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第49回総合科学技術会議議事要旨

 


(開催要領)

1.開催日時:2005年10月18日(火)17:30〜18:45

2.場所:総理官邸4階大会議室

3.出席議員

 議長 小泉 純一郎 内閣総理大臣
 議員 細田 博之 内閣官房長官
 同
棚橋 泰文 科学技術政策担当大臣
 同
麻生 太郎 総務大臣(代理 山本 公一 総務副大臣)
 同
谷垣 禎一 財務大臣
 同
中山 成彬 文部科学大臣
 同
中川 昭一 経済産業大臣(代理 小此木 八郎 経済産業副大臣)
 同
阿部 博之  
 同
薬師寺 泰蔵  
 同
岸本 忠三  
 同
柘植 綾夫  
 同
黒田 玲子  
 同
松本 和子  
 同
吉野 浩行  
(臨時)
   
 同
尾辻 秀久 厚生労働大臣
 同
小池 百合子 環境大臣
 同
村上 誠一郎 構造改革特区・地域再生担当大臣



(議事次第)

1.開会

2.議事
(1)第3期科学技術基本計画に向けた検討状況について
(2)平成18年度科学技術関係予算編成に向けた取り組みについて
(3)「国家的に重要な研究開発の評価」の枠組の検討について
(4)その他

3.閉会

 

(配付資料)
資料1−1   科学技術基本政策の検討状況について(PDF:463KB)
資料1−2   基本理念及び科学技術の戦略的重点化に関する答申
素案[総合科学技術会議 第12回基本政策専門調査会(17.9.28)配布資料](PDF)(PDF:353KB)
資料1−3   科学技術システム改革に関する基本政策
[総合科学技術会議 第12回基本政策専門調査会(17.9.28)配布資料](PDF)
参考資料   麻生議員提出資料(PDF)
参考資料   中山議員提出資料(PDF:442KB)
参考資料  中川議員提出資料(PDF)
参考資料   尾辻臨時議員提出資料(PDF)
参考資料   小池臨時議員提出資料(PDF)
参考資料   村上臨時議員提出資料(PDF)
参考資料   資料(農林水産省)(PDF)
参考資料   資料(国土交通省)(PDF)
資料2−1   平成18年度科学技術関係予算編成に向けた取り組みについて(PDF)
資料2−1   平成18年度科学技術関係予算編成に向けた取り組みについて(参考資料)(PDF)
資料2−2   平成18年度概算要求における科学技術関係施策の優先順位付けについて(PDF:449KB)
資料2−3   平成18年度概算要求における科学技術関係独立行政法人等の主要業務に対する見解について(PDF:357KB)
資料2−4   総合科学技術会議有識者議員及び優先順位付け等に助言頂いた外部専門家(PDF)
資料2−5   独立行政法人の科学技術関係活動の把握・所見とりまとめ結果について
((1)(PDF:456KB)(2)(PDF:496KB)(3)(PDF:503KB)(4)(PDF:497KB))
資料2−6   独立行政法人の科学技術関係活動の把握・所見とりまとめ結果について
【参考資料編】
(PDF)
資料2−7   国立大学法人等の科学技術関係活動の把握・所見とりまとめ結果について(PDF)
資料2−8   国立大学法人等の科学技術関係活動の把握・所見とりまとめ結果について
【参考資料編】
((1)(PDF:322KB)(2)(PDF:322KB))
資料3−1   国家的に重要な研究開発の評価の今後の進め方(PDF)
資料3−2   総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価について(案)(PDF)
資料3−3   国家的に重要な研究開発の評価の今後の進め方について(PDF)
資料4−1   平成17年度の科学技術振興調整費の配分の基本的考え方
(科学技術連携施策群の効果的・効率的な推進について)(PDF)
資料4−2   平成18年度の科学技術振興調整費の概算要求方針について(PDF)
資料5   第48回総合科学技術会議議事録(案)(PDF)



(会議概要)

1.議事概要

(1)第3期科学技術基本計画に向けた検討状況について

年末の科学技術基本政策の答申に向けた検討状況について、資料1−1(PDF)に基づき、阿部議員から説明。
本議題に関する議員の意見は以下のとおり。


【松本議員】
 大型の研究、プロジェクト、あるいは競争的資金が拡充され、若い人まで参加できるようになると、どうしてもマネージメントのために非常に多くの労働源が必要になる。米国などではオーバーヘッドというものを研究費に上乗せすることにより、マネージメントをしやすくするというシステムができている。これが、優れた研究者を大学に呼ぶと、大学自体も非常にマネージメントをやりやすくなるという、いい研究者を獲得する一種のインセンティブになっている。
 研究の環境を整えるということは、研究費を獲得すると同時に非常に大事なことであり、例えば米国などでは私立大学の方のオーバーヘッドの割合をより高くしているという事実もあり、自前で研究環境を整える努力をしている私立大学でもいい研究者がいれば、そして大型の研究費を取ってくるのであれば、オーバーヘッドもその分より加味するというような考え方もこれから是非お願いしたい。


【吉野議員】
 私は中国広東省の経済発展国際諮問会のメンバーになっているのだが、来月の定例会議のテーマは何とサステイナブル・ディベロップメントであり、更に興味深いのは3つの視点があるということである。
 第1が、技術革新による産業の継続発展。
 第2が、いわゆる通常の経済と環境の両立。
 第3が、社会の継続発展のための教育、人材育成の強化。
 大変我々が持っている視点と類似しており、日本を急追しているという感じがする。現地でのホンダのオペレーションにおける印象でも、研究開発技術の自前化意欲がものすごく熱心で、行政からも大変強いプレッシャーがあり、日本は先へ先へと行くしか道はなくて、科学技術創造立国というのが生命線だと思う。
 製造業の企業にとっては研究開発というのが生命線であるが、最近、自動車業界の最大の企業が経営不振でいろんな波紋を投げかけている。企業の浮沈というのは、大変多元的であるが、研究開発費という視点で、過去10年を私どもとその最大の企業とを比較をしたので簡単に報告する。
 10年前は、為替が超円高で80円を突破したときであり、日本の輸出産業は大変青息吐息で、私どももかなり低空飛行であったが、一方、そのときアメリカの企業は競争力が戻り繁栄の頂点であった。10年前は、彼らの売上と研究開発費は絶対額で私どもの4倍であり、ともに売上費の5%を研究開発費に投入していた。その後、彼らは研究開発費の売上比率を徐々に引き下げ、10年後の昨年は3.4%に達した。私どもは、逆に着々と増やし、5.5%に達した。結局、額では彼らは10年前よりも絶対額が下がり、私どもは2.3 倍にした。  一方、10年間の売上の伸びというのは、彼らは1.3 倍であり、我々は2.2 倍となったため、4倍の差があった売上と研究開発費は今は売上が2.5 倍、研究開発が1.5 倍と差が縮小された。
 彼らは典型的な財務主導企業であり、我々は典型的なR&D主導企業である。我田引水になるが、製造業の要諦である研究開発費のところで明暗を分けたと思う。皮肉なことに、彼らの営業利益は10年前は6,000 億であり、私どもは1,000 億。今年は、彼らは赤字で、我々は10年前の彼らのレベルを超えるほどになった。
 したがって、研究開発というのは成長のエンジンであり、その費用というのは活動の量である。継続的にプラスベクトルで、資金も含めてプラスベクトルが重要であると思う。もし、10年前の苦境のときに絞っていたら、多分ASIMOとか、ハイブリットだとか、燃料電池だとか、ビジネスジェットだとか、今の競争力はなかったと思う。
 勿論、売上が伸びないときには、コストや一般経費やモノヘの投資などは大幅に削減を実施した。したがって教訓は、科学技術創造立国を目指すモーメンタムの継続は極めて重要であり、特に苦しいときこそ踏ん張りどころであると思う。
 もう一つ、企業会計では、モノへの設備投資というのは費用とは別扱いにしている。設備投資はいずれ償却で順次費用化していくわけだが、投資は利益やキャッシュフローに応じて非常に弾力的に増減させている。国の予算というのは、フローとストックが、今、非常に混在している状況であると思うが、企業はフローを大変重視する。独立行政法人も企業会計を基準にしていると理解しており、「モノから人へ」に併せて投資と費用のマネージメントも進化が必要ではないかと思う。


【薬師寺議員】
 第3期基本計画の最大の特徴は、科学技術のモノと人の関係にメスを入れ構造改革を行うことであり、人を中心に投資しこれまでのようにモノを中心とした投資から方向転換すべきだと考えている。人を中心の投資の幾つかのプログラムを我々は第3期の中に組み込んでいる。その例として、地域の知の拠点再生プログラムに是非注目していただきたい。
 このプログラムは、地域に根差す人を育て、中央の大学に負けない、きらっと光る科学技術を持つ個性のある地域の国公私立大学を積極的に支援するというものであり、このプログラムの成功は2点に依存すると思う。
 第1点は、どれだけ広い支援を得られるかということ。現在、文部科学省、地域再生本部、都市再生本部などが連携して広い支援について話をしていると聞いており、大変心強く思う。
 第2点は、やはり地方というのはどうしても中央から見え隠れして、実は見えないため、トップダウンの強力な支援が得られるかどうかである。できれば、元気のある都市や地域を支えて、人を育てるための、例えば重点加算枠などを用いた特別枠を設定していただきたいと思う。トップダウン的な枠があれば、地域に根差し、人を育てるのだという強いメッセージが全国に伝わって、地域の大学は一挙に活性化すると思う。


【岸本議員】
 我々が行っている科学技術は西洋の文明であり、2000年以上の歴史を持つ。我が国がこの文明を取り入れたのは、わずか明治以来百数十年であるが、今や西洋と比肩するレベルに達しているし、ノーベル賞の数が少ないといっても、遅れて西洋の文明を取り入れた国は、ほとんどゼロである。
 なぜ、これほど早く日本が科学技術の分野で進歩したか。それは明治以来、国が教育に、人材育成に力を入れたということがすべてだろうと思う。
 そういう意味で最も大事なことは、科学のブレークスルーを引き起こすような若い頭脳を次々と生み出すこと。その仕組みをつくること。それが世界から高い評価を受けるんだと思う。
 そういう意味において、中国の有人宇宙飛行と何も競争することもないし、アメリカとスーパーコンピュータで1位を争うこともないと思う。そんなことでは、世界のリスペクトが別に得られるわけではないのではないかと。
 しかし、それでは経済が活性化しないではないか、産業はどうするんだという議論が湧き起こってくる。しかし、私はそうではないと思う。どなたも御存じの一つの例を示すと、例えば、コレステロールの値を下げる薬。これはファイザーの1つの薬が世界中で年間1兆円の売上になっている。幾つかの国のコレステロールを下げる薬の合計は2兆円以上になる。これは、何も大きなインフラ、機械を必要としたわけではなく、2人の研究者が、コレステロールはどうしてつくられるか、コレステロールはどうして細胞の中に入るか、コレステロールはどのようにして壊されるかといった研究が基盤になって、そういう何兆円の薬ができているわけである。
 だから、私の言いたいことは、科学技術というのは決して公共事業ではない。何も大きなインフラやハコモノに必ずしも投資しなくてもいい。パスツールは大理石の門を持った研究所から大きな研究が出てきたためしはないと言ったが、一番大事なことは、人を育てること、若い頭脳を育てることに投入する。それが第3期科学技術基本計画で、我々が掲げている「モノから人へ」という概念である。


【柘植議員】
 2点、意見を申し上げたい。
 1点目は、科学技術システムの改革によるイノベーション力の強化である。今回の第3期の基本計画の使命は、今までの10年間の科学技術投資の成果を6つの政策目標に代表される社会的な価値、経済的な価値に結び付ける、いわゆるイノベーション創出、これを国民に約束することだと思う。勿論、10年後、20年後に向けた基礎研究への投資も欠かすことはできないが、このイノベーション能力の強化が今の日本の科学技術政策の特に必要なことであると思う。総合科学技術会議では、我が国のイノベーション能力強化に向けて相当構造改革に注力せねばならない。我々は、現状はまだまだ弱いという自覚が必要だと思う。
 2点目は、第3期の計画における研究開発投資目標の設定の重要性である。欧米及び中国等の国家の科学技術投資、これは一層充実している。人材育成、それから科学技術創造に基づくイノベーションでのみ活路を開くことができる日本にとってこの研究開発投資目標の設定は極めて重要である。財政事情が極めて厳しい中で、この基本方針の堅持が必要と考える。


【黒田議員】
 グローバルな知の競争時代に入ったということは、アカデミアの世界でもひしひしと感じている。そして、日本が生きる道は、科学技術創造立国であるということだが、ただお金を付けてもそれが海外特許として流れていく、あるいは高い外国製装置を買うことで流れていく、ということでは全く意味がない。その流れを止めるためには、やはり日本が世界最先端の飛躍知の発見をするとか、発明をするとか、技術革新をするという第3期基本計画の理念の1に掲げられていることをやっていかなければいけない。そうすると、世界標準を日本がつくることができる。あるいはそういう新しい発展で日本に限らず、アジアの若手の人材を養成するということで、国際的にも信頼を醸成することができる。あるいは人類の知的財産の構築に貢献することができるという意味で非常に重要なことだと思う。
 では、それをどういうふうにしてやっていくかということだが、これはやはり人材、人だということになる。その1つは、まず大学、大学院が鍵になると思うが、そこで現場の研究者が使命感を持って、自由な発想に基づいて生き生きと研究することができる、そういう環境をつくっていかなければいけない。資金の面、時間の面、失敗を恐れないでチャレンジできるということが年齢にかかわらず、できていくということが重要だと思う。
 ただ、人材養成には時間がかかる。だから、長期間で見てほしい。細い枝を生やして、短期間に小さな花が数個付いたということでよしとするのか、じっくり構えて太い幹、太い枝を何本も生やして、将来そこに大輪の花を幾つも咲かせるのかということであって、システム改革とか、競争的環境の醸成ということも人材養成を長いスパンでじっくりと考えていくということで進めていきたいと考えている。


【阿部議員】
 第3期において規制緩和を含む構造改革を大きい柱にするべく進めているが、繰越明許については、財務省が努力されているとは思うが、末端ではあまり動いていないと聞いている。アメリカでもイギリスでも研究開発は予定どおり行かないことがあるので、有効にお金を使うために年を越して、ということをいろいろ工夫しているので、御指導いただければと思っている。
 そのほかに、私どもに強いメッセージが来ているのを若干御紹介すると、臨床の大学の先生は、裁量労働制が適用されていないために、残業料が支払われている。国立大学のときは残業料がないが、法人化したら残業料が出るということになり、残業料自体が悪いと言っているわけではないが、やはり研究者である以上は裁量労働制を入れていただきたい。これも厚生労働省が検討されていると伺っているが、是非加速をしていただきたい。
 それから、治験である。医療行為に科学技術をアプライしていくときに、治験というものが出てくるが、これも厚生労働省はいろいろ検討されていると思うが、よろしくお願いしたい。
 それから、研究支援者で優秀な研究者を非常勤職員で雇うことにいろいろハードルがあり、何とか雇えるようにしたい。これも制度的にはかなり難しいようだが、やはり知恵を出していく必要があるのではないか。これらは関係の省ともいろいろ連携を取りながら、こういった課題について、第3期できちんとしたメスを入れ、お金を更に有効に使えるようにしたいと考えている。


【村上臨時議員】
 「地域の知の拠点の再生プログラム」については、本年6月の当会議における、地域の活性化、人材育成の観点等から地方大学支援の必要性についての問題提起を受け、地域再生担当として策定に向けた検討を進めてきた。その後は、8月11日に中山文科大臣、棚橋大臣と会合を持ち、地域再生、文部科学、科学技術を所管する3者がお互いに連携して、関係省庁にも広く協力を呼びかけてきた。この結果、現在までに文部科学省を始め、農林水産省、国土交通省、都市再生本部、総務省から施策の提案をいただいているところである。
 まず、当会議において本プログラムを第3期科学技術基本計画の検討に盛り込んでいただいたほか、重要施策として科学技術調整費の概算要求方針における新規プログラムへの位置づけを図っていただいている。具体的な措置としては、文部科学省から、大学の医学部を卒業後も地域にとどまり、地域医療の中核になる人材を促成するための施策について提案いただいている。
 また、農林水産省、国土交通省からは、大学における研究成果を、地域の企業や社会に還元するための施策を提言いただいている。(資料の4ページに)−絶えざるイノベーションの創出−とあるが、例えばホンダのCVCCエンジンは浜松高専の若い学生が30〜40年前にアメリカやヨーロッパで絶対にできないということをやった。セイコーのクォーツは、静岡大学の工学部の学生さんを諏訪湖の町会長さんが2人スカウトしてやったと。あのころは、地方の大学や知の拠点において、イノベーションをできる力が十分あったし、それがこの30〜40年間の日本の経済の牽引力だったと思う。
 そういうことを復活させるためにも、これらの具体的措置について、各省において既に概算要求に盛り込んでいただいているが、このほかに省庁の協力をお願いして、プログラムの充実を図りたいと考えているので、総理を始め、御出席の皆さん方のお力添えをいただきたいと考えている。


【山本総務副大臣】
 総務省では、2010年を目標にICTが少子高齢化などのさまざまな社会問題の解決に活用されるユビキタスネット・ジャパンの構築を推進しているところである。
 このu−Japanの実現に向けては「ユビキタスネットワーク整備」「ICT利活用の高度化」「利用環境整備」の3つの政策に加え、横断的な政策として、国際戦略と技術戦略を推進していくことが必要と考えている。
 技術戦略においては、情報通信技術の研究開発を3つの領域に戦略的に重点化したUNS戦略プログラムの推進により「国際競争力の維持・強化」「安心・安全な社会の確立」「知の交流・創造による新たな価値の創出」を達成したいと考えている。
 これらは、次期科学技術基本計画の基本方針に掲げられている理念と方向性が一致し、情報通信分野は引き続き重点推進分野と位置づけられていると理解している。
 最後に3枚目だが、消防防災分野については、最近の発電所火災などの事故災害のような大規模な災害が発生をしている。  消防防災の研究の使命は、これらの災害の原因を究明し、再発防止と被害軽減の徹底を図ることであり、消防防災の研究は、国民の安心・安全な生活を実現するだけでなく、研究により得られた知識・技術を諸外国に広めることは重要な国際貢献の1つと認識している。
 これにより、日本が技術立国日本として、更に災害に強い国日本として認められていくものと考えている。


【中山議員】
 国家基幹技術については、岸本議員は若干意見が違うような感じもするが、私はこの国家基幹技術が答申素案に重点化対象として明記されたことは適切であると評価している。
 宇宙輸送システム、次世代スーパーコンピュータなどの国家基幹技術は、国民社会・経済への波及効果に鑑みれば、第3期科学技術基本計画の重要な項目として明示しつつ、わかりやすいように具体的な例を挙げて記述すべきと考えている。
 先ほども日本原子力研究所と核燃サイクル開発機構の統合の式典に行ってきたが、ものすごい人が集まっていて、やはり昨今の地球環境問題や原油高などを背景として、原子力をもう一回見直そうということで、一時自信を失っていたかのような原子力の研究者たちが、また元気になってきているなということを実感した。
 また、宇宙についても、先般野口宇宙飛行士と会ったが、人類が宇宙空間を利用していくこと、また、そのために開発に取り組むことの意義を再認識致した。野口さんのミッションでも、アメリカの宇宙輸送システムであるスペースシャトルについて話題になった。この宇宙輸送システム、宇宙開発利用を進める基盤であり、国家の総合的な安全保障にも密接に関わるものである。まさに国家基幹技術として取組み、安定的な技術基盤を構築することが必要だということを痛感した。
 また、総理も野口宇宙飛行士と会われたときに、超人という言葉を使われたと聞いているが、まさに私も同感である。宇宙開発というのは、先端的なプログラムの参画を通じ、宇宙飛行士のような卓越した人材の育成とともに、それを支える産学官の多くの研究者、技術者の育成確保に大きく貢献するものであることを実感した。
 基礎研究からのイノベーションについてだが、科学技術により経済・社会の広範な分野で我が国発のイノベーションを実現していくことは、第3期の科学技術基本計画においても大きな課題であると考えている。
 答申素案において、「萌芽段階におけるきらりと光る発見・発明」を適切な公的投資で育て、産学官の協同を経て発展させていくという旨の記述があるわけだが、まさにそのとおりであると考えており、既存の技術の延長ではなく、我が国オリジナルの斬新な基礎研究成果を国民生活あるいは産業に生かしていく仕組みを構築していくことが大きなイノベーションにつながると考えている。
 6月の総合科学技術会議でも紹介され、先ほどの阿部議員の説明にもあったが、東北大学の成果をもとにした垂直磁気記録技術は、IT社会の要であるハードディスクドライブに大きなイノベーションを起こしつつある。
 この技術の実現は、30年近い年月の大学研究者の粘り強い地道な研究が実ったものと思うわけである。このような多様な基礎研究からの大きなイノベーションを成就させるために、知の創造から活用に至るまでを切れ目なく戦略的に支援するための仕組みや基盤をしっかりと構築していくことが重要ではないかと考えている。


【谷垣議員】
 財務省としても魅力的な日本をつくるためには、科学技術投資ということは避けては通れないと思っている。
 ただ、投資目標の検討については、厳しい財政事情の中で予算をつくっていく上で、国民の理解を得るということを十分に考えながらやらなければならない。
 そういう中で、引き続き科学技術投資を行っていくのに、単に量的拡大を求めるという発想は、やはり慎む必要があるのではないかと思っている。
 近年の公共事業関係の長期計画と同様に、むしろ投入目標というよりも、国民に対してどういう成果がもたらされるのかという目標設定と評価の仕組みを確立していくこと、それから官民の連携強化の観点や、対象領域を一層絞り込むことによって、投資効率を最大限に発揮させていくというところに重点を置くべきではないかと思っている。
 第1期の基本計画以来、科学技術振興費はかなり増やしているが、これを増やせば必ず国民の理解が増していくというほど、私も楽観的に考えているわけではないが、むしろ若い方の科学技術に対する関心は減っていっているような危惧を持っている。
 したがって、政策効果の事後的な検証、つまり、どういうものが国民あるいは有権者の便益、生活の向上につながっていくのか、という観点からの検討をする努力が、今後必要ではないか。


【小此木経済産業副大臣】
 2点申し上げたい。
 一 つは、技術開発の目標の明確化である。
 例えば燃料電池は、2020年、1,000 万kWの導入目標の達成のために、今年の春に総理の新しい公邸へ世界で初めて納入された1kWの家庭用燃料電池の価格を2008年に120 万円まで、2020年には、更に大幅に引き下げることを目標として、今、技術開発の実施をしているところである。
 このように目標を立てた上で、それを達成するための技術課題の洗い出し、絞り込みを行うものとして、当省では21の分野ごとに技術戦略マップを作成している。今後の分野別推進戦略の検討に当たっては、技術戦略マップの考え方を踏まえることが重要であると考える。
 もう一つは、大学に対する期待についてである。大学で優れた人材が育成されるかどうかは、その人材を受け入れる企業の競争力にも大きく影響するのではないかと考える。
 大学の研究面については、これまでさまざまな議論がされていると承知しているが、大学の人材の育成についても明確な方向性が示されることが重要であると考える。


【小池臨時議員】
 環境分野の2つのテーマ、脱温暖化社会の構築、そして循環型社会の構築が重要である。また、もったいないの心が日本にはもともとある。それから、この温暖化を何とかしなくてはならないという意識も相当広まっている。そういったモラールの問題と科学技術をうまく両立させていくこと、また心とテクノロジー、イノベーション、このバランスをうまくマッチさせていくということを念頭に置きながら、短期的なテーマ、長期的なテーマ、そしてターゲットということを戦略的に練り上げていきたい。


【尾辻臨時議員】
 厚生労働省が進める科学研究は、安全・安心で質の高い健康生活を実現することを目指しており、第3期基本計画素案で示された、国民を悩ます病の克服、だれもが元気に暮らせる社会の実現、暮らしの安全確保などの政策目標の実現に大いに貢献できるものと考えている。
 その一方で、第3期基本計画素案では、科学技術の各分野における重点化の方針について、分野内で重要な研究開発課題を設定し、研究予算投入の必要性を勘案した、さらなる絞り込みを行うことが提言されている。このような重点化の進め方については、基本的に異論はないが、厚生労働省が行っている研究で、国民のニーズが極めて高いものの中には、例えば、ALSなど、患者数の極めて少ない難病対策のような、短期的な成果を得ることが難しく、長期的な取組みが必要なもの、あるいはまた、レギュラトリー・サイエンスといった公的な判断に科学的な裏づけを得るためのものといったようなものがある。
 このような研究は、継続的な公的研究資金の投入がなければ成り立たないものであり、重点化を進める中でおろそかにならないよう十分な配慮がなされることを要望する。
 また、先ほど阿部議員の話にあった厚生労働省に関する検討は、急いで検討していきたい。


【谷垣議員】
 繰越明許費の問題は、引き続き予算を有効に使うという観点から、更に工夫をしなければいけないと思っているので、制度が活用されるために何が問題となっているのか教えていただきたい。


【柘植議員】
 財務大臣から御指摘のいわゆる目標設定と評価の充実というところ、これは3月に評価の大綱的指針、ここの場で改定を承認していただいたが、これを何とか現場で目標をエンカレッジする、現場の研究者をエンカレッジするというのが、今回の大綱的指針の見直しである。エンカレッジしながら、やはり目標設定と、我々はアウトカムと言っているが、社会的な価値、経済的な価値に結び付けていく。ここのところは、確かにまだまだ大臣御指摘のように、我々は強化していかなければいかぬと思っている。


【薬師寺議員】
 今回の第3期基本計画の中には、安全に資する科学技術というものが、非常に重要な項目として入っているので、是非そういうプログラムを出していただくようお願いしたい。




(2)平成18年度科学技術関係予算編成に向けた取り組みについて

関係府省による平成18年度科学技術関係予算の概算要求について、メリハリの付いた予算編成に向け、厳格にSABCの優先順位づけを行い、また、今回新たな取組みとして独立行政法人、国立大学法人等の科学技術関係活動の把握、所見のとりまとめを実施。
資料2−1に基づき、岸本議員から説明。
本議題に関する議員の意見は以下のとおり。


【薬師寺議員】
 18年度の概算要求は科学技術関係経費だけでも3兆8,000 億、その中で、国立大学法人関係の予算が大体1兆400 億ぐらいになり、予算の面でも科学技術の面でも、大学が持っている科学技術能力というのは我々の方でも把握したい。だけどなかなか把握できないのが現状である。
 公開資料を今回ベースにして所見をとりまとめたが、外部からでは中が全然見えないというのが印象である。それは、国立大学の決算の中に研究経費というものがあるがそれは大体物件費に関するものが多く、研究者の人件費は計上されていない。だから、そこの活動は見えないということである。研究経費の中に光熱費だとか、旅費だとか、消耗品などが入っているので、純粋に1人当たりの大学の先生の数で研究費を見ると非常に大きくなるが、それは研究活動している予算としては表わしていない。また、例えば、科研費なんかを我々は増やそうとしているわけだが、その中でもそのデータが入っていない。
 結局、研究として国立大学法人が全体としてどういうふうに動いているのかが、外からは見えない。だから、今後は、第3期の中では、当然基盤的資金の確実な措置というのは重要であり、それと競争的資金のバランスをきちんと我々は考えていく。しかし、その基盤的資金の部分の研究の活動の部分が、我々の中に見えない以上は検討のしようがないという印象を今回持った。


【山本総務副大臣】
 今回の優先順位づけについては、昨年と比べてもSとAが大変厳しい評価になっていると思っており、一層メリハリを付けなければいけないということについては、よく理解ができるが、科学技術創造立国を目指す我が国の科学技術関係予算全体が抑制されてしまうということについては、是非御留意をいただきたいし、またそういう予算が抑制され気味であるというイメージが広がらないように、是非御留意をいただきたいというふうに思っている。また、総務省の立場から言うと、大規模災害を踏まえまして、国民の安心・安全のための施策への重点配分も図っていきたいと考えている。


【岸本議員】
 必要なものは増やすと、そうでないものは抑制するということで、全部を抑制するということを言っているわけではなしに、そこにメリハリを付けるということを言っているので、全部が抑制的というわけでない。


【中山議員】
 今後の予算編成においては、第3期科学技術基本計画に向けた検討状況に留意しつつ、今回の優先順位付け等を踏まえてメリハリをつけながら、より質の高い科学技術施策推進に努めていきたいと考えている。
 なお、今回の優先順位付け等を短期間のうちにとりまとめられ、ご努力を評価するが、今後更に科学技術の振興という観点から工夫・改善を重ねながら、よりよいものとなるようお願いしたい。
 また、独立行政法人、国立大学等の活動の把握、所見とりまとめについては、初めての試みということであるが、その内容を踏まえ、独立行政法人等の自主的な改革努力を支援していきたいと思う。
 なお、各独立行政法人のミッション、規模、分野等が異なるという事情と、国立大学法人等は独立行政法人とは異なり大学としての特性に基づいて自主的な教育研究活動を展開することがその本質であるという事情等に十分配慮すべきであると考えている。また、国立大学法人になってから、まだ1年ちょっとであり、大学の中でもまだまだわかってないということではないかと思っている。ある意味では過渡期であり、そういう意味では非常に迷惑をかけているかと思うが、どういった予算が、どういうふうに使われて、どういう形で効果が出てきているかということについては、外部・内部を併せて評価ということについてもしっかりこれからも取り組んでいかなければいけないと思っている。


【黒田議員】
 独立行政法人のロイヤルティー収入12億円と余りにも少ないので、国立大学法人を見たら、93法人で4.1 億円と表に出ている。幾ら何でもこれはおかしいだろうと調べたら、やはりTLOに入っているものが、例えば、株式公開のときに何十億というものが寄附金としてTLOに入っているということで、ロイヤリティー収入にカウントされていない。これほどひどい数字ではないということであった。
 私は独立行政法人はわからないが、国立大学法人は4億しかお金を生んでいないわけではなくて、やはり大学発ベンチャーではもっと富を生んでいる。これほどではないと誤解はしていただきたくない。これはもっとわかりやすくデータを出してもらわなければいけないということの、1つの表われだと思う。


【谷垣議員】
 総務副大臣とちょっと違うことを言うかもしれないが、SABCについては、毎年毎年いろいろ工夫をしていただいて、リファインをしていただいてきており、大変ありがたいことだと思っていて、来年度についても十分それを踏まえてやりたいと思っている。
 ただ、予算編成の方針としては、17年度は3年ぶりに政策経費である一般歳出を前年度より圧縮するということをした。せざるを得なかったということだが、18年度においても、引き続きそういうことはせざるを得ないということであり、科学技術分野についてもかなり厳しく見させていただかざるを得ないということを御理解いただきたい。


【中山議員】
 大学にとっては研究も大事だが、やはり教育も大事なので、そこのところもおろそかにしないようにしなければいけないということと、大学を見ていると、知財本部を設置するなど、今まで大学に眠っていた研究成果を社会に還元しようという様々な取組みが、競って行われているということも御理解いただきたい。



(3)「国家的に重要な研究開発の評価」の枠組の検討について

国家的に重要な研究開発の評価の枠組み案について、評価専門調査会において検討した結果を、資料3に基づき拓殖議員から説明。
資料3−2(PDF)の「総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価について」は、原案どおり決定。




(4)その他





2.議長(内閣総理大臣)しめくくり発言

 科学技術の重要性はもう言うまでもありませんが、今までの話だとSABC、大分厳しく評価していただいたようですが、4兆円ぐらいある内、実際には1兆円ぐらいしか評価していないのですか。あと残りの3兆円の部分も厳しい切り込みが必要ではないかと思っているんです。これはなかなか専門の分野ですから、素人の私にとってはどういう点が難しいかよくわかりませんが、できるだけ幅広く見直すことが必要ではないかと思っております。
 あとはもう独立行政法人、国立大学法人、これはもう同じく、改革を徹底的に進めていただきたいと思います。
 最先端のIT、科学技術、大変大事な、日本の発展を考えれば重要な分野ですので、予算編成に向けてよろしくお願いしたいと思います。


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