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第60回総合科学技術会議議事要旨


(開催要領)

1.開催日時:2006年10月27日(金)17:33〜18:34

2.場所:総理官邸4階大会議室

3.出席議員

 議長 安倍 晋三 内閣総理大臣
 議員 塩崎 恭久 内閣官房長官
 同 高市 早苗 科学技術政策担当大臣
 同 菅  義偉 総務大臣
 同 尾身 幸次 財務大臣
 同 伊吹 文明 文部科学大臣
 同 甘利  明 経済産業大臣
 同 阿部 博之  
 同 薬師寺 泰蔵  
 同 柘植 綾夫  
 同 本庶 佑  
 同 黒田 玲子  
 同 庄山 悦彦  
 同 原山 優子  
 同 金澤 一郎  
  (臨時)    
 同
松岡 利勝 農林水産大臣(代理 山本 拓 農林水産副大臣)


(議事次第)

1.開会

2.議事

(1) 今後の科学技術政策の重点課題について
(2) 平成19年度概算要求における科学技術関係施策の優先順位付けについて
(3) 独立行政法人、国立大学法人等の科学技術関係活動(平成17事業年度)に関する所見について
(4) 最近の科学技術の動向
(5) その他

3.閉会

(配付資料)
資料1−1   今後の科学技術政策の重点課題について(PDF)
資料1−2   今後の科学技術政策の重点課題について(PDF)
資料2−1   平成19年度概算要求における科学技術関係施策の優先順位付けについて(PDF)
資料2−2 平成19年度概算要求における科学技術関係施策の優先順位付けについて(1)(PDF:357KB)(2)(PDF:340KB)
資料3−1   独立行政法人、国立大学法人等の科学技術関係活動(平成17事業年度)に関する所見について(PDF:413KB)
資料3−2   独立行政法人、国立大学法人等の科学技術関係活動(平成17事業年度)に関する所見について(PDF)
資料3−3 独立行政法人の科学技術関係活動に関する調査結果(平成17事業年度)
(1)(PDF:433KB)(2)(PDF:201KB)(3)(PDF:500KB)(4)(PDF:434KB)
(5)(PDF:433KB)(6)(PDF:500KB)(7)(PDF:491KB)(8)(PDF:500KB)
(9)(PDF:500KB)(10)(PDF)(11)(PDF:487KB)(12)(PDF:448KB)
(13)(PDF:500KB)(14)(PDF:471KB)
資料3−4 国立大学法人等の科学技術関係活動に関する調査結果(平成17事業年度)
(1)(PDF:314KB)(2)(PDF)(3)(PDF:391KB)(4)(PDF:302KB)
資料4   最近の科学技術の動向 −再生医療の現状と未来−(PDF:336KB)
資料5   平成18年度科学技術振興調整費による「重要政策課題への機動的対応の推進」課題の第2回指定について(PDF)
資料6   第59回総合科学技術会議議事録(案)(PDF)


* 議事概要中の資料はPDFファイルです。

(会議概要)

1.議事概要
安倍議長(内閣総理大臣)御挨拶

【安倍議長(内閣総理大臣)】
 本日、議長として初めて総合科学技術会議に出席をさせていただくので一言ごあいさつを申し上げたい。
 私は、官房長官としてこの会議には何回か出席をさせていただいた。小泉内閣同様、この科学技術政策を重点的な我々の課題として充実していきたいと思っている。
 また、私は所信表明においても、人口減少局面においても何とか成長し続けるためにはたゆまないイノベーションが必要であると申し上げたが、イノベーションを支えるのは何と言っても科学技術である。その科学技術の知恵の場として、是非この場において広い、そして深い議論を是非していただきたいと思うので、よろしくお願いしたい。

 

(1)今後の科学技術政策の重点課題について

 安倍新内閣の下、今後、基本計画の実行に当たって更に掘り下げて具体化すべき政策や重点課題について、資料1−1に基づき、阿部議員から説明し、意見交換を行った。本議題における各議員の意見は以下のとおり。

【本庶議員】
 イノベーションの源となる萌芽的な研究をするための独創的な研究に対しての研究費の問題は非常に重要であると思っている。
 我が国の競争的資金というのは4,700億円であるが、米国は5兆4,800億円であり、10分の1である。人口が半分ということを考えても、やはり5分の1である。
 これに加え、民間財団としてが有名なビルゲイツ財団は、助成金だけで1,500億円、更にハワードヒューズが600億円であるが、我が国で最も大きな財団は何と10億円の上原財団であり、民間の活力を生かすような研究費も非常に重要であると思う。
 今後、実際にどのような形で研究費を配分していくのか。また、その使い方についても、システム改革を進めていく必要があるのではないか。
 理数教育についても、非常に多くの人から指摘されているが、教科書問題、免許制は非常に重要な問題であるため、教育再生会議と連携しながら文科省全体の施策を進めていく必要がある。
 人材の確保で重要なことは、大学の施設、設備が非常に老朽化していること。これは年々400億円の財源しかないということで、今日非常に逼迫している。経済財政諮問会議では公共投資を質、量両面から見直していくとのことだが、これを人材を育てる公共投資として位置付けていただけると、また新たな展開があるのではないか。我々としても、経済財政諮問会議と協調連携して進めていただきたいと思っている。


【黒田議員】
 「イノベーション創出」と「国際化」という2つのポイントがあるが、これには「継続的かつ多様な基礎研究の充実」と、その元となる「理数教育の充実」が大切。これは先ほどの重点4課題すべてに関連していること。
 イノベーションの本来の意味というのは、単なる技術革新ではなく、新たな発明や発見が新しい産業を生んだり、我々のライフスタイルを変えたり、新しい学問をつくることである。そういう、世の中に新しい価値を生み出す破壊の上の創造をいうことではないか。
 身近な例を挙げると、新聞、雑誌の作成が活字を組むということで行われていた時代から今はパソコンになり、非常に効率はよくなったが、植字工という職業は当然なくなった。写真も、自然に近い色のカラーフィルムの開発が行われていたが、その延長線にはない全く新しいデジカメができてきた。このようにイノベーションというのは既存技術の延長線の上にはない。
 そうすると、イノベーションの種が育たなくては何も始まらず、その源の潤沢化のためには多様かつ継続的な基礎研究の推進が重要。その成果を当初思ってもいなかった新しい分野の学問、それから産業にも展開していく。つまり、種から実を育て上げるマインドと仕組みの両方が重要であると思っている。このためには大学の基盤的な経費の充実や大学の施設整備の状況など、研究教育環境を整えることが国の役目の一つであると思う。大学の施設がどのくらい老朽化しているか、総理にも足をお運びいただけるとおわかりになると思う。
 2番目の話題、これらを支える重要な基盤は人材育成である。今年の4月25日の本会議で、理数教育の充実を議論した。新しい内閣になったので、海外と日本の教科書の状況を是非わかってもらいたいと思い、もう一度教科書を持ってきた。
 海外の高校の理科の教科書は、自分で興味を持って学習できるように、CD−ROMやネットのサイトが付いている。内容が大変に豊富で面白く、かつ日本の大学レベルである。これは高校生を対象として行われている国際科学オリンピックの基準本である。つまり、ここに書かれてあることから試験問題が出るということになっている。日本の高校教育を受けていては、科学オリンピックの試験問題の意味すらわからない。是非手に取って見ていただきたい。問題は、オリンピックの成績よりも、日本の理数教育が世界の水準に比べて低いことである。それから、差が更に広がっているということである。日本の小学校で教える理科の内容は中国から2年遅れている。理科は2科目だけ選択すればよくなっているため、生物、化学、物理の基礎知識を持っていない国民が育っている。高校で学習するレベルが下がっているので、日本の大学は以前高校で学んできたことを教えている。ところが、世界では高校生が大学のレベルの理数を学習している。アメリカでは4割の学生が大学レベルの勉強すること、そして大学レベルの理科教育のできる教員を2010年までに7万人養成することを大統領の年頭教書で謳っている。
 中国は高校生対象の科学オリンピック予備試験を20万人が受けているが、オリンピックに出られるのは各国一科目数名だけ。つまり、その数名を支える優秀な厚い層がいる。これが本当の国力である。出る人だけではなく、それを支える厚い層が国力の源泉になっている。日本の大学を国際化しなければならないといっても、海外のトップの学生は日本の大学のレベルが低いといって来ない。これが現状だということをわかっていただきたい。
 世界が学力向上に向けて努力しているときに日本は逆の方向にいっている。これを教えてはいけないという上限を規定していると孤立してしまうので、本当の意味で国際化するためにも理数教育を見直し、伸びる子はどんどん伸びるようにしていただきたい。


【庄山議員】
 先日、ある新聞の新刊の紹介欄に『世界で最も美しい10の科学実験』という本があった。これは英国の科学雑誌の調査結果を元につくった単行本であるが、ガリレオとかニュートンとか、おなじみのものが出ている。これは投票で10テーマを選んだそうだが、一番人気の高かったのがたまたま私どもの会社にいる、今はフェローだが、外村彰というものが1989年に発表した電子顕微鏡の写真が非常に面白いということであった。これは物理学の究極の謎と言われているが、1個の電子が粒子としての性質と波の性質と両方持つということをわかりやすく顕微鏡技術の進歩で紹介したものである。
 しかし、これは元をたどれば、各大学とか国立の研究機関での基礎研究によって育てられた電子顕微鏡の技術など広い裾野があって初めて実現したものである。
 それから、子どもたちの理数離れの問題について、もちろん日本が抱える大きな問題だと思っており、子どもだとか、教師だとかだけではなく、皆が国民運動として考えていかなければいけない。
 さきの本の中では、科学者たちは実験を通して美しいという感動を覚えるというところが大事なことであって、是非教育の原点はいろいろな意味においていろいろな形の感動を味わうようなことをやるべきである。合わせて今、総理が言っておられる美しい国の日本の感動を是非お願いしたいと思う。
 それからホットな話だが、先日、高松市で技能五輪の全国大会があった。これは国内大会であるが、2年ごとに国際大会をやる。昨年はヘルシンキで開かれた技能五輪の国際大会では34年ぶりに我が国が金メダルの数でトップであった。最近、隣りの国々が非常に追い上げが強いが、来年は静岡県の沼津市で技能五輪が行われるので、是非これも国と民間が一体となって若手技術者、特に技能者の養成に取り組んでいきたいと思っている。
 最後に科学技術の振興について、今お話がいろいろあったように、基礎研究の高度化とイノベーション創出に向けたダイナミックなアプローチの両輪が必要であるため、将来の日本への投資として既に第3期では5年間で総額25兆円という規模の研究開発を旗印に揚げているので、無駄は徹底的に排除しなければいけないと思うが、科学技術の進展に必要な重点施策については、例えば費用を前倒しをしてでも、世界に勝てる成果の前倒しするというような積極的な推進が必要なのではないかと思う。


【柘植議員】
 少し異なった観点から2点申し上げたい。
 第1点目は、資料1−2の重点課題1のイノベーション創出を加速する研究開発の具体化なポイントである。この10年間の第1期と第2期の基本計画が生み出したイノベーションの種を社会経済価値に仕上げる作戦と、それと並行して先ほどから黒田議員もいわれているように、10年、20年かかるイノベーションの種づくりの二面作戦を同時に行うことである。
 我が国のイノベーション創出のプロセスの弱点は、このプロセス自身が上流側と下流側でうまくつながっていない部分があるということ。イノベーションの源である学術研究と社会経済価値が結合していないケースが多い。逆に出口側の社会経済ニーズから入り口側の学術研究、いわゆるバック・トゥー・サイエンス、このパイプの詰まっている部分がある。私は、これを知と価値創造の結合パイプラインネットワークの欠陥と言っているが、このイノベーションのパイプラインのネットワークを強化する施策が肝要だと思う。
 具体策の主な1つは、文部科学省が投資する目的基礎研究を社会経済価値に具現化する責任府省が投資する応用研究開発活動と、双方に有機的に結合する連携強化である。具体的には昨年から実行している府省連携施策群のマネジメントの観点から改革を強化するとともに、同時に各省がそれぞれ独立したファンディング・エージェンシーを持っている。これらを双方向に結合する施策が有効である。
 このイノベーションのパイプラインネットワーク強化策の第2は、イノベーション創出にとって必須な産学共同の場づくりである。今年から始めた先端融合イノベーション創出拠点事業においても、このようなオープンな共同の場の構築と機能強化が肝要。
 申し上げたい2点目は、重点課題1のイノベーションの創出と、課題2の研究開発、それから重点課題3の人材育成、すなわち教育であるが、これを一体的に結合する施策が大事である。前にも申したが、今年のG8のサミットに先立って7月にモスクワでG8の産業リーダーと大学のリーダーとの合同のイノベーションに関するシンポジウムが開催された。私も参加したが、その結論は教育と研究とイノベーションの3要素を一体結合するという施策の強化である。我が国は先ほどの阿部議員からも話があったように、アジアにおける日本の視点も入れて教育と研究とイノベーションの結合の施策の強化が喫緊の課題である。


【原山議員】
 科学技術というときに特に理工系のことをイメージするが、その支柱となる範囲には人文社会も含まれるので、その視点から少しお話をしたい。
 人材育成に関しては、やはり人文社会も含めた形でもって科学技術の人材の原点というのは知的好奇心である。知的好奇心をそそるような仕組みはどういうものをつくったらよいかということが大きな課題である。やはり小中高、それから大学も含めて、教育機関がその場である。小中高と大学の違いは何かというと、小中高の場合には多様性を体験する。いろいろなところでもってさまざまな知と出会う場であって、それを深めていって専門性を高めるというのが大学である。
 ちなみに理系、文系という二分法というのが日本では常に言われていますけれども、これはどこに根拠があるかというと、やはり大学の学部の進路によって理系、文系というのは二分されており、本来多様性というのは高校の学習指導要領には必須科目という形でいろいろな科目を勉強しなくてはならないとなっている。ところが、現実は、大学の受験科目によって自分がどこにいくかにより取る科目が決められてしまうというのが現実である。高校教育の品質の保証というものを大学入試が代わりにやっているのが現状。
 昨今、履修漏れの問題がある。あれはどこにルーツがあるかというと、その辺のところにある話で、その問題に対してどういうふうな解決策が必要かということを考えなくてはいけない。
 現状は、先ほど黒田先生が言われたように、理系の知との出会いというのは非常に薄れて、その機会が他国に比べて非常に日本の場合には弱い。理系だけではない。人文社会においても同じようなことが言われている。両面からやはりアタックしなくてはいけないという認識である。
 例えば、履修漏れの問題解決法は、単純に生徒の負担を減らせばいいという問題ではないと思う。大学入試による品質管理から高校の出口管理に持っていかなくてはいけないというのが私の考え。そのためには、単純に時間数、配分という話ではなくて、どのようなシステムを日本の高校の中にインプリメントするかということを考えなくてはいけない。


【金澤議員】
 今まで小泉内閣の間は、これはマスコミの方の表現かもしれないが、聖域なき改革という言葉を使われていた。これはある場面では絶対に必要なことであり、人員削減も含めて経費削減、その他、効率的にやらなければいけないということはわかる。
 ただ、安倍内閣になっていつまでもそうかというとちょっと疑問があって、そろそろきめ細かいそれぞれのところで、聖域とは言わないが、多い少ない、強い弱い改革の姿があってもいいのではないかという気がする。
 その理由の1つは、例えば先ほど1−2で(1)の「5」に「治験」という言葉が出てきた。私はアメリカと比較することは本当は余り好きではないが、やむを得ないので比較すると、日本では薬の審査には100名くらいが絡む。ところが、アメリカでは何と600名、700名絡んでいる。つまり、先ほど5倍ぐらいという話があったが、大体同じような数字になっている。そういうところはやはり人員の問題がかなりあって、効率も当然ながら悪くなるといった問題がある。
 もう一つ、別なこといえば、同じ1−2の(2)の「1」に、オープンに世界の中で日本の大学が外の人たちを呼んで活発にということに関して、これは大変結構なことだし大事なことだが、来た人たちが日本の生活の中でいい印象を持って帰ってくれるかどうかということが非常に大事なことである。ここに「オープンな環境」と書いてあるが、この内容は研究環境だけではなくて生活環境というものも含めた形で理解してもらえればと思う。


【薬師寺議員】
 ちょっと古いが、9月7日に尾身先生が京都で開かれたSTSフォーラムで、安倍総理が総理になる前に演説されたことに大変印象があり、安倍総理は科学技術とかナレッジはナレッジのためにあるのではなくて、やはりコモングッズ、公共財、それから我々のコミュニティのためにあるんだというように言われた。
 我々のペーパーはそういう流れの中で書かれていると確信している。例えば地域に関しても、コミュニティに関しても、やはりイノベーションを促進することが必要だと書いてある。地方分権というのは、実は大学とか、そういったものも参加するわけで、例えば九州全体が一つの大学ブロックとして人間も移動し、それから研究独法なども参加して一体として動かすようにしなければ、科学技術がコミュニティのために役に立たない。
 それからもう一つは、2007年問題で団塊の世代が退職するが、団塊の世代がアジアに対してゲートウェイとして活躍していく。彼らをマネジメント・ディプロマシーあるいはエンジニアリング・ディプロマシーといった中に参加させていくプログラムが我々は必要だと思う。特に科学技術という点で頼れる日本を目指すため、言葉だけではなくて実際に動かしていくということが必要。


【阿部議員】
 明治時代になぜあれだけの奇跡と言われた近代化ができたかというと、3つあると思う。1つは読み書きそろばんの初等中等教育、2番目は各藩がこぞって学問を奨励した。これは蘭学も含めて。3つ目は武士道とか商人道に代表される精神文化、この3つの水準が当時の世界の中で非常に高かったということではないか。このような我々の先祖、先人の知恵と教訓を参照して21世紀型の人材にかかる高い水準を求めていくべき。
 先ほど4つの重点課題の中で、日本の大学や研究機関を一級の外国の研究者や優れた外国の学生から魅力あるものにしていかなければいけないという趣旨を申し上げたが、日本は米国のような移民国家ではないので、多数の優れた外国人を集めるということには当然限界がある。
 では、どうすればいいかというと、日本の大きい特色の一つは女性の研究者や技術者の割合が極めて小さいということであるので、そこに大きい可能性がある。したがって、男女共同参画を戦略的な視点も加えて、アメリカとも違う、英国とも違う日本初の存在感のある科学技術文化をつくっていくことが我が国にふさわしい、よその国からも評価される道であると考える。


【菅議員】
 社会を変革できる可能性を持つICTという分野は、イノベーション25のうちで最も重要な柱である。現に我が国の産業の中で成長の4割に寄与している。統計上、更にこのICT技術を活用して組織改革を行うと生産性を2倍に上げることができることが明らかになっている。
 しかし、残念なことに、優秀でありながら海外において日本のICT分野は活躍できていない。例えば携帯電話は、日本の携帯電話の優秀性を6割、7割の科学者の人たちが認めている。しかし、海外での日本の携帯電話は15%くらいしかシェアがない。この辺が非常に問題のあるところである。
 私は、なぜ日本のICTが海外で評価されない、充実できないかということで、国際競争力懇談会をつくった。やはり日本の技術というものを具体化していくことが大事なことである。これだけの成長産業であるため、特にアジアに重点的に考えていく必要があると思う。
 また、消防分野にいてもICT、ナノテクなどの新技術を活用して現場ニーズに対応した研究開発を競争的研究資金制度なども活用して懸命に取り組んでいきたい。


【山本臨時議員】
 農林水産省としても、重点課題に一生懸命取り組む所存。
 国内には500万ヘクタールの農地があり、自給率がカロリーベースで40%と言われているが、その500万ヘクタールの農地がいざというときにフル生産にかかり、二毛作等をすれば、1億2,000万人の国民1人当たり2,000キロカロリーを提供する自給力は有している。
 その自給力を更に高めるために、ゲノム研究について精力的に取り組んでいるところであり、既にイネゲノムの完全解読を果たしている。たまたま先週の『ニュースウィーク』にこの研究のリーダーだった独立行政法人農業生物資源研究所の佐々木理事が世界が尊敬する日本人100人に選ばれたので、PRしたい。
 今はおいしくてつくりやすい病気に強いイネや花粉症を緩和させるイネなど、いろいろなものをつくっているが、人の口に入るものについてはいささか実用化に研究期間が必要であり、バイオ燃料、エタノール燃料の低コスト化に供するサトウキビとかイモ類の資源作物の開発にも精力的に取り組んでいるところ。
 更にIT・ロボットの活用として、一口に言うと無人収穫システムなどを研究している。農地をできるだけ集約しながら手間・コストを減らす機械化技術の開発を精力的に進めているので、よろしくお願いしたい。
 最後に、水産関係については、エチゼンクラゲが大変な被害を出しているが、駆除するだけではなく、コラーゲンをとり、人間の生活に寄与するための技術開発にも取り組んでいるので期待してもらいたい。


【甘利議員】
 経済産業省では今、「イノベーション・スーパーハイウェイ構想」を推進中。産学官による研究開発ということで産学官連携の促進というものをずっとやっており、これをバージョンアップし、産学官連携を加速していく。もう一つは、産学官連携からマーケットへの横串を通す。横串は双方向で、つまり、マーケットと対話する。先ほど既存技術の延長線上にイノベーションはないと言われたが、市場が求めているものを研究段階から見直していくということ。そして、産学官連携でできたものを市場にどうデビューさせていくかというマーケティング、この双方向をしっかりやっていくのが「イノベーション・スーパーハイウェイ構想」。そういう点から、5点申し上げる。
 まず第1点は、経済産業省では将来の市場ニーズを見通して技術開発の道筋を示す目的で「技術戦略マップ」というものをつくっている。イノベーション25は、2025年に社会がこうあるべしと、それから逆算して何をすべきかを問う点があると思うが、このロードマップの作成に当たって「技術戦略マップ」を活用できるのではないか。
 2点目は、産業技術総合研究所(産総研)がある。結論から言えば、産総研を大いに活用していただきたい。相当の成果を出している。
 3点目は研究開発独法について、例えばNEDO等の研究開発独法に他の予算の仕組みが導入されている。つまり、毎年毎年予算を削る。より効率的に削っていく。科学技術予算を本体で伸ばしていきながら、本体から委託研究をさせる研究開発独法は減らしていくということで、どうやって予算を使うかといった問題点が1つある。それから、全ての競争入札が価格重視であり、物や何かを買うときにはいいが、研究開発をするときに価格が安い方にということでいいのか。これは中身が大事であり、ここはしっかりと他と横並びの競争入札方式というのは相当考えていかないといいものができない。あるいは、その予算をつなげていく。ぶつ切り予算、単年度予算ではだめで、研究開発というのは永続性なので、これをしっかりつないでいくような仕組みをつくらないといけない。
 4点目は先ほども出た研究成果を製品化するに当たって、薬事審査などがよく挙げられるが、制度的障害をなくしていくべき。イノベーションはスピードが大事なので、よけいな手続きに手間取って市場デビューが遅れるとか、研究が遅れるというのは避けなければならない。
 5点目は、経済産業省は地域のイノベーションを促進するということで、従来型に公共事業で地域に施して予算が出ているときには持ち上がるが、切れたらおしまいというのではなく、そこの地場の力を付けていくために地域の産学官連携をやっている。これが産業クラスター計画であり、これを強化していきたい。


【尾身議員】
 政治の面から見て、科学技術の議員の先生方に考えていただきたいことを3つ挙げたい。
 1つ目は、私立大学のポテンシャルをもう少し科学技術の発展に使ってもらいたい。8割弱の学生がいるわけなので、今まで国立中心だったのを私学の方にも目配りをして欲しい。
 2つ目は産学連携、イノベーションのためには産学官の連携が大変大事なので、その点ついて是非しっかりとその方向性を出し、旗を振っていただきたい。
 3つ目は、安倍政権の大きな課題は地域社会の活性化ということであるので、私は公共事業依存型から科学技術駆動型の地域経済の活性化という方向でずっといってきたが、やはり地域についても目配りをしていただき、科学技術を軸として地域の経済を発展させる。そういう視点も入れていろいろお考えをいただきたい。


【伊吹議員】
 先ほど阿部先生が御説明になった4点について、文部科学省としては当然考えを共有している。特に柘植先生がおっしゃったようなイノベーションを生み出すシステム、これはちょうどその間をつないでいるような仕事と、それから出発点の大学その他を両方所管しているので、よく心得て資金の配分等をしたい。
 それから、重点的な基幹的部分への資金配分、特に国家として安全保障等をも考えて何が大切かということをよく考えながらやらせてもらいたい。
 19年度は2兆6,000億円程度の要求をしているので、財務省においては十分に今の御意見を参考にしてやっていただきたい。

(2)平成19年度概算要求における科学技術関係施策の優先順位付けについて
(3)独立行政法人、国立大学法人等の科学技術関係活動(平成17事業年度)に関する所見について

 資料2−1及び資料3−1に基づき、本庶議員より、平成19年度概算要求における優先順位付けの結果及び独立行政法人、国立大学法人等の科学技術関係活動に関する所見について報告。


(5)その他

 資料5に基づき、高市大臣より、平成18年度科学技術振興調整費による「重要政策課題への機動的対応の推進」課題の指定について報告。


(4)最近の科学技術の動向

 資料4に基づき、本庶議員より、再生医療の現状と未来について説明。


2.安倍議長(内閣総理大臣)しめくくり発言


【安倍議長(内閣総理大臣)】
 今、万能細胞の御説明をいただき、まさに科学技術の進歩がいかに国民の人々に利益をもたらすかということを非常にわかりやすく説明をしていただいた。
 先ほども民間の活力をもう少しイノベーションに使うように工夫できないかというお話があったが、日本の研究開発への投資はGDP比で3%超と、世界の水準では極めて高い水準であり、特許の登録件数も第2位だということだが、これがなかなか結果に結び付いていない。つまり、いわゆる国民にとっての豊かさ、いわば国富に結び付いていないというところに問題がある。
 それはやはりシステムの問題なのか。また、国際社会の競争力の中での問題なのかということもあるが、海外から、研究者がもっともっとやってくる環境をつくらねばならない。また、女性が参加していない。それは事実なのだろうが、そこに新たなフロンティアがあるのも事実だろう。
 こうした点も含め、このイノベーションが日本でどんどん起こってくるように、短兵急に結果を求めてはいけないのだろうが、そういう意味で日本が世界の最高水準のイノベーション国家になるために必要な環境、または基盤をつくっていくために何をすべきかということについて更に議論を進めてもらいたい。
 また、昨日、2025年の日本、このイノベーションの結果どういう姿になっていくかということについて議論をする場であるイノベーション25戦略会議を設け、高市大臣に責任者になっていただいたわけだが、今の段階で20年後を予測して、どういうイノベーションが起こっていくか、また、どういうイノベーションを起こしていくか、そして、どういう社会ができていくかということを今のうちにいろいろとそのときに備えて施策をあらかじめ考えておこう、また、それによってどういう問題が起こってくるかということも踏まえて議論する場を設けた次第なので、また、この総合科学技術会議においても是非議論いただきたい。
 今日、4点の課題について御提示があったわけであるが、是非また更に議論を深めていただくようお願いする。


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