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第37回総合科学技術会議議事要旨

 


(開催要領)

1.開催日時:2004年5月26日(水)17:21〜18:28

2.場所:総理官邸4階大会議室

3.出席議員

   議長 小泉 純一郎 内閣総理大臣
   議員 細田 博之 内閣官房長官
 同
茂木 敏充 科学技術政策担当大臣
 同
麻生 太郎 総務大臣
 同
谷垣 禎一 財務大臣
 同
河村 建夫 文部科学大臣
 同
中川 昭一 経済産業大臣
 同
阿部 博之  
 同
大山 昌伸  
 同
薬師寺泰蔵  
 同
岸本 忠三  
 同
黒田 玲子  
 同
吉野 浩行  
 同
黒川 清  
  (臨時)    
 同
亀井 善之 農林水産大臣
 同
井上 喜一 防災担当大臣



(議事次第)

1.開会

2.議事

(1)平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針について
(2)第2期基本計画(平成13年度〜17年度)3年次フォローアップについて
(3)大学等における知的財産戦略について
(4)「ヒト胚の取扱いの基本的な考え方」の検討状況について
(5)平成15年度科学技術の振興に関する年次報告(案)について

3.閉会



(配付資料)

(配付資料)
資料1−1 平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針(案)[概要](PDF)
資料1−2 平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針(案)(PDF)
参考資料  中川議員提出資料1(PDF)2(PDF)
資料2−1 科学技術基本計画(平成13年度〜17年度)に基づく科学技術政策の進捗状況(案)[概要](PDF)
資料2−2 科学技術基本計画(平成13年度〜17年度)に基づく科学技術政策の進捗状況(案)
(1(PDF)2(PDF)3(PDF))
資料3−1 大学等における知的財産戦略について(案)
〜大学等の優れた知的財産の創造及び活用をめざして〜(概要版)(PDF)
資料3−2 知的財産戦略について(案)−大学等の優れた知的財産の創造及び活用をめざして−
(1)(2)(3)(4)(5)
資料4 「ヒト胚の取扱いの基本的な考え方」の検討状況について(PDF)
資料5−1 平成15年度 科学技術の振興に関する年次報告(案)−これからの科学技術と社会−
資料5−2 平成15年度 科学技術の振興に関する年次報告(案)
資料6 第36回総合科学技術会議議事録(案)(PDF)



(会議概要)

1.議事概要

(1)平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針について

  茂木議員と有識者議員を中心として、取りまとめた「平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」の最終案について、資料1−1(PDF)資料1−2(PDF)に基づき、阿部議員から説明。
資料1−2(PDF)の「平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針(案)」ついては、原案どおり決定し、総合科学技術会議から小泉総理及び関係大臣に対し意見具申することとした。
関係大臣においては、この意見具申に沿って、真に重要な科学技術政策に資源を重点化するべく、平成17年度の科学技術関係概算要求の準備を進めていただくようお願いした。
 本議題に関する議員の意見は以下のとおり。
 

【岸本議員】
科学技術予算というと、我が国では大型機器、建物などを中心に考える。
しかし、例えばアメリカを取ってみると、科学研究予算の多くは研究者等の人件費に使われている。
科学技術創造立国としての我が国の基盤、国力を支えるのは科学に携わる人材である。
したがって、いろいろな重点分野において、それぞれ人材の育成、登用、そしてそれぞれの場所で活躍する人に場を与えるといったことを、各府省の施策の中に取り込んでいただきたい。



【黒田議員】
前回は大学への運営費交付金の重要性についてお話ししたが、今回は科学技術活動を支える基盤の充実の中でも、特に科学技術関係の人材の育成と確保が非常に大切だと思うので、少しコメントさせていただきたい。
 新しい学問を切り開き、産業を発展させるには、人材がかぎであり、今、世界的に人材確保のグローバルな大競争が始まっている。
それに引き換え、我が国は、急速な総人口の減少が起き、我が国の科学技術関係人材の質と量を確保しなくてはいけない。
そのためには、若手研究者が自立して研究できる機会の拡大。
それから、定年後も頭脳明晰、研究能力が旺盛な研究者の活躍を促進するための方策の整備が急がれると思う。
 それに加え、女性研究者の活躍の促進も進めていただきたい。
アテネオリンピックや芥川賞受賞作家などを見ると、女性の活躍が目立っているが、研究分野においても若い女性の活躍に目覚ましいものがある。
 しかしながら、高等教育を受けてそれぞれの分野で活躍しているのに、出産を機に研究から遠ざかってしまう人が多い。
出産、育児は母親のコンスタントな関わりが必須である。一方、出産で半年とか1年完全に休むことは最先端の研究をやっている研究者にとっても、雇用者にとってもマイナスである。
その間、家庭で研究所、職場を結ぶ情報通信技術の活用の支援とか、あるいは1日のほんの短時間でも研究室へ顔を出してディスカッションできるように、ベビーシッターの派遣などの多様な支援制度を考えていただきたい。
 更には、子どもの病気とか両親の介護などがあるが、こうした支援制度の拡充は、実は研究人材の確保のみならず、少子化対策の役にも立つと思うので、省を超えた御配慮をお願いしたい。


【茂木議員】
 確かにここの中でも女性は黒田議員一人であり、黒田議員みたいな方が増えることが必要だと思う。


【吉野議員】
  今回、2つの新しい項目が盛り込まれたことに関して述べたい。
1つは、国の持続的な発展の基盤となる科学技術だが、私の理解では、国益、あるいは世界の中での日本の生きざまを示すようなプロジェクトで、つまりトップダウン型だと思う。テーマによっては大きなプロジェクトであると思う。
 一方、この新産業創造戦略はホンダも取り組んでいる燃料電池、あるいはロボットとか、割と中規模のプロジェクトであり、日本が得意とするところで、新産業創造戦略が雇用を創出することが期待できるものだと思う。
 大型のプロジェクトは、日本は非常に強力なリーダーシップを持つリーダーの存在、あるいはシステムづくりといった点で、欧米に比べると下手であり、大きなチャレンジだと思う。
 もう一つ、最後に個人が中心になって個性とか独創性を発揮していく研究の分野、これは強靭な個人がキーになると思う。
来年度ですから、今後中身は議論していくわけだが、大型、中型、あるいは小型のプロジェクトの配分に当たり、世界の中で日本がどういう生きざまをするのかという議論を我々はやった方がよいと思う。


【黒川議員】
  将来を託す人材をどう育成するかは、明治時代を見てもそうだが、大学よりもっと若いときである。
新渡戸稲造もそうだが、皆10代の前半にどういう人に会うかがすごく大事で、日本学術会議が中心になって、現在研究者はそれぞれ地元で小学校、中学校の教育に積極的に関与しようというキャンペーンを始めている。
それを見習って若い人もどんどん参加し、産業界も地域で小学校、中学校の教育に皆がどういう格好で参加できるかを当たり前の社会にしようということ。
この間、黒田議員、吉野議員にもシンポジウムに来ていただいた。
そういう動きを普通の社会的な運動にしようということが1つ。
そして、若い人たちを喚起したいということ。
 もう一つは、学術会議のことは、国際的なアカデミーのネットワークが今すごく動き出しており、それについてのいろいろな報告がある。
学術会議はその中心的な役割をしており、今度国連に出した将来への教育の問題、これは小泉首相のヨハネスブルクサミットでの提言を受けて国連でやるが、その報告書が出て、すばらしい報告書だとアナン事務総長が言っている。
来月第2報を出すことになり、学術会議が深く関与しているプロジェクトである。
 そのほか、日米の二国間の国家安全の科学技術の対話を始めた。
学術会議も個別に米国のナショナルアカデミーとやるということで、委員会を立ち上げている。
そういう意味で、更に来年度はもっともっと学術会議という科学者コミュニティの活動を、だんだん書かれるようになると、普通の社会になる基盤になると思う。



【大山議員】
 今回の資源配分方針で、科学技術政策における戦略志向の新たな視点として盛り込んだ、国家的、社会的課題の新たな取り組みに向けた科学技術の戦略的、総合的な推進についてコメントする。
 激化の一途をたどるグローバル競争社会の中で、国、社会、そして国民の安全を確保するためには、防衛政策にとどまらず、エネルギー、食料、環境あるいは宇宙経済政策等々に関する広義の安全保障の観点から、国が長期的に責任を持って取り組むべき重要技術、いわゆるクリティカルテクノロジーを特定化して、トップダウン型で戦略的、総合的に推進する必要がある。
 安心・安全、そして国の持続的発展基盤等を挙げているが、具体的には国の安全保障に関わる重要技術、そして国の産業力強化に資する決定的技術、また国際社会の中で我が国がリーダーシップや求心力を発揮する超先端技術等が想定される。
 本件について、18年度以降の本格展開をにらみ、今後各府省と連携してテーマの精選、あるいは推進方策の具体化等の作業を進めると思うが、各大臣においても、力強い御支援を賜りたい。



【薬師寺議員】
  最近、専門委員から、総合科学技術会議は司令塔として本当にやっているのかと、おしかりを多分に受けている。
今年の17年度は新しい、本格的には18年度に行う戦略性を付けているが、要は私どもが戦略性を持って本当にやっているのかというおしかりだと思う。
17年度の資源配分の方針は、厳しく問われているので、自覚して優先順位付けなどもしっかりやらなければいけないと思う。


【谷垣議員】
 来年度の資源配分、予算編成については今まで御議論をいただいてきたが、こういう形でまとめていただき、関係閣僚、それから有識者議員の皆様の御努力に心から敬意を表したい。
 科学技術は国の発展の基盤だと私も思っており、財政は厳しいが、今まで拡充してきたし、今後も必要だと考えているが、それだけに予算の質の向上、厳正な中間評価を行い、その結果を資源配分に適切に反映することがより大事だと思う。
 その点、今度の資源配分方針について、総合科学技術会議において概算要求前の中間評価の状況を取りまとめ、国の評価大綱に照らして適切な評価が行われていない研究開発プロジェクトについては、各府省に対しその実施を求めるといった方策を盛り込んでいただいており、これを踏まえて来年度の予算編成に向けて各省庁で中間評価を適切に行っていただけることを期待する。



【中川議員】
  経済産業省で「新産業創造戦略」を策定したが、これは中長期的に最も重要な観点である研究開発を十分視野に入れながら、産業政策、経済政策を行うというもの。
この戦略では、「世界との競争をどう勝ち抜くか」、「社会の要請にどう応えるか」、「地域の低迷をどう脱するか」という論点を現状の問題意識として前提としている。
 その上で、具体的に何をするかについては、まず、革新的な技術(ナノテク、バイオ、IT、環境等)を駆使して、選択と集中によって産業分野を集中的に選定した。
「先端的な新産業分野」については、燃料電池、情報家電、ロボット、コンテンツ、「これから市場ニーズの拡がりに対応する新産業分野」については、健康福祉機器・サービス、環境・エネルギー機器・サービス、ビジネス支援サービス(人材派遣、人材育成)を選定している。
 また、「地域再生の産業分野」としては、個人あるいは大学発、あるいは地域での小さな企業・小さな研究所から先端産業へ3段跳びで発展するようなものの支援、基本的なものづくり産業の新事業展開とか地域サービス産業等がある。
これらの産業群を、どういった観点から刺激、育成をしていくかについては、人材、産業人材が重要であり、極端に言えば生まれたときからのものづくり、あるいは生き物に対する興味をどうやって発揚させていくかということである。
あるいは、高校、高専、大学、大学院、ポストドクターの過程における人材投資について、資金面での投入と同時に、人材投資減税みたいなものも提唱しており、これから財務大臣にも御理解をいただきたいと思っている。
 また産業人材については、皆から一目置かれるような人材に育てていく。
ドイツのマイスター、フランスのMOFのように、匠のような技に一つの称号を与えることで、本人がメリットを得られ、社会からも評価されるシステムをつくっていきたい。
それと同時に、知的財産の権利法も重要であり、総じて研究開発のための重点化も重要な問題だと思う。
 いずれにしても、伝統技術も実は貴重な財産であり、それの復活も含めて総合科学技術の中で人、資金、あるいはまた逆の意味での投資としての減税などについて法的整理、知的財産の保護等、総合的な整備を重点的、集中的にしていきたい。
今、挙げた産業分野については、例えば燃料電池1兆円、情報家電10兆円等、現時点で総額200兆円のマーケット規模を2010年には300兆円規模のマーケット規模に持っていき、しかもアメリカをはじめとする他国の追随を許さないハイレベルな産業群として育成をしていきたいと思っている。
このために資金面、人材育成面等、法律面での重点的な整備をこの場で御決定いただきたい。
以上が「新産業創造戦略」のコアな部分である。


【茂木議員】
 国の持続的発展の基盤となる重要な科学技術は、比較的長期の大きなプロジェクトであるのに対して、新産業創造戦略については中期で具体化する燃料電池や、ロボットのような産業群を対象にするという理解でよいのか。


【中川議員】
 ロボット、燃料電池はそうだが、実はナノテク、バイオ、IT、環境といった基礎的な技術から、ロボットも燃料電池も、そこから更に花開いていく道半ばの重要なポイントだと思うので、川上から川下まで一貫してオンリーワンを日本の中でやっていきたい。
 例えば根っこの技術のシェアが圧倒的にあっても、情報家電の組立て部分のシェアが低いと、川上の優秀な部品、部材がオーバーフローをしてしまい、結局は海外の企業の情報家電に流れることになると、ある程度の中期的な優位性も、ものまねをされたらあっという間に追いつかれてしまう。
従って、川上から川下に至る一貫した日本の中での産業の流れを確保することにより、中期的な優位性が保たれるという意味でも、川上から川下までを見据えた基礎研究から販売、生産まで含めた形での優位性を前提に、中長期的な優位性を保つための重点的な投資が必要である。



【茂木議員】
必ずしも中期だけでなく、長期も入るということと理解。
ビジネスシステム全体を我が国として一貫してカバーしていく産業群ということである。


【亀井臨時議員】
 一昨日、農政改革の基本構想を発表したが、その中で、安全・安心で良質な食料の安定供給、そして食料産業の国際競争力の向上を目指すわけであり、農林水産研究開発についても、資源配分方針に沿って、国際競争力の確保、安全・安心な生活の実現、こういう面での研究開発や地域経済の活性化のための研究開発を進めてまいりたい。

【麻生議員】
 安全・安心は、今のキーワードで、国民の中でも治安に限らず安心は大きいと思う。
ITに関してはセキュリティも確かに大事だが、将来確実にこの国は高齢化するので、その社会にあってICTの技術を使って、ICTによって安全・安心が活力ある高齢化社会につながって、要介護者、心身障害者、身体障害者がユニバーサルな社会に参加できる活力ある高齢化社会というのは、ICTの技術の活用なくしてはあり得ないと思うので、私どもとして積極的に行っていきたい。

【井上臨時議員】
  安心・安全な社会を構築するための科学技術の総合的、横断的な推進が平成17年度予算の重点項目になっているが、自然災害、特に地震に関する調査・観測体制の整備を重点的に図っていく必要がある。
 東海地震、東南海・南海地震のような海溝型の大きな地震は、大変ゆっくりした揺れによって高層ビルや大規模構造物に被害を及ぼす可能性が指摘されている。
従来と違った影響があると言われており、長周期地震動に関する調査研究が必要になってきている。また、地震の最初の揺れから規模を探知し、警報を発して被害を最小限に抑える緊急地震速報の実用化の推進も緊急の課題だ。
関係府省における研究の推進と重点的な予算配分が必要だと思う。


【河村議員】
  第2期科学技術基本計画の最終年の予算については、先ほど谷垣財務大臣から、財政は非常に厳しいが、科学技術予算については十分配慮しなければいかぬという話があり、ほっとしている。
 御指摘があった点を踏まえ、これから予算編成に向けて頑張るが、先般、今後の科学技術政策の諸課題について日本経団連とも意見交換をした。
皆様からも科学技術創造立国に向けた人材育成、それから国として目先のことだけではなく、20年、30年先の国益を踏まえて戦略的に積極的に取り組むべき基幹技術、例えば、もっと日本が元気を出すように、ITERやもんじゅ、宇宙開発等への強い期待が表明されたので、ご指摘も踏まえ予算の取り組みを強化していきたいと思う。




(2)第2期基本計画(平成13年度〜17年度)3年次フォローアップについて

  第2期科学技術基本計画の3年次フォローアップ及び今後の取り組むべき課題について取りまとめた内容を、資料2−1(PDF)、資料2−2(1(PDF)2(PDF)3(PDF))に基づき岸本議員から説明。
資料2−2(1(PDF)2(PDF)3(PDF))の「科学技術基本計画(平成13年度〜17年度)に基づく科学技術政策の進捗状況(案)」ついては、原案どおり決定し、総合科学技術会議から小泉総理及び関係大臣に対し意見具申することとした。
関係大臣に対しては、本意見具申に沿って、残された2年間、第2期基本計画の一層の推進に努めていただくようお願いした。
また、総合科学技術会議としても、本フォローアップの意見を今後第3期の基本計画策定作業に活用していくこととした。
 本議題に関する議員の意見は以下のとおり。

 

【細田議員】
  競争的資金をどうするか。
本当にここで考え直さないと、3割アップはもちろん全体の予算の中では検討をしているが、倍増にほど遠いわけだから、夏までに基本的な方針を考え直すということだろう。


【小泉議長(内閣総理大臣)】
 増やすためには、どこかの予算を削る必要がある。


【細田議員】
  独法化しているから、いろいろな交付金として、形が変わっている面もある。
運営交付金とかだが、その辺も含めてここで考えないと、ずるずるやっても仕方ない。
そこはひとつよろしくお願いする。


【茂木議員】
岸本議員から選択と集中という言葉があったが、もともとアメリカのコア・コンピタンスから始まっており、選択と集中は手段であって、結局コア・コンピタンスですから中核的な強いものを作ることが目的。
日本なら何をつくっていくのか。
それに必要な資源量を閾値を超えて投入する。
こういうことが必要と思っており、官房長官御指摘のような競争的資金の充実をどうするかについても、今後更に議論する必要があると思う。


【小泉議長(内閣総理大臣)】
  目標でどのくらいか。
三千何億か。


【岸本議員】
3,000億が前にあり、それを6,000億に5年間でする。
現在は3年を過ぎたところで3,600億であり、あと2年間で2,400億である。


【小泉議長(内閣総理大臣)】
  ほかの役所から2,400億減らして、そちらに持っていくように考えましょう。
口では簡単だけど、ここにいる大臣から皆、減らしてもらおうか。


【岸本議員】
そこの部分をどう考えるかが、科学技術にとって非常に大事な問題だと思う。


【細田議員】
評価等は随分よくなってきている。
選び方とか、配分の仕方とかはそう思うが、その質的向上と量の向上がうまくミックスされているかどうかである。


【岸本議員】
アメリカの大学では、研究者の給料はエフォートに応じて科学研究費の中で取っていく。
それは競争的になっているので、研究費がなくなれば地位もなくなり、場所もなくなる。
つまり、自分の生活が関わるから死に物狂いになる。
日本では今までは公務員であり、自動的に給料が上がってくるのでなかなか難しい。
 もちろん教育にとっては、日本のシステムが非常にいいのだが、研究で競争する先端的な部分を取り上げれば、競争的研究資金で人件費をカバーするという部分を増やしていく。
そうすると若い人の道も開けてくるので、非常に大事なことである。
これは大きな改革になると思う。



【河村議員】
 任期制を思い切って導入するということですね。


【岸本議員】
そうである。 今の年金、退職金の固定したシステムの中では動くと損をする。
そうすると任期制は皆嫌がる。
だから、全部年俸制にして、そしてたくさん研究費を取る、例えば1億円研究費を取ってくる人ならば2,000万円の年収を出してもよい。
普通にきちんとやる人なら800万円、1,000万円でよい。
その代わり、もし研究費を取れなくなったらパーですよという仕組みを入れていくかどうか。
 アメリカはそのシステムを入れた。
全部をそうすることが果たしていいかどうかはわからないが、何らかの形で仕組みを入れることが非常な活性化を生み出すことになる。
 そのときに、動くことが得をする。
任期制をとる方が得をする制度に変えないと、今の制度でじっとしていた方が年金も退職金も増える仕組みの中では決して動く人は増えない。
流動性や任期制を入れろと言いながら、そこの仕組みを元のままにすると少しも動く人は増えない。
動かない方が年金を払い忘れることもないわけで、動けば動くほど損をする今までのシステムを変えないとだめだということである。



【茂木議員】
3年を経過して実現できたことも明らかになっているし、競争的資金の拡充の問題等、残されている問題もあるので、この点については引き続き議論を続けたいと思う。




(3)大学等における知的財産戦略について

  大学・公的研究機関の知的財産活性化について取りまとめた内容を、資料3−1(PDF)、資料3−2(1(PDF)2(PDF)3(PDF)4(PDF)5(PDF))に基づき阿部議員から説明。
資料3−2(1(PDF)2(PDF)3(PDF)4(PDF)5(PDF))の「知的財産戦略について(案)」ついては、原案どおり決定し、総合科学技術会議から小泉総理及び関係大臣に対し意見具申することとした。
関係大臣に対しては、本意見具申に沿って、大学・公的研究機関の体制整備等が進むよう、御尽力をいただくことをお願いした。
本日決定した内容は、明日の知的財産戦略本部での知的財産推進計画に反映することとしている。
 本議題に関する議員の意見は以下のとおり。


 

【中川議員】
  今、国会で特許法の改正が行われている。
審査手続きの短時間化とコストの軽減、それから例の35条の職務発明の扱いが大きなポイントだと思う。
 その中で、特許を出す側から見て、日本の特許実務というのは待機時間が非常に長い。
これをなくすために任期付審査官を5年間に渡り500人程度採用するが、問題は審査官の不足だけではなくて、サービス業務の意識が欠けていることにある。
 いろいろな研究者からお話を聞くと、審査業務は、国のために、特許者のためにすることであり、サービス業務としての意識が必要だが、どうも欠けていると伺った。
このことを、先程特許庁長官に話したところである。
 ぐずぐず手間取っているうちに、あきらめてしまうとか、ほかのところで似たような特許が先に出てしまうとか、ましてアメリカの場合には先発明主義であるので、特許が出願されたものは迅速に審査する必要がある。
申請者側の立場に立って、従来の見てやる、何かあったら排除するということではない姿勢が、まず我々の側に求められていると、率直に思っているところである。
 もう一つは、特許をあえて出さないという技術もあるので、それをどう保護していくかも重要だと思う。
アメリカの場合は、バイドールの話が今あったが、他方、罰則規定として産業スパイ法、エクソンフロリオ条項のように、やり過ぎではないかというくらいきちんとしている。
 新産業創造戦略でも知財をどう守っていくかが大きな柱であり、日本の国益として、発明者の利益であり、しかも公開することにより世界の利益になるものをどの程度守っていくか。
これは、エクソンフロリオになるが、知財単体だけではなく、その企業全体をどう守るかを明日の知財本部でも話したい。
日本は知財に関して今まで少し神経を配る必要性が足りなかった認識を持っているので、専門家の皆様の体験なり要望なりを踏まえた特許実務、あるいは特許保護法制というものを充実していきたい。


【茂木議員】
 特許では、処理に26か月かかっている。


【中川議員】
これをゼロにしようと言うことである。


【茂木議員】
2010年の段階で11か月、11か月は1年近くであり、是非中川大臣のリーダーシップでこれを更に縮めていただきたい。


【阿部議員】
 今、御指摘のうちの何割かは明日御議論いただくことになっているのが、今日オーバーラップするのは有益だと思う。
総合的にやっていかなければいけないと思う。




(4)「ヒト胚の取扱いの基本的な考え方」の検討状況について

  「ヒト胚の取扱いの基本的考え方」についての検討状況を、資料4(PDF)に基づき薬師寺議員から説明。
ヒト胚の取扱いの問題については、残された論点を整理した上で、7月を目途に最終報告書を取りまとめ、これを踏まえて総合科学技術会議として最終的な判断をすることとした。
 本議題に関する議員の意見は以下のとおり。


 

【河村議員】
  ヒト胚の研究利用、再生医療を始めとし、多くの医学上の可能性の道を開くということで注目が集まっており、人の生命の萌芽を操作することで、これは人の尊厳にも抵触する大きな課題でもある。
総合科学技術会議生命倫理専門調査会が行っている検討は重要な意義を有するものと考えている。
これまで積み上げた検討の実績を基にして、国民の理解が得られる議論を深めていただきたいと考えている。
 私どもとしても総合科学技術会議の検討結果を踏まえて、関係府省と十分連携が要ると思う。
この問題に適切に対応していかなくてはいけないと考えている。




(5)平成15年度科学技術の振興に関する年次報告(案)について

  「平成15年度科学技術の振興に関する年次報告(案)について」を、資料5−1、資料5−2に基づき、河村文部科学大臣から説明。 「平成15年度科学技術の振興に関する年次報告(案)」については、総合科学技術会議として、原案通りで了承することとした。


 

(その他の報告事項)
 平成16年度の科学技術振興調整費の新規採択課題に関し、文部科学省で行われた審査結果について、総合科学技術会議で決定した「配分の基本的考え方」に沿ったものであることを私と有識者議員で確認したことを、茂木議員から報告した。




3.議長(内閣総理大臣)しめくくり発言

 どうもありがとうございました。
 いろいろ議論いただき、これからも各府省の縦割りをなくして総合的に科学技術の重要性を認識し、重点的に投資していくようお願いする。
 また、本会議と知財本部とよく連携し、いい投資ができるように協力、指導をお願いしたい。
内閣府  科学技術政策・イノベーション担当
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