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第61回総合科学技術会議議事要旨


(開催要領)

1.開催日時:2006年11月21日(火)17:33〜18:34

2.場所:総理官邸4階大会議室

3.出席議員

 議長 安倍 晋三 内閣総理大臣
 議員 塩崎 恭久 内閣官房長官
 同 高市 早苗 科学技術政策担当大臣
 同 菅  義偉 総務大臣(代理 田村 憲久 総務副大臣)
 同 尾身 幸次 財務大臣
 同 伊吹 文明 文部科学大臣
 同 甘利  明 経済産業大臣
 同 阿部 博之  
 同 薬師寺 泰蔵  
 同 柘植 綾夫  
 同 本庶 佑  
 同 黒田 玲子  
 同 庄山 悦彦  
 同 原山 優子  
 同 金澤 一郎  
  (臨時)    
 同
松岡 利勝 農林水産大臣


(議事次第)

1.開会

2.議事

(1) 平成19年度科学技術関係予算の編成に向けて
(2) 世界トップレベルの研究拠点づくりについて
(3) 平成18年度における大規模研究開発の事前評価について
(4) 科学技術連携施策群の成果及び今後の課題と進め方(中間報告)について
(5) 諮問第6号「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針の改正について」
(6) 最近の科学技術の動向

3.閉会

(配付資料)
資料1−1   平成19年度科学技術関係予算の編成に向けて(PDF)
資料1−2   平成19年度科学技術関係予算の編成に向けて(案)(PDF)
資料2   世界トップレベルの研究拠点づくりについて(PDF)
資料3−1   大規模研究開発の事前評価結果(案)の概要(PDF)
資料3−2   総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価
「ターゲットタンパク研究プログラム」について(案)(PDF)
資料3−3   総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価
「太陽エネルギーシステムフィールドテスト事業」について(案)(PDF)
資料4−1   科学技術連携施策群の成果及び今後の課題と進め方(中間報告概要)(PDF:336KB)
資料4−2 科学技術連携施策群の成果及び今後の課題と進め方(中間報告)(PDF)
(1)(PDF)
(2−1)(PDF:269KB)(2−2)(PDF:308KB)(3)(PDF)
(4−1)(PDF:498KB)(4−2)(PDF:403KB)(4−3)(PDF:461KB)
(5)(PDF:361KB)(6)(PDF)(7)(PDF)(8)(PDF)(9)(PDF:214KB)(10)(PDF)(11)(PDF)
資料5−1   諮問第6号「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針の改正について」(PDF)
資料5−2   諮問第6号「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針の改正について」(参考資料)(PDF:410KB)
資料5−3   総合科学技術会議 生命倫理専門調査会名簿(PDF)
資料6 最近の科学技術の動向 −ナノテクで紡ぐ高機能繊維−(1)(PDF:457KB)(2)(PDF:427KB)
資料7   第60総合科学技術会議議事録(案)(PDF)


* 議事概要中の資料はPDFファイルです。

(会議概要)

1.議事概要

(1)平成19年度科学技術関係予算の編成に向けて

 予算編成過程が最終段階を迎えるに当たり、科学技術関係の政府予算案作成において考慮すべき重点事項について、資料1−1に基づき、阿部議員から説明し、意見交換を行い、資料1−2の通り決定し、意見具申することとした。本議題における各議員の意見は以下のとおり。

【柘植議員】
 イノベーション創出能力の強化の観点から2点話したい。
 1点目は研究資金配分を担う独立行政法人、いわゆるファンディングエージェンシーの役割と相互連携の強化である。イノベーション創出能力の要は知の創造と社会経済的価値創造をシームレスに結び付ける機動的な研究資金の質と量の両面からの一層の充実である。基礎研究を担うJSPSあるいはJST、応用研究のNEDO等の間の橋渡し機能をますます強化しなければならない。
 厳しい財政事情の下で独立行政法人の経営合理化は必須の命題であるが、特に経済成長戦略実現に資する研究開発予算増加を、運営交付金に対する予算上の制約と切り離す施策が重要。
 2点目は、科学技術イノベーションを社会経済的価値創造という真のイノベーションに結び付けるために社会経済の橋渡し研究開発投資の一層の充実が必要であるということ。世界のフォロアーであった20世紀の日本は、フロントランナーとして未開の市場への橋渡し研究開発投資の重要性の認識が官民ともに薄いという弱点を持っていると言える。
 例えば20年先に予測される生活パートナーロボットと暮らす社会イノベーション、このように白紙に絵をかいて実現するフロントランナー型のイノベーション、イノベーター日本づくり、これを実行するには未開の市場への橋渡し研究開発への投資の充実が必要。第3期基本計画期間中の総投資額約25兆円はイノベーションの源への投資と並行して、このように未開の市場への橋渡し研究開発投資の充実にも振り向ける一種のポートフォーリオ経営の強化が必要だと考える。


【本庶議員】
 武田信玄の言葉に「人は城、人は石垣、人は堀」という言葉があるように、人材育成というものがやはり国家経営の根本であり、この点から見ると最も重要なものは科学研究費補助金の予算である。前回の本会議で報告したように、我が国の競争的資金は金額ベースで米国の10分の1である。科学研究費補助金というのは現在1,895億円の予算であり、本年度211億円の増額要求であるが、これを足しても、実は米国の民間財団の一番大きなビルゲイツ財団とハワードヒューズ財団を足すと2,200億円で、これよりもまだ少ない額である。
 しかも、この内容は本来5年前に付けるべきであった間接経費が付いていない基盤のB、Cにつけるものであり、これらは主として地方の大学とか私学に配分されているので、そういう観点からも非常に重要。
 また、2番目の増額要求は40億円であるが、これは将来の若手を担う優秀な40代前半の人に新しい種目を付けるということであり、この2つの観点から非常に重要な問題だと考えている。総合科学技術会議では、今後とも競争的資金のワーキンググループを立ち上げ、全体的な抜本改革を目指すことも同時に進めている。
 最後に、前回本会議でも触れた大学の教育研究施設の老朽化は、本当に限界に達している。計画的な改善に早急に取り組んでいく必要があるが、優れた人材の育成やイノベーションの創出のための投資として、政府全体の公共投資の中で府省の予算の壁を越えてメリハリを付けて措置することが重要と考えている。


【原山議員】
 予算編成における総合科学技術会議の存在意義について話す。
 実際にこれまでは府省対財務省の構図だったが、それに対して府省対総合科学技術会議が加わった。よって予算編成のプロセスは複雑化し、それに伴ってコストも増加した。だからこそ、それを上回るような効果というものが期待されている。
 それに対して、単に財務省に代わって予算をスクリーニングすることが我々の役目ではないし、またお墨付きを与えるものでもない。では何かといえば、科学技術予算の全体像を把握した上で個々の概算要求をチェックするということであり、それは近視眼的な査定を避けるということが1つ。
 もう一つは、府省の枠を超えたプロジェクトを誘導するということも役割。
 3つ目は、政策課題型の部分とそうでない部分のバランスをどう取るかということが我々の課題だと思う。
 そういう視点から、今年度このプロセスを行っている最中であるが、どこまで実践できたかということを皆さんに判断してもらいたい。
 それから、府省の枠組みを超えたプロジェクトに関して、予算面でとりまとめることは一つの初めのステップであって、それだけでは十分ではない。それを具体的なプログラムに落とし込んだときに府省間の縦割りが再度頭をもたげてくる可能性が非常に大きいわけで、その後のフォローアップが非常に大事。
 そして、後ほど議題4で出てくる科学技術連携施策群というものがあるが、その試みというのはこれらのことを実践したときに直面した課題の分析を含めて、ここから学ぶことが大きいというのが私の考え。


【庄山議員】
 国のこの積極的な研究開発投資の姿勢が民間の投資にもよい影響を与えており、先月英国貿易産業省から発表された世界トップ企業1,250社の中に日本は約230社入っているかと思うが、その研究開発投資額の統計では日本企業の研究開発投資は昨年に比べて約4%の伸びということになっている。
 一方、世界の1,250 社の全体では対前年度比7%増という形になっており、更に民間企業の研究開発投資を増やさなければならないが、中でも韓国、台湾などの東アジアは10%を超えるという勢いであり、民間におけるイノベーションに向けた世界競争が激化しているということを如実に物語っている。
 ここで基礎研究が主な対象となる政府の研究開発投資については、先進国の中で必ずしもGDP比率は上位ではないが、適切な政府の科学技術への先行投資というものは経済発展への好循環をもたらすものであると思っている。今回国民に還元する科学技術という旗印の下で、この3月に戦略重点科学技術を決めて重点化を進めてきたが、是非この重要な施策の部分についても政府の十分な投資をお願いしたい。
 また、第3期の科学技術基本計画では5年間の研究開発投資規模25兆円とを示したわけで、今後新たにスタートしたイノベーション25などの実現に向けて、前倒しにできるものは柔軟に先行投資をしていくことなどで活力のある日本のイノベーションを進めていきたい。


【金澤議員】
 前の柘植議員と、今の庄山議員がおっしゃったこととほとんど変わりませんから一言だけ。
 イノベーションに関して今、学術会議で議論をしておりますので、多分一部まとまってくると思いますので、それを是非実行の方向に乗せていただきたい。


【尾身議員】
 科学技術は明日への投資であるので、資源の乏しい我が国が今後とも成長を維持するためには、独自の優れた科学技術を築いて科学技術創造立国を目指す必要がある。そうした観点から、科学技術予算についてはこれまでも各分野で予算削減が行われている厳しい財政事情の中、例外的に伸びが確保されてきた。
 他方で、重複投資の排除の必要性や研究費の不正問題を踏まえると、選択と集中を強化しつつ、科学技術予算の一層の質的な向上を図るための努力を着実に進める必要がある。
 歳出、歳入、一体改革に向けて19年度予算は全体として厳しい姿にならざるを得ない中で、科学技術予算についてはこうした予算の全体像とも整合性をとりつつ、真に必要な経費の確保を図りたい。


【甘利議員】
 第3期科学技術基本計画の25兆円の目標に向けてこれから科学技術予算を増やしていく中で、イノベーション創出のために研究開発独法の位置付けをどうすべきかという議論を真剣にしなければならない。前回もここで申したが、独法について予算制約が一律にかけられており、研究開発独法まで同じようにその制約を課すのはいかがなものか。
 研究開発予算をいくら増やしてもらってもNEDOのような研究開発独法について予算を増やせないということになれば、本省自らが直接執行しなければならないということになってしまう。
 しかし、経済産業省の場合は5年前にそういった執行業務はすべて本省からNEDOにアウトソーシングしているので、実際はかなり無理やりやるわけである。これは非効率であり、かつ研究を行う企業、大学にも不便をかけることになる。
 研究開発独法であって、成果が上がっているところについては弾力的な運用を考えるべきだと思う。


【伊吹議員】
 文部科学省関係では約2兆6千億円の概算要求をしている。これは昨年度に比べて約2,800億円増だが、優先順位付けの結果も踏まえて、第3期科学技術基本計画の着実な実施に向けて努力をしたい。また、議員の先生方の意見を拳拳服膺してしっかりとした査定をしていただきたい。


【松岡臨時議員】
 現在、我が国の農林水産業は従事者の減少や高齢化、グローバル化の進展など、大きな転換期にあるが、こうした変化に対し、世界に冠たる日本の農林水産業の実現のため、攻めの姿勢で取り組んでいるところ。
 具体的には、我が国の農林水産物や食品が有するおいしさや品質のよさといった強みを生かした輸出の増大、従来の食料等の生産の枠を超えて農林水産業の新たな領域を開拓する国産バイオ燃料などバイオマスの利活用、担い手の育成・確保と国内農業の体質強化等の施策を推進することとしている。
 こうした施策の基礎となる農林水産分野の研究開発、例えば稲わらや木質バイオマスから効率的にエタノールを生産する技術、大量にエタノールを生産する資源作物の開発等について積極的に取り組みたい。
 このような農林水産分野におけるイノベーションの創出については、ゲノムを中心としたライフサイエンスを中核にITやロボット等、異分野の研究成果も広く活用してこれを加速化したいと考えている。


【田村総務副大臣】
 我が国の経済の発展を牽引する上で、情報通信は非常に重要だと思っている。情報通信産業全体で、大体115兆円、更には雇用者で380万人と言われているが、GDPの成長を見るとここ数年の経済成長のうち、4割くらいがこの情報通信産業に絡むものだと言われている。該当の部分の投資、研究開発について、是非とも今回の科学技術関係予算の中に反映をしてほしい。
 あわせて、先ほども話があった今年のSABCについて、SとAの合計額が昨年を上回ったとのことだが、一方で予算は歳出の方を抑制していく流れである。
 そこで、重点化促進加算というものがあるわけで、この重点化促進加算枠をこの分野にも利用してもらいながら、科学技術のしっかりとした将来に向かって、基礎的な予算付けをお願いしたい。

(2)世界トップレベルの研究拠点づくりについて

 資料2に基づき、本庶議員より、総合科学技術会議有識者議員がとりまとめた、世界トップ拠点づくりを進めるにあたって考慮すべき事項について説明し、意見交換を行った。本議題における各議員の意見は以下のとおり。

【本庶議員】
 人類の社会生活に革命的変化をもたらすようなイノベーションの源となる基礎研究の発見というのは、偶発的、散発的に生ずることもあるが、比較的まれである。多くの場合、世界トップの人が集まる研究拠点を中心とした脈々とした人脈、学問の系譜でつながって、そういうところから出てくるということが多い。
我が国では、ほとんど個人の努力によって世界のトップに到達した研究者が大学を中心に散在的に存在しているというのが現状。
 例えば、ある大学においては、いわゆるトップの人がライフサイエンス分野で20人、学内のいろいろなところにいる。また、同じ大学で材料科学分野でトップくらいの人が十数名、またそこの大学にはほかの分野でも数学者を含め、優れた人がいる。
 しかし、この3分野のトップを新たな拠点に集めて強力なリーダーの下に切磋琢磨させることで自然と新しい融合領域の拠点が形成され、そこに周辺のトップの方が集まり、世界の人材が寄ってくる。そうして、既に存在している世界の拠点と人的ネットワークでつながって次々と革新的な基礎研究の芽を絶やさずに育てていくということが可能になると思う。
 このようなことを期待する拠点の仕組みについては、資料2に書いたが、人事制度や給与体系など、既存の大学のルールにとらわれない新しいシステムの導入が必要。世界的に著名な研究リーダーに全面的な決定権を与え、またバイリンガルの事務職員を雇用する必要がある。外国人教員、留学生がこぞって集まるような拠点形成のためには単なる研究費の支援ではなくて、システム改革とインフラ整備のために多額の資金が必要となる。
 このような拠点のための分野の選定や選考過程の透明化に向けて詳細な外形的基準を設定するといったことを、今後とも総合科学技術会議のリーダーシップの下で引き続き早急に検討を進めていきたいと考えている。


【薬師寺議員】
 我々が考えている世界拠点は、香港が50年間1国2制度で動いているが、そのような考えで、世界拠点も1大学あるいは1機関の中で2制度があると考えている。世界から見える窓にするためには、2制度の中で研究特区にする必要がある。
 特区のよいところは、地方公共団体が申請競争をするところであり、地域が活性化すること、あるいは将来の道州制のような議論にもプラスになることだと思う。
 ただ、大きな1制度である大学や研究機関が一緒に伸びないと、一つの異なった制度の足を引っ張る。そうならないために、大学や研究機関は伸びなければならないので、文部科学省が考えているグローバルCOEというものは、大変重要。世界のトップ拠点なので、世界の窓として外国と比較しながらリファインをして評価していかなければいけない。


【黒田議員】
 現場の意見として、海外の大学に10年以上勤め、現在も現役で大学で教育と研究をしているので、海外と日本の大学院の違いをひしひしと感じている。以前も話したが、ポスドクマップに日本の研究室や大学が載っていない。
 これは、欧米、恐らく中国などでもそうだと思うが、優秀な大学院生が博士号を取った後にどこでポスドクをやろうかと夢を持って考えている。それは、その分野で世界的に著名な研究室ということになるが、日本では優れた仕事をしている大学の先生は少なからずいるものの、このマップに載る人はそれほどいない。これはどうしてなのかということを考えなければならない。
 国際学会においても、例えばMITとかハーバード、ケンブリッジ大学の出身の者は(大学院あるいはポスドク)、同じ研究室の出身者が集まって親しくなって情報交換をする。どこの研究室に属したかということが質の保証になっている。国籍はさまざまである。実は、この人脈が非常に重要であり、優れた研究室には自然に優秀な人が集まってくるようになっている。
 このような場所を日本の大学に是非つくらなければいけない。グローバルな知の競争時代が始まっているというときに、日本の国内で足の引っ張り合いをしている余裕はない。世界に目を向け、10年先を見越した世界トップレベルの研究拠点をつくって欲しいが、準備には時間がかかる。
 予算というのは大体1年目に大きな額が付いて、だんだん少なくなっていくが、準備には時間がかかるため、それでは問題がある。特区として海外の制度をそのまま持ち込んでもうまくいかないかもしれない。
 また、優れた数少ない研究者が突出している分野がある一方、多くの優れた研究者が日本のあちこちの大学に散在している分野があり、分野による違いもある。
 優秀な海外の研究者が来るのにも時間がかかるということで、形だけは整っているが内容は粗末な世界拠点はつくらないでほしい。予算措置も柔軟に、期間も柔軟に、制度改革と同時に進め、是非世界に通じる拠点をつくってほしい。そして、大学、大学院教育の基盤となる初等・中等教育の充実も忘れず、いいものをつくってもらいたい。


【阿部議員】
 第3期基本計画では拠点を30程度と書いてあるが、限られた予算であるため、初年度は数件だろう。そのときに、やはり海外から見てなるほどと思うところにつくっていかなければいけない。これがモデルになる。世界中でいろいろな指標が出ているが、海外から見てどういうところが優れているかということははっきりわかる状況だろう。
 2番目は、現在は本当のトップになっていないが、何年か後、10年後に日本として頑張ってトップになる、あるいはなったところがその時点でアプライできるような道を残してもらいたい。
 3番目は、若干反することかもしれないが、例えば日本の化学がなぜ強いかというと、10くらいの大学が長年にわたって競争をしてきた結果である。ノーベル賞受賞者が何人か出ているといった結果として表れているのだが、いい意味での競争環境というものを壊さず、拠点は拠点でつくっていくということを考える必要がある。


【田村総務副大臣】
 モバイルや光の分野で情報通信分野は非常にポテンシャルを持った分野である。そういう分野も含めて、いろいろな意味で世界中の知恵を集めて、日本が更に強い競争力を持っていくことが非常に重要。
 私が文部科学省にいたときの日中科学技術セミナーで、人材の話が出た。日本に来るのだが、なかなかポジション的にきちんと評価をされず、中国に帰ってしまう。すると、中国で上の方に行けない。結局、何かあったときに親日派の人たちが中国で育たない。ちょうどITERを日本に誘致するということでフランスと取り合いをしているときだったが、そういう意味ではこのような世界の知恵を集めて日本で研究をしていく、そういう拠点をつくり、その中でそれぞれ海外から優れた知を持った方々が相応の評価をされることが大変重要なことであり、国際戦略的にも意味がある


【松岡臨時議員】
 我が国の基礎研究機能を強化するために適切な分野を選んで、大学を中心とした世界トップレベルの研究拠点づくりを行うことは大変意義深いこと。農林水産分野の研究開発型独立行政法人もこれらの拠点と緊密な連携を図り、成果をイノベーションに結実させるべく、積極的に参画したい。
 また、こうした世界トップレベルの研究拠点は、将来的に科学技術力の基盤となる人材の供給源となることが期待できる。これらの拠点との積極的な連携により、農林水産分野における研究のレベルアップにも努めたい。


【伊吹議員】
 本庶議員の提案と文部科学省は同じ問題意識を持っている。来年度は76億円の予算要求をしているが、トップレベルの研究拠点というものをつくるためには、まず研究者を従来のいろいろなしがらみではなくて世界各国に公募をする必要がある。
 それから、来た人たちに研究のしやすい支援をする必要がある。英語で当然研究ができなければならない。いろいろ留意すべきことはあるので、予算が付いたら、いろいろ現場の声を聞いてよいものをつくっていきたい。


【甘利議員】
 イノベーションというのは既存の技術の延長線上にはなく、基礎にさかのぼった研究とか、異分野の技術の融合によってのみ生じてくるものであるという議論があった。産業技術総合研究所(産総研)では、現在は旧工業技術院の採用よりも新採用、その中でポスドクや外来研究員が極めて多い組織であり、産業や社会のニーズをつかまえつつ基礎から応用まで、また異分野の研究者の融合によって構成されている組織であり、融合的な研究を行って成果を上げている。
 先ほどの拠点づくりについて、こうした産総研の例を参考にしてもらったらいいと思う。


(3)平成18年度における大規模研究開発の事前評価について

 柘植議員より、平成19年度に予定されている大規模研究開発「ターゲットタンパク研究プログラム」及び「太陽エネルギーシステムフィールドテスト事業」についての事前評価について資料3−1に基づき、説明があり、資料3−2資料3−3の原案どおり決定し、総合科学技術会議から内閣総理大臣及び関係大臣に対し意見具申することとした。 


(4)科学技術連携施策群の成果及び今後の課題と進め方(中間報告)について

 柘植議員より、基本政策推進専門調査会においてとりまとめた、連携施策群の成果及び今後の課題と進め方(中間報告)について、資料4−1に基づき、説明があり、高市議員より、今後、イノベーション創出の加速化などの観点から、本制度を更に活用し、各部署、分野を超えた取り組みを進めていく旨の発言があった。 


(5)諮問第6号「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針の改正について」

 資料5−2に基づき、伊吹議員(文部科学大臣)より、資料5−1の諮問第6号「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針の改正について」の説明があり、高市大臣より、資料5−3にありますメンバーから成る生命倫理専門調査会において調査検討を遅滞なく進め、その結果を踏まえて総合科学技術会議で審議、答申していく旨発言があった。


(6)最近の科学技術の動向

 資料6に基づき、阿部議員より、ナノテクで紡ぐ高機能繊維について説明。


2.安倍議長(内閣総理大臣)しめくくり発言


【安倍議長(内閣総理大臣)】
 毎回、この会議の最後のプレゼンテーションを大変楽しみにしているが、科学技術というのは、ここまできたらなかなかこれ以上いかないな、と思っていると、ナノテクも更にイノベーションの力で進化しているんだな、ということを改めて認識した。今までの常識を変えていき、今までのものをどんどん代替をしていくということなんだろう。今後ともこういう得意分野は更に強くしていかなければいけないわけだが、そこに安住することなく、更にイノベーションにつなげていかなければいけない。
 一方、不得意な分野と言えば、先ほど拠点の話があったが、日本はこれがなかなか開かれていないのではないかと思うが、イノベーションとこのオープンネスが私の内閣の一つの大きなキーワードでもある。拠点づくりのためにも、先ほど有識者議員から話があったが、海外の研究者が、日本に行けばチャンスもあるし、いろいろなことも達成できるし、先の人生を考えても自分の人生も充実する、そういうことも含めて、総合的な環境整備というものがやはり大切だろう。
 ただ予算を付けるだけではなくて、いろいろな仕組み、制度等々についても全般的な見直しも大切だろうし、また日本に来ている方々、あるいは来ようと思って躊躇している方々から、なぜ日本ではなかなかうまくいかないのだということをいろいろとインタビューして聞いてくるということもよいだろう。そういう意味で、海外からどんどんすばらしい人材が集まってくるように、我々もしっかりと環境づくりのために力を入れていきたい。
 また、海外からの人材とともに、まだまだやはり女性の進出が遅れているのも事実なので、新たなフロンティアとして外国の方々、あるいは女性がどんどんこのイノベーションの分野に進出をし、日本で活躍するという環境づくりのためにも力を入れていきたい。
 また、先ほど予算についての説明があった。なかなか難しい財政状況だが、科学技術分野、イノベーション分野の予算は明日への投資であることは明確なので、メリハリを付けながら世界に誇れる科学技術予算を編成していかなければいけない。もちろん重複等を排除して徹底的に効率化、合理化を図っていくことは言うまでもないが、この分野については是非力を入れていきたい。



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