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第53回総合科学技術会議議事要旨



(開催要領)

1.開催日時:2006年3月22日(水)17:15〜18:15

2.場所:総理官邸4階大会議室

3.出席議員

 
 議長 小泉 純一郎 内閣総理大臣
 議員 安倍 晋三 内閣官房長官
 同
松田 岩夫 科学技術政策担当大臣
 同
竹中 平蔵 総務大臣(代理 菅 義偉 総務副大臣)
 同
谷垣 禎一 財務大臣(代理 竹本 直一 財務副大臣)
 同
小坂 憲次 文部科学大臣
 同
二階 俊博 経済産業大臣(代理 松 あきら 経済産業副大臣)
 同
阿部 博之  
 同
薬師寺 泰蔵  
 同
岸本 忠三  
 同
柘植 綾夫  
 同
黒田 玲子  
 同
庄山 悦彦  
 同
原山 優子  
  (臨時)    
 同
中川 昭一 農林水産大臣(代理 三浦 一水 農林水産副大臣)
 同
中馬 弘毅 構造改革特区・地域再生担当大臣
 同
猪口 邦子 少子化・男女共同参画担当大臣


(議事次第)

1.開会

2.議事
(1)第3期科学技術基本計画(平成18〜22年度)について
(2)分野別推進戦略について
(3)今後の科学技術政策の進め方について
(4)科学技術振興調整費について

3.閉会

(配付資料)
資料1−1   科学技術基本計画(案)(PDF:396KB)
資料1−2   基本政策答申からの変更箇所(PDF)
資料2−1   分野別推進戦略の概要について(PDF:276KB)
資料2−2 分野別推進戦略(案)
(1)(PDF)(1−1)(PDF:367KB)(1−2)(PDF:352KB)(1−3)(PDF:464KB)
(1−4)(PDF:299KB)
(2−1)(PDF:231KB)(2−2)(PDF:294KB)(2−3)(PDF)
(2−4)(PDF:270KB)
(2−5)(PDF:212KB)
資料3−1   第3期基本計画を本格軌道に乗せる改革プラン2006(PDF)
資料3−2   基本政策推進専門調査会の設置等について(案)(PDF)
資料4   平成18年度の科学技術振興調整費の配分方針(PDF)
資料5   第52回総合科学技術会議議事録(案)(PDF)



(会議概要)

1.議事概要

(1)第3期科学技術基本計画(平成18〜22年度)について

 3月20日付で政府より総合科学技術会議に資料1−1(PDF)の通り、「科学技術基本計画(案)」が付議された。 昨年12月の答申からの変更箇所は資料1−2(PDF)の通りであり、答申を踏襲した内容となっているため、資料1−1(PDF)の「科学技術基本計画(案)」については、総合科学技術会議として原案どおり議決した。




(2)分野別推進戦略について

 第3期科学技術基本計画の下で、ライフサイエンスや情報通信などの8分野について、投資の選択と集中を実現しながらどのように研究開発を進めていくかを示す分野別推進戦略の最終的な案について、資料2−1(PDF)に基づき阿部議員から説明。
 資料2−2(1)(PDF)(1−1)(PDF:367KB)(1−2)(PDF:352KB)(1−3)(PDF:464KB)(1−4)(PDF:299KB)(2−1)(PDF:231KB)(2−2)(PDF:294KB)(2−3)(PDF)(2−4)(PDF:270KB)(2−5)(PDF:212KB)の「分野別推進戦略(案)」は原案通り決定し、総合科学技術会議から内閣総理大臣及び関係大臣に対して意見具申することとした。
 本議題に関する議員の意見は以下のとおり。


【小坂議員】
 分野別推進戦略において、多くの科学技術課題の中から、今後5年間に集中投資すべき戦略重点科学技術を選定していただいた。文部科学省として、しっかりとそれらを実施していきたい。
 特に、宇宙輸送システム、海洋地球観測探査システム、あるいは高速増殖炉サイクル技術、次世代スーパーコンピュータ、あるいはX線自由電子レーザー、こういった5つの国家基幹技術も決めていただいた。国家基幹技術は社会経済への広範な波及効果が期待されるものであり、しっかりと連携を図りつつ、政府一丸となって推進することが必要であると思っており、財務大臣を始め、関係大臣の一層の御協力をお願いしたい。


【菅総務副大臣】
 総務省としても、2010年のユビキタスネット社会の実現に向けて、政府の新ICT戦略と一体となったu−Japan政策を、今推進しているが、この研究開発については、この戦略を踏まえて、情報通信技術の研究開発を積極的に推進し、その成果が社会や国民へ適切に還元されるよう、全力で頑張っていきたい。


【松経済産業副大臣】
 分野別推進戦略においては、研究開発投資の選択と集中、これによるメリハリを付けることが大事である。
 集中投資された予算がきちんと成果を上げられるような柔軟な仕組みが私は必要ではないかと思っている。
 第3期の基本計画及び分野別推進戦略は、経済活力向上等のイノベーション創出を重視しており、明日中間とりまとめを行う新経済成長戦略と目指すべき方向は一致している。新経済成長戦略と第3期基本計画を車の両輪として、日本に新しい成長をもたらしたいと考えている。


【竹本財務副大臣】
 財務省としては、当然のところながら財政状況が厳しい中ではあるが、科学技術予算については、最大限配慮しているところである。
 今後は、こうした計画や戦略を踏まえ、総合科学技術会議のさらなるリーダーシップにより、選択と集中を一層徹底していただきたい。
 政府研究開発投資が、真に活きた投資となって、具体的な成果へとつながり、国際化の流れの中で魅力ある日本をつくっていく原動力となることを期待している。
 なお、毎年の予算編成においては、第3期計画にもあるとおり、政府全体として財政構造改革に取り組んでいかなければならない中、第2期基本計画中に比べて、更に厳しさを増している財政事情を踏まえる必要があり、分野別推進戦略や社会経済情勢なども踏まえながら、予算要求の中身を是々非々で精査していくことになると思う。
 その際、先日、総理も国会で答弁されていたとおり、研究開発には重点的に取り上げていくべき問題、今までの実績を見て削減してもよい問題の両方があることから、科学技術政策担当大臣及び有識者議員の皆様による優先順位づけ、つまりSABCの取り組みが更に充実されていくことを大いに期待いたしたいと思っている。
 科学技術の発展のために貢献すると同時に、国民の最大の関心事であります、例えばがんについて総合的な多方面の技術を活用して新しい試みをやるということは、国民の悩みに対して応えていく科学技術の高揚を示す意味にもなるので、是非そういう意味でも頑張っていただきたい。


【三浦農林水産副大臣】
 分野別推進戦略では、第3期に集中投資を行う戦略重点科学技術が選定をされたので、農林水産研究におきましても、ライフサイエンス分野や環境分野の戦略に従い、重点化を図りながら研究を進め、第3期科学技術基本計画の基本姿勢として掲げられているように、その成果を社会・国民に還元していきたい。


【柘植議員】
 分野別推進戦略の実行に向けて、ひとつ総理にお願いしたい。
 分野別推進戦略の実行というのは国民の理解を深めることでもある。私ども民間議員も国民の理解促進に注力しているが、特に議長である総理が国会の施政方針演説にも言っていただいたが、更にテレビ、新聞等で直接国民に対してのメッセージとして科学の面白さ、それから技術の大切さ、そして国家基幹技術の重要性を発信していただきたい。お父さんたち、お母さんたちは、総理のメッセージを聞けば、子どもたちも科学と技術の大切さということも伝わるし、学校での勉強の目標もはっきりすると思う。そういう意味で、総理の国民への直接のメッセージは、人づくりの面でも非常に役に立つと思うので、お願いしたい。


【猪口臨時議員】
 女性もまた科学者の道を堂々と歩む時代であるということも付け加えていただければ大変有り難い。日本では科学者を含む研究者に女性が占める割合は11.9%であり、まだまだ努力して道を拓いていく必要がある。




(3)今後の科学技術政策の進め方について

 4月からの第3期基本計画実行段階に向け、世界最高水準の科学技術創造立国を実現すべく早急に取り組むべき課題について、有識者議員が考え方をとりまとめたため、資料3−1(PDF)に基づき阿部議員から説明。
 また、4月以降、第3期科学技術基本計画に沿った政策の確実な推進を図るため、資料3−2(PDF)の通り4月1日付で基本政策推進専門調査会を設置することを決定し、それに伴い3月31日付で基本政策専門調査会及び重点分野推進戦略専門調査会を廃止することとした。


【薬師寺議員】
 小泉内閣の改革路線を受け、第3期基本計画の全体像を見ると、第2期に比べると、非常に変革に成功した。
 しかしながら、改革路線を確実に進めるには、まだまだ制度改革をする必要があり、2点注意を払う必要がある。
 第1点は、国家基幹技術と言われている部分が、やはり第2の公共投資にならないように、総合科学技術会議がそれを選別して、SABC評価を厳正に行い、いわゆる外部政治勢力からの圧力を減殺しながら、独立を担保するような制度改革が必要である。
 第2点は、科学技術予算に関し、省益拡大の予算という伝統がある。そうではなくて、国民に対して夢を与え、説明責任を明らかにして、基礎科学や人文社会科学を含めた戦略構想に根差した予算でなければならない。
 そのためには、各省が連携をして、戦略提案できるような科学技術予算の制度改革が必要である。これらの制度改革を行って初めて、総理の「未来への投資」、「明日への投資」が生きてくるものと思う。


【岸本議員】
 今、学校は卒業式のシーズンである。「仰げば尊し」の中に「身を立て、名をあげ」という言葉が、議論の対象になっていると新聞のコラムにも書かれている。
 米、中、韓と日本の高校生にアンケートして、「学校でよい成績を取りたいか」あるいは「よい大学へ進みたいか」という問いかけをすると、米、中、韓の70%以上の学生はイエスと答える。それは当然のことだと思う。
 ところが、日本の高校生はたった30%がイエスと答える。「そこそこお金があったら楽をして暮らしたい」というのが、一番多い答えになっていると伝えられている。
 なぜそういうことになってきているのか。それは学校教育において競争を否定し、そして皆同じである、ゆとりの教育だということをやってきたことに一因はないのかということも考えなければならない。
 ひょっとしたら日本の将来にとって、これは少子化よりももっと重要な問題であるかもしれないと思う。
 第3期の科学技術基本計画では、科学技術は明日への投資であり、「モノから人へ」という基本理念を掲げた。この理念を実現するのには、意欲のある優れた人材をつくる。それは高校、大学、特に大学が重要な役割を果たさなければならない。大学を競争的にする。それを実現するのは、資源配分の方向性を均一平等の原則から競争的へと変えていくことである。
 しかし、そこで重要なこと、忘れてはならないことは、大学への資源の投入の全体のパイを縮小してはならないということである。
 科学技術予算は、私はいつも言っているが、決して公共事業ではないということである。国家基幹技術と称されるものには後ろにたくさんの応援団が付いているが、どんどんと予算を増やしていくということがあってはならない。
 大学への投資も決して学生の頭数で平等に配分するべきものではない。しかし、大学への資源の投入と国家基幹技術と称されるようなものへの資源の投入とのバランスをどういうふうに取っていくか。それは第3期の科学技術基本計画の「モノから人へ」という基本理念が生きるか死ぬかにも関わってくることになると思う。そういう意味において、文部科学省の役割、責任は非常に重要であろうと思う。


【柘植議員】
 いずれもこのプランは科学技術創造を国づくりに結実させるために必須な、大変重要な改革事項だが、産業経験者として、特に重要な改革は「イノベーション創出による我が国の競争力強化のための総合的な戦略の策定」いう部分であり、総合科学技術会議自らのコミットメントである。ここでは政府の科学技術投資を社会的、経済的な価値創造に結び付ける、いわゆるイノベーションの創出によって我が国の競争力強化への総合的な戦略構築をコミットしているわけであり、この実行は容易ならざる命題であるという覚悟が必要である。
 まず、総合科学技術会議自らの責任で実行が可能な国の科学技術経営改革、それと同時に、文部科学省を中核とする基礎研究を社会への成果還元責任を持つ各府省、この開発研究、これを結ぶ仕組みの強化、すなわち知の創造を社会的価値創造に結び付けるというイノベーションのパイプラインのネットワークの強化が主軸になると思います。
 第2点は、科学技術のイノベーションだけでは、イノベーション全体を構築することができないということは論を俟たないわけだが、ここでコミットメントしている総合的な戦略策定と、これはまさに財政、税制改革あるいは産業政策、規制改革、更には教育改革との相互乗り入れなしには総合戦略はできないわけで、この点の実行策を本会議で掘り下げて、関連会議等の連携を図っていくということが必須である。


【黒田議員】
 もう一度資料の2−1の6ページを見ていただきたい。
 分野別の選択と集中というのは、真ん中の上の方の黄色の部分の1兆7,856 億円に対してである。
 実は、新しいブレークスルーを導いた研究の元を正していくと、その左の白い部分「研究者の自由な発想に基づく研究」から出てきている。
 つまり、目的のための基礎研究というのは、大変重要だが、一方で発見されたものが全く異なった、思ってもいない違う分野で、10年、20年先に新しい学問を生み出すとか、新しい日本の産業を生み出すとか、そういうことが本当の意味での国力の源泉だと思っている。
 では、どうしたらいいのかということだが、この左の白い部分の中だけで、大学の基盤的資金と競争的資金のバランスをどうするかということを考えているのではなくて、この白い部分全体をどうやって充実させていくのかが重要ということが第1点。
 それから、左の自由な発想をどうやって黄色の部分に持っていくのかということではないかと思う。
 つまり、自由な発想の研究を飛躍させる、マインドとか、基礎的な知識というものがないとできない。パスツールの有名な言葉の中に、「好機、グッドチャンスは準備された心に宿る」というものがあって、基礎知識もあって生き生きとして発想な豊かな人は発見を逃さずに違う分野にも展開できる、新しい学問にも新しい産業にも展開できるということで、結局は人材ではないかと思う。
 つまり、初等・中等・高等教育を通じて、本当に自然の不思議さとか、すばらしさとか、怖さとか、科学の発見の楽しさとかいうものに触れて道を開いていくリーダーを育てていかなければいけない。
 そして、そういう人が集まったCOEができて、そこに今度は世界の優れた頭脳が集まってくる。そういうものをつくっていくということが、5年間で25兆円の投資が光るものになるかどうかの鍵ではないかと思う。つまり、黄色い部分だけを考えないでいただきたいということである。


【庄山議員】
 今回のテーマの絞り込み、あるいは選択と集中というのは、非常に大切なことを短期間でやれたと思っている。ただ、どうしても研究者というのは自分の研究を選んでほしいということで、そういうふうに動く。こうした中で、今回の戦略重点化のプロセスは、8つの分野ごとに、総勢300名を超える多数の方々の英知を集めたもので、よくまとまったものだと思っており、今後もこの方式の継続が大切だと思っている。
 一方、この投資効率を上げるためには、重点化したテーマの実行状況のフォローアップが大切であり、それにはPlan・Do・Check・ActionというPDCAサイクルをきちっと回すという習慣づけをやっていくことが必要である。
 今回は政策課題対応型研究開発というところを対象にした18年度の予算でいうと、1兆8,000億円の重点化ということだが、やはり将来の日本の科学技術創造立国の基盤となる基礎研究部分、あるいは科学技術システム開発をどのように強化していくのかを、今後マクロに企画して推進方策を示していくことが総合科学技術会議の任務だと思っている。
 ここで、評価が難しい基礎研究部分の重要性を皆で認識すべきであり、どうあるべきかということも考えていく必要があると思っている。
 また、イノベーションを実現する方策としては、今後もいろんな形で産業界から提案したいと思っているが、イノベーション創出の具体化に向けて、単独の府省ではなく、いろんな府省が連携して出す案件を増大していく、あるいは世界に通用する人材の育成に力を尽くしたいと思っている。
 また、よく言われている、子どもたちの理科離れの改善のためにも、各省での取組みを強化していただくとともに、やはり国民運動として、国民ひとりひとりが取り組む運動を促進すべきではないかと思う。企業もCSRの観点から是非協力させていただきたい。


【原山議員】
 イノベーションの創出という視点から、2、3コメントを述べさせていただく。先ほど、経済産業省の方から新経済成長政策の発表があったが、やはりイノベーションというのがキーワードになると思う。その中で、どうするかという話になる。イノベーションとは何かというところに戻るが、やはり未開の業というものにチャレンジすることだと思う。であるからこそ、確実にイノベーションを実現するシナリオというものは存在しないわけである。これはアメリカでも、ヨーロッパでも模索中であるが、これというものは存在しない。
 しかしながら、イノベーションが起こりやすくなる環境というものをつくることは可能であって、それをまず強化しなければいけないということである。今、欧米においてイノベーションのエコシステムの構築ということが言われている。日本型のイノベーションのエコシステムとはなんぞやということを早急に考え、また具体化することが望まれる。
 1番目の鍵は、やはりそういうことを起こす人、もう一つは制度改革、その2つの点である。
 2番目は、イノベーションの主役というのは、あくまでも企業であるということである。科学技術というのはそれをサポートする大きな要因であるが、出口というのは企業が出口を担うことが重要であり、企業との連携が非常に重要となる。
 もう一つ、別の視点だが、女性について話させていただきます。これまで私自身女性研究者を何%というのは反対であった。しかし、なかなか毎日の生活をしていると、男性の職員の方たちが女性と仕事をすることに慣れるということがまず重要だと思う。まず何%とした上で、女性がいることが当たり前になったという状況をつくることが重要だと思うので、私はその方向に賛成することにした。


【阿部議員】
 「モノから人へ」ということで、人材の確保が重要だというのは、総論としてはもう皆さん言うとおりであり、第3期の大きい柱だが、実際は人材というのは2年や3年ででき上がるものではなくて、極めて長期的なものであるが、必ずしも政策は長期的でなくて短期的なものがたくさんある。では、短期的がだめかというとそうではなくて、インパクトを与える意味では短期的な政策が非常に有効だが、ただ少し長期的な視点が少な過ぎるのではないかということを危惧している。課長さんとか、局長さんが、自分の任期中に何とかいい案を出したいということだけに熱心になると、どうしても短期的になるので、併せて長期的なものをきちんとやっていくということで御指導いただくようにお願いする。


【小坂議員】
 新しい第3期の基本計画を推進するに当たっては、まず研究競争力の強化に関して、研究人材の育成や、大学を中心とした基礎研究の推進が必要である。先ほどの阿部議員の話のように、今の大学が世界から大変魅力的、優秀な人材を得て、そして大学院教育の飛躍的な充実を図れるような環境にあるかと言うと、はなはだ疑問である。まずもって外国の人が来るには、その子弟の入る学校の環境整備から始まって、そういったもの、また研究施設の近代化ということも必要である。文部科学省としても、大学院教育振興施策要綱を策定して、国際的に魅力ある大学院づくりを推進してまいりたいと考えている。
 また、イノベーションの創出については、従来にない新たな可能性を切り拓いて、大きな社会的な価値、あるいは経済的な価値の創造に結び付けていくことが重要であり、多様な基礎研究の中から革新的な新技術の芽を創造・育成していく施策を中心として取り組んでまいりたい。
 それには、やはり並行して国民の理解が必要であり、これだけの巨額の投資を行うためにも、国民の理解の増進のために取り組んでまいりたいと思っております。4月17日から科学技術週間というものが、松田大臣に大変努力していただいて実施をすることになっておりまして、この中ではサイエンスカフェを全国で開催するなど、いろいろな理解促進のイベントを含めた活動をしたいと思っている。私としては、こういった場で、大変先端的な研究を推進してらっしゃる著名な皆さんに、科学技術の今の姿をわかりやすく説明していただくようなことも1つあり、また研究室にいる、それぞれの地域で頑張っている研究生、ラボの皆さんに持続的に市民の皆さんと対話をしていただくようなこともまた刺激の1つになるのではないかと思う。
 わかりやすく、子どもにも刺激を与えて、理科、科学というものに対しての興味を湧かせること、こういったことが国民挙げて科学技術に対する支援体制をつくることにもつながっていくと思っている。


【猪口臨時議員】
 私からもよろしくお願い申し上げる。特に女性研究者の発展について、特別のご配慮をいただければと思う。研究者として、最初の中核的な業績を出していかなければならない勝負の時期と、子育て期の年齢がしばしば一致して、女性が研究をなかなか続けることができない、継続難という実態があると思う。  少子化予算と比べると、科学技術は大変豊かな予算を活用しているが、今後我が国において、そのような科学技術を担っていく人材が生まれ育っていくことも大変重要である。
 また、理科離れについて、先般ある女子大学で「女性と科学」ということで講演を行ったとき、たくさんの女子高校生の参加も得て、会場の質問に答える中で、なぜ理科に進んでもらいたいかについて話す機会があった。それは、理科が面白いからということにとどまらず、人間社会をより良くするんだと、そのことを伝えていただければと思うと述べた。女子高校生たちがみな、なるほど理科に進むことによって、この世を良くしていくことができるんだという、最も大事な根本を認識できた瞬間に、何か感動の輪が広がった。私は政治もそうだと思っているので、どうぞよろしくお願いしたい。


【松経済産業副大臣】
 科学技術は、明日への投資、人材育成は明日への投資であると私も思う。イノベーションというのは、未開の業とおっしゃったが、まさにその未開の業創出のためには、サイエンスを担う大学の競争力強化が非常に重要であるので、当会議でもやはり重点的に取り組まなければいけないと思っている。
 また、イノベーション創出のためには、我が国が学問や研究の拠点となることも重要ではないかと考えており、特にアジアとの間で優秀な研究者や学生を受け入れるための奨学金制度、これは二階大臣が、日本版フルブライト奨学金を提唱しているが、そういうことも考えている。
 また、理科離れの話については、アメリカでは高校生までの理数教育の抜本強化、これを大統領が大々的に訴えていたが、我が国も遅れを取ってはいけない。
 経済産業省としても、地域の優秀な方、有能な方、例えば、モノ作り博士を派遣することなどで、理数教育の充実、授業に役立てていただきたい。これにも取り組みたいと考えている。


【菅総務副大臣】
 今回もこの重点推進分野に位置づけていただいた情報通信分野は、欧米諸国やアジア、それぞれの国は戦略的に取り組んでおり、我が国も国際的な競争力の強化ということが極めて大事である。そのためには、大学とともに公的研究機関の果たす役割も大事だと思う。
 総務省所管に情報通信研究機構というものがあるが、これは情報通信を専門とする公的機関であり、今度の国会で非公務員型の法人にするための法改正を今、行っている。この第3期基本計画の機関において、我が国の研究開発力の向上や国際標準化活動の充実強化、更にはこれを支える情報通信分野の人材育成にも貢献をしていきたい。
 こうした取組みが、円滑にできるような、そうした環境整備をお願い申し上げたい。


【竹本財務副大臣】
 今般の科学技術予算については、前回の第2期に加えて更に厳しさを増している財政事情があり、非常に有効な御支援を是非お願いしたいと思っている。特に、例えば研究資金の配分に際して、的確な目利きができるような審査、評価体制の抜本的強化を図り、投入面というよりは予算執行の現場において投資効果を最大限発揮させるような取組みを強化していただくことを、特に期待いたしている。先ほど話にあった、PDCAサイクルの活用とか、そういったいろんな手法を用いて、国民から見ても、ああそういうふうにお金が使われているんだということがわかるような努力を是非お願いしたい

【三浦農林水産副大臣】
 国民理解につきまして申し上げる。農林水産研究においても、遺伝子組換え技術等においては、国民の期待が非常に高い一方で、不安を抱く動きも見られる。このことから、その理解を得るために、さまざまな取組みを行っているところである。
このような新しい技術について、国民の理解を得ていくためには、学校での理科教育の充実や国民と研究者のコミュニケーションを政府全体として取り組んでいく必要があると考えている。


【小泉議長(内閣総理大臣)】
 理科系が大事だというけれども、年齢的なものはないですか。私はスポーツでも、オリンピック選手や野球選手、サッカー選手を見ていると、どうしても年齢的なものがあるように感じますね。理科系だって、幾ら熱心に教育したって、一定の年齢があるのではないですか。


【薬師寺議員】
 中学生ぐらいで、大学に行くともう遅いのではないかという感じがします。


【小泉議長(内閣総理大臣)】
 そうでしょう。政治家は何歳になっても大丈夫だけれども、この理科というのは早い年齢で興味を持たないとだめだと思いますね。


【阿部議員】
 分野によると思うのですが、純粋数学なんかは、やはり相当若いときにホームランを打っている人が非常に多いのではないかと思います。日本のノーベル賞受賞者の最近の3人の化学の人は、最初のホームランは全部30までに打っております。しかしながら、そこが難しいところですが、70からの仕事でノーベル賞をもらった人もいるものですから、そこは非常に難しいのですが、一般的には日本は、若い人で非常に優れた人をきちんとサポートするというのは、まだまだ遅れていると思います。そこは、具体的にどうするかというのは、いろいろ難しい点もあるのですが、ボスの片腕になってないと伸びない人もいます。ですから、そこが非常に難しいですけれども、やはりおっしゃるように私は分野によって若いときにちゃんと伸ばさないといけない分野というのは確実にあるように思います。


【小泉議長(内閣総理大臣)】
 70歳以上の人が能力があったとしても、その人が若いときから科学技術に関心がないとそれは難しいでしょう。


【柘植議員】
 私は科学者になれなくて技術屋になったんですけれども、やはり社会を支えているのは、科学と同時に技術が支えているわけです。ですから、技術のサイドの人材を増やしていくというのは適齢期というよりは、役に立つんだ、それと同時に小学校のときから面白い、と思った上で役に立ちたいという志、これは才能というよりも教育で、両方あると思います。


【原山議員】
 やはり旬があると思います。それは分野によって違います。私自身の体験からいきますと、若いときに、20代で数学をやりました。すごく楽しかったです。でも、その後結婚して子どもを産んでブランクが開いたら、もう完全にそこに戻ることはできませんでした。そこから人文社会の方に移ったわけです。こちらは、社会体験することによって自分の力が付いたという意味で、教育学、経済学、そういった分野では後からでも更に今までの体験を生かすことができる分野です。
 それから、一般の方に関してリテラシーという問題があると思います。言葉についてのリテラシーはありますけれども、科学技術についてもリテラシーがあって、それはやはり全体的に高めなければいけない。そのためには、下のレベル、小中学校の時代に、それこそ楽しい先生と出会うという機会を持たせることが重要だと思います。


【黒田議員】
 あと親の影響も非常に大きくて、母親あるいは父親が全然科学技術に興味がないというのでは、絶対いい子は育たないと思いますので、その辺は皆様も是非、学校の先生だけではないということを理解していただきたいと思います。
 もう一つは、やはり子どもが何になりたいかというと、イチローであり、松坂であり、ゴルフプレーヤーであり、スポーツ選手ばかりなんです。科学者にあこがれてくれないとまずいと思います。これは何とかしたいと思います。
 科学者になるという志を持つようにというのではなくて、やはり科学者になりたいと思う雰囲気にしていかないといけないと思います。


【庄山議員】
 皆さんから出たお話のとおりだと思うんですが、やはり小学校高学年、あるいは中学ぐらいのときに出会う先生の影響というのはかなりある。それから、親はそう簡単に変えられませんが、勿論、親とか親類、縁者にどういう人がいるかということの影響があることは事実です。だから、このままどんどん理系離れが増えていくと、本当に日本は大変なことになると思いますので、まずはできるところは小中学校高学年の理科の先生方が、本当に理科が好きな先生でないとだめではないかとよく言われています。


【岸本議員】
 少し違うんですけれども、10代のころ、別に理科好きとか言わなくても、もっと幅広い、文学でもいいし、何でもいい。例えば大阪大学の初代の総長だった長岡半太郎は、突出した物理学者ですけれども、書いてあるものを見たら、親あるいはおじいさんが、子供の頃ずっと漢文ばかりを教えていたりとか、朝永振一郎や湯川秀樹も多分そうだっただろうし、だから非常に幅広い、どれだけ幅広い教育を受けるか、それは家庭環境もあるし、学校環境もある。学問が好きになるか、理科が好きになるかというのは、やはり高等学校から大学へ入ったころの、どの先生と出会ったか、私の経験もそうですけれども、そういうことだと思います。
 それから、年齢によって差があるかというのは、20代、30代というのは、やはり抜群の集中力、どこまで考えていっても疲れない。数学は、特に集中力がずっと、何日でも何日でも考えることが大事ですから、やはり集中力です。それは将棋と同じことで、将棋も若いころがすべてで、それは集中力がどれだけ続くかということです。ところが年をいってくると、政治はどうか知りませんけれども、我々みたいなことをしているのも、やはり全体を俯瞰する能力というのは、年がいってきたらある程度発達してくる。だから、年がいってくると全体を俯瞰しながら、あるいは評価しながらというふうな役割をすることになってくる。将棋と碁が違うのは、碁は全体を見るので、ある程度年がいってもできるけれども、将棋は非常に若くないと集中力の問題がある。そういう年代の問題はありますけれども、10代には理科好きだ、実験を教えるとかやっていますが、これは面白いといって見せるだけではなしに、もっと深い学問を、いろいろな学問をさせる。芸術、文学、どれだけ幅広いバックグランドを持っているかが大事だと思います。


【松田議員】
 前の東工大の総長だった末松先生は、我がふるさとの中津川市で、毎夏全国の子どもたち80人、一流の先生を集めてサマースクールをやっておられるんです。その先生の話だと、中学2年を対象にしていて、中学2年で大体進路を決めると。もう高校ではだめだと。もう十何年やっていて実証的データをこの間見せていただいたんですが、一般には理科系を希望するのは大体3割です。ところが、その3日間のサマースクールに来た自分が教えた子どもたちは7割が理科系だという話をされておられました。あくまでも御参考ですが。
 総理の御質問によって、いろいろ非常にいい意見をありがとうございました。

 さて、第3期科学技術基本計画では、社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術を基本姿勢といたしておりますが、ただいま御議論がありましたように、若者を中心に、あるいは国民一般かもしれませんが、科学技術に関する関心というものが低下傾向にあるとされております。
 科学技術に対する国民の理解、支持を得ていくためにも、第3期基本計画の候補を始めとして、科学技術に関する国民理解の増進に一層の力を入れて取り組む必要があると存じます。私も4月1日に親子タウンミーティングを開催するとともに、4月17日からの科学技術週間中の行事にもできるだけ参加いたしまして、科学技術への国民の理解増資に努力していきたいと思っておりますが、どうぞ今日御出席の関係閣僚、関係副大臣におかれましてもお願い致します。
 実はそれぞれの省の取り組みについて調べました。各省全部で約450ほど、国民理解増進運動をされておられます。本当にたくさんの運動がされておられますが、その割には効果はどうなんだということを思いますと、一層これらの取り組みを連携を取り、効果的なものにしていく努力を、まさに先ほど来のお話のとおり、総合科学技術会議が中心になってやっていきたいと思いますので、一層御協力をいただきたいと思います。



(4)科学技術振興調整費について

 平成18年度の科学技術振興調整費については、新たに「人材の育成」や「イノベーションの創出」に関する6つの新規プログラムを推進することとし、資料4(PDF)の通り、「平成18年度の科学技術振興調整費の配分方針」を決定したことについて松田議員から報告。



2.議長(内閣総理大臣)しめくくり発言

 今日もいろいろ議論をありがとうございました。
 予算は削るばかりで伸びているのは科学技術だけですから、その中でメリハリを付けるのは大変だと思います。
 削られた方は不満が多いようですし、伸びた方もまだ不十分だという不満もあろうかとは思いますが、これからも今日のお話のように、重点化あるいは削る方も含めて、これは大変政治力もいると思いますが、科学技術は重点分野ですので、才能を生かしてよろしくお願いいたします。

内閣府  科学技術政策・イノベーション担当
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