1 ふれあい、交流の場等の確保による高齢者の生きがいづくりへの取組

ふれあいの家支援事業:高齢者のたまり場の確保(北海道・網走市)

 民生委員が高齢者のお宅を訪問している中で、「みんなが集まって話せる場所があったら良い」という要望があり、その要望を市が受け入れ、モデル事業として、土地建物を取得提供し、地区で「高齢者を支える会」のボランティア団体を発足させ、その団体が運営主体となって、「ふれあいの家」を設けたのが始まりとなった。運営費は国の補助制度を活用し、1週間に1度、集まる場所を提供することを条件に開設することとなったが、民生委員が「ぼけ老人を支える会」の役員であったため、高齢者事業に取り組む意識が高かったことが大きい要因となった。対象者はおおむね65歳以上で、介護予防事業として実施しており、声を出したり、指先を使ったりということが主であるが、ラジオ体操・同級生音頭体操、トランプ・ゲーム、広告紙を三角に折り積み重ねての折り紙制作、また、交通安全や保健に関する講話なども開催している。

 市は、ボランティア団体に委託する形で運営費を助成しており、各地区のボランティアが様々な内容を考え、開設日も区々で、老人クラブとは違い、どこの地区の「ふれあいの家」に足を運んでも良い仕組みになっている。20人以上のボランティア登録があり、月4回で週5人の交代制で補っている地区もあれば、ボランティアの負担を軽減するため、当番に拘らず時間が空いたときに利用者として来てもらい、サポートするような形で実施している地区もある。ボランティアは、利用者が来る前の準備としてお湯を沸かすだけで、利用者相互が自由にお茶を入れ、そこからコミュニケーション作りをするようにしている。

 平成18年度に1ヶ所増え、現在は12ヶ所で、コミュニティセンター・集会所などで実施されており、運営主体は、11ヶ所がボランティア団体、1ヶ所がNPO法人となっているが、市からの助成は同じである。設置にあたっては、コミュニティセンター運営委員会等の関係団体との協力を得ながらボランティア団体を設立し、介護予防事業として、1週間に1度の実施が条件となる。利用者からは、地域を問わず各団体が実施する「ふれあいの家」を利用でき、楽しく喜んでいるとの評価を得ているが、開設から約6年を経過し、ボランティアの高齢化による後継者の育成が今後の問題点と考えている。

生きがいデイサービス「ほのぼのサロン」(山形県・飯豊町)

 高齢者の生きがい支援として、平成7年より実施。自宅から歩いていける公民館に週1回集まり、軽体操やゲーム、手芸やお茶飲みなどをして楽しく過ごすもの。現在は10地区で実施し、年間延べ7,000人が参加している。その支援を行うのは、高齢者の身体機能や接遇、軽体操の方法・ボケ予防などを研修したマネージャーと呼んでいるボランティアグループである。参加者は、週1回半日の参加を楽しみにしており、ほのぼのサロンを中心に生活リズムができている方も多く、参加者同士の交流が生きがいづくりとなっている。ほのぼのサロンに参加している方からの介護保険への移行者はごくまれで、みんなで伸ばそう健康寿命を合言葉に開催している。

お休み処(どころ):商店街の空き店舗を利用して高齢者が気軽に立ち寄れる居場所づくり(千葉県・我孫子市)

 買い物が大変で家に閉じこもりがちな高齢者が増加したこと、空き店舗が増加する中で商店街の活性化が求められているという二つの事情が相まって、市民からの発案を受けて平成15年に商店街の中に設置された。空き店舗の家賃は市が負担し、地区の社会福祉協議会、商店会などの協力により、現在1ヶ所で運営されている。盆休みと年末年始を除いて、毎日午前10時から午後4時まで利用可能で、買い物帰りや待ち合わせに使ったり、スタッフとの会話を楽しんだりして年齢に関係なく誰でも気軽に立ち寄れる場所として定着している。ボランティアスタッフが湯茶を無料でサービスしてくれる。お楽しみ講座、絵画展などのイベントも開催され、1日約40人程度が利用しており、集まった高齢者には話し相手の友達が増えたと喜ばれている。

電子メールによる情報提供:情報をピックアップして提供(東京都・台東区)

 平成13年度より開始。60歳以上の高齢者を対象に、仲間作りを目的として、月2回の区広報の内容から高齢者に関係ありそうなものをピックアップしてインターネット仕様に作成、登録者へ電子メールを送付する。また、区だけではなく東京都の高齢者向けにつながる内容のものも取り込んで発信している。毎年3月末に対象者にアンケート(メール、アンケート形式)を行っている。記事の問い合わせは各イベント先へ、直接電話で問い合わせる形式で、区へ直接問い合わせはしない。電子メール受信前の広報については、老人クラブの補助金説明会や高齢福祉課の窓口、老人福祉センター及び会館などで実施。現在207人の利用者がいる。

地域の人材と建物を有効活用して見守りサービス(東京都・武蔵野市)

 平成11年から、地域の福祉団体や地域住民が地域の人材と建物を有効に活用し、地域において見守り等が必要な者に対して地域のニーズに応じたサービスを提供する事業を実施する者に対し市が1千万円(テンミリオン)を限度として補助金を交付など必要な支援を実施している。家に閉じこもりがちな高齢者が地域の人々との交流により励まし合い、生きがいを得られるように助け合うことを目的としたものである。個人や市が所有する空き家を全額市の負担で改修して施設として利用することになる。施設の運営は、市の評価委員会の審査を受けて、ふさわしいと認められたNPOや民間の団体に任される。現在6カ所の施設が開設されており、それぞれ1日に7~20人の高齢者が利用している。各施設には、2~3人の常駐者が少額の手当でボランティアとして働いており、季節ごとの行事やバザー、合唱、喫茶、昼食などのサービスを提供している。施設利用者の評価は高く、高齢者同士の交流により認知症の進行に改善がみられた人もおり、共助の立場からの取組が地域に根付きつつある。市民の周知度をさらに高めて施設を増やすことが目標となっている。

高齢者交流室、さわやか館:高齢者を閉じこもらせない地域の拠点づくり(東京都・小平市)

 介護予防の推進を目的として高齢者が家の中に閉じこもらないようにするための地域拠点づくりと、児童の減少による空き教室対策が結びついて、平成13年に小平第二小学校内に高齢者交流室を開設した。高齢者が、(1)主体的に楽しめ学べる、(2)自由にくつろげる、(3)児童と自然に関われることを基本理念として、地域住民との交流などの事業が行われている。高齢者交流室は、小平市社会福祉協議会が地域住民、教育委員会の協力を得て運営している。また、高齢者館「さわやか館」は高齢者が気軽に交流し、くつろぎ、語らいのできる施設として、平成14年に都営アパートの1階に開設した。さわやか館には、高齢者用の施設のほかに、子ども広場(ミニ体育館)、幼児が保護者と共にお絵かきや積み木ができる幼児コーナーがあり、自然な異世代交流、ふれあいができる空間となっている。さわやか館は、小平市シルバー人材センターが管理している。なお、いずれの施設でも異世代交流を活発化させるためのソフト面の工夫が今後の課題となっている。

生きがい農園:生きがい、仲間づくりの促進(神奈川県・相模原市)

 土に親しみ、作物を育て収穫する喜びを味わうことで生きがいを高めるとともに、仲間作りを進める目的で、生きがい農園事業として実施している。昭和40年代後半より、貸し農園運営協議会が管理主体として、貸し農園を開始。その後、昭和55年度に老人クラブ連合会を管理主体とする「生きがい農園」が加わった。平成16年度からは市民農園運営協議会(生きがい農園)が管理主体となり、現在に至っている。利用対象者は60歳以上の市民。往復はがきで希望者を募集、申し込み多数の場合は抽選により耕作者を決定。過去2年の平均倍率は1.25倍と好評であるが、耕作地は地権者からの申し出を受け協議した上で採否を決め、無償借り上げとする代わりに当該地の固定資産税、都市計画税を非課税とする。宅地開発や相続などに伴う用地の返還のため、耕作地の確保に苦労している。市民農園協議会(生きがい農園)に対し、市から毎年運営費用の助成を行っている。

道の駅直売所:高齢者のいきがいづくりの場として(大阪府・河南町)

 平成16年4月より開始。農業の活性化と、高齢者の生きがいづくりを目的としている。急速な高齢化が進む今、高齢者の閉じこもり防止を進めるため、1日1回は外出し、3人以上の人と話をする。そして自分と社会のかかわりを深めてもらう。そんな場所を確保すべく、「道の駅直売所」を設置した。農林水産省の補助金を受けつつ、農村活性化センター事業として、農業従事者が主体的に、生産者と加工部員をもって委員会を発足し、試行錯誤を続けながら、運営している。

 河南町において長く農業を営んできた高齢者の方に農産物の販売場所を提供している。品物を買いに来るのは、大阪市内中心部からの人たちが多い。そのときに商品の説明や調理方法などを説明するのは高齢者の方々。人とのふれあいが自身のいきがいにもなっている。また、販売所の仕事によって得た収入は、自分たちのお小遣いにもなり、家族へのプレゼントなどで、その絆も深まる。

 販売所への来店数は平日400~500人。土日は1,200人程度。行楽時期は1,600~1,700人。住民からの評価は、高齢者が豊かな経験を生かし野菜作りに励み、また、人の作っていないようなものを作りたいと頑張っている。町全体に活気が出た。(販売実績も年々増加傾向にある。)参加者の一番の魅力は、自分の作った野菜等に自分の納得のいくような価格をつけること。その日、自分の品が売れ残った場合、なぜ売れなかったのかと反省、努力する姿も見受けられる。参加者の最高年齢は91歳で、携帯電話や電子メール等を利用し、若者顔負けで注文を取っている。