平成6年度 高齢者一人暮らし・夫婦世帯に関する意識調査結果の要約

I 調査の概要

1 調査目的

 本格的高齢社会を目前に控え、核家族化の進行等により高齢者の一人暮らし・夫婦世帯が増加している。これらの世帯においては、身体が虚弱になった場合など、さまざまな生活上の支援を必要とする場合が少なくない。
 本調査においては、地域において生活する一人暮らし及び夫婦のみの高齢世帯を対象として、生活上の心配ごとをはじめ、生計、健康及び福祉などに関して、その実態と意識を把握(面接調査)するとともに、補完的に、大学及び地方自治関係者に対して、施策の基本的な方向について調査(郵送調査)を行うことにより、今後の長寿社会対策の推進に資することを目的とする。


2 調査方法等

(1)調査対象者
調査A: 高齢者一人暮らし・夫婦世帯に関する意識調査
・高齢者一人暮らし:65歳以上の者1人のみの世帯の男女
・高齢者夫婦世帯 :夫65歳以上、妻60歳以上で夫婦のみの世帯のうちの男女
調査B:大学及び地方自治関係者
(2)調査方法
調査A:調査員による面接聴取法により実施
調査B:郵送調査により実施
(3)調査事項
調査A: ア 生活上の心配ごとに関する事項
イ 生計に関する事項
ウ 健康に関する事項
エ 福祉に関する事項
オ 高齢社会の課題に関する事項
調査B: 施策の基本的な方向についての意識

(4)調査実施期間
調査A:平成7年3月2日~3月12日
調査B:平成7年3月6日~3月27日
(5)標本抽出法
調査A:層化二段無作為抽出法
調査B:無作為抽出法
(6)標本数及び有効回収数(率)
調査A: ア 標本数 3,000人
イ 有効回収数(率) 2,089人(69.6%)
調査B: ア 標本数 500人
イ 有効回収数(率) 352人(70.4%)

II 調査結果の概要

【調査A:高齢者一人暮らし・夫婦世帯調査】

高齢期に大切なものは、「健康」、「家族」、「友人」の順

「高齢期に大切なものは何だと思うか」についてみると、

「健康」(95.0%)
「家族」(57.9%)
「友人」(29.2%)
「所得・財産」(27.8%)
「趣味」(25.4%)
「仕事」(14.7%)

の順となっている。

図1 高齢期に大切なもの(3M.A)


高齢期の心構えは、「気持ちを若々しく保つ」が最も多い

「高齢期の生活の心構えとして、どのようなものがよいと思うか」についてみると、

「気持ちを若々しく保つ」(44.2%)
「年相応に過ごす」(25.0%)
「自分の考えで主体的に生きる」(15.6%)
「家族など周りの人にあわせる」(11.5%)

の順となっている。

図2 高齢期の心構え


高齢社会のイメージは、明るい社会49.8パーセント、暗い社会20.9パーセント

「今後の高齢者の多い社会についてどのように考えるか」についてみると、

「明るい社会」(26.5%)
「どちらかとえいば明るい社会」(23.4%)
「どちらともいえない」(22.7%)
「どちらかといえば暗い社会」(16.8%)
「わからない」( 6.5%)
「暗い社会」( 4.1%)

の順となっている。

図3 高齢社会のイメージ


「近所にお互いに訪問しあう人がいる」のは、50.0パーセント

「近所の方とどの程度つきあいをしているか」についてみると、

「お互いに訪問しあう人がいる」(50.0%)
「立ち話をする程度の人がいる」(26.7%)
「あいさつをする程度の人がいる」(19.8%)
「つきあいはない」( 3.5%)

の順となっている。

図4 近所づきあい


「社会とのかかわりを持って生活したい」73.0パーセント

「教養・文化、スポーツ、社会奉仕などの分野で、同好会、サークルの活動や種々の行事、催し物への参加を通じて、社会とのかかわりを持って生活したいと思うか」についてみると、

「そう思う」(47.3%)
「どちらかといえばそう思う」(25.7%)
「そうは思わない」(13.6%)
「どちらかといえばそうは思わない」( 9.0%)

の順となっている。

図5 社会とのかかわり


「子供や子供夫婦と一緒に暮らす方がよい」49.1パーセント、「別々に暮らす方がよい」40パーセント

「高齢者が、子供や子供夫婦と暮らすことについて、どう思うか」についてみると、

「できれば一緒に暮らす方がよい」(31.3%)
「できれば別々に暮らす方がよい」(20.0%)
「別々に暮らす方がよい」(20.0%)
「一緒に暮らす方がよい」(17.8%)
「どちらともいえない」( 7.8%)

の順となっている。

図6 子供との同居意識


心配ごとは、「病気がちになること」、「介護を必要とするようになること」

「日常生活で心配していることは何か」についてみると、

「自分や配偶者が病気がちになること」(33.0%)
「自分や配偶者が介護を必要とするようになること」(24.7%)
「病気などのとき、面倒を見てくれる人がいないこと」(17.9%)
「配偶者に先立たれた後の生活のこと」(14.7%)
「火事・災害のこと」(14.6%)

等の順となっている。

図7 日常生活での心配ごと(M.A)


「元気ならいつまでも働く方がよい」35.4パーセント

「何歳くらいまで働くのがよいと思うか」についてみると、

「元気ならいつまでも働く方がよい」(35.4%)
「65歳くらいまで」(25.3%)
「70歳くらいまで」(22.7%)
「60歳くらいまで」( 7.9%)
「75歳くらいまで」( 5.6%)

の順となっている。

図8 高齢者の就労意識


「老後の世話の有無により、差をつけて譲る」32.6パーセント

「土地、家屋などの資産を譲るとしたら、あなたの老後の世話をしたかどうかによって、どのように考えるか」についてみると、

Aの意見:老後の世話をしたかどうかに関係なく譲る
Bの意見:実際に老後の世話をしたかどうかによって差をつけて譲る

「Aの意見に近い」(36.2%)
「Bの意見に近い」(32.6%)

となっている。

図9 資産の譲渡のしかた


健康の維持増進のためには、「休養や睡眠を十分とる」、「栄養のバランスのとれた食事をする」

「自分の健康の維持増進について、気をつけていることは何か」についてみると、

「休養や睡眠を十分にとる」(55.1%)
「栄養のバランスのとれた食事をする」(54.8%)
「規則正しい生活を送る」(49.2%)
「散歩やスポーツなどの運動をする」(26.5%)
「健康診査などを定期的に受ける」(24.6%)
「気持ちをなるべく明るく持つ」(22.4%)

等の順となっている。

図10 健康の維持増進(3M.A)


健康管理上知りたいことは、「老人性痴呆症について」がトップ

「高齢者の健康管理について、知りたいことは何か」についてみると、

「老人性痴呆症について」(26.9%)
「食生活のあり方について」(26.7%)
「寝たきりの予防方法について」(23.6%)
「がんや高血圧について」(23.1%)
「健康増進のための運動方法について」(23.0%)

等の順となっている。

図11 知りたい健康情報(3M.A)


「将来介護が必要な状態になる不安あり」49.9パーセント

「将来寝たきりや老人性痴呆症になり、介護が必要な状態になるのではないかと不安になったりすることがあるか」についてみると、

「ときどきある」(35.3%)
「あまりない」(28.2%)
「全くない」(19.6%)
「よくある」(14.6%)

の順となっている。

図12 介護状態への不安度


「現在住んでいる自宅で介護してほしい」41.8パーセント

「身体が虚弱になって、日常生活を送る上で介護を必要とするようになった場合、どこで介護を受けたいか」についてみると、

「現在の自宅で介護してほしい」(41.8%)
「病院などの医療機関に入院したい」(27.1%)
「老人ホームなどの福祉施設に入所したい」(11.7%)
「子供の家で介護してほしい」( 6.7%)

等の順となっている。

図13 介護を受けたい場所


在宅介護の望ましい担い手は、「家族だけで介護」19.0パーセント、「主として家族だがホームペルパーも利用」35.8パーセント

「一般論として、高齢者を在宅で介護する場合の担い手について、どのように考えるか」についてみると、

「主として家族によって介護し、介護疲れのときなどには市町村のホームヘルパーなど家族以外のサービスを利用する方がよい」(35.8%)
「家族だけで介護する方がよい」(19.0%)
「在宅で介護するのは無理なので、老人ホームなどの施設に入る方がよい」(15.7%)
「家族による介護がなくても、市町村のホームヘルパーなど家族以外のサービスの利用だけで、在宅での生活が続けられるようにする方がよい」(10.7%)
「主として市町村のホームヘルパーなど家族以外のサービスを利用し、家族による介護は限定的にする方がよい」(10.1%)

の順となっている。

図14 在宅介護の担い手

 

「現在の生活に満足している」9割

「現在の生活に満足しているか」についてみると、

「まあ満足している」(48.3%)
「満足している」(43.5%)
「やや不満である」( 6.0%)
「不満である」( 1.7%)

の順となっている。

図15 生活の満足度


高齢社会の重要な施策は、「老人医療」、「公的年金」、「福祉施設の整備」、「高齢者が暮らしやすいまちづくり」、「在宅介護に対する支援」など

「今後の高齢者の多い社会に備えるために、どのような施策が重要と思うか」についてみると、

「老人医療」(47.8%)
「公的年金」(47.1%)
「福祉施設の整備」(37.4%)
「高齢者が暮らしやすいまちづくり」(30.6%)
「在宅介護に対する支援」(28.3%)
「生涯を通じた健康づくり」(19.3%)
「高齢者雇用」(14.1%)

等の順となっている。

図16 高齢社会の需要施策(3M.A)


【調査B:大学及び地方自治関係者調査】

高齢期に大切なものは、「健康」、「家族」、「趣味」など

「高齢期に大切なものは何だと考えるか」についてみると、

「健康」(93.5%)
「家族」(63.6%)
「趣味」(44.3%)
「所得・財産」(38.6%)
「仕事」(28.1%)
「友人」(20.2%)

の順となっている。

※調査Aの結果でみると、「健康」、「家族」、「友人」の順

図17 高齢期に大切なもの(3M,A)


高齢社会のイメージは、明るい社会30.1パーセント、暗い社会38.9パーセント

「人口構造の高齢化が進み、高齢社会が到来しますが、このような社会について、どのようなイメージを持つか」についてみると、

「どちらかといえば暗い社会」(36.9%)
「どちらともいえない」(29.8%)
「どちらかといえば明るい社会」(25.3%)
「明るい社会」( 4.8%)
「暗い社会」( 2.0%)

の順となっている。

※調査Aの結果でみると、明るい社会 49.8パーセント、暗い社会 20.9パーセント

図18 高齢社会のイメージ


高齢社会に対する着眼点は、「高齢者のみの世帯の増加」がトップ

「社会の高齢化に対応する施策を考える上で、どのようなことに着眼する必要があると考えるか」についてみると、

「一人暮らしや夫婦のみの高齢者世帯の増加」(74.4%)
「高齢者と働く世代との人口バランス」(58.0%)
「少子化、子供の減少」(45.2%)
「75歳以上の後期高齢者の増加」(38.9%)
「高齢化の進行の速さ」(35.8%)

の順となっている。

図19 高齢社会の着眼点(3M.A)


「子供や子供夫婦と一緒に暮らす方がよい」59.1パーセント、「別々に暮らす方がよい」24.1パーセント

「高齢者が、子供や子供夫婦と暮らすことについて、どうのように考えるか」についてみると、

「できれば一緒に暮らす方がよい」(42.9%)
「一緒に暮らす方がよい」(16.2%)
「できれば別々に暮らす方がよい」(14.2%)
「どちらともいえない」(11.9%)
「別々に暮らす方がよい」( 9.9%)

の順となっている。

※調査Aの結果でみると、子供や子供夫婦と一緒に暮らす方がよい49.1パーセント、別々に暮らす方がよい40.0パーセント

図20 子供との同居


「65歳くらいまで働くのがよい」38.4パーセント

「何歳くらいまで働くのがよいと考えるか」についてみると、

「65歳くらいまで」(38.4%)
「元気ならいつまでも働く方がよい」(24.7%)
「70歳くらいまで」(22.4%)
「60歳くらいまで」( 7.7%)
「75歳くらいまで」( 1.1%)

の順となっている。

※調査Aの結果でみると、「元気ならいつまでも働くのがよい」35.4パーセント

図21 高齢者の就労


「老後の世話の有無により、差をつけて相続させる」72.2パーセント

「相続に際して、高齢者の介護や身の回りの世話を担ったことについて、配慮すべきかどうか」についてみると、「Aの意見:老後の世話をしたかどうかに関係なく相続させるべきである」とする「Aの意見に近い」(9.9%)、「Bの意見:実際に老後に世話をしたかどうかによって差をつけて相続させるべきである」とする「Bの意見に近い」(72.2%)となっている。

※調査結果Aの結果で「老後の世話の有無により、差をつけて譲る」32.6パーセント

図22 資産の譲渡のしかた


在宅介護の望ましい担い手は、「家族だけで介護」0.9パーセント、「主として家族だがホームヘルパーも利用」46.3パーセント

「高齢者を在宅で介護する場合の介護の担い手について、どのように考えるか」についてみると、

「主として家族によって介護し、介護疲れのときなどには市町村のホームヘルパーなど家族以外のサービスを利用する方がよい」(46.3%)
「家族による介護がなくても、市町村のホームページなど家族以外のサービスの利用だけで、在宅での生活が続けられるようにする方がよい」(28.7%)
「主として市町村のホームヘルパーなど家族以外のサービスを利用し、家族による介護は限定的にする方がよい」(15.9%)
「在宅で介護するのは無理なので、老人ホームなどの施設に入る方がよい」( 4.5%)
「家族だけで介護する方がよい」( 0.9%)

の順となっている。

※調査Aの結果でみると、「家族だけで介護」19.0パーセント、「主として家族だけがホームヘルパーも利用」35.8パーセント

図23 在宅介護の担い手


 

高齢社会の社会保障などの費用負担は、「働く世代とのバランスに配慮すべき」54.8パーセント

「社会の高齢化に伴い、社会保障などに要する費用は増加しますが、社会保障や国民負担のあり方についてどのように考えるか」についてみると、

「高齢者に対する社会保障などは必要だが、働く世代の負担とのバランスに配慮すべきだ」(54.8%)
「高齢者に対する社会保障などに必要なのだから、税金や社会保険料の負担が増えても仕方がない」(32.4%)
「自助の精神から、社会保障などは基礎的水準にとどめ、税金や社会保険料の負担をなるべく軽くすべきだ」( 6.5%)

の順となっている。

図24 社会保障と国民負担

 

高齢社会の重要な施策は、「在宅介護に対する支援」、「公的年金」、「高齢者雇用」、「高齢者が暮らしやすいまちづくり」など

「本格的な高齢社会の到来に備え、どのような施策が重要だと考えるか」についてみると、

「在宅介護に対する支援」(67.6%)
「公的年金」(36.6%)
「高齢者雇用」(34.1%)
「高齢者が暮らしやすいまちづくり」(33.2%)
「生涯を通じた健康づくり」(27.6%)
「福祉施設の整備」(24.1%)

等の順となっている。

※調査Aの結果でみると、重要な施策は、「老人医療」、「公的年金」、「福祉施設の整備」、「高齢者が暮らしやすいまちづくり」、「在宅介護に対する支援」など

図25 高齢社会の重要施策(3M.A)