○草刈総括 もう皆さんおそろいでございますか、若干あと1、2分ございますが、第2回の「官製市場民間開放委員会」を開催させていただきたいと思います。
本日は、この委員会の委員長の宮内議長がどうしても所用で御都合がつきませんので、代わりまして主要官製市場改革ワーキンググループというグループの主査を務めております。私、草刈が進行させていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
御案内のとおり、本日は主要官製市場のうち医療分野の問題につきまして、日本医師会の幹部の方々にお越しをいただいて、マスコミの方々にも公開して意見交換させていただくことにいたしております。
医師会の方々におかれましては、大変御多忙のところを御足労いただきまして誠にありがとうございます。たびたびまたいろいろとお世話になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
また、本日は規制改革の担当大臣の金子大臣が御出席をされるということですので、ちょっと遅れて来られるようですが、よろしくお願いいたします。
今年から、私ども委員が多少替わりましたので、ざっと私の方から今日出席をしておる委員の皆様、そして専門委員の皆様を御紹介させていただきます。
まず、私の左の方に座っておられるのは、おなじみの鈴木議長代理でいらっしゃいます。もう御紹介するまでもないと思いますが。
あとその左に、日本経済研究センターの理事長をされている、八代総括主査でいらっしゃいます。
今年から参加をされました、シダックスの代表取締役会長の志太委員でいらっしゃいます。
東洋大学経済学部社会経済システム学科の助教授をされております。白石委員でございます。
株式会社ディー・エヌ・エーの代表取締役の南場委員でございます。
マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン プリンシパルの本田委員でございます。
専門委員の方を御紹介申し上げます。東邦大学の医学部公衆衛生学講座の助教授をされております。長谷川専門委員でいらっしゃいます。
政策研究大学院大学教授の福井専門委員でいらっしゃいます。
成蹊大学法学部教授の安念専門委員でいらっしゃいます。
(金子大臣入室)
○草刈総括 大臣、今、ちょうど始めたところでございます。もし途中で御意見がおありになりましたら、御意見を言っていただければと思います。
それでは、まず時間の配分について申し上げておきます。ただいまちょうど10時ちょっと過ぎたところでございますので、第1テーマ、混合診療に関する議論が約一時間強、それから残りの時間、第2テーマの医療法人の経営の在り方、これを残りの時間で40分ぐらいと、こんなふうに考えておりまして、最初に恐縮ですけれども私の方から2つのテーマについて、こちら会議側のポジションを申し上げます。私の方で10分時間をいただきたいと思います。
それから、医師会の方から、同じテーマについて15分程度で最初にまとめていただいて、あと必要があれば議論の中で御主張を賜りたいという形式でお願いしたいと思います。
それでは、私の方から医療の2テーマについて、パワーポイントの資料に従って御説明をさせていただきます。
○原企画官 特に投影はございませんので、お手元の資料1の方でお願いします。
○草刈総括 済みません。2枚紙がございます。それから、このサポートの資料として6枚の「主要官製市場改革(医療分野)に関する見解」という紙がございます。この6枚物をサマライズしたものが、この2枚物でございます。
最初に混合診療の解禁というところから、御説明致します。最初の四角のくくり、これが当方の基本的な考え方ということでございます。混合診療の解禁によって、患者本位の医療を実現すべきであるということでございます。保険の対象を超える診療行為の内容、料金、効果、リスク等に関して、患者と医療サービス提供者の間で保有する情報に格差がなく、患者自らが自由で確定的な意思に基づいてそれを選択できる場合には、保険診療に相当する部分は保険を適用して、それを超える部分のみ患者負担とすることを認めるべきであるというのが、基本的な考え方でございます。
その見解という6ページ物の1ページ目の下の方に、Iというところで「○当会議の基本的考え方」と、ここに詳しく書いてございますが、要するに、保険対象となる診療行為は、診療方法の普遍性、副作用のリスク、あるいはモラルハザードの防止、保険財政の均衡、そういったものによって決定される、言わば医療保険の対象は、制度設計上の考慮によって決定されるものであって、それを超える診療行為を禁止することを意味する訳ではないということでございます。保険外の付加的な診療行為について、他の保険加入者に一切負担を強いることなく患者の自己負担によって選択する限りにおいては、これに伴う保険診療は認めないといった不利益を患者に課してまで抑制する合理性がどうしても見当たらないというところでございます。
2番目に、混合診療禁止の弊害というところで、3点挙げてございます。
1番目が、患者と医師との自由な契約による多様な診療の選択肢を否定して、患者の利益に反する。
2番目が、保険外診療費の実費分だけなら負担可能な患者の選択肢を狭めることは、患者に不公平感を生むというか、むしろ不公平になる。
3番目が、最新の診療手法を積極的に取り入れようとする医療機関の意欲を損ねる一方で、保険適用の範囲内の診療行為しか行えない医療機関を保護することで、医療の質の向上を目指す競争を阻害することが弊害として3つ挙げてございます。
混合診療の対象分野というふうに書いてございますが、ここに4つ挙げてございます。 まず、確立した医療行為でありながら保険の対象外のもの。これは予防的措置というものも含んでおります。それから、制限以上の診療行為。
2番目に、新しい医療行為として専門医の間では効果が認知されているもの。これがいわゆる高度診療というものに入ってくると思いますが、新しい検査、薬、治療法。
3番目に、医学的効果は確立していますが、患者の価値観などの問題から、通常の医療行為としては行われていないもの。遺伝子診断・治療といったもの。
4番目に、医療行為に付帯するサービス。例えば、外国人に付ける通訳とか、付き添い、外食など。
これらについてはさっき申し上げました付属資料の5ページ、6ページをご覧いただければ、5ページの参考1というところに概略を述べておりまして、その6ページにいわゆる例示としてちょっと詳しく御説明を申し上げておりますので、後で議論のときに御参照ください。
それから、混合診療解禁に当たっての留意点、これは申すまでもないことですけれども、患者自らによる適切な選択に供するため、保険適用診療に加えて行い得る保険外診療の内容、料金、効果、リスク等について、患者及び保険者に対する開示を義務づけるとともに、義務に違反した場合の事後措置をきちっと設けるということが、当然の留意点であろうということでまとめさせていただきました。
次に、医療法人の経営の在り方ということで、これも3点まとめてございます。
一番上が、同じく当方の基本的な考え方で、医療法人経営の近代化により患者本位の医療を実現すべきである。基本的には患者本位の医療というところに視点を置いているということでございます。ここに書いてあるとおりでございますが、医療法人において出資額に応じた議決権を認める。それで、医療法人の経営に一定の規律を確立して、また株式会社を含めた出資者に社員としての地位を認めることによって出資のインセンティブを付与すべきである。こうした方策を通じて、医療法人の経営を健全化して、スケールメリットを活かした効率化を推進して、資金調達の円滑化による設備投資を促すべきである。
これは、御存知のとおり公的病院の7割が赤字であると、あるいは病院の倒産が相次いでいるという状況の中で、極めて切迫したテーマであるというふうに認識をしております。
それから、医療法人を取り巻く環境というところで、これは3点挙げてございます。
まず、医療法人の経営は非常に厳しいと。患者に対して多様な、かつ良質な医療サービスを提供するために必要な病院施設、医療設備の更新、カルテの電子化などの情報化、こういったものがなかなか進まない状況にあります。
医療法人の資金調達手段が厳しく規制されているのがその一つの原因で、銀行借入に依存をせざるを得ないという状況にあるので、医療法人が経営を近代化して規模を拡大する上で大きな制約になっています。これに対して、例えば、株式会社等による直接金融、あるいは株式、社債による調達、同じことですが、そういった道を開くべきではないかというのが、ここで申し上げていることであります。
3番目に、具体的な方策ということで、まず最初に、医療法人の社員の総会における議決権を、その出資額に応じた個数とすると。いわゆる一般の商法上の法人と同じルールにして欲しい。
2番目に、現行ルールでも株式会社は医療法人に出資可能でありますけれども、社員となることはできないとされているので、これを個人と同じ扱いにして欲しい。
3番目に、医療法人による医療法人への出資を可能にして、社員としてその地位を認めるということでございます。
以上が、私からの極めて雑駁な説明でございます。詳しくは、この添付資料で後でまた議論をさせていただきたいと思います。
以上でございますが、続いて恐縮ですけれども、松原先生と三上先生の方からお願いします。
○松原常任理事 私の本日の仕事は、この混合診療につきまして御説明することでございます。
まず、この混合診療につきまして、健康保険制度のところから御説明申し上げます。この健康保険制度でございますが、健康保険の適用になるのには制約がございます。健康保険の医療では、安全性と有効性が保障されているもののみ健康保険として使うことができます。安全性の確立してないもの、また有効性が確立してないものは、この健康保険制度の中には入っておりません。
健康保険の医療に関する価格は、日本では国が決めております。この国が決めているということで、非常に比較的安くこの健康保険制度が維持できているわけでございます。
それに対しまして、今回問題となっております混合診療ですが、健康保険の範囲の分は健康保険で賄い、範囲外の分は、患者さんが直接医療機関に支払うというものでございます。
ただ、お金を持っている持っていないに関わらず、平等な医療を提供するためには、範囲外の診療費を徴収することを混合診療として、簡単に言えば禁止しているわけでございます。禁止されている結果として、診療費を範囲外で徴収する場合には、この健康保険全体が適用されず、全額自己負担となる。ここのところを皆さん問題とされているのだと思います。
ただ、条件として最初に申し上げておきたいのは、アメニティーの問題、すなわち入院時の個室代とか、診察の予約費、こういったものはもともと混合診療の中に入っておりません。快適性に関わるものは混合診療ではございません。これは別の議論をさせていただきたいと思います。
我が国の保険給付システムでございますが、診察、薬剤、または治療材料、それから処置、手術、その他の治療、在宅における看護、そして入院病床における看護、こういったもの全てを必要なものは現物給付しております。これが我が国の保険給付システムの特徴でございます。また、そういう規定になっております。
この現物給付制度というのは、保険者、すなわち国、市町村、健康保険組合が、医療サービスを医療機関から全部買い上げて、それを患者さんに給付するシステムでございます。先ほども申しましたように、必要なものは全て患者さんに現物で給付されるのが、我が国の健康保険制度でございます。
混合診療は、患者さんに必要な医療を全て現物給付するシステムと反しています。ここが本質でございます。
この混合診療を容認しろという立場がございますが、まず第1番目の主張といたしましては、規制緩和の一環として消費者、つまり患者さんの選択の拡大ということをおっしゃっていますけれども、これは実は医療費、すなわち保険給付費のトータルの抑制を目的とした公費の支出の抑制が隠れているので、問題としているわけでございます。
患者さんの自由ですよと言いながら、最終的な目的は自費で払わせて保険給付費を払わせないでおくという、公費支出の抑制が隠れているわけでございます。ただ、日本で認可されたような技術や医薬品の使用、これを速やかにしたいということは、私どももよく理解できますが、これは後で述べますシステムで、今の健康保険制度でも担保されております。
混合診療の影響でございますが、例えば、保険診療をして残りの部分を保険外診療で支払えるというシステムに変えますと、患者さんは、技術の進歩があれば更に高い医療を受けたいと思うのは当然です。また、医師も同じように、患者さんを治したい。治すためには、十分な医療を行いたい。そういう意欲がございます。
そういたしますと、どんどん高いものに移行いたしまして、医療の提供のコストは増大いたします。その結果として、保険外診療の費用がどんどん増えてまいります。これはアメリカを見れば明らかなことでございます。
保険外診療の費用が増加すると、患者さんはどう考えねばならないか、あるいは国民はどう判断しなければならないかと考えますと、当然それに備えるために私的保険を通じた保証を求めるようになります。 非常に大きなコストのかかる保険外診療費に対して、私的保険を新しく作った場合には、私的保険というのは、まず営利を目的とした保険でございますので、この保険の中では疾病に罹患している人や、疾病に高いリスクを持つ人に対して、加入制限が厳しくなる、あるいは、高い保険料を課す可能性が高くなります。
生命保険の例でも、大きな病気があると生命保険に入れないとか、あるいは、何か病気があるとその分保険料が高くなるという現象がございます。それと同じ現象が営利を目的とした私的保険では出現いたします。
そうなると、真に医療を必要とする状況にある者が、保険に加入しにくくなります。私的保険は、公的保険の代わりとは決してなり得ません。
米国と日本を比べますと、米国の医療費はGDP比で日本の約二倍でございます。非常にコスト的には米国の方が高くかかっております。どんどん医療費は高くなっているのが現状です。そして、私的保険は営利を追求するために、医療の内容を決め、私的保険がもうかるような制限をかけてまいります。これが今のアメリカの現状でございます。アメリカの医師は、私的保険でかかられた患者さんに対して、必要な医療を給付することを、私的保険と常に交渉しなければなりません。その結果として、患者さんの権利が阻害され、保険者対患者さん、医師、看護師の構図で問題が起きております。それを改善するために患者の権利法が必要な状態になっております。
また、保険に入れない方が、3,000 万から4,000 万人出ております。 そのような状態にもかかわらず、なぜ米国のシステムを導入するのか、私どもには理解できません。健康寿命ははるかに日本が優れています。
先ほど申しました新しい医療、例えば、新しい薬、新しい抗がん剤につきましては、安全で有効なことが客観的に証明されれば、速やかに保険に適用すればよいわけです。何も患者さんが自費でお金を払ってこれを出さなくても、なるべく速やかに保険に入れれば済むわけです。ところが、問題は安全であること、有効であることです。特にこの安全であるということは、非常に大事なことでございます。
例えば、2、3日前に報道されましたイレッサという肺がんの薬、これは安全性が一応確保されたと、急いで認可したものですから、安全性が確保されたと厚労省は判断したわけですが、その薬を出していた会社が、安全性の重要なデータを隠していたのではないかということで、今、訴訟問題が起きていると聞いております。そういった訴訟が起こるような、つまり安全が確保されてないようなものは健康保険上は適切ではありません。しかし、保険に入る以上は安全で有効なことが客観的に証明されなければなりません。そして、証明されれば速やかに保険適用にすべきです。つまり保険適用にするためのルールこそ、皆さんに改正し、規制緩和していただきたいと思います。
健康保険適用の判断基準は、非常に不明確な点もございます。これを明確にして、皆様に公開し、審議や結果をオープンにしていくことが必要だと考えております。
次に高度先進医療でございますが、新しく進歩した医療、この医療に対しては、実際上は健康保険制度の中に特定療養費というものがございまして、この適用がございます。したがって、何も自分で全部を支払わなくても、特定療養費に認定されていれば、十分に高度先進医療として恩恵を得ることができます。
ただ、高度先進医療も安全性が確立されているものでなければなりません。安全性が確立されているものであれば、例えば、一般にまだ普及されていなくて、果たして有用性がどうなのか、患者さんのために本当になるのか、多くの人たちが使って大丈夫なのかということが決定できていませんので、決定できるまでの間、特定療養費に含めます。そして、安全性と有用性が確立し、一般に普及されてくれば、これは特定療養費ではなく本来は健康保険に入れるべきものです。そして、健康保険にこの先進医療が入れば、多くの人がこの恩恵を受けることになります。多くの人が受けられれば数が増えます。数が増えれば、費用はこれこそ皆さんが言っておられる経済原理に従って安くなります。安くなれば、多くの人が更に使うことができます。また、国家の財政もその分軽くなるわけです。あくまでも高度先進医療というものは、安全性、有効性が確立されたら、速やかに健康保険に入れるべきだと考えます。
また、この認定の仕方にも大きな幾つかの問題がございます。特定療養費は厚労省が認定する形になっておりますが、この認定の仕方も速やかに規制を改革して、すぐにでも認定ができるようにすべきだと考えております。
混合診療の問題点でございますが、現在、財政難でございますので、それを理由に最新の医療が健康保険に導入されなくなります。そうしますと費用を負担できる人しか必要な医療が受けられなくなります。費用の負担できる人とできない人の間に不公平が生じていいのでしょうか。私どもは、命は平等だと考えています。医学医療の進歩、それによる享受は、やはり国民皆保険制度に基づいて、国民全体が受けるべきではないでしょうか。
私どもの仕事は、生命を守ることでございます。この生命に基づいて個人の尊厳があり、この個人の尊厳を守ることが国の責務だと思います。その尊厳を守る上で、確かに私どもの自由主義が最も有効な個人の尊厳を守る手段だと思っております。そして、この自由主義を補完するため、つまり機会の平等を保証するために福祉が存在するわけです。私どもも結果的な平等、社会主義の概念でございますが、それをもって平等と言っているのではございません。あくまでも自由主義の中で大事な補完をする福祉主義、この福祉を充実させねばならないと私どもは考えております。しかし、この福祉主義も、無用な国家機能が増大しまして、国家における余計なものが増えてきますと、これを削ろうとする立場、ちなみに皆様の支持者の中にも、新自由主義の方が多いと思うのですが、市場競争原理をどんどん導入して、余計な規制を改革すべきという事は私どもも全く同意見でございます。しかしここで間違えてはいけないのは、経済と生命は次元が別です。経済と生命の次元を混同いたしますと、経済ではお金がなくて買えない人、つまり購買能力の無い人は我慢すればいいんです。例えばテレビを買いたい場合です。お金のある人は、大きなデジタルテレビを買えばいい、お金のない人はマレーシア製でも、非常に安いのがありますが、小さなテレビでも構わない、それはそれでテレビを買えるという満足は得られるわけです。
ところが、生命の失敗は最終的に死が待っています。私どもは経済の原理と生命とを混同するのは、危険で間違っていると思っています。
○草刈総括 ちょっと済みません。恐縮ですが、15分とお願いして、もう15分過ぎてしまいましたので、簡潔にお願いします。
○松原常任理事 わかりました。私ども、やはり幸福な国家というのは、自由で安心できる、この安心というのが一番大事だと思います。安心できる国であるべきだと考えています。日本医師会は混合診療に絶対に反対です。
加えさせていただきますと、4病協という、病院関係の4つの団体の集まりがございます。そこと昨日話し合いました。全く同意見でした。やはり混合診療は目先の問題ではなく、長期で見れば決して国民の幸福には結び付かないというところで、私どもと同意見ということでございますので、それを本日申し上げて欲しいというお話でございましたので、付け加えさせていただきます。
以上でございます。長くなりまして、誠に申し訳ございません。
○草刈総括 次は三上先生、続けて経営のお話をやっていただけますか。誠に申し訳ありません。時間の関係もありますので、できるだけ簡潔にお願いします。
○三上常任理事 医療法人への出資額による議決権の問題ですが、これは形を変えた医療法人の株式会社化、すなわち株式会社の医療参入とほぼ同じ意味合いだと考えております。株式会社、すなわち営利企業の医療への参入問題は、平成12年の経済財政諮問会議の骨太の方針、あるいは総合規制改革会議の重点6項目が出されて以来、今までに3度にわたって公開討論が行われてまいりました。そのいずれにおいても、どちらかというと否定的な意見が優位であったように記憶をいたしております。今回も混合診療とともに、また4度目ということで議題に上ったわけですが、いずれにせよ現行法では医療法人の営利企業への参入は認められておりません。出資ができても社員となることはできませんし、ましてや議決権が社員と平等に与えられるということが民法65条に規定され、医療法68条にこれを準用することが明記されておりまして、出資額に応じた議決権の行使はできないこととなっております。
医師会は、結論から申しますと、営利企業が医療法人に対して出資をして議決権を得ることに反対をいたします。まして出資額、あるいは出資の持分に応じて議決権を得ることは断じて反対でございます。営利企業が、医療法人に出資すること、そして最高意思決定機関である社員総会の議決権を一定数以上得ることは、事実上医療法人をその支配下に置くことを意味します。医療法第1条に、医療は生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づくと定められており、医療には非営利原則と公共性の保持が不可欠と考えております。
利益を追求し、投資家への還元を命題とする企業が、医療法人に影響力を持ち支配下に置くことは、この非営利原則の否定につながり、決して認めることはできないと思っております。
営利企業による医療法人の支配の多くの問題点は、第1に株主への利益の還元であります。医療法人に出資した企業は、出資額以上の利益を得て、株主に還元しなければなりませんが、医療法人は剰余金を配当できないということになっており、病院経営で得た利益は直接には出資企業に還元できません。したがって、株主配当への原資金に充てることはできないということでございます。
しかし、株主への利益還元は、配当金だけではございません。むしろ株主にとっての最大の関心事、これは、企業の株価、資産価値が上がることであります。出資した医療法人が利益を上げ純資産を増やせば増やすほど、出資企業の純資産額も増えて、結果としてその企業の市場価値が高まり、株価が上がることにつながります。
では、企業の株価を上げるためには、どういうことをするのかということですが、銀行を例に取って考えますと、まず貸し渋りというのが行われております。貸し出し先を選別し、返済に問題のありそうな企業には融資をせず、優良企業にしか融資をしないということが行われております。
次に富裕層の囲い込みで、高額の預金者には高い利息を付ける一方で、一般の預金者には最低限のサービスしかしないということ。それから、貸し出し先企業を取りつぶす不良債権のカットも行われておりますし、人員削減や非採算部門の閉鎖を行うリストラなども行われております。これらは、営利企業としては正常な経営判断でございます。
これを医療法人に出資している企業にあてはめて考えますと、貸し渋りに対しましては、患者の選別、付加価値の高いサービスを供給しない、一般の患者には最低限の医療サービスしかしないと。あるいは、市場の評価を高めるために、手術成功率や治癒率を上げようとして重症患者を受け入れないという場合も考えられます。
富裕層の囲い込みについては、特定の患者の優先、医療費やさまざまな付加価値のあるサービスを、より多く負担できる患者さんを優先して治療するということが行われます。
また、親会社に当たる出資企業が、クレジット会社などであれば、患者の借り入れなどの拡大を狙うことがあるかもしれません。更に患者を同じ企業グループの医療機関や介護サービス事業者ばかり紹介をし、患者の囲い込みも行われます。不良債権のカットは、利益の得られない患者、老人の長期入院患者などがそうですが、こういったものを排除するような診療抑制が行われます。
リストラについては、小児医療のような不採算部門の廃止、あるいは低収益部門の医師や看護職員、薬剤師などの人員、設備の削減が行われる可能性があります。
このようにして、子会社に当たる医療法人をふとらせることが、親会社である出資企業の価値を高めることにつながります。また、金融機関や医薬品会社などが出資企業の場合、その業者によっては企業の利益が患者の利益と根本的に相反する場合もあります。銀行にしろ、医療法人への出資企業にしろ、今、例に挙げたようなことが営利企業としては正常な経済活動でありますが、その結果株価が上がれば株主も歓迎するわけです。しかし、株主の望むことが一般の患者にとって必ずしもよいこととは限りません。むしろ企業が社会的に好ましくないことをしていても、株主は株価の上昇に目がくらんで、企業経営の監視を怠る可能性があります。
過去の企業事件、商工ローンの問題などですが、マスメディアで非難されるまでは、高い利益を上げているとして、逆に株価が上昇していったケースもあります。
第2には、企業の議決権の行使によって医療法人の資産が切り売りされ、ひいては病院倒産にまでつながりかねないことでございます。これは、例えば議決権の過半数を得た場合に、基本財産の処分の承認、つまり病院の土地建物を切り売りしたり、担保に提供したりすることが可能になります。病院の乗っ取り事件等は、こういったことで行われております。
特に大きな問題となるのは、企業が医療法人から撤退するときでありまして、出資したものの採算性に見込みがないというときには、企業は事業から撤退しなければなりません。その際、投下資金を回収するために、他の会社に社員の権利を売り飛ばすこともできますし、議決権や持ち分を売却することもできます。手続上は、売却先の企業を新しい社員として医療法人に入社させるよう自らの議決権を行使するということでよいわけであります。これが高じれば、医療法人の議決権、持ち分、医療法人そのものを投機の対象とするマーケットも生まれる可能性もあります。
医療法人は通常、医師が医療を提供し続けるために設立されたものであります。したがって、医療法人が解散するのは、破産や後継者がいないときなどに限られております。しかし、企業は利益が見込めなければ、できる限り投資資金を回収した上で、事業撤退して新しい事業に投資をします。それが企業として当然の姿でありますが、医療法人においてはそうではありません。医療法人は、永続的に医療を提供し、地域住民の生命、健康を守ることこそが使命となっております。利益が上がりそうもなければ、即撤退、新しい事業に投資というものではありません。経済と医療とは違うということでございます。
第3に、医療法人が企業グループの一部とされてしまった結果、患者の権利が侵害されかねないことでございます。先ほど述べましたように、病院経営で得た利益は、配当の形では出資企業に還元されません。その代わり、出資企業は医療法人を企業グループの下に置き、そこから利益を上げることがあり得ます。
例えば、病院の建物をグループ内の不動産会社に売却し、それを賃貸させることによって利益を回収すると。あるいは、人材派遣会社に職員の派遣をさせたり、医療機器のリースをさせることによって投下資金の回収を狙うことができます。また、企業にとっては、患者の情報や病院の知名度、信頼度も大事な財産でございます。特に患者の情報が、例えば、先ほど述べましたように、出資企業が生命保険会社あるいはローン会社の場合には、顧客獲得のために利用されることもあると思われます。病院の中で保険やローンの勧誘が行われることも十分考えられます。個人情報保護法が施行されたとしても、弱い立場にある患者さんはいや応なく保険やローンの契約に応じざるを得ないのではないでしょうか。 更に、地域の医療連携の崩壊も起こる可能性があります。病院側ないし企業グループの医療機関などで患者さんの囲い込みを行えば、患者の選択肢は狭まりますし、それが高じればその地域一帯の医療機関が企業の支配下に置かれることもあります。そうなれば、患者さんの医療機関を選ぶ権利はほとんど失われてしまいます。
第4に、患者の権利、医療の信頼を反社会的勢力から守らなければならないということであります。具体的な事件は述べませんが、反社会的勢力が医療法人を乗っ取った場合、医療法人の社会的信頼性を隠れみのにして、さまざまな事件を起こすことも考えられます。 医療法人は、医療法上、行政の厳しい監督の下にあります。しかし、その医療法人を支配する企業や個人はそうではありません。例外的な事件だからといって無視することはできません。企業に限られたわけでありませんが、反社会的勢力が医療法人の議決権を多数掌握した場合、患者の権利、そして国民の医療に対する信頼が失われる可能性があります。従って、この観点からも出資額、あるいは持ち分に応じた議決権の取得は否定されなければなりません。
医療法人は、本来医師が地域住民のために永続的に医療を提供できるようにすることを目的とした制度であります。その構成員である社員も、人と人とのつながりをよりどころとし、決して資本の論理で結び付いたものではありません。企業が医療法人に出資して、議決権を得ることは、さきに述べた4つの問題がつながり合い、構成員同士の信頼関係を崩壊に導き、患者に不利益をもたらすと考えられます。
医療の非営利原則ですが、医師は医師の、あるいは医療の倫理観を持って医療法人を運営しております。そのために、国民の皆が平等に医療を受けられるように、常に努力をし、患者さん、あるいは地域住民に適切な医療を提供するわけであります。
ここに、医療法人に企業の論理が入りますと、医師の倫理観が企業論理に追いやられ、国民のみんなが平等に受けられるというすばらしい制度が侵害される可能性があり、これは地域住民、患者にとってもよくないことは明白であります。
日本医師会は、営利企業による医療法人の支配、すなわち出資による経営参画や議決権の取得、そして出資額、あるいは持ち分に応じた議決権の取得に断固として反対をいたします。
以上でございます。
○草刈総括 どうもありがとうございました。時間が倍かかってしまいまして、議論の時間が少し切迫しましたけれども、まず混合診療の話で、約四十五分から五十分ぐらい取りたいと思います。意見交換ということで、本件については当方から鈴木議長代理が口火を切って議論を始めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○金子大臣 その前にちょっとよろしいですか。規制改革の担当大臣をしております、金子一義でございます。今日は、櫻井副会長始め、医師会の新メンバーの皆様方、厚く御礼申し上げます。小泉内閣、引き続き規制改革について、いろいろなパブリック・アクセプタンスというものを持ちながら、更にそれを乗り越えていきたいという意味で、今日は民間の委員の皆様方が中心になって、こうやって御議論をしていただく。今日は、私、客観的に聞かせていただきますけれども、どうぞ今後とも、今日ここにおいでいただきましたことを御礼申し上げますとともに、民間の委員の皆様方にも大変なお時間をちょうだいしておりますことを、改めて御礼申し上げます。
ありがとうございました。
○草刈総括 どうもありがとうございました。
それでは、鈴木議長代理、お願いします。
○鈴木議長代理 どうもありがとうございました。ありがとうございましたと言いたいのですが、せっかくあれだけ聞き慣れた混合診療のお話ではありますけれども、私どもの方はペーパーを出しておりますから、おたくの方もペーパーを出していただいた方が対等のディスカッションになるということを、最初に申し上げておきます。
混合診療の禁止というのは、これはもう長年議論されてきた問題でして、率直に言って今日の草刈総括のポジションペーパーにもありましたが、私も最初に聞いたときに、さっぱりわからなかった、今日もよくわからないということで、なぜ一連の診療の中で、保険外と保険内のものが行われると、根っ子に戻って全額支払わないといけないのか。私自身が患者であるとしたら、毎月お金を払って保険料を営々と積み立てておるわけです。それなのに戻って普通の保険適用のものまで保険からの支払いが否定されなくてはならないのか。これは本当にどうしてもわからない問題です。この問題を巡って、2001年の9月に、ここにおられる櫻井副会長も御出席の下で、総合規制改革会議の時代に医師会と議論をしました。医師会の方は、株式会社と混合診療は絶対認められないと言われるが、何の理由も御説明にならなかった。こういう場では、今日初めて説明を聞きました。そしてあの時言われたのは、患者の生命の平等、それから医療は市場原理になじまないということだけでした。それについて私が質問しても御返事はなかったという経緯があったわけです。
今日の御説明を承っておりますと、昨年、平成15年3月の「日本医師会の混合診療に対する見解」というものをほぼなぞった議論であると思うわけですけれども、このペーパーも読ませていただくと、よくわからない。これは、簡単に言うと、日本の医療の特徴というのはフリーアクセスを認めていることだ。そして、このフリーアクセスを支えているのが国民皆保険制度と現物給付であるということで、現物給付がにわかにフリーアクセスを支えるものとして、国民皆保険と同じ立場を持って重要だということを主張しておられるようであります。現物給付には。そういう立場があるのだから、現物給付に反する。つまり患者からお金を一部いただくような混合診療は認められないとことのようです。そしてこの原理がわからないものとはもう議論しても始まらない。はっきりそう書いてあるのですね。だけど、そうなのでしょうかという議論があると思うのです。
この議論は、哲学論みたいな話になってしまうから、そう長くはやりませんけれども、いわゆる現物給付でやるというのは、国がやる皆保険のシステムの中の一つのやり方であるにすぎないと私には思われるわけです。現物給付に対応するのは、現金支給ですね。お医者さんと患者との間で、医療行為に対するお金の支払いがされて、それを保険組合に対して請求する。これはどっちの方が面倒ではないかと言ったら、それは現物給付でやった方が面倒ではないということは、言えると思います。その程度の差の問題であって、それをあえて取り上げて、現物給付というものを曲げると、まるで日本の医療制度の根幹であるフリーアクセスがつぶれてしまうと言わぬがばかりの言い方というのは、一体いかがなものかと思います。さっきのお話も、それに関連しておっしゃっておられるので、そこのところについての御見解をお聞きしたい。
第2点は、混合診療容認論というのは、これは規制緩和を要求する側がそれを言い出したものだと、経済財政諮問会議とか、総合規制改革会議という名前も出ましたけれども、それは公費を抑制するためであって、隠れた意味はそういうことだと言われた。これはちょっと悪い言葉で言うと邪推、ひがみではございませんか。そういうことを言い出したのは、医療がどんどん進歩していく中で、保険財政というのはどうしても限界があるわけです。それはまた後の方では特定療養にかかわる費用も全部保険に入れろというふうにおっしゃるけれども、その保険の費用は誰が出すのだということです。それは国が何でもいいから、厚生年金の金を回してでも、あるいは税金を回せばよではないかと言えば切りはない話ですけれども、費用は保険者が大部分を負担するわけですから、その被保険者の負担を考えてみたら、今、若い人たちがある程度のところまでの負担は耐えたとしても、それ以上の負担には耐えられないことになってきているところに限界があるわけですね。限界があるけれども、しかし、よい医療を受けられる仕組みの問題。
そういう状況の中で、それを与えるためにはどうしたらいいかということです。かつてと違って情報の非対称性というものは解消してきています。患者がそれを本当に望むものであって、医師とよく相談し、その点についてクリアーになってきたものについては、患者から妥当な費用をもらって提供するという仕組みをなぜ認めてはいけないのか。その問題に尽きるわけであって、患者の希望というものを、どうしてそこまで公的な制度の中だけで取り扱うということを主張なさるのか。
アメリカの例とかいろいろ言われましたけれども、アメリカの例と日本の例とは全く正反対の方向であって、正反対の方向になっているのにアメリカの例の弊害を説いても始まらないわけです。
ですから、私は公私ミックスだと言われますけれども、そういうような2つのシステムをうまく合致させてやっていくというのが、いわゆる混合診療が目指すものであって、公的診療で全部カバーするには限界があるからです。それは公的費用で全ての医療が行えるお金が賄えればよいが、無理があるということです。そういう問題を抱えながら処理していくということが当たり前の解決です。それをあくまで否定され、最後はまた経済と生命とは対等には置けないという議論に戻ってしまいましたけれども、なぜそういう御議論をいつまでも続けられるのか。
もうはっきり言わせてもらうと、現物給付という主張は何かというと、お医者さんが医療というものは自分で決めて患者に与える、押し着せをする。そして、患者はそれを受け取るだけだ、その差配はお医者さんがする。つまり医師天動説というのか、そういうようなものの考え方、これは伝統的に医師会のお持ちになっておられるお考えなのでしょうけれども、そういうような考え方をベースとして、そして取引の金の支払いは、患者ではなく保険者と別途にやる。国が介在してやると、こういうことを言っておられるわけです。医師天動説をなおこの時代にも主張なさるのか、ここら辺に問題の根源があると思いますが、どう考えられるのかということも聞きたいわけです。
そのほか、混合診療禁止の法的根拠については、いろいろな議論はあるけれども、時間がないから、後で時間があったらにしますけれども、それが禁止されておるとおっしゃっが、禁止の法的根拠というのは、実は無いのですね。そういうことについて、これは結論だけを申し上げておいて、議論するのだったらしてもよいですけれども。
混合診療のメリットとしては、我々がポジションペーパーにも言っていますけれども、患者の選択をもっと認めてやってくださいということです。お医者さんだけで判断して、お医者さんだけで決めないでくださいということです。そういうものがあってもよいでしょう。それが全部であってということを言っておるわけではない、そういう部分があっていいでしょうということを言っているわけです。
それを、さっきの繰り返しになって、それは保険でやるべきだという議論が返ってくるに決まっているだろうけど、しかしそうはいかないという限界があるということをかみしめた上で言っていただきたい。
それから、当然そういうことをやらないと、日本の医療の技術というのは進歩しないわけです。従って、患者の海外逃避、日本の医療の空洞化ということは、もう言われているし、事実なわけですね。だから、日本の医療の技術を進めるためには、あるいは日本の医療ビジネスというもののレベルを向上するためには、こういうものも一部入れないと進まないではないかということです。
この点についての配慮は、どういうふうに考えられるのか。私どもから言わせると、余りに混合診療禁止にこだわられたことを言われると、命の平等という旗を掲げて、実は医師間の競争を排除することによって、医師の平等を図ろうとしておるのではないかというふうに考えたくなってしまうということも申し上げたいと思います。
それから、混合診療を解禁しますと、さっき言ったような医療の質の向上を図れるとともに、多彩な患者のニーズというものに応えられるわけです。勿論、安全性、有効性というものに対しての問題はあります。それを担保する方法は別途あるわけです。しかしそれが特定療養費制度だけではないということを我々は主張しているのです。それは、特定療養制度という、厚労省から与える、お上が与えるシステムの中で、お上の掌の上でやる医療だけではなくて、本当の新しい医療の開発というものは、実際に医療をする現場の中、つまりその人たちの自由な創造というものの中から生まれてくるというのが、本質ではないでしょうか。経済ではと言ったら、また経済と命は別だと言うでしょうけれども、そこまで経済を嫌わないでください。日本の発展は、経済が担ってきたわけですから、経済の世界では、そういうような自由を、やる人たちに与える、それが起爆剤となって新しいものができる。そういうものが、全てのところで見られる当たり前の現象なのです。
そういうことを考えますと、特定療養費制度だけではなく、そういう自由診療とのミックスというものを認めよということです。しかもそれに対しては何も自由診療部分の費用を保険で持てと言っているのではない。当然払われるべきものは払ってやってくれと言っているだけのことですから、それは被保険者にとっては権利なのだからということです。そういうことが実現すれば、医療関係の需要は増大するに決まっているわけです。そして、それは何を意味するかというと、単にお医者さんの収入が増えるとか、患者の利便が増えるということだけではなくて、要するに、それに関連して医療技術というものが開発され、進歩していくわけです。こういう効果を無視して混合診療の議論に対して毛嫌いしていても始まらないと私は思うわけです。
まだ、いろいろ言いたいことはあるわけでありますが。それから、さっき病院協は混合診療禁止の継続に賛成だとおっしゃったけれども、日本病院会の会員アンケート(2001年12月調査、有効回答820病院)では13.3%が「反対」または「わからない」で、残りは賛成または一部賛成でしょう。それから、日経ヘルスケア21のe定点観測(2001年8月調査、対象:82病院)の調査によると病院経営者の61%が混合診療拡大に賛成で、賛成と反対がくるくる変わるというのは、一体医療業界の中はどうなっているのですかということも言いたいと思います。
そこで結論になるのですけれども、混合診療の解禁をだめだというさっきの松原さんの議論というものからすると、やはり私がさっき言った医師天動説、競争の排除ということ、これが第1のポイント、皆様方の本音ですね。それが第1のポイントでしょう。
第2のポイントというのは、これは意外に説得力があるのですけれども、現在のお医者さんに混合診療を認めると、要するに、余り好ましくないことをやるという懸念があるのではないですか。例えば、私のところに投書が来たのです。もし混合診療を認めたらどういうことになるか。私だったらというのはその投書したお医者さんのことですが。私だったら患者さんに対してある健康食品を5万円とか10万円で売りつける、痛み止めの健康食品にしましょう。同時にボルタレンという安い保険適用の痛み止めも出す、そして健康食品代は5万円いただきますとやる、ボルタレンは100 円とかそんなものですが。そうするとボルタレンのおかげで痛みが取れる。すると、先生大変な効き目でした、あの健康食品を是非ください、10万円でも結構です。そういうことをやらないとは限らない、現実にそういうことをやっておる医師がどんなに多いことか。そういう投書がやってきたのです。
そういう事態に対する恐れ、懸念、それはわかりますね。説得力がある話です。医師会の解禁に対する懸念は、そういうところにもあるのではないですかと、私の疑問を投げかけておきます。お答えいただくかどうかは結構です。以上、私の感想と意見と質問を、長くなりましたけれども述べさせていただきました。
以上です。
○草刈総括 ありがとうございました。今のお話に答えていただきますが、その前にペーパーなんですけれども、私どもも今後いろいろ勉強していかなければいけないわけで、公にするなとおっしゃるならしませんけれども、少なくとも今日も皆さん持っておられるわけで、それは一部いただけないですか。
○松原常任理事 実は、今日の朝まで直していまして、申し訳なかったんですけれども、パワーポイントというのはすぐに直せるところに意味がありまして、ペーパーにすると直せないのでそうしたのですが、御希望でしたら整理いたしましてお渡ししても構わないと思います。
○草刈総括 それは是非お願いしたいと思います。ありがとうございます。私どももさっきまで事務局の方でやっていたものでできなくて、済みませんでした。それは是非お願いをしたいと思います。
お答えがもしありましたらどうぞ。
○松原常任理事 鈴木さんの御主張、ごもっともな点もございます。目の前のところで、どうしてお金を払えばいいものを、なぜ保険も使えなくなるのかという、非常に素朴な疑問から出ておられると思うんですが、私ども反論がございますので、反論させていただきます。
まず、現物給付でございますが、この現物給付の非常にいい面は、先ほど申しましたように、まず必要なもの全てを給付できるということです。そして、その給付する内容につきましては、医療機関から保険者が全てを買い上げて、そして患者さんにお渡しするということでございますので、そこで価格の設定ができるわけでございます。もし現物給付ではなくて、例えば、自由診療で、ものすごく効果のあるような治療があったとします。そうすると、患者さんは自分の命が助かるためには何とでもいたします。もし医者がどうしてもそれが必要だと思って、患者さんもどうしてもそれが使いたいと思いますと、先ほど申しましたように、アメリカの例でも明らかなように、価格というのは上がってまいります。ここに市場原理は導入できません。価格が上がるということは、その分だけ患者さんの負担が増えるということになります。
今、日本の医療がアメリカの2分の1の費用でできているということは、この現物給付によって公定価格があるためでございます。現物給付は、健康保険上の規定によるものです。この規定によって混合診療ではなく、現物で支給しなさいというのが法律の規定でございますので、全く法的根拠がなく混合診療について反対しているわけではございません。あくまでも健康保険法上では現物給付するのが原則でございます。
次に、そのようにして全部保険にしたら非常に金がかかって仕方がないが、金がかかることは国がやれないということをおっしゃいましたけれども、ちょっと考えてみてください。自由診療、あるいは混合診療でお金がかかっても、だれが払うんですか。患者さんですよ。ということは、全ての医療費は国が払っているんじゃないんです。全ては患者さんが税金として払った国のお金で払ってもらっているだけで、全ての医療費を負担しているのは国民なんです。それを財政の面からだけ言うのは、皆さんが国のサイドに立って、国の財政のことを考えているのは理解しますが、しかし、費用全体は最終的には国民みんなで払うわけですから、そこのところは国の在り方の問題ではないでしょうか。
3番目に、医者天動説だとおっしゃいますけれども、我々は患者さんの健康と命を守ることを目的として頑張っているわけです。その中で、今のシステムである現物給付が一番適切ではないかと考えているわけでございますので、天が我々を中心として回っているとは思っておりません。
また、アメリカは非常に進歩していて、日本でできないんじゃないかとおっしゃるんですが、実際のところ全ての医療は日本でできます。例えば、小児の心臓移植なんかはできません。これはなぜかと言いますと、小児のドナー、つまり提供することを日本の法律が禁止しているからです。ですから、重い心筋障害があって、移植しなければならないような方があっても、日本の場合ではそれを子どもさんから子どもさんに移植すること自体ができません。そういったことを禁止されているわけです。 ほかのものは、原則として日本の国では全てできます。日本の国は、法律が許せばそういった治療については何でもできる状態にございます。
○八代総括 それは現に行われているのですか。現になぜ日本の患者がアメリカに行って治療を受けているのですか。
○櫻井副会長 何の患者か言ってくれますか。どういう患者がアメリカに行って受けているかを言ってください。
○八代総括 何の患者かは分かりませんが。
○櫻井副会長 答えられないで言うのはまずいんじゃないですか。いつも言うんだけれども、今、松原君が言ったのは、小児の臓器移植の患者がアメリカへ何千万円もかけて行っているが、それは日本の法律が禁止しているからで、医療ができないのではないと言ったんだから。
○八代総括 では、小児以外の患者は日本からは一切行ってないということですか。
○櫻井副会長 だから、行っているなら行っているということを言ってください。
○八代総括 行ってないということを言っていただければ、それでいいです。
○櫻井副会長 我々が言う必要はないので、あなた方が、行っている人がいるということを言いたいなら、それを言わなきゃおかしいですよ。
○八代総括 例えば、アメリカの病院で日本の患者向けのホームページを作ったりして、日本からの患者を誘致しているという話は聞いています。厚労省の統計にはありませんが、日本から多くの患者が米国に行っているというのは、現に存在する事実で、それを否定されるのですかということを申し上げているのですね。
○松原常任理事 移植の問題を言っておられるんだと思いますけれども、結局移植というのはドナー、つまり移植されるべき臓器をどれだけの人が出してくれるかという問題があります。
○八代総括 移植以外の話ですが。
○松原常任理事 日本の場合には、そのドナーの制度がまだまだ未熟でございます。アメリカは成熟しています。
小児の件に関しては、今、申しましたように、そのドナーを出すこと自体、子どもさんの臓器をもらうこと自体を法律で禁止しているのでできないわけです。あとの問題は、日本というのは非常に進んだ国で、ほとんどの治療は日本でできます。
続けさせていただいてよろしいでしょうか。医学の進歩の問題でございますが、私が先ほど申しましたように、あくまで特定療養費という制度がございますので、安全性が確保され、そして有効性があれば、その特定療養費に入れて、一定の期間がくれば保険に入れることによって、私ども日本国民全員がそれを受けることができます。
例えば、非常に金のかかるようなものであっても、保険を使うことができれば我々は全部使えます。それを単純に、お金のある人は払ってもいいですよという制度にしますと、なるべく自費でやってくださいという方向になります。
そうすると、先ほど私が申しましたように、何とかして国民は受けたいわけですから、受けるとしたら私的保険を作らざるを得なくなります。ところが、私的保険はアメリカで失敗しているように、営利を目的とする保険によっては、我々の命を保証する十分なことはできません。だから、私どもは反対しているんです。
いろんな方が医者にもいるんですねとおっしゃいますが、それは多数の中にはいるかもしれません。私どもが申し上げているのは、目先のことを考えると混合診療にした方がいいように見えるんですが、日本の国民の将来を考えたら、やはり全員が平等に最新の医療が公平に受けられるような制度を維持していく方が大事だという事です。そして、それを私どもの会員の中でまだ理解されてない方、ある病院の会員の方に理解されてない方がいらっしゃいますが、なるべく説明していくようにしております。
ただ、目の前の患者さんを何とかしなければいけない。だけどこれは制度が悪いんです。
例えば、いろんな問題で、月一回しかCEA、つまり腫瘍マーカーを使えないから、あとは患者さんが自費で金を出したらいいと、これは医師に任せたらいいんです。医師の判断によって、患者さんに必要なものだったら保険を使えばよいのです。そういったら天動説と言いますか、私どもは患者さんの健康と命のために一生懸命仕事をしているわけで、無駄なことはしません。何を規制されているかといったら、実際のところ中医協で決められた金額とか回数とか余計なところで規制されているわけで、むしろそういうところを解いてください。そのようにしていただいたら、私どもも十分なことができるわけです。
○草刈総括 それでは、松原先生に伺いますが、私どものペーパーを見ていただいて、5ページと6ページに、いわゆる混合診療を容認されるべき具体例というのが書いてありますね。今まさに言われたピロリ菌の話も出ているんです。それから、おじいちゃんが病院に入っていて、この人はインフルエンザになったら死んじゃうよという場合に、予防接種をやりました。そうすると以前は根っから全部保険適用にならなくなりますという、非常に矛盾した話があって、ここに書いてある1番というのはその類ものです。
それから、この2番はちょっと、高度診療とか入ってきてややこしいから置いておいて、3番目のところとか、これは乳がんの手術をして、それと同時に美容整形をしたらだめになってしまうという有名な話。
それから、4番目は、どっちかというと、言わる生活的に不便なもの。こういうものを、要するに、今のお話を聞いていると、こういうものはもう早く制度自体を変えた方がいいというお考えですね。そういう理解でいいですね。
○松原常任理事 制度自体を変えるのではなくて、これで規制していることを変えるべきだと思います。
○草刈総括 だから、規制を緩和したらいいわけでしょう。
○松原常任理事 そうです。私が言っているのは、混合診療にするんではなくて、いろんな保険診療の中の規制をもっと改善していただく方に力を使ってくださいと申し上げているわけです。
例えば、ピロリでも、その方が何回でも受けてもし除菌できるということが医学的に保証できているのであれば、あるいは3回目、4回目で別の薬を使って、ピロリが除菌できるのであればそうすべきなんです。ところが、一律に保険の制度の中で、これを規制していること自体が問題なんです。本来は私どもに任せていただければ、それぞれの患者さんに一番いい方法を選べるわけです。そういったことを緩和すべきで、規制されているからその分を自費で患者さんに負担してもらった方がいいですよというのは、ちょっと話が違うんじゃないかということを申し上げているんです。
○草刈総括 だから、方法論が違うんですけれどもね。
○櫻井副会長 例に挙げてある健康診断後のポリープの摘出手術は、そういうことで我々の主張が通って認められました。つまり今、松原君の言っているのは、正しいことであれば、きちっと我々が主張して、保険で認められるべきものは保険に入れるべきだということで、まさに例に挙げられた健康診断後のポリープの摘出は、勿論、初診料は取れませんけれども、ポリープ摘出は保険適用になるということをきちっと認めました。そういうことをやってほしいと彼は言っているわけです。
○草刈総括 それはわかります。だけど、そのやり方の方法論的に、保険の方でそれを持っていくようにしましょうというのと、自由診療じゃなくて混合診療でやるべきだというところは、方法論的に違うんですね。これはわかりました。
もう一つ質問ですが、さっき特定療養費の話が出ましたけれども、これは変だなと思って聞いていたんですが、要するに、医療保険というのは現物給付でありますと、それはよくわかります。これがまず既定にあると、我々の医療の。これはもう間違いないことで、こんなものを否定する気はさらさらこっちもないわけです。だけど、現金給付になると途端に罪悪みたいにおっしゃるんだけれども、特定療養費というのが、勿論一部は保険でカバーできる部分は当然あるわけで、プラス現金給付ですから、結構我々が言っていることと同じことなんですよ。
○松原常任理事 そこは大きな違いがございます。
○草刈総括 どこが違うんですか。
○松原常任理事 特定療養費は、最終的に保険に組み入れられるべきものなんです。つまり永久にこれを置いておくわけではないんです。安全性と有用性が確保されて、みんなで使っていいものであれば、自動的に保険に組み入れる。ある意味では、緊急避難の制度なんです。それを外してしまって、そんなものも使わずに、全部患者さんが自費で払えばいいということをおっしゃっているから、私どもそれは違うと申し上げているんです。
○草刈総括 それは同じことでしょう。こっちが言っているのは、保険に永久に入れないことを言っているんじゃなくて、それは勿論検証して、財政的な問題も勿論あるけれども、最終的に保険に入れば、これが一番ハッピーですね。
○松原常任理事 特定療養費という制度で、安全性が確定したものがそこに入っているわけですから、私どもの保険制度の中でも、今、御自身が主張されていることは十分にできるんです。ところが、なぜできないかと言ったら、特定療養費に組み込むときのいろんな規制があること。保険の内部でいろんな規制があることが問題であって、それを解除していただければ、特定療養費の中に入れれば、御自身が主張されていることは、今の保険制度の中で十分できて、混合診療にする必要はないわけです。混合診療にしますと、先ほど申しましたように、自由診療のところが広がっていって、最終的にそれを私的保険がカバーするようなことが必ず起きます。起きたときには、国民にとって不幸だから、私どもは今の制度を守って、そして今の制度を改善していきたいと申し上げているわけです。
○草刈総括 もう時間も、勝手に私がしゃべってはいけませんので、1つだけ確認しておきますが、現金を払ってはいけないということではないということですね。今、経過措置で何であろうと、現金を払っているわけですよ。特定療養費を。
○松原常任理事 特定療養費は現金をいただいています。ですから、現金を払うことが罪悪ではありません。保険に入るべき制度があるということが大事なんです。
○草刈総括 保険制度の中で取り扱うべきというご意見はわかりますが、それは「現金払い」している事実があるという我々の主張とは観点がズレています。
○櫻井副会長 ちょっといいですか。もしかしたら草刈さん誤解されているといけないけれども、特定療養費というのは本来は全額自費にしたということなんです。療養費払いというのは、全額自費にしてあるんです。だから、例えば、普通の入院とか検査が50万円かかりますよと、その上に30万円特別な手術代がかかりますよと、その30万円払えばというのは、30万円を現金で払って50万円を保険でやっているんじゃなくて、80万円全部自費にしているんです。それを療養費制度というわけですから、その中の特定のものは特定療養費制度でと。だから、本当は患者さんは80万円払わなければいけないんです。それで、保険者が50万円保険で給付する分を後で療養費払いで現金で返してくれるという制度を、たまたま代理請求という形で、非常に皆さん誤解しているかもしれないけれども、医療機関が保険の請求のように請求できることにしているから誤解しやすいんだけれども、特定医療費制度というのは、完全に全額現金制度です。つまり保険の現物給付制度の全くの例外です。それで、彼の言ったように、高度先進医療については、それは将来保険に入れるという方向性がはっきり書いてあるわけですから、そういう意味で、そういうものであったら、つまり安全性と有効性が証明されたら、保険に入れることを前提に、それを臨時的に現金給付というか、全部自費ということですが、やってみようというのを言っている意味ですから、それは誤解いただかないように。
○草刈総括 それは、お話はわかりますが、一般国民にはその論理は納得できないと思います。
○櫻井副会長 納得できないじゃなくて、そういうルールでやっているということを申し上げているんです。
○草刈総括 それはおかしい……
ぼくばかりしゃべったらまずいから、どうぞ皆さん言ってください。
○八代総括 今、櫻井さんが言ったのは非常に形式的な話で、国民から見れば一部保険で負担されて、一部を自費で負担しているということで、混合診療と何ら変わらないわけですね。まさにおっしゃったように、特定療養費というのは事実上混合診療の一部であって、ただ将来保険適用されるという空約束があるというのが違いだということです。だから、その範囲をどんどん拡大させていくということは、別に混合診療と矛盾しないわけですね。
○松原常任理事 特定療養費という制度の中でそれをやっていきたいと申し上げているわけです。特定療養費から外しますと、保険に入る保証がなくなってしまうわけです。そうすると、最終的にはその部分は自費で患者さんがずっと負担しなければいけなくなる。私ども、先ほどから申し上げているのは、目の前の話をしているのではありません。特定療養費という制度があって対応できるのに、それを外して混合診療という制度を持ってきますと、最終的には国民の負担が多くなるばかりだということを申し上げているんです。
○八代総括 さっきの今後増え続ける医療費を際限なく国の公的保険でカバーするというのは、夢物語ですね。おっしゃったように、医療の技術は日進月歩なんであって、高い技術をお医者さんも使いたいし、患者さんも使いたいと。それを際限なく医師の裁量に任せて、全部公的保険で面倒をみようといったら、もうこれはパンクしてしまいますね。
○松原常任理事 だれが恩恵を受けるんですか、国民でしょう。国民のためにやっているんです。
○八代総括 国民のためにやっていることなら際限なく何だって国が使っていいということなんですか。だから、なぜそれを個々の患者の判断に任せないのか。基礎的な部分については国が皆保険をきちっと維持していく。アメリカとは違うんです。公的保険と民間保険は代替じゃなくて補完的関係にあるんですね。そこは意図的に混同しておられますけれども、そんなことを我々は主張していない。公的保険を廃止しろなんて一切言ってないわけです。
ですから、公的保険で高い医療水準を守ると同時に、更に技術進歩の分については、患者に負担してもらうという組み合わせをなぜ否定して、全てを公的保険で社会主義体制でやらなければいけないと考えられるのか、そこが最大の争点です。
○松原常任理事 先ほど申しましたのは、私、社会主義体制とは言っておりません。あくまでも自由主義体制の中で、それを維持するためにはどうしたらいいかという議論を、先ほどスライドでもお見せしましたように言っているわけで、私は結果的に平等を求めているわけではございません。あくまで高度先進医療は特定療養費という制度があって、その中でいろんな議論をしながら導入していくわけです。そしてそこへ入ったものは、最終的に保険として皆さんのコンセンサスを得て入れているわけですから、そういう制度がある以上は、それ以上の自費で患者さんから支払う制度を作ることはないと申し上げているわけです。
○白石委員 特定療養費制度なんですけれども、これは中医協という患者代表が入らない、極めて閉鎖的な組織で議論されている。これも今後改善の余地があると思いますが、一つひとつ協議をして、そして時間がかかる制度と、今回我々が主張しております現場の工夫と競争を促進する混合診療とは別建ての話だと思います。
済みません、素人ですのでそもそも論のところを少しお伺いしたいんですが、櫻井副会長と寺岡副会長にお伺いしたいんですけれども、先ほど松原常任理事の御説明からございました、患者に必要な医療というのは誰が決めるべきだと思いますか。
○櫻井副会長 医者と患者と双方で決めます。
○白石委員 現行制度の中で……
○櫻井副会長 医師天動説だとおっしゃったけれども、そんなことはありません。そこに混合診療を入れれば、むしろ天動説がさっきのようなことで起きると思います。つまり患者に……
○白石委員 混合診療を認めない現行制度の中で、患者の意思が主体的に反映できる制度になっているとお考えでございますか。
○櫻井副会長 主体的って、患者さんは嫌な治療は受けなくて済みますよ。
○白石委員 嫌な治療は受けないかもしれませんけれども、好きな治療は受けられないですね。
○櫻井副会長 それは我々も好き勝手なものはできないというのは、保険診療の中でやっています。
○寺岡副会長 それはしかし御存じだと思いますが、インフォームド・コンセントとか、インフォームド・チョイスとか、いろいろな仕組みがだんだん作られていますね。その中で、医師と患者さんとの共同によって医療が組み立てられると思います。
○櫻井副会長 混合診療を入れたって同じですよ、自費診療だって同じですから。
○白石委員 自由診療を認める話は別物だと思います。
○櫻井副会長 自由診療だって患者さんが好きな医療を受けるわけじゃないですよ。
○本田委員 今のポイントの中で御確認させていただきたいんですけれども、医師会としては自由診療、つまり保険外診療を全く否定されているというわけではございませんね。保険外診療というのはあってもいいと。
○櫻井副会長 自由診療をやっている人はいますからね。
○本田委員 そうですね。であるとするならば、そういう観点からは、お医者様の方も患者の意思を反映したような診療というのができるようになっていくと。保険には改定すべきポイントがあるかもしれない。そこに関しましては、今まで意見を聞いていただければわかるように、私どもも否定する立場ではございませんが、自由診療というものでとりあえず経過措置としているのかもしれないけれども、補完していかなければいけないということに関して、医師会の方も御同意をいただいているということであるならば、問題は、そこがある中で、どうしてその一部のミックスしたものを認めてはいけないというところにそれほど御反対なさるのかというのがわからないんですが。
○寺岡副会長 それについて私の考えを申しますが、今日の新聞をごらんになったと思いますが、所得格差が広がったというニュースが出ていました。平成9年以降、所得格差が急激に差が開いていると。低所得者と高所得者、その両極化して中間層がいなくなっているという、そういった背景にかんがみて、この混合診療というものを考えますと、混合診療をやるということは、やはり所得によって医療の差別化が起こるということにつながるわけですから、そういった意味でやはり助け合いとか、人と人とのつながりという話もさっき出ましたけれども、そういった医療の理念に立って行う医療の中に、所得による格差によって差別が起こると、そういった方法はよくないというふうに基本的に考えています。
○本田委員 私も素人ですので、教えていただきたいんですが。自由診療、つまり全く保険が適用されない自由診療こそが所得がないとできないと、要するに、自由診療はできないけれども、混合診療で一部認められて、それであれば払えるという方が仮にいらしたら、そういう方は、ただ今までのところは混合診療が認められていないので、例えば金額があと10万円かかってしまうが10万円が払えないといった場合には、その自由診療部分も受けられないということになりますね。ということで、医師会としては、所得の格差が反映するような自由診療に対しては、全く御反対をなさるということなんでしょうか。
○寺岡副会長 そうではありません。今ちょっとどういうことを頭に描いておっしゃっているのかよくわかりませんが、実際に医療費が平均的にどのぐらいかかって、それから個人負担をどのぐらい払っているかということを御存じですか。
○本田委員 それでは、教えていただけますか。
○寺岡副会長 仮に虫垂炎で1週間入院したとしますね。そうしますと、これをサラリーマンが払おうとすると3割負担です。大体3万円強払うことになります。これはかなりの負担だと思います。
そのほか、胃の検査をするとか、その他いろんな医療がありますが、そういったかなりの負担が今、既に起こっている。平均的な保険診療そのものでも個人負担がどんどん増えたために、サラリーマン、あるいは低所得者というとちょっと差別化した言い方になりますが、かなりの負担を負っているという、そういう環境の中で、更に混合診療という差別化というものを行いますと、やはり一層その医療が受けられる人と受けられない人が所得によって差別化が起こることになるでしょうということを言っているわけです。
○本田委員 自由診療の場合は、そういう差別化がないんでしょうか。例えば、自由診療で入院時に幾らかかるか存じませんが、例えば数十万という金額になるんだと思います。それは今、実際問題自由診療で行われているわけですが、例えば、お金があればできる、お金が無ければできないという状態であるかと思うんですけれども、それに関しては御否定をなさるというお立場でしょうか。
○白石委員 それかお金がある方が望めば、その自由診療部分を自費で受けられると。そういうことをかえって阻害する逆差別につながる発想のような気がしますが、どうして低いところに合わせていかなければいけないのか、それは極めて護送船団方式だと思います。
○寺岡副会長 それは理念の違いですね。では、低い方を切り捨てるのはいいわけですか。
○白石委員 それは申し上げてないですが、一方が差別と言うのであれば、それは逆の場合はどうなるかということです。
○松原常任理事 おっしゃること、よく理解できるんですが、私ども自由診療においては、お金がある人が幾ら何をしても構わないという説に立って考えてもいいと思うんです。お金が幾らかかっても、治したいというならそれを使われたらいいです。それはもう私どももそれがその方にとってプラスであれば、そのように努力いたします。
ただ問題は、今議論しているのは、公的保険を使うかどうかです。公的保険というのは、皆さんが助け合いのために出した保険ですから、その保険を使う以上はやはり規則に則ってやりましょうと言っているわけです。
だから、全額自分でお金を出される方は、全く自由にされたらいいと思います。それは、自由主義の社会ですから全く保証されたものです。
ただもう一度申し上げますと、保険という枠組みを使う以上は、これは公的に皆さんのお金でやっているものだから、ある程度規則があるのはやむを得ないのではないでしょうか。
○八代総括 それがある程度の規則ではなくて、高い保険料を払っているのに、例えば10万円から1万円の実費負担を払えばいいだけのものを、それを使うことによって全額自己負担しなければいけないという、アメリカでもないような悪辣な保険機能を持っているわけです。
○松原常任理事 高度先進医療でなくても、安全性と有効性が確立していれば、八代さんは10万払わなくても保険でいけるわけです。そういう方向でやるのが筋ではないですかと申し上げているわけです。
○八代総括 だけど、安全性、有効性が米国で確立していても、なかなか日本では保険適用にならないわけですね。その間を、例えば、まさに混合診療でやればいい。それは何も特定療養費、高度先進医療に限定することはないわけです。普通の日常的な、もっと低レベルの技術ですら、例えば、がんの特効薬ですら、日本ではなかなか保険適用されない。それが現実だと思います。
○松原常任理事 気持ちはわかるんですが、例えば、新しい薬、保険収載、つまり保険の認可が下るまで、中医協が通るまでの間は特定療養費として認めているんです。つまり高度先進医療だけでなくて、そういったとにかく急がねばならないものは、特定療養費の制度を用いることができます。ただ、特定療養費に認定するところのシステムがややこしいので、そこのところは何とか改善する方向で考えていただきたいと申しているわけです。
また、中医協も患者さんの代表が出ていらっしゃらないとおっしゃいましたけれども、労働者の代表として連合の方々もかなりいらっしゃいます。私は連合の方々は、やはり患者さんの代表だと思います。
○櫻井副会長 今、大臣がいらっしゃるから確認したいのだけれども、今度小泉首相が選挙に向けて出したパンフレットを見ますと、国民皆保険制度を堅持するというのは、政府の方針ですね。
それで、国民皆保険制度というのは、国民全体が一つの公的保険に入って、みんなが平等に必要な医療が受けられるというのが国民皆保険制度だと思うので、そういう意味でさっきの本田さんの御質問も、それから八代先生は前からおっしゃっているんだけれども、この上に何か乗せるのに、これだけ乗せるのになぜ悪いんだというんですけれども、この保険は国民皆保険でみんなが支えている保険なんです。だから、これを乗せるのに、「私だけ」を使うのはおかしいですよ。保険制度というのは、みんなが平等じゃなければいけないから、自分だけこれを使って、この土台の上にこれだけ払えばいいんだからこれを払わしてくれというのは、国民皆保険制度に値しないということを私どもは申し上げているわけです。
○八代総括 それは、櫻井さんの見解であって……
○櫻井副会長 私の見解を言わせてもらってはいけないんですか。
○草刈総括 いいですよ。
○櫻井副会長 そうですよ。そうしかあり得ないんですよ。
○安念専門委員 どうしてあり得ないんですか。
○櫻井副会長 だって、これはみんなの保険ですから、
○安念専門委員 みんなの保険だから、みんな使えるものを使うので、それだけの話ですよ。
○櫻井副会長 でも、病気でない人のお金がここに入っているわけですから。
○安念専門委員 それはそうだけれども。
○櫻井副会長 だから、それが必要な医療であれば保険に入れることを考えればいいし。
○草刈総括 櫻井副会長ね。例えばで言ってしまいますと、サラリーマンとさっき寺岡さんがおっしゃって、サラリーマンが例えば胃炎でずっと入院していましたと。だけどどうしてもうまくいかない。例えば、ピロリ治療しましたと。胃炎では今、ピロリは保険適用できませんね。胃がんと胃潰瘍ならできるけれども。だけど、我々は明日胃潰瘍になりたくない、胃がんになりたくない、だからその程度の金は仕方がないから自分で払うと、自分の健康を守るために。それで払った途端に根っ子からばんと保険が適用できなくなる。それはさっきの櫻井さんの御説明では、だれも説得できない議論ですよ。それが、100万円、200万円、あるいはものすごく1,000万円かかると、化膿時の議論というのはわかります。だけども、その類の話が横行しているわけだから、ぼくの周りの人も随分そういう人がいますよ。だから、それを一体どうしてくれるんだということで、そんなことを特定療養費が来るまで待っているなんていうことではないじゃないです。
○松原常任理事 やはりそれは保険で見るべきものではないでしょうか。例えば、胃炎であっても、胃潰瘍でなければ保険が通らないということ自体が間違いで、例えば、胃炎を放っておいたら胃がんになるという証拠が100%そろえば、私どももっと強力に主張します。私は、個人的には内科医ですから、胃炎であっても、ピロリを治療するのは当たり前だと思っていますが、そこのところが保険者さんたちが認めてくれないので困っているわけです。しかし、我々医師としては治療したいんです。保険で治療できればそれで済むのではないですか。それがもし混合診療でお金出していいよとなると永久に保険に入らなくなってしまう可能性もあるわけです。希望者だけ払えばいいんだというのではなく、ピロリ感染はがんの可能性があるんだという根拠があれば、保険に入れたら済む話です。規制をはずすよう一緒に努力してください。
○安念専門委員 いや、全く共同を組めるんですよ。だってほとんどの点で一致しているんだから。アメリカ型は手本にならない、そのとおりです。貧しい人間がアクセスできない、これはかわいそうだ、そのとおりです。それが皆保険は維持すべきだ、そのとおりです。保険で認めるべきものは迅速に、そして広範に認めると。そのとおりです。問題は必ずタイムラグがあるし、ものによっては永久に、あるいは中期的に入らないものがある、それについて自費でもいいからとにかくやってくれという患者にだめだという理屈がどこにあるのかというだけの話なんです。
○櫻井副会長 それは、先ほど鈴木さんが邪推だと言った公的保険の縮小のところにあるんですが、皆様方がやってらっしゃる官製市場の委員会資料に出されている絵は、皆様方は知っていると思いますけれども、現行制度が書いてあって、保険の上に特定療養費が乗っている。自費は独立している。将来というところに、公的保険は小さくしてあるんですね。それで自由診療は拡大していると、そういう絵を書いて、つまり将来のあるべき姿は公的保険の縮小なんです。そういう絵をちゃんと書いて、皆様方はそれをやっているということを知っているから我々は言っているので、邪推じゃないんですよ。
○草刈総括 それこそ邪推ですよ。
○櫻井副会長 だって絵を見てくださいよ。これが現行で、保険診療と特定療養費だけど、本来目指すべきは、保険診療は小さくして、保険外診療を大きくしようと、これは何年後か知りませんけれども、本来だったら放っておいても何年後は保険診療がうんと大きくなってなければいけないので、これがうんと大きくなって、そこに自費が乗るといったら、まだ少し議論の余地があるんです。なぜなら、八代さんがよく言われるけれども、無限大に保険でできるかって。おっしゃるとおりですよ。でも我々は差し当たって、前から言っていますが、ドイツ、フランス並み、GDP比10%の公的保険診療費を用意してくださいと。つまり、今で言えば40兆か45兆の間ぐらいだと思います。それを用意してくれたら、今のピロリ菌の話というのは全部入ります。恐らく臓器移植も、臓器移植というのは1人1,000万円とかかかりますけれども、数が少ないですから、そんなの1,000万円の人を10人やっても1億円というのは、全体の医療費から見ればたいしたことないので、そういうものも恐らく入ると思います。だから、是非公的な保険を、せめてドイツ、フランス並み、GDP比10%までの用意をしましょうと、そこまでやった上でこの議論をさせてもらってもいいと思っています。
○草刈総括 今のお話は、ある意味でわかるんですが、つまりそれは公的保険のあり方の一つの議論であって、今回の混合診療の議論とは若干かけはなれていますが。
○櫻井副会長 邪推じゃありませんよ。
○草刈総括 もしあれだったら訂正しますから、お気に障るんでしたら。
○鈴木議長代理 資料の性質によりますから、後で見せていただきます。
○寺岡副会長 文書の中に公的保険の守備範囲の縮小ということがはっきり書いてありますから、これがそのことを意図するんですね。
○草刈総括 それは要するに相対的な問題を申し上げているんだろうと思います。その議論はここでしても仕方がない。
今のお話はわかりますけれども、さっき八代さんおっしゃったように、無限に保険をふくらましていいというものではないわけです。つまり財政をどうするか、これは年金の問題と同じ問題がやがて出てくるということは1つ担保せざるを得ませんね。それはよろしいですね。
○本田委員 今の一例で申し上げますと、さっき総括もおっしゃっていましたけれども、乳房再建の話で、乳がんになりましたので乳がんの切除をいたしますと。乳房再建に関しては、これはやはりやりたいという方と、なさりたくないという方がおいでになり、これを全額保険で適用というのは、私の素人考えでございますが、ちょっと違うのではないかと。私自身が例えば乳がんになったとしても思うと思うんです。
ところが、今は保険適用にするために、まず乳がんを切って、それから1回退院し、再入院して再建をしないと保険の適用にならない。要するに、再建まで米国でやられているように、一気通貫でやると全てが自由診療とみなされてしまうので、乳がんの手術の部分から、根っ子から全部自由診療でお金を払わなければいけない。こういうものがまだ確かにその中には存在していて、こういうものは何らかの御検討を、つまり混合診療という形で対応していくべきものがあるんじゃないでしょうか。
○松原常任理事 実は、乳がんの手術の後の再建術は保険の適用のものがございます。ただ、その材料とか最終的な形とか見栄えとかの問題があります。それと両方の手術を一度にしますと、今のルールでは高い方を取って残りを半分にして請求しなければいけないというルールがございます。
したがいまして、それを一度にすると、費用の問題も出てくるのかもしれませんが、やはりあるべき姿は保険の適用で、必要十分なものができる、要するに、乳房再建手術も保険の適用にしてしまえば、それで済む話じゃないでしょうか。
材料の問題とか、シリコンが安全かどうかということを、いろんなことを議論しています。しかし、そのところが終了すれば、保険の適用になれば、つまり最初から一気に保険の適用でやれば問題はないわけです。ところが、これがもし混合診療でいいんですよということになると、永久に保険適用にはならなくなってしまうんじゃないでしょうか。その永久に保険適用にならなくなってしまうところを私どもは心配しているわけです。
負担する人が負担すれば済む話だったら、それはもう保険のシステムとしてはそのままになってしまいます。そうではなくて、やはり必要なものは必要なだけ給付できるようなシステムにみんなでしましょうということが主張です。
○南場委員 もっといい材質でやりたい自由度というのは、どうなるんですか。それは、患者の方にその自由度はないんでしょうか。
○福井専門委員 ちょっとお伺いしたいですが、松原理事のお話を伺いますと、保険の対象というのはもうそもそもあるべき適切な治療の概念と一致していないといけないという御主張のように聞こえるのですが、そういうことなのでしょうか。
○松原常任理事 最終的には、その方に必要なもので、安全性が確立され、有効性が確立されているのであれば、保険で給付すべきだと思います。
○福井専門委員 おっしゃることは一般論としてはよくわかります。ただ、保険対象をどう決めるのかというのは、例えば、治療方法が有効、安全かという判断、あるいはリスクがどれぐらいあるか、モラルハザードをどうやって抑止するか、保険財政全般に成り立つか、非常に大きな意味での政策的配慮というのは必ずあるわけです。だから、非常に有効だけれども、極めて高額だというときに、それを他の保険加入者全員で支えるべきかどうか、有効だけれども、非常に高額の療法費を他の人に転嫁していいのかどうか、という別途の考慮があり得ると思うのです。
○松原常任理事 逆に言うと、高額だとお金のある人しか使えないことになります。
○福井専門委員 そういう場合に、保険の範囲自体は実はどこか連続している、本当は入れらればいいけれども、財政上の問題で入れられないということがでてくる、本来必要性で言えば序列がある中のどこかで線を引かざるを得ない。どこかで線を引いた政策的結果が保険対象であって、そこで線を引いたからそれ以上は全てよくて、それ以下は全部だめだということには必ずしもならないような気がするのですが、それはどうお考えですか。
○松原常任理事 だめではなくて、やはり私どもは医師の立場からすれば、患者さんにとって必要なものは全て保険で適用できるようにすべきだと思っています。
○福井専門委員 勿論そうですが、今のように連続した場合もありますね。
○松原常任理事 財政上の問題を話しますと、例えば、今、31兆円かかっています。アメリカは、同じGDP比で考えて日本に戻しますと、60兆円使っています。ということは、私どものこの日本の国の制度というのは、かなりの満足度があるにもかかわらず、この金額でやっているわけなんです。
○福井専門委員 実額の問題ではなくて、およそ保険制度を適用する以上、どこかに限界はあるし、どこかで線を引かないといけないということです。線を引いたのがたまたま一種の政策的配慮の結果引かれた線だから、それを余り絶対視しないで、その線以上は勿論、保険でやればいい。だけれども、その要件に該当している人について、保険加入者の保険請求権は付加部分が乗ったら全部だめだ、というところに合理性はないのではないかというのが我々の主張です。
○寺岡副会長 それはやはり時代とともに変わっていますね。その線引きは時代とともに変わっているんです。保険診療の内容もルールも変わっているわけです。多少ラグタイムはあるかもしれないが、社会の流れを反映して変わっている。
○福井専門委員 タイムラグだけではないですよ。例えばまさに患者の年齢とか体質とか非常に普遍的ではないけれども、この患者に限っては効くとか、いろんな言わば限界線における、まさに確率性、有効性基準だけでは切れないような事例というのは具体的にあり得るわけです。そういう事例について、非常に個別的かもしれないけれども、その患者がその治療を望むというときに、お前の使えるはずの保険部分は全部引き上げるぞというのは、これは余りにむごい仕打ちだというのが我々の主張です。
○寺岡副会長 その気持は私もよくわかります。ただし、2つの問題がございます。1つは、そこであきらめて、そのままで混合診療にしてしまいますと、永久にその方たちはずっと混合診療の自費のままになってしまうんです。
○福井専門委員 そんなことはないです。それがもしおっしゃるように有効性、安全性が確立されるという検証が進めば編入すればいいじゃないですか。
○松原常任理事 可能性があるのであれば、確定できていれば特定療養費に入れるべきですし、それで安全性が確定できないものについては、これは非常に難しいと思います。 例えばその一人の医者が、これはあなたにとって大丈夫ですよと言っても、それは本当かどうかわからないです。安全性の確立はかなり大切な問題と考えます。
○福井専門委員 保険の対象にするかどうか。あるいは特定療養費の対象にするかどうかというのは、まさに白石委員のさっきの指摘のように、当事者たる患者個人の判断するところ以外で決められるのです。保険財政に関わる部分はわかります。保険に関わる範囲内で医療を実現したいと思う患者について、それが無限定に高額であっては他の加入者が迷惑するじゃないかというのはわかります。だけれども、ここでの議論はそうじゃなくて、それを超える部分について、自己責任で、自分で全部払うから継ぎ足した部分を自由にやらしてくれというのに、その患者の言わば自由な自己決定権を抑制するかどうかという論点であり、それが混合診療の禁止につながるわけです。そこに合理性がないというのが問題の本質だと思います。
○草刈統括 松原先生すみません。進行係として申し訳ないんですが、あと20分しか時間がなくなりました。もう一つのテーマを議論したいので、この話は今回だけで終わるわけではないので、また、何度も御意見を交換したいと思いますので、恐縮ですが、その辺で次のテーマに移らせていただきます。
ちょっと口火を切らしていただいて、八代委員の方から問題提起をしてください。
(金子大臣退室)
○八代総括 私は日本の必要としている構造改革の中で医療の改革が最も遅れていると思いますが、その最大の原因は、今、医師会の方がおっしゃっているように現状で問題ないんだ、運用さえよくすれば何でもできるんだという御認識が一番重要な要因ではないかと思います。
それから、先ほど松原常任理事がおっしゃいましたように、小児の臓器移植以外の手術、どんな高度なものでも日本で十分できるんだということを明言されたということを記録に残しておきたいと思います。
我々の考え方はそれとはやや違うわけでありまして、混合診療の問題と並んで重要なのは、やはり日本の医療機関の設備とか器具と言いますか、お医者さんの技能というのが、残念ながら米国等の先進国と比べてかなり遅れているんじゃないか。その1つの原因は資本不足である。
つまり、医療機関というのが非営利ということに極端にこだわっておられますので、非営利であればいいんだと。営利はだめなんだという二分法できていますので、患者本位の医療の質を高めるというところが抜けているのではないだろうかということであります。 先ほど三上理事の方から詳しく御説明されましたけれども、企業を入れたら必ず悪くなる。患者にとって不利益になるということなんですが、逆に現在のいわゆる非営利の医療法人の体系の下では、極端な資本不足が起こっている。例えば医療法人協会の豊田会長も言っておられますけれども、1億円を超える資本金を持っている医療法人は全体の3%に満たないと。資本金2,000 万未満の医療法人が全体の71%を占めている。要するに、日本の医療機関というのは国公立機関を除けば極度の零細企業でありまして、こういう状況で患者の命にとって大事な医療が行われているという状況は甚だ問題ではないかということであります。
勿論、零細の病院や診療所があることはちっとも構わないんですが、それと同時に、やはり近代的な装備を揃え、高い技術を持つ病院がもっとたくさんあれば非常に患者にとって望ましいのではないか。そういう選択肢をなぜ否定しなければいけないのかということでありまして、我々が訴えたいのは、医療法人経営の近代化ということで、そのためにはその1つの条件として資本がもっと必要なんじゃないかということにすぎないわけであります。 時間もありませんので、余り長々と申しませんが、今、医療機関は非営利であろうが医療法人であろうが、資本を必要としているということは認めていただけると思うんです。現に多くの医療法人が赤字で苦しんでいて、必要な建て替えとか設備が調達できない。これは今の医療法人というのは銀行借入れに全面的に依存しているわけで、それはなぜか非営利と認められているわけであります。
ですから、銀行からお金を借りるのは非営利だけれども、資本市場から調達するのは営利であるというのは、少なくとも一般常識からはどこからも出てこないわけでありまして、営利とか非営利というのはまさに医療行為で判断すべきものであるわけです。
アメリカのような慈善医療をするというような条件で非営利病院が認定されているわけですけれども、日本の営利・非営利というのは専ら資本調達方法で定義されていて、実際の医療機関の行動とは無関係なわけです。これが最大の問題ではないか。
よく言っておりますけれども、例えば電力会社は株式会社でやっておりますけれども、供給義務ということを課されることによって公益事業として認められているわけで、医療が非営利だと言うんなら、もっときちっとした供給義務を課すべきではないかということで、資本の調達方法だけで非営利を確保しようというのは極めて楽観的なやり方ではないかということであります。
大事なのは患者にとっていいかどうかであって、それが医療の提供者側から見て、非営利だから優れていて、営利だから望ましくないと一方的に決め付けるパターナリズムが日本の医療の近代化を妨げている大きな要因じゃないかということでございます。
先ほどいろいろ言われましたけれども、なぜもっと、言い換えれば医療法人が医療法人を合併するような形で、近代的なよい病院が質の低い病院を淘汰するというメカニズムがなぜ機能しないのか。そういうことによって非常に安心できる医療を受ける機関が非常に不足しているのではないかということです。
先ほど三上さんがおっしゃった中で、非常に私は奇異に思ったのは、反社会的勢力が、例えば医療機関を乗っ取る。これを防がなければいけないということなんですが、現にそういう心配があるというのは、そうした勢力が借金を通じて支配しているんですね。つまり、今の医療法人というのは赤字ですから、悪質な金融機関からお金を借りてしまうことがある。そうすると、そういう金融機関を通じて反社会的勢力が病院を支配しているということが起こっているというふうに聞いてます。
ですから、これは別に株式とか資本調達の問題ではなくて、まさに銀行からお金を借りたって起こることであるわけで、むしろ銀行からお金を借りなければ、それ以外の資本調達手段がないという現状がまさにそういうリスクをより高めているわけでありまして、まさに多様な資本調達方法をなぜ規制するのか。それが病院にとって好ましくないとおっしゃるのは、ある意味で一種の護送船団方式であります。質の高い病院がより質の低い病院をどんどん淘汰して、言わば大きくなっていく。それによって患者によいサービスを提供するということを恐れるのは質の低い病院とか診療所であるわけで、まさに競争を恐れるがゆえに、よい病院がどんどん拡大していこうというメカニズムを妨げているんじゃないか。これは昔からどこの業界でもある話であります。
そういう意味で是非医療の非営利性ということは我々も大事だと思っておりますが、それは資本調達方法の規制ではなくて、例えばカルテの開示の法制化とか、患者から見て最も当たり前のことすらきちっと法律で規制されていない。こういうことをきちっとやっていただいた上で、もっと患者の安全を守るための規制は強化する。資本調達方法の規制というのは、あくまで劣悪な医療機関とか診療所が生き残るための非常に有力な手段ではないかということで、医療法人経営の近代化を訴えているわけであります。
そのために先ほどのような資料を提供したわけですから、そういうことについて議論をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○三上常任理事 確かに医療の非営利というのは、医療行為によって規定されることはそのとおりであると思います。資金の調達方法によって変わるというわけではありません。
日本では大体間接金融、銀行借入れが主に行われておりますけれども、直接金融に道を開くかどうかについては現在検討しており、病院債、医療法人債などが考えられています。、当然株式会社も出資をすることは可能です。しかし、株式会社化するということは、医療機関の意思決定自体に、いわゆる株主という出資者の意思が大きく影響するということであります。 銀行借入れの場合は、銀行は別に医療機関の経営に直接タッチできるわけではなくて、社員総会で、いわゆる非営利が守られた中で医療の運営がなされるということになっていますから、その辺は資金調達方法と医療行為というのは全然別で、株式会社が出資していても意思決定に関わらなければ、十分構わないということです。
赤字が多いという話がありましたが、これはどちらかというと、資本の大きさというよりは診療報酬の問題で、現在までずっと診療報酬の引き下げがあり、厳しいぎりぎりのところでやっているということで赤字になっているということです。特に公的病院のような大きな病院、あるいは企業立の病院についてもほとんどが赤字であります。これは診療報酬の問題で、資本の大きさとは直接関係がないと思っております。
それから医療法人と医療法人は合併できないのかとか、それがもう少し近代化できないかという話ですが、これも今でもかなり医療法人が医療法人を合併をして、また別の法人になるというのがどんどん起こっておりますので、それは可能であるというふうに考えます。
○白石委員 三上常任理事のお話で、医師の倫理感というところがございまして、多くのお医者様が、ここにいらっしゃる皆様方のように倫理感高き方であれば、これほど医療過誤は起こっていないのではないかなというふうな認識を持っておりまして、今問題なのは、そうしたお医者様が市場から退出していく仕組みがないのではないか。ここが問題ではないかなと思います。
それはさておき、御意見として申し上げておきたいのは、企業は社会的責任を持つ存在でございまして、下手なことをすると市場から退出せねばならないわけです。先ほど御説明いただいた中でも営利企業であるから、利潤追求に走り、よいサービスが提供ができないという非常に観念的な御説明だったんですが、私たちはこれで納得できる材料はなかったと思います。ここをもう少し論理的に、なぜ営利法人であればよい医療サービスが提供できないのかということの具体的、かつ論理的に御説明をいただけませんでしょうか。
○三上常任理事 医療法人と株式会社は、もともと発想が違います。株式会社はいわゆる持ち分に対して利益を還元するということが目的で株式ができているわけでございますが、医療法人の出資というのは、出資者に対して利益を還元するためにそういう制度ができたわけではないということであります。
企業倫理と医師の倫理感というのは全く異質のものでありまして、ここが非常に混同されるところかもしれません。皆さんは医師の倫理感というのを認めておられないのかもしれないんですが、医療法人が非営利で公共性を保持しながらやるということは、医師の倫理感を認めているということであり、モラルハザードをなるべく起こさないようなシステムをつくるということが目的になっているわけです。
企業の中にも、医者の中にもいろんな人がおられて、企業家的な医師もおられますし、企業には非常に高尚な方もいらっしゃると思うんですけれども、平均すると、かなり民間とは違うということでモラルハザードの確率の問題だと思います。
○福井専門委員 日本で62ほど株式会社立病院がございますが、それらの病院で、例えば患者を選別したり、重症患者を受け入れなかったり、あるいは資産を切り売りしたり、企業グループ化や、反社会勢力の食い物になっているという、そういう例はあるのですか。
○三上常任理事 ほとんどございません。というのは、62ある企業立の病院はほとんど会社の社員の福利厚生のためにできた病院で、それらはほとんど赤字です。
○福井専門委員 福利厚生のための目的ということですが、現に治療しているのは地域住民がほとんどだということを聞いています。そうすると、おっしゃる話の証拠は何なのでしょう。それがよくわからない。
○三上常任理事 本来、企業立の病院はもともとそういう発想でできて、現在は一般の人たちの治療をやっておりますから、ほとんどが赤字です。
○福井専門委員 ということは、目的が企業の従業員の福利厚生であれば、その後全然違う機能になった病院、一般診療向け病院になっても、そういう成り立ちの株式会社病院ならおっしゃる弊害は発生しないという御主張ですか。
○三上常任理事 そういう倫理感というか、設立の趣旨によっては非営利が担保されれば認可をしていたということで、本来は株式会社の医療機関というのはないはずなんですけれども、現在62あるとおっしゃっていましたが、そういうことが認められているということです。
○福井専門委員 設立のときの目的に示された倫理感が、実態はそれと全く異なってしまってもどうして持続されるわけですか。
○寺岡副会長 実態が非常に劣悪であるということを踏まえておっしゃっているんですか。
○福井専門委員 実態はよい、とおっしゃっているから、その認識を前提にお聞きしているわけです。
○寺岡副会長 違うんです。62ある株式会社立の病院は、多いか少ないかというのは立場の違いですが、これは現在、病院の経営として医療倫理にもとらないで経営がなされているというように私、全ての事実を踏まえていませんから、わかりませんが、そういうふうに解釈せざるを得ないですね。
○福井専門委員 だとしたら、先ほどの三上理事の御主張というのは、およそ株式会社ないし持ち分に応じた議決権を有する経営形態の医療機関では、重症患者を受け入れなかったり、資産を切り売りしたという弊害が起こるという普遍的な御主張だったわけですから、だったら、現に日本にある、数の多寡は、多いと見るとか少ないと見るかはともかく、62ものサンブルの中で、そういう例が1つも表れていないというのは、御主張の普遍性をかなり疑わしめる材料だと逆に考えられるのです。
○三上常任理事 ほとんど大丈夫だということであって、中には生保患者を見ないというような企業立の病院もございます。
○福井専門委員 勿論例外はあります。しかし一般則の話でしょう。だから、患者の選別で重症患者を受け入れなかったりとか、救急車が医療法人の病院をたらい回しにされたりということは現にあるわけですが、一般則として医療法人病院で、おっしゃるような患者無視の医療がおよそ行われていなくて、株式会社立病院が存続しているというのであれば、何か他に証拠がないとおかしいんじゃないですか。
○三上常任理事 ですから、申し上げていますように、今から株式社会が医療に参入しようとする場合には、当然株式会社ですから、株主への利益還元をするということですから、黒字にならないと本来できないわけです。大赤字を出したら絶対に撤退しますから。そういうことは今の企業立病院で行われていないというのは、もともとの発想がそこから利益を上げようということで入ったものではなくて、厚生福利のために、社員のためにということでできた病院が今なお続いているという現実でございます。
○福井専門委員 言い換えれば、これからつくる株式社会立病院でも、ちゃんと定款か何かで目的が企業の従業員の福利厚生だということを示して作れば認めてもいいという意味ですか。
○三上常任理事 私は設立の目的が福利厚生であるということであれば、株式会社の制度としてできるかどうかわかりせんが、例えば共済組合とか、別の組織にしてつくるということは当然あり得るだろうと思います。
○福井専門委員 そういう株式社会立病院が、今のトヨタ病院、麻生病院みたいに実態はほとんど従業員ではなくて、地域住民を診るようになっても、目的が正しかったんだから、別に広まっても構わないということですか。
○三上常任理事 今のちょっとよくわからないんですけれども。
○福井専門委員 目的さえ従業員福利向けであれば実態は全く地域住民医療機関としての病院になっても構わないという意味ですか。
○三上常任理事 そういう場合は法的に認められているわけです。株式会社が病院をするという今の議論は、株式会社の目的というのは、株価を上げて配当するということか目的ですから、そのために事業をするわけですから、それ以外のことで病院をするということは考えられないわけです。
○福井専門委員 でも、今やっているじゃないですか。
○三上常任理事 それは昔の話でしょう。昔の福利厚生のためにできた病院が現在続いているという話と、これから株式会社が病院経営に参入するという話と全く違うと思います。○福井専門委員 もう一つお聞きしたいのは、アメリカ等の諸外国で株式会社立病院はありますが、そこでおっしゃっているような資産切り売りや、反社会集団の食い物になった事例は何か具体的に把握しておられますか。
○三上常任理事 具体的には知りませんけれども、営利病院というか、株式会社の病院というのは、アメリカが一番多いわけですが、これは遠藤久男氏がかなり検証されているんですけれども、株式会社の病院がいいという証拠は全くございません。どちらかというと、株式会社の病院の方が医療費が高くなるという証拠が出ていると聞いています。
○福井専門委員 でも、おっしゃる御趣旨は株式会社立の病院の医療費が高いという御批判ではなくて、株式会社のような形態の病院は、患者を選別したり、資産を切り売りしたり、ヤクザの食い物になるとおっしゃっているのですから、その普遍的主張を裏付ける事例を1つでもお示しいただくのが論理的な議論じゃないでしょうか。
○櫻井副会長 では事例を言いましょうか。余り実例を挙げたくないですけれども、去年トヨタさんが株式会社の診療所を独立して作って、それで病院と診療所を別にして、そこで独立した株式会社診療所と株式会社病院とで病診連携をやろうと計画をしまして、それは地域の医療審議会というところで、それは営利のためで地域住民のためじゃないということで許可になりませんでした。これは明らかに牙をむいてきた1つの事例として私は考えています。
今、三上君が言ったように、今ある株式会社というのは歴史的なものがあって、恐らく病院は全部赤字なんです。ですから、株主総会で病院の部分の収支をどこも発表しておりません。なぜならば、発表したら株主に対して背任行為になるからです。マイナス部分を抱えています。ですから、正しい株式会社のやり方は2年前でしょうか、株式会社日本鋼管病院は、株式会社日本鋼管病院を経営の合理化のために不採算部門ということで切り捨てまして、医療法人化しました。
本来は今の株式会社の病院は全部医療法人化すれば株主に対しても信義が果たせるし、地域に対しておっしゃるとおり今はマイナスを覚悟で、なぜかというと、社員とか家族の福祉のためにやっていたものを、オープンするときに地域の医師会等の約束で、営利に走らないということで約束した上でやっているわけですから、今のところ問題は起こさないんです。でも、恐らく赤字ですから、株式会社としては手離して医療法人にされたら良いと思いますので、全部実態を調査して、株式会社病院の、病院だけの収支を発表させるようにしたらいいと思っています。
○福井専門委員 ほとんどが現に株式会社のままやっているわけですから、それには何らかの理由があるわけでしょう。
○櫻井副会長 それは大きな株式会社で、名前とか歴史のために、そこがマイナスでも抱えていらっしゃるんですよ。
○福井専門委員 だとしたら、なおさら株式会社だったらおよそ悪をするというテーゼは崩れているんじゃないですか。赤字でも続けているということは、何よりの証拠じゃないですか。
○櫻井副会長 それは過去の歴史があって、そういうところで我慢をしているところだけの話でもって、新しく参入するためには、三上君が言ったように、これは株主に対する配当を目的とせざるを得ないということを言っているわけです。
だから、今後参入するであろう株式会社の議論を彼はしているんであって、今の問題と歴史的な話を一緒に言うのはおかしいと思います。
○寺岡副会長 八代さんに質問をしたいんですが、さっきの総括的な説明のところで、現在の医療法人は質の悪いものが残っている。質の悪い病院が淘汰されないということをおっしゃいましたが、その質というのはどういうことをおっしゃっているわけですか。
○八代委員 単純に院内感染であるとか、手術の過誤であるとか、そういうことを何回繰り返しても、別に停止命令は受けていない病院は幾つもあると新聞には出ております。
それから、基本的には医療法人は営利行為はしないんだと櫻井さんはおっしゃっていますけれども、その根拠はどこにあるのか。配当さえしなければ営利行為はないというのはおかしいじゃないかと先ほど私も言ったわけですけれども、それについてはお答えいただいていない。
○寺岡副会長 感染症が起こったり、医療事故が起こったりというのは、これは株式会社がやろうとやるまいと、医療全体が今抱えている問題、非常に苦悩している問題であって、これはその株式会社がやるやらないとは全然別の問題です。
○八代委員 まさしくそれを言っているわけで、だからこそ医療の質は、株式会社病院を作っていいか悪いかと無関係な問題ではないかと言っているわけです。
○寺岡副会長 質が悪いから株式会社を入れろという論理はおかしいんじゃないですかと言っているわけです。
○八代委員 わかりました。それは株式会社を入れるというのは1つの競争を促進するための手段なんです。今は要するにドングリの背比べの零細な病院間、診療所間の競争しかないわけですから、もっと近代的な病院がこの業界に入ってくることによって、より質の高い競争が起こると。そのための1つの手段として株式会社病院が必要だということです。
○寺岡副会長 より質の高い競争というのは何を指して言っていらっしゃるんですか。
○八代委員 患者のためということです。つまり、株式会社というのは櫻井さんがおっしゃるように利益を上げなければいけない。利益を上げるためには、患者にサービスを買ってもらわなければいけない。多くの日本の株式会社というのは、まさにお客様に奉仕することで利益を上げているわけで、その辺がいわゆる非営利のところとは違うことなんです。
○三上常任理事 先ほど医療法人が営利行為をしないのかということですけれども、当然営利行為をするわけです。当然利潤を追求します。ただ、営利法人と医療法人の違いというのが、株式会社の場合は利潤を上げることが最終目的でありますけれども、医療法人の場合はそれだけが目的ではなくて、もっと大切な別の部分があるというところに違いがあると思います。
もう一つ、直接金融と間接金融の問題ですけれども、間接金融で調達できないような病院が、直接金融でもっと高い利息を払って調達するということは本来あり得ないですね。
○八代委員 そんなことはないですよ。
○櫻井副会長 八代さんの前からの得意な理論で、銀行からお金を借りるくらいだったら、株式会社が株を発行してみんなから資金を集めた方がいいというけれども、でも、銀行がお金を貸してくれないような会社の株なんて誰も買いませんよ。私の友達の株式会社の経営者たちには、銀行が貸してくれないで困っている中小の社長がいっぱいいるけれども・・・。
○八代委員 そういうのがあってもいいじゃないですか。
○櫻井副会長 銀行が貸さないところの株を売りに出しても誰も買いません。むしろ株式というのは・・・。
○八代委員 それは櫻井さんが心配することではなくて、経営者が心配することです。
○櫻井副会長 そうですけれども、株を出しても売れないということですから、意味がないんです。八代さんが言う、銀行から借りるよりも株の方がいいというのは嘘だということを言っているわけです。
○安念専門委員 いいえ違います。そんなものは経営判断であって、投資家が判断することで、副会長が御判断になることではないです。我々が言っているのは、全ての病院が株式会社になれなんて全然言っていないんです。選択肢を認めろと言っているんです。資本調達についての選択肢を認めろと。その上で誰が判断するかは患者が判断するんです。もしも株式会社病院が全部悪いなら我々は行きません。その結果、株式会社立病院がつぶれたって全然構わないんです。選択肢を認めてくれないと困るという議論なんです。
○草刈統括 またアゲインということですが、12時を過ぎましたが、議論は当然尽きない、生煮えのままで終わっていると思いますが、今後とも機会をいただいて、是非また議論をさせていただければと思います。
最初の議論は我々から見ると、かなり論理に無理があるなという感じ、そういう気がいたします。
それから、2番目の話は、株式会社の話に話が行き過ぎて、私もさっきから株式会社が悪者みたいに言われてどうしようかなと。こんなに社会貢献をいろいろして株主に非難されているのに、何でそんな悪いんだと。ちょっと株式会社の議論に話が行き過ぎたという感じがいたしますので、また機会をつかまえて是非今日は両副会長、それから皆さん、大変お忙しいところを来ていただいてありがとうございました。是非今後とも引き続き御協力のほどをお願いをしたいと思います。櫻井さん何かございますか。
○櫻井副会長 さっき大臣にも確認しましたように、小泉内閣は国民皆保険制度の堅持を掲げておりますから、我々の考えからすれば、国民皆保険制度を堅持するためには皆さんのおっしゃっていることはそれと逆方向だと思いますので。
○草刈統括 違うでしょう。
○櫻井副会長 違うとおっしゃるけれども、私はそう思いますので、どうしてあなた方が小泉内閣のところにいて、国民皆保険制度を壊すようなことを一生懸命おっしゃっているのか、非常に疑問だということを、最後ですから言わせてください。私たちはそう感じるということですから、是非それは。
○草刈統括 何か皆さん一言おありになれば、よろしいですか。生煮えなのはよくわかりますけれども、また、次回ということで、お忙しい中をどうも本当に今日はありがとうございました。