本計画も来年度で4年目を迎える山場の年であり、今回の予算案により、目標実現に向けた一歩の前進があった。
 科学技術は、長期的視点に立った研究開発投資による国力の基盤の充実とともに、我が国経済の活性の原動力として極めて重要である。




(2)科学技術関係人材専門調査会の検討状況について

 「科学技術関係人材専門調査会の検討状況について」を、資料2−1(PDF)から資料2−3(PDF)に基づき、井村議員から説明。
今回は中間的な論点整理であり、本日いただきました御意見も踏まえて、個々の論点を更に深掘りをするとともに、引き続き検討を重ね、来年の6月を目途に最終のとりまとめを行うこととした。
 本議題に関する議員の意見は以下のとおり。


【亀井臨時議員】
科学技術と社会の橋渡し人材が不十分という点で、私ども農水省、食の安全に関するリスク管理や、あるいは遺伝子組換えという技術に関係する立場から述べると、国民の食に対する不安、不信感を払拭する面で、国民に対し、科学的なデータに基づく正確かつ適切な情報を提供することが必要であると思う。
 国民の方々に食品の安全性に関する知識、理解を深めてもらうことが極めて重要である。
食品に関して、安全性やリスクについての理解を深めるための教育を初期段階から進めることが重要である。
 科学の知識や情報を国民に対してわかりやすく、橋渡しできる人材を多く育成してくことが重要である。
私の農水省としても、施策の充実に努めてまいりたい。

【黒田議員】
最近、中国とか、シンガポールとか、マレーシア、スウェーデンといった国が、経済発展と安全保障にとって科学技術が重要という認識を持ち、アメリカでトレーニングを受けた優秀な人材を戦略的に自国に呼び戻す政策を取り始めた。
 中国では、優秀な帰国者には10倍の給料を与えている。
これに危機感を感じ、アメリカは戦後50年の人材育成政策を大きく転換しようとしている。
 今年7月にアメリカのナショナル・サイエンス・ボードがまとめた報告書では、もはやアメリカの将来を海外の優秀な頭脳に頼ることはできない。
 自前の、つまりアメリカで生まれた人の人材育成のために、政府全体でアクションを取るべきであるという極めて深刻な、影響力の大きい提言が出ている。
 研究人材の育成確保の世界競争が始まっているといっても過言ではない。
 研究者は、研究環境のよいところに移動する。
 日本の優秀な研究者が定年で研究活動が絶たれてしまうために海外に出ていく例や、海外でプリンスパル・インベスティゲーターになり、グループを引きいて活躍している人が日本へ帰国したがらない傾向がある。
 ものづくりだけでなく、頭脳までが空洞化してしまう懸念がある。
国際的リーダーである研究者が日本で活躍でき、日本ひいては世界の人材育成に貢献するために何よりも重要なのは、日本に優れた研究拠点をつくることである。
 具体的にピックアップすると、若手研究者の独立、あるいは女性研究者の参画、優秀な高齢研究者が活躍を促進するシステムをつくる。
 また、研究補助員の待遇改善を充実させる。
 社会と科学の橋渡しをするインタープリターの人材育成なども重要であり、人材を育成する側の大学、受け入れる側の企業や研究者、社会が連携して取り組んでいかなければいけない。
アメリカが50年来の政策をこれから変えようとしているので、日本も本当にしっかりとしたビジョンを持って考えていかなければいけない。


【麻生議員】
特殊法人改革をしたので、大学は国立大学ではない。
 国立大学法人になったから、給与など結構自由裁量でできるようになる。
 それが目的で非国家公務員にし、大量に動きやすくし、競争もできるようにしたので、海外も含めて質の高い人を集めやすいような、今だと少なくとも日本に年間186日以内以上は教授にはなれなかったが、全部自由にしたのだから、是非その点も留意して、国立大学法人を経営される側の自覚、経営感覚としての自覚が要ると思う。
そういった意味では、例えば横須賀にある横須賀リサーチパークは、早稲田、慶応、それから横浜国立大学も、京都大学行っている。
 そういったところが集まり、少なくとも企業と大学がやりやすくなった。
 横浜も国立大学、京都も国立大学だから、そういったのができるようになっているのは、魅力のある研究開発機構が大事だと思う。
 特に、最近ナノなどが話に出てくると、スピードが上がっている。
 出てから商品になるまでのスピードが上がっている気がする。
 海外からの研究者とか、それから国際競争力の強化ということにつながる必要があるので、研究成果がビジネスに結び付くのは、非常に大きな要素になる。
 いろんな機会をうまくくっつけてやるのが大事だと書いてあるので、今までアメリカの大学などに流出していたものがこっちに帰りやすくする努力は、法律的に規制の部分でできなかった部分は随分外れたと思うので、あと、この点は予算とか、いろいろ後ほかにもあると思うので、是非教えていただければ、私達も参考にしたい。


【大山議員】
科学技術関係人材育成については、この論点でほぼ網羅されていると思うが、1点だけ補足したい。
 それは、IT革命がもたらすグローバルな競争社会を制する人材、つまり世界に勝てる基礎研究開発の担い手の育成は、我が国にとって緊急課題である。
昨今の経営環境の変化から、各産業のリーディングカンパニーにおいて、こうした人材育成が残念ながら後退しつつある局面にあり、国全体として、このポテンシャルの低下が懸念される。
したがって、大学には先端技術開発に関わる教育研究開発一体型の大学院教育を充実することにより、積極的な育成を是非目指してほしい。


【松本議員】
先ほど麻生大臣が大学の今までの規制が取れたので、新しい人材を海外から呼んでいい環境が大いにできるのではないかと言われましたが、大学の側には保守的な雰囲気が一般の大学教官に根強く残っている事実があり、大学だけに任せておくと大きな改革はなかなか起こりにくい実情だと思う。
アメリカで、なぜ、重点4分野に大きく特化して研究環境の分野で変化が起こり得るかというと、結局、新しいものをつくるために、ある程度古いものは整理するという観点がある。具体的には、人を変えることになると思うが、実際に、日本が大きな変革が大学の中にできるのかどうか、私は日本の風土では、どうしてもゆっくり起こると思うので、本当に長期将来展望として大きく変革をしなければいけない部分と、徐々にやっていく部分とを組み合わせないと、うまく動かないと思う。


【薬師寺議員】
 日本の大学はやはりなかなか動かない。
 それはなぜかというと、やはり人材が固定化されているためである。
 教員、教官も含めて3割ぐらいは異動しないと競争社会にならない。
 先生たちは異動しない。
今の世の中で、組織で異動しないところは大学である。
 そこが外国との競争社会としては非常に欠けている部分があると思う。

【吉野議員】
まず、専門調査会で議論していると、科学技術関係の議論となるが、ほかの分野も問題は全部同じだと思うので、全体の問題だという認識をすべきである。
2点目は、大学の議論が多いが、社会全体、特に父兄とか、初等・中等教育の先生方の意識が変わらないといけない。
 今まで既定問題をうまくやろうということだったと思うが、これからは自由課題にウェートが置かれなければいけない。
 個性とか、創造性を大事にする、社会全体の意識の変換を促すことが必要である。
3点目は、最近、アジアへ出かけることが多いが、特に中国や韓国の若者を見ていると、ものすごいバイタリティーで、向上心はすごい感じで、いかに日本の若者をたくましく育てるかという観点が大変重要である。


【茂木議員】
大変重要な御指摘をいただき感謝。
 人材育成もボーダレス、グローバル化の観点からの検討が必要である。
 また、これに関連した大学、大学院の在り方の検討、そして技術開発がスピード感を持って行われている中での対応などの問題、更に大きく社会全体の意識改革の問題まで議論できた。




(3)「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」(中間報告書)について

「「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」(中間報告書)について」を、資料3−1(PDF)資料3−2(PDF)に基づき、井村議員から説明。
 この中間報告書は、パブリック・コメントにかけることとし、パブリック・コメント、シンポジウム等を通じ、広く国民各層の意見を聞いた上で、最終的なとりまとめを行うこととした。





(4)その他

まず、「科学技術振興調整費について」を、資料4−1(PDF)資料4−2(PDF)に基づき、薬師寺議員から説明。
 「平成16年度の科学技術振興調整費の配分の基本的考え方(案)」については、原案通り決定。
 また、文部科学省が取りまとめた「平成16年度の公募要領」、「14,15年度研究課題の中間、事後評価」、「平成15年度課題の追加募集分の審査結果」については、茂木大臣と有識者議員が確認したことを報告した。
 また、「ITER計画について」を、資料5(PDF)に基づき、河村議員から説明。12月20日の閣僚級会合では、サイトの合意が得られなかったが、2月に再度行われる閣僚級会合での我が国への誘致実現に向けて、国全体として取り組むこととした。
それから、1月5日付けで退任する井村議員より、以下の発言あり。

【井村議員】
科学技術会議の時代から通算5年半、科学技術政策の非常に大きな変革期に精一杯仕事をする機会を与えいただき、種々御支援いただきましたことを心からありがたく感謝します。
しかし、私の非力のせいで積み残した問題もたくさんあります。
 今日の議論の人材、あるいは生命倫理の問題もそうですし、また、既に決めました競争的資金制度改革も、まだ緒に就いたばかりです。
 しかし、こうした多くの問題は、今後、他の議員の先生方によって解決されるものと信じています。
私は、科学技術の分野では絶えざる変化が重要であると考えます。
 変革こそが通常の姿であると思います。
 したがって、今後とも総合科学技術会議は、科学技術の研究開発システムの構造改革を進め、小泉改革の一翼を担っていくと信じています。
 本当に長い間、ありがとうございました。



3.議長(内閣総理大臣)しめくくり発言

 井村先生、長い間本当にありがとうございました。
 また、皆様方の御協力によって、来年度予算もメリハリの効いた予算を編成することができた。
これからも、科学技術、人材が一番大事だと、同時に技術も経済活性化のみならず、環境保護にも、国民の生活の利便性にも、あらゆる点で科学技術を疎かにすると国全体が衰退すると、最も重要な課題だと思っており、これからも政府は懸命に努力するので、皆さん方の御指導、御協力をよろしくお願いしたい。

内閣府  科学技術政策・イノベーション担当
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