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第78回総合科学技術会議議事要旨


(開催要領)

1.開催日時:2008年12月8日(月)11:10〜12:00

2.場所:総理官邸4階大会議室

3.出席議員

 議長 麻生 太郎 内閣総理大臣
 議員 河村 建夫 内閣官房長官
 同 野田 聖子 科学技術政策担当大臣
 同 鳩山 邦夫 総務大臣(代理 石崎 岳 総務副大臣)
 同 中川 昭一 財務大臣(代理 竹下 亘 財務副大臣)
 同 塩谷  立 文部科学大臣(代理 山内 俊夫 文部科学副大臣)
 同 二階 俊博 経済産業大臣
 同 相澤 益男  
 同 薬師寺泰蔵  
 同 本庶  佑  
 同 奥村 直樹  
 同 郷  通子  
 同 榊原 定征  
 同 金澤 一郎  
(臨時議員)    
 議員
舛添 要一 厚生労働大臣
(招 聘 者)    
  
山中 伸弥 京都大学教授


(議事次第)

1.開会

2.議事
(1) 平成21年度科学技術関係予算の編成に向けて
(2) 国家的に重要な研究開発の評価(気候変動問題対策二酸化炭素削減技術実証試験)
(3) 意見交換(革新的な技術をいかに日本の競争力強化に結びつくよう展開するか)

3.閉会


(配付資料)
資料1−1   平成21年度科学技術関係予算の編成に向けて(PDF)
資料1−2  

平成21年度科学技術関係予算の編成に向けて(案)(PDF)

資料2−1  

総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価
「気候変動問題対策二酸化炭素削減技術実証試験」の評価結果(案)(PDF)

資料2−2   総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価
「気候変動問題対策二酸化炭素削減技術実証試験」の評価結果(案)(PDF)
資料3   「iPS細胞が作る新しい医学」1(PDF:345KB)2(PDF:335KB)
資料4   第77回総合科学技術会議議事録(案)(PDF)


* 議事概要中の資料はPDFファイルです。

(会議概要)

1.議事概要

(1)平成21年度科学技術関係予算の編成に向けて

 「平成21年度科学技術関係予算の編成に向けて」について、資料1−1(PDF)に基づき、相澤議員から説明。

(2)国家的に重要な研究開発の評価(気候変動問題対策二酸化炭素削減技術実証試験)

 「国家的に重要な研究開発の評価」について、資料2−1に基づき、奥村議員から説明。

 資料1−2(PDF)の「平成21年度科学技術関係予算の編成に向けて(案)」については、原案どおり決定し、総合科学技術会議から内閣総理大臣及び関係大臣に対し意見具申するとともに、資料2−2(PDF)の『総合科学技術会議が実施する国家的に重要な研究開発の評価「気候変動問題対策二酸化炭素削減技術実証実験」の評価結果(案)』については、原案どおり決定することとした。

 議題(1),(2)に関する議員の意見等は以下のとおり


【二階議員】
 今日の厳しい経済情勢、この時期にこそ新しい産業の種を生み出す、いわゆるイノベーションの加速が不可欠。経済産業省としては、新経済成長戦略2008の改訂版を踏まえて、官民総力戦で研究開発投資を強化すべきだと考えている。
 前向きに評価をいただいた二酸化炭素削減技術の実証実験に加えて、革新的な太陽光発電の導入拡大のアクションプランも策定している。また、アメリカのロスアラモス研究所と日本の産総研との間で、燃料電池などの国際共同研究に取り組んでいる。低炭素社会の実現に向けて、革新的な環境エネルギーの技術開発の導入を抜本的に強化していくことが重要。


【山内文部科学副大臣】
 世界的金融危機の中で、成長力強化のために科学技術の発展は絶対必要。平成21年度の科学技術関係予算については、宇宙基本法元年としての宇宙関係予算の増額、国家基幹技術の計画的推進、4人のノーベル賞受賞者に代表される、我が国の強みである基礎科学力の強化、そして革新的技術推進費創設など増要因が大変多くある。我が国の成長力の強化を図るためには、第三期科学技術基本計画に掲げる政府研究開発投資目標(25兆円)の実現に向けて、政府を挙げて科学技術関係予算の大幅な拡充を図ることが最重要。

(3)意見交換(革新的な技術をいかに日本の競争力強化に結びつくよう展開するか)

 資料3(PDF)に基づき、京都大学山中教授からiPS細胞研究と今後の課題について説明の後、意見交換。


 意見交換における各議員の意見は以下のとおり。


【薬師寺議員】
 総合科学技術会議は、オールジャパンとしてiPS細胞研究ワーキンググループをつくり、革新的技術戦略の中にもiPS細胞を盛り込んだ。ES細胞の使用に関しては、総合科学技術会議の生命倫理専門調査会として、規制改革を決めた。それから、制度改革ワーキンググループの中でも、臨床研究の推進、医薬品審査人員の拡充に取り組んでいる。


【本庶議員】
 山中先生のお話に2つのことをつけ加えさせていただきたい。
 第1は、基礎研究からすばらしい夢が広がること。第2は、これまで例がないような医薬品や医療技術はリスクが分からないので、慎重に審査をしなければいけないが、審査官には実は知識がないため、最初から研究者と話をしながら、次第に審査の基準を確立し、医薬品や医療技術ができたらいち早くそれが市場に出るのが望ましいこと。
 そのために、スーパー特区を動かし始めて、先般24グループ採択したが、基本的に審査員不足で、抜本的な解決には至っていない。
 それから、もう一つ重要なことは、このような新しい研究成果は、リスクをゼロにすることは恐らく不可能で、これが市場に出た後のきちっとした安全性の確保をフォローアップしていかなければならない。このため、事前と事後の安全性、これを両輪として活用していかなければいけないが、我が国においては残念ながらこの体制は十分ではない。
 我が国ではこれから500名体制にいこうとしているが、米国、欧州ではそれぞれ3,000、3,500名体制。行革との絡みでこの問題が非常に難航していると伺っている。こういう事態だと、せっかく我が国で始まった基礎研究が、実際の応用のところでは欧米にやられてしまうという非常に残念なことになりかねないと危惧している。
 これはiPS細胞だけの問題ではなく、我が国の医学研究全般に係る非常に大きな問題なので、総合科学技術会議としても政策的な課題として十分認識いただき、問題の解決に御努力、御理解をいただきたい。


【麻生議長(内閣総理大臣)】
 この種のことに私達も全然詳しくないが、それでも分かるように説明できるのは、よほど分かっていると思う。難しく説明する人は多いが、やさしく説明できる人はなかなかいない。そういった意味で、世界に見せつけた力の一端を見せていただき感謝。大変誇りに感じるし、この研究をさらに進めていかねばならないと思う。これは画期的なこと。皮膚からというところがすごい。
 いずれにしても、これは、パーキンソン病を含めて、難病対策解決に役に立つ可能性がものすごく高く、一日も早い実用化が待たれている。今日は実用化に向けての課題が幾つも挙げられていた。関係大臣がここにいるが、問題の解決に当たっては、役所の垣根等々があるためになかなか難しいかもしれないが、研究者が一番面倒くさがる役所の提出書類の手続やら何やらに人を出さないといけない。手続が分かっている人を、担当の役所から出したほうが、早く事は進むと思うので、検討、努力をさせていただく。
 予算についても、こういう話はものすごく分かりやすいし、効果がすぐ目に見える。そういった意味では、今日方針を決定した上、メリハリをつけた予算を積極的に進めていきたい。


【舛添議員】
 革新的な医薬品、医療機器をいち早く国民に提供したいということで、いわゆるドラッグ・ラグを、昨年から5か年計画を立てて、5年後にはアメリカ並みにするということで、今鋭意取り組んでいる。3年間で236名の審査員を増員、これはPMDA(医薬品医療機器総合機構)でやるが、20年4月現在で70名を増員済み。医療機器は、この5年間で3倍増ということで、現在35名しかいない審査員を104名にということで進めている。安全対策の人員増加のための予算要求もしているので、是非お願いしたい。そして、難病の方でも、しょっちゅう早く薬をくださいという要望があるが、有効性・安全性がなければ保険適用できないために、様々なスピードアップを図っているが、これをさらに進めたい。
 それからもう一つ。実は難病の研究費は25億円弱しかない。これを4倍(100億円)にすることをお願いしているのは、これをきちっとやっていくことが、本当に国民の、人類のために使う医療技術に高めることになると思っているため。余りにも少ないのではないかという感覚を持っている。先日、中川財務大臣と最初の折衝をしたときも、難病について特記して申し上げたので、どうぞ大臣よろしく。総理もこの点についてよろしくお願いしたいと思う。こちらも全力を挙げて体制の整備を図りたいと思う。


【山内文部科学副大臣】
 文部科学省は、昨年11月のヒトiPS細胞作成の発表後、約1カ月後の12月22日には「iPS細胞研究等の加速に向けた総合戦略」を取りまとめた。迅速かつ強力に支援を行ってきたところで、20年度の第1次補正予算においても研究を加速するための措置、15億円を講じた。また、21年度予算においても再生医療の実現化や、iPS細胞を使った病気の原因解明に向けた研究に対する支援、約60億円を要求している。社会還元につながる研究を強力に支援をしていきたい。
 また、iPS細胞など新しい技術を早期に医療応用するためには、迅速かつ合理的な審査が必要。医薬品を管轄する厚生労働省においては、新しい研究成果を迅速に社会に還元するために、充実した審査体制の構築を是非お願いしたい。


【二階議員】
 iPS細胞について、重要な特許を迅速に押さえるということ、山中先生からもそういう御指摘があったが、特許の早期審査制度を活用して、今年の9月に世界で初めての特許を承認できたことは御承知のとおり。
 しかし、今後、国際的に激しい特許の競争が行われるので、一段とスピードアップを考えなくてはならない。スピードというだけではなくて、実質、内容もしっかりしていななければならないので、先ほどの総理の御意見等も参考にしながら対応したい。
 先端医療開発特区でもiPSの案件が採択されており、革新的技術推進費を含む関連予算を活用し、支援を行う必要があると考えている。ベンチャー企業に特に力を入れるようにという山中先生の御指摘は、大変大事な点だと思っている。
 なお、医薬品だが、外国で使われている医療機器がなかなか我が国に導入されないことに危機感を感じている。研究開発成果が宝の持ち腐れとなってしまわないように、薬事審査体制の拡充、強化、迅速化が大事だと思う。思い切った規制改革への取り組みも必要だと痛感している。


【河村議員】
 一日も早い実用化のために、最後のところで山中先生がおっしゃったように進めなければならいないと思って聞いていた。特に総理から、複数研究の一括管理の問題については、人を出すと申し上げた。これは、文科省から出すのか厚労省から出すか、あるいは定員を増やして人をつけるか、何か考えるべき課題だと思う。
 こういう研究は色々あるが、特に国がここだと認めたところにしないといけない。これは是非進めていく必要があるのではないか。それから、審査体制を倍増以上にすることは強力に審議したいと思う。


【竹下財務副大臣】
 取りまとめをいただいた優先度判定を活用しながら、また今日の議論を十分受けとめ、21年度予算において、メリハリのきいた予算編成を行いたい。
 幾つか課題がある。1つは25兆円。1年で割ると5兆円だが、今のところ4兆円前後で推移してきているので、この問題をどう考えるかということ。それから、正直言って財務省にも審査能力がないので、薬のことを言われる、あるいは難病研究100億と言われても、どう受けとめていいか分からない。もっと事情を伺いをながらやらないと、査定という作業ができない。壁にぶつかっている部分がある。それを何とか乗り越えなければと思っている。
 ただ、科学技術振興予算は、20年前に比べて3.2倍に増えている。社会保障ですら2倍なので、日本一増えている予算は科学技術振興予算である。しかし、それでも一般会計だと1兆3,000億程度なので、本当にこれで十分かと言われると、言葉が詰まってしまう。正直そういう部分はある。物凄く努力をしなければと思っている。


【山中教授】
 舛添議員が言われたように、アメリカは1年半で審査が終わるが、日本は5年かかる。その差は3年半あるわけで、その間に一体何人の患者さんが亡くなっていくかと考えると、これはもはや損得では計算できない由々しい問題。同じ病気、難病になること自体が患者さんとその家族にとって非常に不幸なことだが、それがさらにアメリカで生まれて同じ病気になったか、日本で生まれて同じ病気になったかの違いによって治療が全然変わる。アメリカだったら助かるのに、日本だったら助からないという3年半のタイムラグが現に生じる。研究者も実用を1年でも早くするために日夜頑張っているので、是非厳しい経済状況で大変なのはよく分かるが、何とか御尽力願いたい。
 難病の患者さんは数が少ないため、製薬会社は投資をしないので、国が見捨てると、もはやそういった患者さんは誰からも救済されない。数は少ないが、いろいろな病気で合わせると大きな集団になるので、是非そういった方の存在を心に留めていただいて、よろしくお願いしたい。
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