総合科学技術会議の概要
メンバー構成
総合科学技術会議(本会議)
専門調査会
答申・決定・意見具申等一覧
パブリックコメント
大臣・有識者会合へのボタン
有識者議員の活動報告へのボタン
その他
科学技術政策ページの項目
科学技術基本計画
科学技術関係予算について
組織案内
パンフレット
5分でわかる最新の科学技術
科学技術政策トップページへ

第74回総合科学技術会議議事要旨


(開催要領)

1.開催日時:2008年4月10日(木)17:30〜18:30

2.場所:総理官邸4階大会議室

3.出席議員

 議長 福田 康夫 内閣総理大臣
 議員 町村 信孝 内閣官房長官
 同 岸田 文雄 科学技術政策担当大臣
 同 増田 寛也 総務大臣(代理 佐藤総務副大臣)
 同 額賀福志郎 財務大臣(代理 遠藤財務副大臣)
 同 渡海紀三朗 文部科学大臣
 同 甘利  明 経済産業大臣
 同 相澤 益男  
 同 薬師寺泰蔵  
 同 本庶 佑  
 同 奥村 直樹  
 同 郷  通子  
 同 榊原 定征  
 同 石倉 洋子  
 同 金澤 一郎  
(臨時議員)    
議員
若林 正俊 農林水産大臣
議員
鴨下 一郎 環境大臣(代理 桜井環境副大臣)

(議事次第)

1.開会

2.議事

(1) 革新的技術戦略中間とりまとめ
(2) 環境エネルギー技術革新計画中間とりまとめ
(3) 科学技術外交、科学技術振興調整費の配分方針等について
(4) 最近の科学技術の動向「情報爆発時代に向けた省エネルギー技術」

3.閉会


(配付資料)
資料1−1   「革新的技術戦略」中間とりまとめ(PDF:310KB)
資料1−2   革新的技術戦略中間とりまとめ(PDF:364KB)
資料2−1   「環境エネルギー技術革新計画」環境エネルギー技術革新計画WG中間とりまとめ(PDF)
資料2−2   環境エネルギー技術革新計画中間とりまとめ(PDF)
資料3−1−1   科学技術外交の強化に向けて(中間とりまとめ)(PDF)
資料3−1−2   科学技術外交の強化に向けて(中間とりまとめ)(PDF:500KB)
資料3−1−3   科学技術外交を強化するための政府の具体的な取組について(PDF)
資料3−2−1   平成20年度の科学技術振興調整費の配分方針(PDF)
資料3−2−2   平成20年度科学技術振興調整費による「重要政策課題への機動的対応の推進」課題の指定について(PDF)
資料4   最近の科学技術の動向「情報爆発時代に向けた省エネルギー技術」(PDF)
資料5   第73回総合科学技術会議議事録(案)(PDF)

* 議事概要中の資料はPDFファイルです。


(会議概要)

1.議事概要

(1)革新的技術戦略中間とりまとめ

 「革新的技術戦略中間とりまとめ」について資料1−1(PDF)に基づき、相澤議員から説明。

(2)環境エネルギー技術革新計画中間とりまとめ

 「環境エネルギー技術革新計画中間とりまとめ」について資料2−1(PDF)に基づき、薬師寺議員から説明。


  議題(1)、(2)に関する議員の意見は以下のとおり。


【石倉議員】
 自動車やエレクトロニクス関係で、環境やエネルギー分野で世界に向けたプラットフォーム提言の可能性を申し上げたい。
 私は「カーナビ業界ノート」をハーバードのポーター教授と書き、それが今世界で使われているが、カーナビ業界は日本がこれまで圧倒的に世界のリーダーだった。それは、パナソニック、パイオニア、デンソー、アイシンAWと非常に強い企業が競争し、ナビがないと日本では車が走れないというニーズもあり、官がインフラを整備したことによっている。しかし、カーナビは今非常に危うい地位にある。それは、これまで使われてきた固定式で詳細なディスプレイを持つナビのニーズが日本に限られていて、ヨーロッパ、アメリカでは、もっと簡単なナビが求められ、さらに安全・安心というニーズが自動車に関しては高いからである。特にヨーロッパでは、企業と官が協働して共通のプラットフォームを作ろうという動きになっている。
 ここまで築いてきた日本の地位をいかし、日本の優れた技術で世界に貢献するためには、これをインテリジェント・トランスポート・システム(ITS)と位置づけ、環境やエネルギーの分野における共通プラットフォームとすればいいのではないかと考えている。ナビの用途だけではなく、センサーとして用い、自動車の制御に結びつけると、省エネにもなるし、燃費も改善される。CO2ももちろん減るし、交通事故が減る。
 安全・安心にもつながるし、快適にもなる。ハイブリッドなどで知られている日本の自動車業界が、従来型の囲い込みではなく、最近世界の流れになっているオープン・システム・イノベーションに向かう一つのきっかけになるとも期待されるため。
 当面、洞爺湖サミット等がある中で、環境やエネルギーの世界的なプラットフォームを日本から提案するという意味でもいいのではないか。特にITSは、民間企業が中心になり、官も4省庁が一緒になってやっているので、官民協働という点でも良いと思う。実際にこういうことが起こっているというプロセスを私も研究して、世界に伝えられる。


【榊原議員】
 私からは革新的技術戦略と本日この後議題に上がっている科学技術外交について、産業界の立場から一言申し上げたい。
 総理は施政方針演説の中で、革新的技術創造戦略を展開して、これからの日本の成長を支える研究開発に重点的に予算を配分すると述べられた。産業界としても、この方針を強く支持しており、できるだけ早い段階からこれに参画して他国の追随を許さない革新的技術を作り上げたいと考えている。そういった中で、我が国の科学技術関連予算だが、第三期科学技術基本計画の中で、5年間総額25兆円という目標を掲げているわけだが、御案内のとおり、現実は平成18年度以降、年間4兆円程度で推移をしており、総額25兆円の実現は大変難しい状況にあるという認識。
 総理が施政方針演説で述べられた趣旨に沿って、革新的技術戦略を推進するために、先ほど相澤議員から説明があったが、この研究資金は、ぜひ特別に現予算の別枠の増分として設定をしていただきたい。
 それから、研究推進に当たりましては、府省の枠を越えて連携できるよう総合科学技術会議が総司令塔としてオールジャパンの統合的な運用をしていきたいと思っているので、総理の一層の御配慮をお願いしたい。
 それから、科学技術外交だが、総理は先のダボス会議で国際環境協力を御提案された。日本の産業界が保有する高度な環境関連技術は今度の洞爺湖サミット、あるいはG8科学技術大臣会合などでも日本が誇る最も強い外交カードの一つとして、科学技術外交の目玉になるものと考えている。先日は、岸田大臣が日本経団連と会合され、産業界には国際貢献の一環として環境技術の提供をしてほしいという要請をいただいた。日本経団連としては、一定の条件が満たされれば積極的に協力していきたいという旨を申し上げた。
 一定の条件とは、一つは知的財産権の保護、もう一つは正当な対価である。科学技術外交で地球規模の課題に取り組む際には、相手国との長期的視野に立った相互受益システムを構築する必要があると考えている。産業界は今後ともこういった活動に積極的に参加していきたいと考えているので、よろしくお願いしたい。


【奥村議員】
 革新的技術について、個々の課題を伺うと、産業界のみならず、日本でこれを達成しようとすると、これぐらい高いハードルの技術はない。したがって、取り組み方も従来と変えて取り組まないと確実に成果を刈り取ることは極めて難しい。まず1つは、対象の技術領域が広く、成果を得るまでに時間がかかる。したがって、革新的技術だということで、特別な取り組みが必要で、そのための資金の確保が必要だろうと思う。ただし、この資金をより効率的に使うために、産業界との連携が必要。日本の科学技術が他の先進国と違うところの1つは自分で負担した資金を自分のところでほとんど使うこと。つまり、産業界は自らが負担し主に自らが使う、国は国が負担して、主に大学や研究独法が使うという構造で、お互いに独立していることが先進諸国と非常に違う。産学官の間で人材の流動性だけでなく、研究資金の流動性も極めて乏しい。やはりこれを破っていかないといけない。具体的には企業がより国費の研究に参加することも並行して検討していく必要があると考える。


【本庶議員】
 私は革新的技術の種のところを少し申し上げたい。今回、相澤議員から報告したように、種とは人材育成と基礎的な研究費の2つのことが大切。やはり若者が科学者に憧れて、科学者になりたいと思うようなインセンティブを社会に組み込むことが非常に重要だと思う。残念ながら、今日、大学教職員の給与というものは、企業の事務系よりも低く、業績に関係なく年功序列で決められる、極めて残念な状況。若者が人生の進路の選択に当たり、科学者への尊敬の念だけではなく、努力すれば、経済的にも報われることを示すロールモデルを提示してやらないと、なかなか難しいのではないか。
 例えば、大学院学生は、ごく一部しか奨学金がもらえていないし、返還義務がある。3年間博士課程に行くと、534万円の借金を背負うことになる。事実、返還が教職員に免除される制度が平成16年に廃止された直後から大学院学生博士課程理工系がどんどん低下しており、平成15年1万2,000名ばかりいたのが現在は1万1,000名、19年までのわずか4年間で8.5%の減少と、非常に顕著な差になっており、大学院生へのしっかりとした経済支援なくしては日本の科学技術の未来は暗いと言わざるを得ないと思う。
 次に基礎的な研究費だが、チャレンジングな機会を若者に与えることと。その中から成果が出たものをさらに伸ばす、こういう基礎的な研究費を伸ばすということが、本当に革新的技術の種を生む基盤となるわけである。最も中心的な科研費は、2008年度予算で2,000億円。我が国の科学技術予算が3兆5,700億ということを言われたが、一方米国では防衛費を除いた総科学技術予算が6兆7,000億円ぐらい。そのうちの基礎的な研究費を配っているNIH、NSFは3兆4,000億。私は科研費の投資効果を考えると、少なくとも10年で倍増すべきだと考える。


【郷議員】
 科学技術を背負う未来の若い人たちを育てるためのスーパー・サイエンス・ティーチャーの提案を1月にさせていただき、渡海大臣にはこれを受けとめていただき感謝する。
 先ほど大学院生のことを本庶議員がおっしゃったが、中学の2年生の理科を教えている教員の最終学歴がどうかということのデータがある。2003年のデータなのでちょっと古いが、あまり変わっていないと思う。日本は大学学部しか卒業していない人が90%。修士課程、あるいはドクターまで行った人が9%で非常に少ない。これはエジプト、あるいはフィリピンと同程度。アメリカでは、逆に40%が大学学部で60%が修士以上を出ているので、大きな違いがある。韓国ですら、大学を出た人は75%、修士以上は25%。このことは、何を意味しているかというと最先端の理系の知識、あるいは考え方、あるいは発見の喜びというものを味わった人が、子供たちに理科ってこんなにおもしろいんだということを伝えていないのだと思う。これも日本の教員免許の問題として考えていかなければならないと思う。


【金澤議員】
 この3日間、学術会議の総会があり、その中で出てきた非常に深刻な問題を2つお話ししたい。
 1つは大学や独法が悲鳴を上げている理由の一つに、もちろんこれは運営費交付金の低下ということはあるのだが、それは別として、ジャーナルのお金が極めて高くなってしまったという現状があり、維持できなくなりつつあることを盛んに言われた。特に外国のジャーナル。これは、情報源としても極めて大事なもの。
 ジャーナルとは学術雑誌と言ったらいいのか、文科系のものであっても理科系のものであっても、すべて。

【福田議長(内閣総理大臣)】
 なぜ高くなったのか。

【金澤議員】
 要するに印刷物をやめて電子媒体になりつつあるが、そうすると、会社は企業だから、顧客を増やす努力はするが、どうしても一つ一つの価格を上げないといけない。そうすると、個別に契約を結ぼうとする。したがって、大学は大学として一致してやるが、それでもなお、相手は企業だから大変難しい状況で、対抗できなくなっている。だから、国レベルで少しきちんとした対応をしないといけないと思う。
 もう一つは、研究材料。リサーチリソースと言うが、これを維持していくためには、相当な資金が必要。文部科学省などから5年ぐらいはサポートしてもらっているが、競争的資金ではなかなかやりにくい状況。対象にどのようなものがあるかというと、例えば遺伝子や動物の種(しゅ)。そういう生物学的なものばかりでなく、情報もそうだし、場合によっては文科系の文献などもそう。つまり、そういう資料を長年にわたって維持し続けるということが極めて難しい状況にある。これは非常に深刻な問題で、今で言うと、5年間遺伝子などの資料をサポートしてもらったが、これは第二次までは続けてもらったが、その1年目だが、その次がもうないと言われている。維持できなくなってしまう。研究というものは、研究材料がきちんと手に入れば、8割は完成だと言われるぐらい、研究の対象資料が非常に重要なわけだが、それを維持しにくくなっている状況がある。
 この2つだけ申し上げておく。


【渡海議員】
 まず革新的技術戦略だが、文部科学省としては、iPS細胞、再生医療技術はまさに革新的技術であると認識しており、研究体制の構築など、この戦略の推進を図っているところ。また国家基幹技術、具体的には例を挙げないが、先ほどから投資の話が随分出ているが、国家の財政も非常にきついので、選択と集中が非常に大事になってきていると考えており、それをどうやって見きわめていくかという体制なり、総合科学技術会議の果たす役割というのは非常に大きいと思うので、よろしくお願いしたい。
 それから、人材がベースなので理科教育の充実や、また基礎研究の充実と成果を次の段階に発展させるという仕組みをしっかり作っていきたいと思っている。最高水準を目指していかないと、日本は創造立国として成り立たないと考えているので、この成果の創出の基盤をしっかり作っていく。環境を作るということも大事であろうと思う。具体的な話も今出ていた。いろいろな意味で研究をしていく上での基盤の充実、または競争的資金の問題、こういったものをしっかりやっていきたいと思っている。
 環境エネルギーだが、各議員もお話しになったように、我が国の科学技術のポテンシャルを最大限に引き出すことが大事であるし、また優位な分野が随分あると考えている。2050年までの計画も大事であるし、これには技術の創出と人材の育成が不可欠であると考えている。高速増殖炉技術を始め、大学や公的研究機関の研究開発を総動員して新しい技術を実現をしていく。例えば非常に高い温度で発電すると、CO2が120万キロワットで今のところ0.4%ぐらい下がるという実験もNEDOでやったが、こういうことをしっかりとやっていきたいと思う。引き続き、地球環境や気候変動、これは我が省がやっていることであるから、しっかりとやって、研究者にデータを配給していく。それから開発途上国へもしっかりとそういうことをやっていきたいと思っている。
 最後に1つだけ。奨学金の話があった。いろいろと調べているが、因果関係が正直わかりにくい。今落ちている傾向は、景気が回復したという一面もある。実は、上が見えにくいので、上へ行かないで民間企業へ流れている傾向のほうがむしろ強いと思う。奨学金の仕組みにはいろいろと考えるところがあるので、検討課題とはさせてもらいたいと思うが、今までリサーチしたところによると、単に返す仕組みをなくせば行くという形でもないという印象。


【若林臨時議員】
 2つのことを申し上げたい
。  先ほど相澤議員がおっしゃった安全保障に係わるが、革新的技術戦略において、食料の安全保障の確保は、我が国の安全保障上も重要な課題。世界的にもそうだと思う。このため、輸入に多く依存している麦や大豆を中心に、イネゲノムの研究成果を利用した優れた品種の開発を行って自給率を高めていく。
 もう一つは、実は我が国が世界に先駆けて種苗の人工生産を実現したウナギやマグロの養殖技術の開発を進めることで、農林水産分野においても、世界トップレベルの技術革新に取り組み、その成果を我が国農林水産業の体質強化と競争力強化に活用していく。このウナギ、マグロについて言うと、シラスウナギの人工生産には世界で初めて成功し、ウナギの完全養殖のための技術開発を推進している。マグロでは完全養殖に成功しており、実用化に向けて、さらに効率的な種苗生産の技術開発を進めている。アジやサバなどの異種の魚類に例えばマグロを生ませる仮腹技術の開発も行っている。また、環境エネルギー分野についても、我が国が森林国であることを踏まえて、食料と競合しないバイオマスの開発を進めている。世界的にも食料との競合は問題になっており、食料と競合しない間伐材や稲藁などの利活用技術の開発を進めている。併せて、途上国の乾燥や塩害に強い樹木や作物の開発などにも取り組んでいる。これらの技術は我が国の低炭素化社会の実現に寄与するとともに、食料の供給にも配慮しながら、国際的な温室効果ガスの削減にも貢献できると考えており、積極的な研究開発を推進していく必要がある。


【甘利議員】
 まず革新的技術戦略について、技術革新を加速し、活力ある経済社会を作り上げていくためには、出口を見据えた研究マネジメントと成果の社会への普及、この2つが非常に重要。そのためには、技術の進展に併わせて、社会の規制や制度のあり方を変えていくことが必要。戦略で言及されている規制の特区的運用は有用な施策であり、ぜひ推進すべき。
 府省協議会について触れられているが、例えば各技術について、幹事省庁を特定し、関係府省、産業界とともに、研究開発成果が社会に活用されていくまでの工程表を作成して、この場にも報告するなど、早い段階から関係者の認識を共有していくことが重要。
 なお、その際、周辺特許も含め戦略的に知財を取得することができるよう、専門人材を研究開発現場に投入するなど、出口を見据えた取組の充実を図ることが必要。
 つぎに、環境エネルギー技術革新計画について、2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を半減するためには、世界最高水準の技術を一層高めるための取組を加速することが重要。このため、経済産業省としても、先月初めにエネルギー分野において太陽光発電や、革新的製鉄プロセスなど21の革新技術とそのロードマップを示したクールアースエネルギー革新技術計画をとりまとめた。今般、環境エネルギー技術革新計画においても、この21の技術を核としてとりまとめていただいたことは非常にありがたいこと。今後は、これらの技術について、各国ともロードマップを共有することを始めとして、国際連携を推進することが必要であり、経済産業省としても、本計画の実効を上げるように精力的に取り組んでいきたい。


【遠藤財務副大臣】
 先ほど渡海大臣からも財政の厳しさを言及いただいた。いかに日本の財政が厳しいか皆様よく御承知かと思うが、かといって日本の将来を考えれば、やるべきことはやらなくてはならない。特に成長力の強化、イノベーション、その要素となる革新的技術戦略、極めて重要な問題だと財務省もよく認識をしている。したがって、無駄や非効率、優先順位の低いものは極力削ぎ落とし、本当に必要なところへ資源を重点的に配分するという精神で予算配分をしている。
 科学技術予算については、厳しい財政事情の中で、他の経費がマイナスになっている中で、科学技術は着実に拡充を図っているところ。今回、革新的技術戦略でも取り上げられたiPS細胞研究や、次世代スーパーコンピューターなどの国家基幹技術については、平成20年度予算においても重点的に予算をつけている。数字を申し上げると、iPSについては、前年度10億円が今年は20億円。また次世代スーパーコンピューターについては、前年度77億円が新年度145億円で、いずれも倍増ということであり、ぜひ財務省がいかに真剣に考えているかということを御理解いただきたい。
 今後、こうした革新的技術の研究開発を推進していく上において、財政を徹底的に選択と集中で推し進めることが不可欠であると考えている。
 優先順位付けのあり方については、一層厳格にやるべきであり、メリハリのある予算配分が可能となるよう、特に総合科学技術会議においては、リーダーシップを発揮していただくように強く期待をしているところ。


【桜井環境副大臣】
 今年は環境関係が非常に重要なことだろうと思っている。特にIPCCにおいて、気候変動に関する世界中の専門家の科学的知見を集約した結果、地球が温暖化しているということは疑う余地もない。その結果、気候変動問題が地球の直面している最も大きな社会経済の安全保障の課題となっている。この人類最大の危機を乗り切るためには、技術開発、優れた技術の普及が不可欠だと思う。
 環境省としては、食料と競合しないセルロース系の資源廃棄物からのバイオ燃料の製造と利用に係わる技術開発、あるいは地球環境の観測や気候変動予測などによるIPCC第五次報告に向けて一層の貢献をしていきたい。そして再生可能エネルギーの導入拡大。このような分野の開発に関係府省と連携して一層努力する考えである。
 技術開発に加え、その普及促進が温暖化対策の鍵だと思っている。社会システムの改革に向けて議論をさらに深めていけたらと思っているので、よろしくお願いしたい。


【佐藤総務副大臣】
 細かい話で恐縮だが、総務省所管のNICTという研究機構において、立体映像の技術開発を進めている。眼鏡をかけて立体映像を見るという技術があったが、眼鏡をかけなくても立体映像を見られるという技術。何に利用できるかというと、まず医療分野に利用できる。また、シミュレーション、遠隔地の共同設計、例えば自動車の精密機械の設計試作を離れているところでもお互いに設計できる等々もある。一般には放送、ゲーム等々で利用されるという話もあるが、本技術はいろいろな形で可能性のあることなので、ぜひ取り入れていただければと思う。


【町村議員】
 直接関係する人材のことが出ている。先日、男女共同参画推進本部があり、女性がもっといろいろな分野で活躍してもらいたいということで決定した。(指導的地位に立つ女性の割合が)一番悪いのが実は本省課長相当職、国家公務員で1.7%だが、2020年までにいろいろな分野で30%にしていきたい。研究者は理科系、文科系と合わせて12.4%で、とうとう韓国の13.1%に抜かれ、34カ国中最下位。しかも、専攻別に見ると理工系分野における女性研究者の割合は特に低くなっている。もちろん外国の方にも来てもらって大いに頑張ってもらいたいし、別に女性を研究職の中でしいたげているわけではないのだろうが、この低さは極端である。別に国の研究者ということではない。官民を問わずだが、男女共同参画推進本部の決定でもあるので、御配慮いただきたい。

【薬師寺議員】
 25%という数値目標を出しているが、女性研究者にはまだ不利な部分も結構ある。だから、制度改革で直そうということで、郷先生などと連携しながらやっている。

【町村議員】
 御高配のほどお願いしたい。

(3)科学技術外交、科学技術振興調整費の配分方針等について

 「科学技術外交の強化に向けて(中間とりまとめ)」について資料3−1−2(PDF)及び資料3−1−3(PDF)に基づき、岸田議員から報告。
 また、「平成20年度の科学技術振興調整費の配分方針」、「平成20年度科学技術振興調整費による「重要政策課題への機動的対応の推進」課題の指定について」について、資料3−2−1(PDF)及び資料3−2−2(PDF)に基づき、岸田議員から報告。


  「科学技術外交」に関する議員の意見は以下のとおり。


【薬師寺議員】
 本年は科学技術外交にとって、目に見える形で展開する絶好のチャンス。特に、アフリカに対しては、これまで進められてきた研究拠点形成の取組など、さらに強化発展をさせ、日本の優れた科学技術力をベースに、例えばエイズなどの感染症など、アフリカが深刻に考えている課題に対して、ODA予算などを活用し、研究協力を行う新たなプログラムを手配する必要があると思う。総理においては、このイニシアチブをとり、TICADIVが5月にあるので、ぜひともその点を表明されることを願っている。


【渡海議員】
 今おっしゃったとおり、非常にいいチャンス。先ほどの環境を考えても、アフリカを取り込んでいかなくてはならない。協力してもらわなくてはいけない。そのためには、やはり我が国が科学技術力を持って協力をしていくということであろうと思う。エイズワクチンの問題だが、今要請が具体的に出ている。それに対してどう応えていくかということで、新興・再興感染症研究拠点形成プログラムというようなものも我が省は持っている。ただ、これはどちらかというと、厚生労働省、それから外務省が中心になってやってもらわないと、アフリカの研究ということになると、なかなか簡単にいかないという点があるので、今薬師寺議員からも発言があったが、官邸もしくは岸田議員の方でリーダーシップを持って取り組んでいただきたい。


【黒川内閣特別顧問】
 5月の終わりに第4回アフリカ開発会議(TICAD)が横浜で行われるが、そのときの一つの目玉が野口英世アフリカ賞。これは世界中で相当注目されており、ノーベル賞やいろいろな生命科学の分野ではカバーされていないところの大きな賞。世界中の注目をアフリカに引き寄せる非常にいいことで、2つの賞がある。1つは医学研究の分野。アフリカのいろいろな医学研究に貢献するということで、60弱の候補者が上がり、ロックフェラー研究所、これは野口英世が世界で有名にしたところだが、それからゲイツ財団、それからいろいろなところで注目されている。私は選考委員長をさせていただいたが、この賞は最終的にイギリスのグリーンウッドさんが受賞した。彼は40年前から30年もアフリカに行っていて、マラリア、それから脳炎など、疫学から実証から、今の基本的なあり方を全部彼がつくったようなもので、グリーンウッドさんということで満場一致だった。御本人も非常に喜んでいる。
 もう一つは、医療政策というか保健のことで、これは女性が受賞した。ケニアのウェレさんであり、彼女も40年間、公衆トイレの話から蚊帳の話から、マラリアから、特に女性・子供の健康について献身的に取り組み、大臣もやっている。彼女も満場一致で決まり、本当によかったと思う。こちらも50人弱の候補が上がっており、特に健康問題については、現地のことがよくわからないこともあって、一次選考は12人のうち9人が主にアフリカ関係の委員が参加し、最終的な候補の選考まで来た。
 もう一つは、この成果についての広報は、同時にゲイツ財団、WHO、ロックフェラー財団などに頼んであり、こちらが3月26日に発表すると同時に、世界中にどんどんコメントが出て、相当盛り上がっているなと思う。
 ゲイツ財団もロックフェラーも、5年に1回の賞だが、みんなの注目がアフリカに集まるということで、日本のTICAD、G8への期待、それからその間の広報活動とか募金にも積極的に参加したいということで、そういう意味でぜひ日本の横浜、G8も総理がダボス会議で言ったとおりだが、ODAでの人材の育成等、すべての日本のあり方について非常に注目されているということを御報告させていただく。


(4)最近の科学技術の動向

 「情報爆発時代に向けた省エネルギー技術」について、資料4(PDF)に基づき、奥村議員より説明。

 

2.福田議長(内閣総理大臣)しめくくり発言


【福田議長(内閣総理大臣)】
 国際競争が激化していく中で、我が国が持続的な経済成長を達成するには、他国の追随を許さない技術開発を図っていく必要がある。
 革新的な技術戦略の策定に当たり、我が国の競争力の強化を図るべく将来性の高い技術を見極め、推進のための新たな仕組みを構築していくことが必要。また、絶え間なく革新的技術が生み出される環境をつくれるよう、最終とりまとめに向けて精力的に検討をお願いしたい。
 また、本戦略については、経済成長戦略の重要な柱と位置づけているので、よろしくお願いいたしたい。
 それから、世界の温室効果ガスの排出を2050年までに半減するという目標達成の成否は、一にかかって、技術によると言ってもよいのではないか。環境エネルギー技術革新計画については、短期的には技術の高度化と普及、中長期的には抜本的な削減を可能とする革新的な技術開発を推進するとともに、我が国の技術の国際展開を図ることが重要。
 引き続き、関係者の知恵を結集し、我が国が環境エネルギー分野において世界をリードしていけるような計画として、とりまとめていただきたい。関係大臣の協力も得て、総合科学技術会議のさらなる検討をお願いしたい。
 先ほどアフリカとの関係で科学技術協力の提案があった。イニシアティブが発揮できるよう関係大臣間でよく相談して具体化してほしい。

内閣府  科学技術政策・イノベーション担当
ウェブサイト・アクセシビリティについて 個人情報保護方針について
東京都千代田区霞が関3-1-1 中央合同庁舎第4号館 TEL:03-5253-2111(代表)
(C) Bureau of Science,Technology and Innovation Policy,Cabinet Office, Government Of Japan. All Rights Reserved.