検討会(第1回)

1.日時:平成23年10月21日(金)14:00~16:00

2.場所:中央合同庁舎4号館 共用1214特別会議室

3.出席者:
(委員)清家座長、香山委員、関委員、園田委員、森委員
(オブザーバー)笹井文部科学省生涯学習政策局男女共同参画学習課長、花咲厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室室長補佐、山口国土交通省総合政策局安心生活政策課長
(内閣府)蓮舫内閣府特命担当大臣、村木政策統括官、内野大臣官房審議官、伊奈川大臣官房審議官、原口高齢社会対策担当参事官、飯島高齢社会対策担当参事官補佐
4.議事:
(1)開催の趣旨等について
(2)高齢社会対策の推進状況について
(3)高齢社会に関する現状について
(4)意見交換
5.配布資料:
資料1 高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会の開催について
(平成23年10月14日内閣府特命担当大臣(高齢社会対策担当)決定) (PDF形式:75KB)PDFを別ウィンドウで開きます
資料2 高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会運営要領(案) (PDF形式:10KB)PDFを別ウィンドウで開きます
資料3 高齢社会対策の枠組み (PDF形式:18KB)PDFを別ウィンドウで開きます
資料4 高齢社会対策主要施策の推移 (PDF形式:25KB)PDFを別ウィンドウで開きます
資料5 高齢社会の現状(資料集)
資料6 第1回検討会でご議論頂きたい論点 (PDF形式:10KB)PDFを別ウィンドウで開きます
資料7 今後の開催日程について (PDF形式:10KB)PDFを別ウィンドウで開きます
資料8-1 関委員提出資料:「高齢者と年齢」(2008.6.2.No.2483 週刊社会保障) (PDF形式:479KB)PDFを別ウィンドウで開きます
資料8-2 関委員提出資料:「高齢者雇用法制」(2009)『高齢者の働き方』 9章
1/9 (PDF形式:394KB)PDFを別ウィンドウで開きます2/9 (PDF形式:420KB)PDFを別ウィンドウで開きます3/9 (PDF形式:411KB)PDFを別ウィンドウで開きます4/9 (PDF形式:422KB)PDFを別ウィンドウで開きます5/9 (PDF形式:417KB)PDFを別ウィンドウで開きます6/9 (PDF形式:420KB)PDFを別ウィンドウで開きます7/9 (PDF形式:402KB)PDFを別ウィンドウで開きます8/9 (PDF形式:381KB)PDFを別ウィンドウで開きます9/9 (PDF形式:432KB)PDFを別ウィンドウで開きます
資料8-3 関委員提出資料:高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会 追加資料 (PDF形式:497KB)PDFを別ウィンドウで開きます
資料9 園田委員提出資料 (PDF形式:255KB)PDFを別ウィンドウで開きます
資料10 弘兼委員提出資料 (PDF形式:15KB)PDFを別ウィンドウで開きます
参考1 高齢社会対策基本法(平成7年法律第129号)
参考2 高齢社会対策大綱(平成24年9月7日閣議決定)
参考3 社会保障・税一体改革成案(平成23年6月30日政府・与党社会保障改革検討本部決定)
1/7 (PDF形式:396KB)PDFを別ウィンドウで開きます2/7 (PDF形式:610KB)PDFを別ウィンドウで開きます3/7 (PDF形式:475KB)PDFを別ウィンドウで開きます4/7 (PDF形式:611KB)PDFを別ウィンドウで開きます5/7 (PDF形式:463KB)PDFを別ウィンドウで開きます6/7 (PDF形式:497KB)PDFを別ウィンドウで開きます7/7 (PDF形式:358KB)PDFを別ウィンドウで開きます
参考4 平成23年版高齢社会白書
参考5 平成23年版厚生労働白書別ウィンドウで開きます

検討会(第1回)議事録

○原口参事官 それでは、定刻になりましたので、ただいまから「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」の第1回会議を開催させていただきます。

初めに、本検討会の委員の方々を御紹介いたします。

最初に、本検討会の座長をお願いしております慶應義塾長、清家篤委員。

続きまして、委員の方々を五十音順に御紹介させていただきます。

立教大学現代心理学部映像身体学科教授、香山リカ委員。

横浜国立大学大学院国際社会科学研究科准教授、関ふ佐子委員。

明治大学理工学部建築学科教授、園田眞理子委員。

介護相談・地域づくり連絡会代表、前高浜市長、森貞述委員。

なお、本日は弘兼委員が御都合によりまして欠席でございます。

次に、本検討会のオブザーバーの方々及び内閣府の事務局を御紹介させていただきます。

文部科学省生涯学習政策局男女共同参画学習課の笹井課長。

厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官の武田参事官の代理といたしまして、本日は花咲参事官室長補佐に出席をお願いしております。

国土交通省総合政策局安心生活政策課の山口課長。

続きまして、内閣府事務局を紹介いたします。

村木内閣府政策統括官でございます。

内野内閣府大臣官房審議官でございます。

続いて、伊奈川内閣府大臣官房審議官でございます。

私、担当参事官の原口と申します。

飯島高齢社会対策担当参事官補佐でございます。

なお、本日は初会合でございますので、会議の終わりに蓮舫大臣よりごあいさつがございます。

それでは、これから議事に入らせていただきたいと思います。

以後の進行につきましては、本検討会座長の清家先生にお願いすることとしております。

それでは、清家座長、よろしくお願い申し上げます。

○清家座長 それでは、議事に入らせていただきます。

まず最初に、この検討会の開催の趣旨と運営につきまして事務局から御説明をいただきます。

○原口参事官 それでは、資料の説明の前にまず、配付資料の確認をさせていただきたく存じます。

お手元の資料の配付資料でございますが、

資料1、高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会の開催について。

資料2、当検討会の運営要領。

資料3、高齢社会対策の枠組み。

資料4、高齢社会対策主要施策の推移。

資料5、高齢社会の現状。

資料6、第1回検討会で御議論いただきたい論点。

資料7、今後の開催日程について

資料8につきましては、8-1と8-2と関委員から御提出いただいていた資料に加えまして、8-3といたしまして、高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会追加資料という3つになってございますので、御留意ください。

資料9、園田委員提出資料。

資料10、本日御欠席でございますが、弘兼委員から御提出された資料。

以上、10点でございます。

漏れ等はございませんでしょうか。よろしゅうございますか。

それでは、ただいまの資料1から2につきまして御説明申し上げます。

まず、当検討会の開催の趣旨でございますが、お手元の資料1の趣旨のところにございますとおり、高齢社会対策基本法第14条の規定の趣旨にかんがみまして、新しい高齢社会対策大綱の案の作成に資するため、有識者の意見を聴取することとし、高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会を開催するということでございます。

高齢社会対策大綱につきましては、平成13年12月28日に閣議決定して以降、約10年間そのままという状況にございます。

大綱の構成といたしましては、資料3の左側の箱でございますが、基本姿勢と横断的に取り組む課題が1つパーツでまとまっております。それをブレークダウンしたものといたしまして、右側の箱でございますが、各省庁がまたがる分野別の基本的施策をとりまとめているという構成になっております。

なお、一番下のところにアスタリスクで書いてございますが、大綱見直しの時期につきまして、「経済社会情勢の変化等を踏まえて必要があると認めるときに、見直しを行うものとする」となっておりました。

しかしながら、この大綱がまとまりました以降、本年6月には政府与党社会保障改革検討本部において社会保障・税一体改革の成案がとりまとめられておりまして、社会保障制度について一定の方向性が示されたことや、平成24年度におきましては団塊の世代の方々が65歳に達しまして、65歳以上の高齢者の方々が年間100万人という大きなボリュームで増加すると、そのような背景の変化もございますので、今般、本検討会開催する運びとなっております。

資料1にお戻りいただきまして、4の開催時期でございますが、検討会はおおむね平成23年10月から平成24年2月までを目途に開催する。

5、意見の取り扱いについてでございますが、検討会において聴取した意見は、内閣府において整理し、高齢社会対策会議に報告するということでございます。

資料2、当検討会の運営要領(案)でございます。4つございます。

1、座長は、高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会を招集し、又は司会する。

2、検討会は、公開とする。

3、座長は、検討会の議事録を作成し、委員の了承を得て、公表する。

4、その他検討会の運営に関し必要な事項については、座長が定める。

以上でございます。

○清家座長 それでは、ただいま事務局から資料1、2、3について御説明がございました。ただいまの御説明につきまして何か御質問、御意見等ございますでしょうか。

それでは、特に御異論がないようですので、今、資料2に示されております運営要領に従ってこの会議を進めていきたいと思いますが、御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○清家座長 ありがとうございます。

それでは、そのようにさせていただきます。

引き続きまして、高齢社会対策の推進状況及び高齢社会に関する現状等につきまして事務局から御説明をいただきます。

○原口参事官 それでは、資料4、資料5を用いまして御説明申し上げます。

まず、お手元の資料4、高齢社会対策主要施策の推移につきまして御説明申し上げます。

1.全般の1つ目の社会保障国民会議最終報告書につきましては、平成20年1月に閣議決定によりまして開催が決まったものでございますけれども、社会保障のあるべき姿について国民にわかりやすく議論を行うことを目的として開催されました。同年11月に最終報告がまとめられ、高齢化の一層の進行、医療、介護サービス提供体制の劣化、制度への信頼低下等、さまざまな課題に直面していた中での制度の持続可能性の確保に加え、社会経済構造の変化に対応し、必要なサービスを保障し、国民の安心と安全を確保するための社会保障の機能強化に重点を置いた改革の必要性が提起されています。

2つ目の安心社会実現会議の報告につきましては、平成21年6月に安心社会実現会議におきまして、我が国の経済・雇用構造の変化や少子高齢化の進展等の環境変化を踏まえ、国民が安心して生活を送ることができる社会の実現に向け、国家として目指すべき方向性や基本的政策の在り方についてとりまとめられております。

3つ目の社会保障・税一体改革成案につきましては、政府・与党社会保障改革検討本部におきまして、社会保障改革の全体像とともに、必要な財源を確保するための消費税を含む税制抜本改革の基本方針を示すべく議論が進められ、本年6月、「社会保障・税一体改革成案」を決定されました。成案におきましては、中規模・高機能な社会保障の実現を目指すという社会保障改革の基本的考え方や、子ども・子育て、医療・介護等、年金の個別分野ごとの充実項目、重点の内容が示されたところでございます。

続きまして、2.就業・所得の(1)高齢者の雇用・就業の機会の確保につきましては、平成16年に段階的な65歳までの定年引き上げ、継続雇用措置義務化等を措置する高齢者雇用安定法の改正を行っております。また、今年6月に今後の高齢者雇用に関する研究会報告におきまして、希望者全員の65歳までの雇用確保と生涯現役社会実現のための環境整備に向けて今後の施策の進め方を検討、とりまとめられてございます。

(2)勤労者の生涯を通じた能力の発揮につきましては、育児休業、介護休業対象者の拡大、介護休業の取得回数制限の緩和を措置するため、平成16年に育児・介護休業法を改正し、同じく介護休暇制度の創設のため、平成21年度に同法を改正しております。また、募集・採用における年齢制限禁止の義務化を措置するため、平成19年に雇用対策法の改正を行っております。

(3)公的年金制度の安定的運営につきましては、平成16年に年金制度の長期的・安定的運営を図るため、上限を固定した上での保険料の引き上げや、保険料負担の範囲内で給付水準を自動的に調整する仕組みの導入・基礎年金国庫負担割合の引き上げ等の措置を実施し、また、生き方・働き方の多様化に対応して、遺族年金の見直し・60歳代前半の在職老齢年金制度の改善等を柱とする国民年金法等の改正を行っているところでございます。

(4)自助努力による高齢期の所得確保への支援につきましては、平成13年に確定拠出型年金制度を創設する確定拠出型年金法を制定し、また平成23年には企業型確定拠出型年金の加入資格年齢引き上げ等を柱とする国民年金法等の改正を行っているところでございます。

次に、3.健康・福祉についてです。

(1)健康づくりの総合的推進につきましては、平成12年に22年度を目途とした目標等を提示した21世紀における国民健康づくり運動を始め、平成14年に国民の健康づくり・疾病予防の積極的推進を目的とする健康増進法を制定しております。

(3)介護サービスの充実につきましては、平成17年に予防重視型システムへ転換や、地域密着型サービスの導入を図ることを目的とした介護保険法の改正を行い、平成23年に医療と介護の連携強化を柱とする地域包括ケアシステムの推進を図ることを目的とする介護保険法等の改正を行っているところでございます。

(4)高齢者医療制度の改革につきましては、平成14年に高齢者の自己負担を1割とし、老人医療制度の70歳から75歳の対象年齢の引き上げ、3割から5割へと公費負担の引き上げを柱とする健康保険法の改正を行い、平成18年には医療費適正化の総合的推進、70歳から74歳患者の負担の引き上げを柱とする後期高齢者医療制度の創設のため、健康保険法の改正を行っているところでございます。

(5)子育て支援施策の総合的推進につきましては、平成15年に地方公共団体と企業における10年間の集中的・計画的な取り組みの促進を柱とする次世代育成支援対策推進法を制定しております。同じく15年には、少子化に的確に対応するための施策の総合的推進を図ることを目的とした少子化社会対策基本法を制定し、平成16年6月に少子化社会対策大綱を閣議決定しております。また、平成22年1月に社会全体で子育てを支えることを目的とし、子ども・子育て支援の具体的取り組みを提示した子ども・子育てビジョンを閣議決定しております。

次に、4.学習・社会参加についてです。

(1)生涯学習社会の形成につきましては、平成14年に長期履修学生制度導入のために学校設置基準の改正を行い、平成18年に生涯学習の実現を目的とした教育基本法の改正を行っています。また、平成20年2月には、中央教育審議会におきまして一人ひとりの生涯を通じた学習への支援等の具体的方策を提示した、新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策についての答申を得て、同年7月には生涯学習の実現を盛り込んだ教育振興基本計画を閣議決定しております。

(2)社会参加活動の推進につきましては、平成14年に暴力団排除のための措置の強化、特定非営利活動の種類の追加等を柱とする特定非営利活動促進法の改正を行っております。また、平成22年には「新しい公共」円卓会議におきまして「新しい公共」の実現に向け、制度改革や運用方法の見直し等を提言した「新しい公共」宣言がまとめられております。平成23年には特定非営利活動を促進するため、認定基準の緩和や仮認定制度の導入を柱とする特定非営利活動促進法の改正を行っているところでございます。

生活環境の(1)安定したゆとりある住生活の確保につきましては、平成18年に国民生活の安定向上や社会福祉の増進、国民経済の健全な発展を目的とする住生活基本法を制定しております。また、平成21年には都道府県による高齢者居住安定確保計画の策定や、高齢者円滑入居賃貸住宅の制度改善を柱とする高齢者の住居の安定確保に関する法律の改正を行っております。更に平成23年にはサービス付き高齢者向け住宅の登録制度創設を目的とした高齢者の居住の安定確保に関する法律の改正を行っております。

(2)ユニバーサルデザインに配慮したまちづくりの総合的推進につきましては、平成14年にバリアフリー対応の義務づけの創設、努力義務の対象拡大を柱とする高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律、いわゆるハートビル法の改正を行っております。また、平成18年にハートビル法と交通バリアフリー法を統合し、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関するバリアフリー法の制定を行っているところでございます。

(3)交通安全の確保と犯罪、災害等からの保護につきましては、平成17年には高齢者の虐待防止及び擁護者に対する支援について都道府県等を中心とした対応を規定した高齢者虐待防止法の制定を行っております。また、平成19年には高齢者標識の表示義務づけや、認知機能検査の導入を目的とする道路交通法の改正、21年には高齢運転者等専用駐車区間制度の新設を目的とする道路交通法の改正を行っているところでございます。平成16年には振り込め詐欺等の対策といたしまして、預貯金通帳等の売買やその勧誘・誘引行為等の処罰を盛り込んだ金融機関等による顧客等の本人確認に関する法律の改正を行いまして、平成17年には携帯電話等の不正売買やその勧誘・誘引等の処罰、契約者確認の求めを盛り込んだ携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律の制定を行っているところでございます。

以上が高齢社会対策主要施策の推移についての主な施策の御紹介でございます。

続きまして、資料5に移らせていただきます。

高齢社会の現状につきまして、<1>高齢化の状況、<2>家族と世帯、<3>健康・福祉、<4>経済状況、<5>就業、<6>社会参加活動、<7>生活環境につきまして順次御説明申し上げます。

まず、<1>高齢化の状況についてです。

3ページは、国内総人口に占める65歳以上の高齢者人口比率であり、高齢化率は23.1%でありまして、女性100に対し、男性が74.7と女性が多い状況にございます。

4ページは、高齢化率の実績と2055年までの将来推計のグラフです。高齢化率は2055年には40%を超える見通しとなっております。65歳以上の高齢者を20歳から64歳の世代で2020年には1.9人、2050年には1.2人で支える姿と推計されております。

5ページは、高齢者の増加数でございますが、団塊の世代が65歳になる2012年から2014年に高齢者人口が100万人ずつ増加する見込みとなっております。

6ページは、高齢化率の都道府県別のデータです。昭和50年当時は多くの都道府県におきまして高齢化率は14%未満だったところ、2035年にはほぼすべての都道府県で高齢化率は30%以上となる見通しとなっております。

7ページは、平成17年と平成47年における都道府県別の高齢者人口の増加率のデータでございますが、都市部に居住する高齢者が大幅に増加する見通しとなっております。

8ページは、男女別の平均寿命のデータですが、平均寿命が延伸し、2055年には女性が90歳、男性が83歳を超える見通しとなっております。

次に、社会保障費に関するデータです。

9ページは、GDPに占める社会保障費の推計ですが、2025年には24.9%に達する見込みでありまして、少子高齢化の進行に伴いまして、社会保障給付費は大幅に増加する見通しとなっております。

10ページは、社会保障費の給付と負担の見通しでございます。給付につきましては、2025年には151兆円まで増加する見込みでありまして、負担額につきましても同じく2025年には150.4兆円まで増加する見通しとなっております。

続きまして、<2>家族と世帯に関するデータに移ります。

12ページは、50歳時点で1度も結婚したことのない人の割合である生涯未婚率のデータです。生涯未婚率は上昇する見通しとなっております。

13ページは、高齢者人口に占めるひとり暮らしの高齢者のデータです。高齢男性は単身者比率が急速に上昇し、2020年には14.5%になる見通しとなっております。

14ページは、全世帯に占める高齢者のいる世帯の状況別のデータです。2010年以降、高齢者世帯の占める割合が増加するとともに、2020年には高齢者のいる世帯が3分の1となり、また全世帯の13%が高齢単身世帯となる見通しとなっております。

続きまして、<3>健康・福祉に関するデータに移ります。

16ページは、高齢者の生活と意識に関する国際比較調査におきまして、日本では自分を健康だと思っている高齢者が多い状況にあるというものでございます。

17ページは、左側のグラフは65歳人口の要介護認定のデータです。2055年には2009年の1.5倍の25.3%まで増加するという見込みになっております。右側のグラフは同じく65歳人口に占める認知症の高齢者割合の実績及び推計です。今後とも要介護認定者数及び認知症を有する高齢者数が大幅に増加する見込みとなっております。

18ページは、特別養護老人ホームにおいてサービスを受給されている者と特別養護老人ホームへの入所を申し込まれている方の実数です。介護老人福祉施設サービス受給者と入所申込者数がほぼ同数となっておりますが、サービスを希望する者に対して施設サービスが対応できていない状況にございます。

19ページは、介護保険サービスの利用状況でございまして、65歳以上の受給者は402万人という状況でございます。

20ページは、左側の表のうち上段は、自分自身の介護が必要となった場合の希望で、下段は両親の介護が必要となった場合の希望です。自分自身や両親の介護が必要となった場合、自宅での介護を希望する者が多数を占めております。重度の要介護状態になると施設サービスを受給する者の割合が高くなる状況にございます。

21ページは、要介護度ごとの全74調査項目において重度の選択肢を選択した割合が80%以上となる項目について集計したものでございます。重度者は排せつ等の介助や食事の介助など、日常生活の中で繰り返し行われる動作に対する介護が必要な状況になりやすいとされています。

22ページは、ケアプランに組み込まれているサービス種類数別の利用者数です。右側のグラフは、居宅サービス種類別に見た受給者の要介護状態の区分別の利用状況ですが、重度になるほど医療サービスに対するニーズが高まる状況にあります。

23ページは、上段の円グラフは要介護等から見た主な介護者の続柄です。主な介護者としては同居の親族が中心となっている状況にございます。また、下段のグラフは主な介護者が同居している場合に、その介護をしている者の年齢が60歳以上の割合の時系列グラフですが、老老介護が増加していることが読み取れます。

24ページは、主な同居の介護者の性別の割合を示す円グラフですが、男性の割合が高まっていることが読み取れます。

25ページは、要介護者等の要介護度別に見た同居している主な介護者の介護時間のグラフです。要介護度が高いほど介護時間が長くなる傾向にあります。

26ページは、上段は介護・介護を理由に離転職を行った男女のグラフです。介護等を理由に離転職する者は増加傾向にあります。下段は1年間に同じく介護や看護のために離転職をした者の年齢構成のグラフですが、女性が50歳代、男性が60歳代で離転職を行っています。

27ページは、自分自身に介護が必要となった場合に困る点についてのグラフです。家族に肉体的・精神的負担をかけたくないと思っている方が多い状況にあります。

28ページは、家族の介護が必要になった場合に困る点のグラフです。自分自身の肉体的・精神的負担を心配している方が多い状況にあります。

29ページは、高齢期に備えて健康維持増進を心掛けている者の傾向といたしまして、55歳から59歳の層よりも60歳から64歳の層の方がわずかながらですが、心掛けている方の割合が高い状況にあります。

続きまして、<4>経済状況に関するデータの説明に移ります。

31ページは、左側のグラフが世帯主の年齢階層別の世帯当たりの平均所得金額の3時点比較です。65歳以上の世帯主である高齢者世帯の平均年間所得金額は429万2,000円でございますが、平均よりも低いものの、29歳以下の世帯より高い状況にあります。また、右側のグラフは世帯主の年齢階層別の世帯人員1人当たりの平均所得金額の3時点グラフになります。それによりますと、65歳以上の世帯主の高齢者世帯における1人当たりの年間の所得額は191万7,000円でありますが、世帯主が29歳以下の世帯、30歳から39歳までの世帯よりも高い状況にあります。しかし、10年前と比べますと、高齢者世帯は212万6,000円より約10%低下しておりまして、全世帯より大きい落ち込みとなっております。

32ページは、所得金額階層別に見た世帯数の分布のグラフです。高齢者世帯の所得分布は、全世帯の所得分布と比較して下方に偏っている状況にございます。

33ページは、55歳から64歳、65歳から74歳の年間収入を単身男性、単身女性、夫婦世帯男性、夫婦世帯女性の回答別に集計したグラフです。単身世帯で見ますと男性より女性の方が低い割合になっております。

34ページは、再分配後の等価所得について年齢階級別ジニ計数です。高齢者の所得格差は時系列で見ると改善傾向にありますが、ほかの年齢階級に比べて大きい状況にあります。

35ページは、男女別・年齢別相対的貧困率のグラフです。女性は年齢が上昇するにつれ、男性と比べて貧困率が高い状況にあります。

36ページは、年齢階層別の平均貯蓄額ですが、高齢者世帯の平均貯蓄額は1,207万1,000円であり、全世帯総数の平均貯蓄より高い状況にあります。しかし、高齢者世帯の平均貯蓄額の減少率は全世帯平均に対して高齢者世帯は約-16%と大きい状況にございます。

37ページは、世帯類型別の保護世帯数と世帯保護率の推移です。高齢者世帯の被保護世帯数を見ますと、約56万3,000円の世帯と10年前に比べて大幅に増加している状況にございます。

38ページは、男女別の雇用形態別の時系列のグラフです。非正規の職員・従業員の割合が男女とも上昇傾向にあり、その割合は、男性が18%前後にあるのに対しまして、女性が53%前後と過半数以上の状態になっております。

39ページは、非正規職員・従業員の年齢階層別の時系列グラフです。非正規職員・従業員の割合は、特に若者の上昇が著しい状況にあります。

40ページは、男女別就業形態別公的年金加入状況のグラフです。非正規従業員につきましては国民年金第1号被保険者、公的年金未加入者の割合が大きい状況にあります。

41ページは、国民年金保険料の納付率の時系列データです。平成7年以降は減少傾向となりまして、平成22年度は60%以下にまで低下し、無年金となる者の増加が見込まれる状況にあります。

42ページは、国民年金保険料納付済み期間と免除期間を合算した期間が25年に満たない者の数です。今後納付できる70歳までの期間を納付したとしても25年に満たない者が118万人と推計され、無年金者になる方が増加する見込みになっております。

次に、<5>就業に関するデータに移ります。

44ページは、我が国の今後の労働力の推計のグラフです。高齢者などの労働市場への参入の実現を図る施策を講じない場合には、2006年と比べまして、2030年には5,584万人まで減少することが推計される。ただし、若者や女性、高齢者などの労働市場への参入を実現させ、労働力を確保した場合には、約600万人増加させることができ、6,180万人にとどめることが可能だというものでございます。先ほどの対象者への対策を講じず、かつ少子化の流れを変えることができない場合には4,228万人まで減少するという見通しとなっております。

45ページは、男女別年齢階層別の高齢者の就業・不就業の状況に関するグラフです。男性の場合、60歳から64歳において就業している人の割合は73.1%、65歳から69歳層でも50.1%になっているのに対し、女性は60歳から64歳層で43.5%、65歳から69歳層で28.2%となっておる状況です。

46ページは、60歳以上の方の就業していた年齢についての意識に関するグラフです。働きたいうちはいつまでも働きたいとする60歳以上の方が36.8%で3分の1を超える状況になります。

47ページは、男女別年齢階層別の高齢者が働きたい主な理由のグラフです。理由の第1位は経済的理由となっております。

48ページは、企業規模別の雇用確保措置実施割合の時系列データのグラフです。定年の引き上げや継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じた雇用確保措置実施企業の割合は増加傾向にあり、31人以上の規模の企業では95.7%となっております。また、70歳まで働ける企業の割合も17.6%と少しずつ上昇している状況にございます。

49ページは、定年時に希望する職場や働き方が実際にどのようになっていたかというデータのグラフです。実際に同じ企業で働く方の割合は28%と、希望に比べて低い状況にございます。

50ページは、55歳時点での定年・退職後の勤務形態について、希望する勤務形態と退職後の勤務形態についての年齢階層別男女別のデータです。実際にはフルタイムで勤務している、または、勤務する可能性の高いものは、33.2%であり、各年齢層を男女別に見ましても、5割から6割と希望するフルタイムの勤務形態と比較すると少ない状況にございます。

続きまして51ページは、50ページと同じ対象者で定年退職後の勤務先や仕事から得られる収入についてのデータです。多くは定年退職時の4割から5割、または6割から7割の収入、または見込みとなっており、希望者と比較して少ない状況にあります。

次に、<6>社会参加活動についてのデータに移ります。

53ページは、コミュニティ・ビジネスに従事する年齢構成と従業員の男女別割合のグラフです。中高年層が多く従事し、男女別で女性が58%となっている状況にございます。

54ページは、コミュニティ・ビジネス組織を立ち上げる際の代表者の年齢別・男女別のデータです。コミュニティ・ビジネス立ち上げ代表者には男性中高年層が多い状況にあります。

55ページは、コミュニティ・ビジネスにおける常勤職員と非常勤職員の就労時間、時間当たりの賃金の組織別、形態別のデータでございます。

56ページは、上段が60歳以上におけるNPO活動への関心の有無についてのグラフです。60歳以上の方々はNPO活動への関心が高まっているものの、実際に活動している方は多くない状況にあります。

57ページは、高齢者の学習活動への参加状況についてのデータです。学習活動に参加したいが、実際には参加していない方が40.2%おり、高齢者の学習活動への参加が進んでいない状況にあります。

58ページは、ボランティア活動等に参加している男女別・年齢階層別の割合のグラフです。男性は年齢が高くなるにつれ上昇する傾向にございます。

59ページは、年齢別・男女別の就業時間が週60時間以上の就業者の割合のグラフです。男性は余暇時間の確保が難しい状況にあります。

60ページは、仕事と生活の調和に関する希望と現実の比較のデータです。生活時間をより多く確保したい労働者が多いものの、生活の時間を確保できていない状況にございます。

61ページは、55歳から64歳を対象に、高齢期に備えて過去1年間、自分の能力や意識を高めることの有無についてのデータです。高齢期に備えて自己啓発・学習をしていない人が約3分の2となっている状況にございます。

最後に<7>生活環境に関するデータに移ります。

63ページは、高齢者にとってその地域の不便な点についてのデータです。日常の買い物に不便と回答した方が17.1%になるなど、日常生活に不可欠な事柄に不便を感じている状況にございます。

64ページは、男女別・世帯構成別に人との会話や近所の人との付き合いの頻度、困ったときに頼れる人の割合のデータです。ひとり暮らしの高齢者の社会的孤立が見られる状況にございます。

65ページは、左側のグラフは東京23区における自宅で死亡した65歳以上のひとり暮らしの方のデータです。総じて増加傾向になっております。右側のグラフは都市再生機構の賃貸住宅における孤独死の発生状況の年齢階層別のデータです。こちらも65歳以上の高齢者で孤独死をされた方が増加傾向にございます。

66ページは、虐待を受けている高齢者の属性別のデータです。虐待を行っている者といたしましては、息子が41.0%、夫が17.7%、娘が15.2%となっており、近親者が虐待を行っている状況にございます。

67ページは、高齢者の家庭内における事故の発生場所のデータです。高齢者は敷地内を含む住宅における事故、家庭内では居室が65歳未満に比べて高い状況にございます。

69ページは、年齢階層別の交通事故死亡者数のデータです。高齢者の交通事故による死亡者数は平成13年度の3,216人を最高に減少傾向にありますが、高齢者1,000人当たりの割合で見ますと、平成22年で50.4%と上昇傾向にあります。

70ページは、高齢者の刑法犯被害認知件数のデータでございます。全被害認知件数に占める高齢者被害認知件数の割合は、平成22年におきまして10.7%となっており、緩やかな上昇傾向にございます。

71ページは、70歳以上の契約当事者からの消費相談件数のデータです。平成12年度からは相談件数が上昇しておりまして、10万件を超えている状況にございます。

72ページは、65歳以上の住宅火災における死者のデータです。高齢者の死者の全体を占める割合が61.4%と低下しておりますが、全体としては緩やかな増加傾向にございます。

73ページは、東日本大震災における年齢階級別の死者数のデータです。全体の65.4%を60歳以上の高齢者が占めている状況でございます。

簡単でございますが、以上でございます。

○清家座長 ありがとうございました。

ただいまざっと非常にたくさんのデータを御説明いただきました。資料4の高齢社会対策主要施策の推移、資料5の高齢社会の現状、高齢化の状況から生活環境のところまで御説明いただいたところでございますが、まず、今の事務局からの御説明につきまして何か御質問ございますか。

よろしゅうございますか。

そうしましたら、また後ほど御質問があったらお願いいたします。

今日は後ほど2点、とりわけ今回、検討会で御議論いただきたい論点について御議論をいただきますが、まず、初回ということもございますので、ただいまの事務局からの御説明を含めて、高齢社会対策全般につきまして、各委員の方からそれぞれの御専門の分野でのお考えを伺えればと思っております。

よろしくお願いいたします。

では、順番で森委員からお願いしましょうか。

よろしくお願いいたします。

○森委員 今、御説明いただきました、とりわけ13年12月の大綱に基づくいろいろな施策的なこと、それには前段に社会保障国民会議や安心社会実現会議を踏まえて今回の社会保障・税一体改革へつながっていくわけですけれども、その施策、14年度以降というのですか、とりわけ12年4月、私ども地方自治体では、いわゆる地方分権ということでスタートし、そしてまた介護保険制度がスタートしたということで、いろいろな意味で私がお預かりしておった首長の中で感じたことは、例えば介護の社会化の問題、障害者の社会化の問題あるいは子育ての社会化ということで、そういう方向に向かって、先ほどの法律を含めていろいろな施策というのが、ある面では着実に、お金の問題は別にしまして、考え方としてそういう方向で進めてこられたということに対しては理解をさせていただきます。

しかし、その中で、悪い言葉で言えば、ばらばらで、ある面では以前のものに継ぎ足し、継ぎ足し、継ぎ足ししてきているから、今回の社会保障と税の一体改革というのは、消費税の問題が入るかもしれませんけれども、従来のいろいろな枝葉のものを、切るものは切るとか、あるいは伸ばすものは伸ばすという、今回の高齢社会対策大綱をつくる大きなチャンスではないかなと思います。

そのためには、社会保障と税の一体改革の中で一番感心したのは、自立と自助とそしてもう一つ、個人の尊厳ということをうたっている。実は、従来のものには個人の尊厳という言葉をうたっていなかった。ずっと調べてみたらなかったんです。これからの高齢社会というのは、個人の尊厳をきちっとうたっていくことがすごく求められている。平成13年までの御議論された当時は、俗に言いますと、明治の終わりから大正、昭和の初めの世代、どちらかというと我慢ができるとか、おしんの世界の人たちがいろいろな意味で、いわゆる措置を含めて、サービスは与えられるものだという時代の感覚でよかったかもしれません。

しかし、先ほどもお話がございましたように、団塊の世代は、ある面では物を言う市民。しかも、とりわけ日本の高度経済成長を支えてきた、いろいろな意味で企業戦士を含めた人たちが大勢を占める。先ほど100万人ずつ増えていくとおっしゃいました。そうすると、そういう方たちが中心になっていく社会ということは、物を言うということは、ある面ではきちっと方向が示されれば、そういう方向に対して議論もするけれども、その方向に向かっていくだけの力があるのではないか。それは、いわゆる給付と負担という問題を避けて通ることはできないわけですから、こういうものをはっきり議論すれば御理解いただけるのではないか。

そういう意味で、1つの今までの政策の評価というのは、一定の評価をさせていただきたいと思います。

以上です。

○清家座長 ありがとうございました。

それでは、もしよろしければ園田委員。

○園田委員 では、自己紹介を兼ねて発言します。私は、建築、中でも住宅・住環境を専門にし、既に四半世紀以上ですが、特に高齢化ということに焦点を当てて住宅環境のことを考えてきました。

そうしたときに、大学で学生に教えるときには、実は彼らは真っさらなので、非常に教えやすいのですが、私を含めてある意味世の中で長く活躍してきた人ほど、常識だと思っていることが全く常識ではなくなっていることに気がついていません。その前提を置かないと、今回議論する高齢社会対策の本質が見えてこないのではないかと思っています。

そういう意味で、2001年のときにも多少かかわらせていただいたのですが、わずか10年とは言いながら、されど10年で、その当時とは前提条件が全く違うと思っています。

幾つかポイントを申し上げたいと思います。今日の資料には出てこなかったように思うんですが、私たちは完全に人口縮減社会に入っています。まず、労働問題の御専門の先生がここにもいらっしゃいますが、15年前の1995年に生産年齢が減り始めました。そして、5年前に総人口が減り始めた。予測では5年後とか4年後ですが、世帯数が減り始めていく。そういう中でどうしていくのかという非常に大きな問題が1つあると思います。

2つ目は、家族が決定的に変わりました。これは、2010年の国勢調査で明らかに出てきていますが、私たち住宅を扱う人間は、世帯型の分類ということで、いわゆる単独世帯、夫婦世帯、夫婦と子ども、三世代と分けます。そういう常識的な分類をすると、我が国は、昨年、一番比率の高い世帯型が単独世帯です。私の専門の住宅というのは、これまで長年、暗黙のうちに2人以上の人を対象としてきました。単独世帯というのは福祉施策の範疇の扱いで、寮とか施設しか考えられてこなかった。住宅の分野では単独世帯にフォーカスしたものは全くなかったわけです。家族が全く変わったというのが2つ目です。

3つ目は、ライフサイクルが変わったということす。言葉で言えば簡単ですが、生物学的に見れば非常にこれは大変なことではないかと思うんです。わずか半世紀の間に寿命が1.5倍になったわけです。どこが変わったかというと、人生の後半の部分が3倍近くになってしまって、それを高齢期とか老後とかとざっくりとらえているわけですが、それだと結局、問題の本質が見えてこない。人生後半の3倍に伸びた期間を、年齢で言うと55歳以上ぐらいのライフステージを3分割でとらえたらどうかと思っています。55歳から65歳の年金受給前を成熟期、65歳から75歳の後期高齢者に入るまでを年金中心で時間に一番ゆとりのある引退期、最後に要介護期を含む、看取りも含む老後期があるととらえていかないと問題の本質が見えないのではないか。これがライフサイクルについての問題です。

4つ目は、高齢社会ですから、特に若い方の問題と、高齢者も当然連動しますが、勤労世代の働き方が根本的に変わったということです。働き方が変わるということは、私の分野で言うと、住宅というのはほとんどの方にとって一番高い買い物あるいは一番高い家賃を払うものですから、経済的基盤が全く違ってくるということです。それは単にリーマン・ショックだとか、今回のいろいろな金融危機ということではなくて、恐らくそれはITに代表されるテクノロジーの変化によって猛烈なイノベーションが起きたことによって相当根本的に働き方、経済の基盤が変わってきていることに起因しています。そういう中で生活環境が成立しています。

ですから、こうした意味でこれまで大前提にしてきた20世紀の常識が根本的に変わったというところから今回議論してはどうかということを強く思っています。

以上です。

○清家座長 ありがとうございます。

それでは、関委員。

○関委員 それでは、これまでの高齢社会対策の評価に加えて、自分の考えについても少し話をさせていただきたいと思います。

資料8-3を御覧ください。

私も、園田委員がおっしゃったように、全く社会が変わったと思っておりまして、それに対する認識が追い付いていないところに、これまでの高齢社会対策の一番の問題を感じております。そこで、意識改革ということを、今回の大綱の改訂などを通じて行っていくべきではないかと考えています。

どのように変わったかということについて先ほどもいろいろと御説明がありましたが、皆様既に御承知のことだと思いますけれども、ちょっと違った視点から話をします。資料の1ページ目にあるように、総人口がこのように増えて減ってきているという最初の図は、よく見る図ですけれども、私はこれに加えて、その下の総人口の長期的推移という図を見るといつもわくわくします。

それはどういうことかといいますと、長い人類の歴史の中で、我々は一番上の曲がり角に生きておりまして、この100年、もっと言えば、それこそ20年、30年は、日本、世界が人口という意味で大きく転換している時期にあるからです。このように社会の中で人口が増えていく社会から減っていく社会に変わっている転換期にいるということは、それに併せていろいろな社会制度も変えていかなければならないということを意味しています。昔からあったような生き方が前提ではない社会を考えていかなければならない時期に生きていると思うと、そういう意味で、とてもわくわくするというか、全く考え方を変えなければならないのかなと思います。

ちなみに、今日の資料は慌ててつくりましたので、ところどころ古いものがありますので、それは適宜御了承ください。全体のイメージということでお話をさせていただきます。

2ページをご覧いただきますと、これも皆さんよく御承知の図ですが、このように人口の変化がある中で、とりわけ日本はほかの国に比べても人口の高齢化が著しく早い。3ページにあります高齢化の速度、高齢化のスピードという指標でよく表わされています。これは、2ページにあるように寿命もほかの国に比べて、この図は読みづらいですが、非常に急激に伸びているからです。そこで、例えばドイツでは高齢化社会から高齢社会に移行するまで40年かかって、フランスなどでは115年もかかっているところ、日本では24年しかかかっていない。つまり、社会が大きく変化しなければいけないのにもかかわらず、日本は、どこか別の国を見てその変化を学んでいればいいという時期にはもうなく、世界のどの国よりも先に立って社会を変えていかなければならない。新しい社会像をつくっていかなければならないときにあるのだと思っております。そういう意味で、従来はこうだったなどという固定観念にとらわれてはいられないわけです。

その次の従属人口指数もよく見る指数ですけれども、我々はよく高齢者を65歳以上と定義して、今まで御説明くださった資料も高齢者を65歳以上としていろいろなことが計算されています。老年従属人口指数というのは、老年人口を生産年齢人口で除した値で、こういった値を見て、高齢化は大変だという話をするわけですが、果たしてこの計算方法でいいのだろうかと思います。3ページ目の従属人口指数のところの<1>は、生産年齢人口を15歳から64歳として計算した場合で、<2>は20歳から69歳で計算した数字です。これを見てもわかるように、一体誰を支える側ととらえて、誰を支えられる側ととらえるかによって負担感も全然変わってきます。そしてなお厳しい現実は、<2>のように生産年齢人口を20歳から69歳としたとしても、2020年には老年従属人口指数が34.7%になっている点です。70歳でも老年人口と捉えて良いかということになります。人口構成という観点からすると、69歳、70歳、さらには75歳など、もっと先まで支える側に回らないと、社会のバランスが保てない時代になってきているのではないでしょうか。にもかかわらず、この点に意識が追い付いていないのではないかと思います。

これは平均寿命の伸びと関係しています。先ほど園田委員もおっしゃったように、平均寿命が大幅に伸びておりまして、戦後をみると、男女ともに約30歳も平均寿命が伸びています。30歳も伸びると、戦後につくられた例えば年金制度ですとか、いろいろな制度が想定していた負担のあり方、誰が誰を支えるという社会像と現在のものとでは全く異なってきています。高齢者の年齢は、55歳から60歳、60歳から65歳、70歳へと上がってきていますが、いろいろな制度によって異なるとともに、そこから余り動いていません。この点、国民の意識をまず変えて、それこそ65歳は高齢者ではないということを多くの国民が共通の認識にすることが必要なのではないかと考えています。

今、年金について支給開始年齢を上げるといった話があります。私は必要な制度改革だと思っていますが、そういうことを可能にするためにも、社会の変化について認識を共有せねばなりません。昔であったら支えられていたわけですが、今は40年間働いて20年間支える形に年金制度が設計されているので、世代間扶養が厳しくなってきています。個人の人生で考えても、人生の3分の2働いて、残りの3分の1を働かずに生活しようと思ったら相当貯蓄をしなければなりません。そのような戦後にできた支える側と支えられる側の比率のままでいいのかということをいろいろな方に考えていただくと、もしかすると支給開始年齢を上げるということについての理解も深まるのではないかと思います。また支給開始年齢を上げるためには、年金の受給時期まで働けないと生活はしていけません。できるだけ長く働ける社会になっていくためにも、支える期間と支えられる期間の比率の構造についての理解を高める必要があるのではないかと考えています。

ということで、高齢社会対策を推進する上で重要な視点というのは、第1に、高齢者は65歳以上という認識を変更し、その意識改革をいろいろな形で行っていくということ。これはキャンペーンだとか、いろいろな方法があるかと思います。第2に、高齢者となる年齢を、65歳以上ではなく、例えば70歳、75歳以上に変えていった場合、人によっては60代を過ぎると体が弱ってきたり、いろいろな方がいます。多様な働き方、多様な生活の仕方が出てくるので、それが可能となる柔軟なライフスタイルを可能とする社会が必要です。実際、若い人でも非正規雇用が増えているように、働き方、ライフスタイルは非常に多様化しているので、そういった現実にもう少し合った対策というのがいいのではないでしょうか。高齢社会は大変だという話になりますが、団塊の世代がもっと多様な働き方をし、それが社会全体にも浸透すれば、実は若い人や、女性ももっと働きやすく、また、働き過ぎの男性も余り働かなくて済むという社会になるのではないかと思っています。

もう一点は、先ほどのいろいろな統計資料にもあったように、現在、高齢期も若いときもそうですが、格差が非常に増えてきているので、格差を是正し安心を提供するという視点を忘れずにいる必要があるのではないかと考えています。この点、高齢者の年齢の定義を上げていく話をしますと、どんどん給付がカットされるのだという印象を与えます。しかしそうではなく、年齢によるいろいろな差別を禁止すべきであるとともに、ある一定年齢以上の人については、それなりの保障がある格差の少ない社会という方がいいのではないかと考えています。

つまり、人生の最後の10年ぐらいについては、生活の心配をしたり、介護だとか、医療だとか、そういうことの心配をせずに生活できる社会というのが優しい社会ではないかと考えております。多分もともとは、年金制度などもそういった発想から作られたと思います。人生の最後はお疲れ様といって、それこそ先ほどの尊厳を持って生活をしていただける社会をつくるならば、若年者や中年者にとっても、最後は保障されるのだから、それまではもう少し働いていこうというようになるのではないでしょうか。年金が切り崩されるとか、社会保障が減っていくというマイナスな要素だけではなくて、全体として希望のある社会設計もできるのではないかと思うので、その視点も重要ではないかと考えています。

こうしたことについて、高齢者と年齢について簡単にまとめたものが資料8-1となっておりますので、詳しくはよろしければそちらを御覧ください。

また、こうした高齢社会を設計するために、社会の中での働き方がこれからキーポイントとなってくると思います。そうした高齢者雇用についてと、それと社会保障との関係、どれぐらい保障していくのか、どれぐらい差別を禁止していくのか、そういったことについて書いたのが資料8-2です。よろしければそちらも御参照ください。

○清家座長 ありがとうございました。

それでは、香山委員、よろしくお願いいたします。

○香山委員 香山と申します。

私は精神科医という仕事をしておりますので、精神科の臨床現場で私が感じていることを印象論にとどまるかもしれませんが、簡単にお話をさせていただきたいと思います。

先ほど園田委員や関委員から社会が変わったとか、家族というものが変わったというお話が出ましたが、私がいる臨床の現場でもそこに現われる、ちょっと乱暴な言い方になりますが、人間が変わったという印象を受けることも少なくありません。

私は高齢者専門というわけではないんですけれども、高齢の方もお見えになりますので、そういう方を診ていても、当たり前のことかもしれませんが、余りにも個人差あって、70歳とか75歳といった年齢でその方の状況、特に心理的な状況などを推し量ることがとてもできないという現状もあります。

この先、65歳以上の方々が戦後生まれということになっていくと思うんですけれども、そうすると、もう多分その方たちは自分が社会から期待される役割をこなしていくというよりは、もう少し自分の欲求を満たすことが生きる目的という教育を受けたり、価値観を持ってこれまで過ごしてきた方だと思います。

皆さんもよくお耳にすると思いますけれども、アメリカの心理学者のマズローという人が人間の欲求階層説などというのを言っておりまして、最初は本能というか、衣食住が足りればいいという段階からどんどん欲求が上がっていき、最後の方で尊敬の欲求、人から敬意を払われたい。その更に上に自己実現の欲求、自分らしく生きていきたいというのが豊かな社会における人間の最終的な欲求だと言っていますけれども、まさにその自己実現の欲求まで満たさないと生きている価値がないと思われている方たちも今、大勢いらして、高齢者の方たちもその年代のグループに入りつつあるんだと思うんです。

なので、従来の70代というときに私たちがついイメージする、もう悟りを開いたような円熟した、達観した境地というのとは全く違って、診察の場では70代の方でも例えば自分探しみたいなことをしていたり、あるいは親との葛藤を70の息子や娘が90代の親との心の確執みたいなもので、まだお母さんを許せないとかということを言っていたり、あるいは恋愛を非常に激しく求めてそこで悩んでいたりとか、従来の若い、私たちが30代とかのときに当然、解決しておいているはずと思われる問題をそのまま高齢まで引きずってというんでしょうか、ずっと抱き続けている方もいます。

ただ一方で、昔ながらの高齢者と言っては変ですけれども、そうではない方、特に今日いろいろ貧困の問題なども出てきましたけれども、生活するだけで手いっぱいとか、都会でひとり暮らしでだれにも支援してもらえないとか、そういう方もいて、とても前向きな気持ちになどなれないという方もいると思います。

そういう意味では、これからは年齢で切っていって、その方たちに対する福祉だとか、社会的な対策を考えるというよりは、これは実現がなかなか不可能かもしれませんが、ある意味、オーダーメードのと言うんでしょうか、その方の状態に合ったサービスを、これとこれとこれとこれを私は利用したいとか、全く個人それぞれに合わせたというのは難しいかもしれませんけれども、ある種、オーダーメードのような社会対策というのが必要になっていくのかなと思います。

今日も、まだ就業可能な高齢者をどうやって仕事をしていただくかとか、そういう話もいろいろ出ておりますけれども、確かにそうやっていつまでも仕事を通して社会参加したいとか、自己実現したいという高齢者もいる一方で、いろいろな事情でそうはできないとか、あるいは例えばデジタル機器を使いこなせずに全くそういう仕事だとかについていけないという高齢者も勿論たくさんいるわけで、そういう人たち、いわゆる社会の生産性という部門に寄与していない人たちが、最初に森委員がおっしゃったように、何か自分たちは社会のお荷物になっているとか、若い人の足を引っ張っているんじゃないかとか、スマートフォンを使えない私はもう脱落しているとか、肩身の狭い思いをしないような、それぞれの人たちがそれぞれの立場で自分は生きているということの尊厳を感じられるような、これも机上の空論みたいな理想論みたくなってしまいますが、働きたい人は働けるけれども、働きたくない人や働けない人は働かなくても十分に生きている価値を認めてもらえるという、そちらの方の視点も是非忘れないでいただいて、これから私も高齢社会対策ということについてもう少し具体的に何か意見を言えたらなと思っております。

以上です。

○清家座長 ありがとうございました。

今、各委員からお話を伺いましたので、委員同士ディスカッションもあるとよろしいんですけれども、時間の関係もございますので、この後少し、今のお話も含めてディスカッションしていただくということで、先ほど申しましたように、資料6のところでしょうか、検討会議で御議論いただきたい論点というのが2つ出てございます。1つが「これまでの高齢社会対策への評価」。これは先ほど森委員などからもお話がございましたけれども、もう少しございましたら、これまでの高齢社会対策への評価という点と、もう一つは、「今後の高齢社会対策を推進するに当たって重要と思われる視点・事項」。これも既に今、各委員からのお話の中にもあったわけでございますが、また改めて伺いたいと思います。今の御議論の終わりにということなのかもしれませんけれども、本日お休みの弘兼委員の方から資料10というのが出ておりますので、これを事務局にまず読んでいただいて、その上でもう一度、議論を進めていきたいと思います。

では、よろしくお願いいたします。

○原口参事官 それでは、弘兼委員より御提出いただきました資料10に基づきまして御説明したいと思います。

「団塊の世代が高齢期を迎える高齢社会に向けた提案」というものでございます。

はじめに…

・人は仲間に支えられ、大きな困難を乗り越えることができる。日本人は、痛みをわかちあうことができる国民である。

・東日本大震災は、"大人の担う役割と責務"を考えさせられた。今、大人がしなくてはならないことは、日本という社会の親として生きる姿勢を見せるということ。「相互扶助」の精神の強さを次世代に伝える。

・大人であるということは、年齢に関係なく「自己責任」のもとに生きているかどうか。準備と、何事も自己責任という覚悟。

その後ろに4項目ございますが、まず1番目に「プラス思考の自律した高齢期のススメ」というところでは、老人が無気力になる一番の原因は、暇を持て余すこと。現役を離れて、そこから自分という個人になったときに、どんな老人になっているか、定年前から想像しておくのも大切。自分のことは自分でし、かつ周囲と孤立しない生き方をする。それが楽しく生きていけるコツ。自分の身の回りにも、別の社会はちゃんと存在する。一方、僕たち世代が勇気ある消費をして、経済を活性化させなくては、日本は元気のない国になってしまう。単に役に立たない存在ではなく、立派な納税者にもなる。楽しく消費すれば、ストレスも消え長生きにつながる、まさに一石二鳥ではないか。

2点目の「"有償ボランティア"の提案」でございますが、年をとって暇な時間が増える。外に出て仲間ができるボランティアをしたらどうか。ただ、ボランティアも有償という点がポイントです。全くの無償だと、預貯金が減って不安感が増してしまいます。

次のページでございますが、有償ボランティアであると同時にポイント制も付ける。それを地域ごとで行うようにするのが望ましいのではないか。インセンティブの付いたボランティアを考えて、必ずやってくる高齢社会に向けて準備をしていく時期ではないか。

3つ目「生涯学習のススメ-学ぼうという気持ちが若さを保つ」。何かを習おうとか、新しいことを始めてみようとすることが老化防止につながる。定年退職した後に、特に何をするか決めていない方や、子育てが終わった時間に余裕ができた方などにもう一度「学ぶ」ということを提案したい。

4点目「『世代を超えた交流』のススメ」といたしまして、逆に増えてくるお年寄りのよりどころがなくなってきているのが現実だと。その変わり、使われなくなった学校の教室を使って子どもとお年寄りが同居する地域ホームみたいなものがつくれたらいいのではないか。自分が人生で培ってきたことを次世代に伝えるのも我々世代の1つの役目なはず。世代を超えた交流の場ができれば地域が活性化するかもしれないというところが御提案いただいているものでございます。

以上でございます。

○清家座長 ありがとうございました。

それでは、先ほど申しましたように、2点、これまでの高齢社会対策への評価、今後の高齢社会対策を推進するに当たって重要と思われる視点・事項。この両方は関連もしておりますので、委員の皆様方から引き続き御意見をいただきたいと思います。

では、森委員。

○森委員 先ほど園田委員の方から家族ということのお話がございましたけれども、実はもう一つ、日本が高度経済成長をする中で地域社会の地縁が崩壊という表現かどうか知りませんけれども、がたがたになってしまった。それはある面では、いわゆる農業を中心とした時代では、隣近所を含めた互助という中で地域社会が冠婚葬祭を含めていろいろな意味でつながりがあったものがなくなった。

現在ですと、頼母子講みたいな、講ということをやっていらっしゃるところはいろいろな意味で地域のつながりが強いところがありますけれども、いわゆる高度経済成長の中で、例えば東北とか九州から太平洋のベルト地帯へ働きに出られると、そういうところでも地域からどんどん来てしまう。ましてや、今度は都会へ出てこられた方たちが一定の年齢になって、常に自分たちは企業戦士で、第一線で活躍しておった。しかし、ふっと地域へ帰ったら自分たちの居場所がない。あるいは地域社会というものがなくなっている。

例えば典型的に極端なことを言いますと、昨年来ありましたように、買い物難民という1つのことでもそうですけれども、地域社会の中にお店屋さんすら、自分たちの身の回りのものを買うお店がなくてはるか遠くまで行かなければいけない。地域にとっての生活するインフラもなくなってきたというのが1つの大きな問題です。そうするとそれは、地域社会全体の地縁というものがある面ではなくなってきた。それを復活させるという視点が大事だと思います。

地域社会というのは、13年のときに地域社会への参画促進に取り組む課題が書いてあるんですけれども、それ以前の問題になってしまったのではないか。そこまで行かずに崩壊してしまったのではないかなと思います。

それと、ある面では企業社会、高度経済成長の中で社縁という、福利厚生というのは、いろいろな意味で会社が賄っておった部分があったと思います。こういうものもだんだんそぎ落とされてくると、社縁というものがなくなってくる。特に男性社会においては自分の居場所がなくなってきたというのが現実ではないかと思います。こういうものを地域の中でつくり出していくということが、私はある面ではこれは「新しい公共」、自分たちが持っている力が発揮できるような場所を作り出していく。

先ほど弘兼委員の方からちょっとした有償ボランティアということを含めて、こういうのは先ほどの資料にもございましたけれども、ボランティアとか、いろいろな企画経営をするには男性の方がすごくやはりたけている。実際に活動するのは女性の方たちがいろいろな意味で活躍できるかもしれませんけれども、そういう「新しい公共」を含めた、コミュニティ・ビジネスも含めたものを地域の中でつくり出していくということが大事ではないかなと思います。

もう一つ、互助という、これは先ほどの地縁の問題もそうですけれども、互助という視点がどちらかというとなくなっているのではないだろうか。自助、そしていわゆる共助というのはある面では社会保険だと思います。それで、公助。いわゆる社会福祉的な政策的なことです。互助というものをやはり先ほどの地縁というところでいかに取り戻すか。これが私たちに課せられた、あるいはこれからを生きる時代の人間に課せられたものではないだろうかなと思います。

そしてもう一つ、実はこの中で3番目に横断的に取り組む課題の中に世代間の連帯強化ということがあります。だけど、今、現実に世代間ということの対立。例えば年金の問題を含めて、しかしもう一つ、実は同じ世代の中での格差、こういう問題は高齢者の中でも格差が出てきて、今、高齢者で生活保護という方たちがどんどん増えて、そしてまたそれが悪い方にとられて、いわゆる貧困ビジネスのくいものになってしまって大変なことが起こっている。だから、悪の連鎖の中に、悪い方の連鎖の中にはまってしまって、そこからなかなか抜け出せないという方たちがいらっしゃるのではないかなと。こういうものを断ち切る世代間の格差も勿論全体もそうなんでしょうけれども、世代内の同じ世代の中での格差をなくす、あるいは連帯を、つながるようなそういう仕掛けづくりが必要ではないだろうかなと思います。

実は、今日、新聞を見ていましたら、成年後見制度の中で、後見人、特に家族の方が逆に言うと略奪していく。先ほどのお話にございました家族自体が完全に崩壊しているわけです。こういういろいろな意味で社会現象が現実に起こっているということを、確かに起こっていることは、今、いかにしてそれを是正していくかということは勿論ですけれども、そこには将来どういう社会をつくるんだという1つのグランドデザインをつくることが、従来のようにいろいろなものをつぎ足した策ではない、新しい方向に向かっていくというグランドデザインを示すことがある面では今回の大きな考え方の1つではないかなと思います。

○清家座長 ありがとうございました。

では、園田委員、よろしくお願いいたします。

○園田委員 今ほどの森委員のお話で言うと、私は、家族が変わったということに関連して、それに代わるものとしてこれからお話したいと思うんですが、「コミュニティ」ということへの期待がすごくベースになりつつあると思います。

もう一つは、自助・共助・公助と言われたことで、「互助」の部分が鍵ではないかと思います。互助というのは、ひところはシャドーワークと云われ、何かそれはいけないもののように扱われてきたことがあります。しかし、私の分野で例えば「高齢者の人を見守る」と言葉は美しいのですが、それを全部見守るという、普通に家族がいれば何でもないことを外部化し、経済化してしまうと、50人の高齢者を一ヶ所に集めてやっとできる。それでもお1人ずつ月額3万円いただかないと、これは公共がやっても民間がやっても同じで、見守りを外部化、経済化したとたんに成り立たない。そういうものを一体どう扱っていくのかというところを解かなければいけないと今のお話を聞いて思います。

私が今日、論点メモに対して用意した資料9を見ていただきたいと思います。第一の、これまでの高齢社会対策への評価はどうかというのに対する私なりの答えの見取り図です。20世紀的に考えると、私たちはすべてツリー型というか、トップダウン型・縦割り型でやってきました。社会が成長していくときには非常にそれが効率的だったと思います。例えて言えば、今、ここではいろいろな省庁の方々が横並びしていらっしゃって大変よいと思いますが、すべて縦割り行政と言われているように、例えば厚生労働省と国土交通省と何々省ということが全部別々に動いていて、更にその省庁の中でそれぞれ局のディビジョンがあってそれぞれが別個に動く。そういうふうになっています。あるいは国が決めたことをまず都道府県がそれを受けて、都道府県が更に市町村ということで、20世紀的には非常にうまくいっていました。高齢社会対策大綱というのもそういう意味で言うと、今まで10年間やってきたわけですが、ちょっと口が悪いですが、拡張に次ぐ拡張というか、あえて言えば、増築を重ねた温泉旅館のようになっていまして、一体何が何だかわからないという状況ではないかと思っています。

それで大変だということなんですが、私のように住宅、福祉とか医療もそうだと思いますが、それらは実は地面に生えているものなんです。ということは、問題はどこにあるかというと、もはや1つずつの現場に即したところにあります。特に体の弱られた高齢者と物言わぬ小さな子どもは非常に植物に似ていると思います。自分の力では自由にどこにも行くことができずに、その地に根ざして、そこから養分をもらってお互いに支え合って、大きくはないけれども、小さな花を咲かせている。例えて言えばそういう存在だと思うんです。

21世紀的解法としてはどういうことかというと、ちょっと変な図ですが、さまざまな資源だとか、さまざまな人材だとか、あるいは別の言い方をするとさまざまな利害関係者、ステークホルダーと言うわけですが、そういう中に特に例えば郊外住宅地とか、さっきおっしゃったコミュニティが、ある1つのまとまりを持って存在しているわけです。そういうクラスターという中でボトムアップ的、横つなぎにしながらそれぞれの日々の生活をどうしていくのかということを切り口としてはどうか。

そう考えると、実は、高齢社会というのはそんなに難しくないと思っています。どういうふうに考えているかというと、先ほど御紹介の中で「地域包括ケア」という取り組みを厚生労働省が中心になって考えられているということですが、大体のイメージが1中学校区です。そうすると、人口が2万人です。仮に高齢化率が30%だとすると、2万人の人口で65歳以上の方が6,000人いらっしゃるわけです。その中で本当に重度の介護というか、先ほどの関先生のお話だと、最後の10年間が大変な方というのは5%、300人です。そうすると、本当に中学校の生徒の人数と同じです。だから、2万人の1中学校区の人で中学生を見ていたように、300人の高齢な方の最後のみとりまでができればいいだけなのです。問題を難しく考え過ぎてやしないかと思っています。

資料9の2枚目ですが、とは言いながら、私の分野の住宅とか、住環境というのは、今までは、20世紀というのはずっと、家を提供すれば後はOKでしょう、家を持てないとか、大変だという人には経済保障をすれば大丈夫でしょうというやり方をしてきたわけです。これは公営住宅もしかり、生活保護の中での住宅扶助もしかりです。ところが、現在は、実はもう一層下に深い問題が出てきていて、そこから解いていかないといけない。別の言い方をすると、実は住宅という箱の提供ではなく「環境」そのものをよくしていかないと生活が成り立たないと思っています。例えば経済的に保障されていても、健康に問題のある高齢者の方とか、あるいは知的・精神・身体障害者の方はただ家があってもどうにもならないわけです。

家族問題ということで、共働きの世帯、子育ての世帯、あるいはシングルペアレントの世帯、最近ですとDVの方々というのは家があってもどうにもならないわけです。家は必要条件だけれども、全然十分条件ではなくて、それ以外のものとの重ね合わせがないと本当の意味での居住保障にならない。

労働問題も非常に大きな問題で、先ほど尊厳と森委員がおっしゃったことで言うと、自分が働けるとか、役割を持っているという、そういうところから始まって自分の力で生きているんだという、そういうものがないと幾らこの家に住んでいいですよ、家賃を払わなくていいですよ、毎日ぶらぶらしてくださいと言われても、やはり人間というのはそれでは生きていけない。そういう意味で言うと、一層下の深いところから焦点を当てて生活環境というところも解いていく必要があると思っています。

最後の1枚が私が考えているこれからのための見取り図です。自分で頑張れる人はできるだけ頑張った方がいいと思うんです。一番左側です。「自己力の拡大」と書きましたけれども、家族、親族が力を合わせて自分の可能性を最後まで追求するということが十分これからも必要だし、やっていくべきだと思います。

右からの方の赤い線ですが、特に高齢者介護とか、そういうさまざまな部分、もうかれこれ20年近く社会保障の形で社会力による下支えとして、私の専門の分野で言うと、いろいろな老人ホームやその他の施設やサービスを曲りなりにも整備してきたわけです。けれども、実は両者の間の部分が埋まっていないのです。それが先ほどコミュニティとおっしゃったところだと思います。

先ほど申し上げた中学校区程度の身近な生活環境の中でさまざまな地域資源とか、人的な資源を活用して、そこにあえて「¥」のお金の袋も書きましたが、人も三世代、四世代で、それらの間できちっとした循環ができる。人もお金も廻るわけです。そういう社会がこれからの私たちの設計図としてどうかという提案です。

地域の中で福祉と経済が循環していく。これまで介護保険とか、医療保険の整備がされてきたわけですが、それの受け皿となる住居、そういうものをもう一つ加えることによって新しいイノベーションができるのではないか。今までの住宅分野は建物の中だけで問題を解こうというそういう性癖が非常に強くて、50人とか、100人の高齢者を集めて老人ホームですとか、高齢者住宅という、そういう解法しか持ち合わせていません。私はオープンエンドの地域を単位にした新しい循環が、先ほど「新しい公共」とおっしゃいましたが、地域福祉というのが「新しい公共」であれば、仲間福祉もあってもいいのではないか。それが「新しい民間」ではないかと思っています。これは、それほど大変なことではない。

75歳以上人口の増え方だと、あと20年間増えて踊り場です。その20年のことで言うと、本当に今、直面しているのは、戦後核家族の老後問題。もっと言うと、専業主婦の老後問題だと思っています。上野千鶴子先生は「おひとりさまの老後」とおっしゃったのですが、21世紀の初頭の2030年ぐらいまでは、専業主婦の老後問題を解ければ、私たちの社会はある程度のゴールに滑り込めるのではないかというのが私の見方です。いかがでしょうか。

○清家座長 ありがとうございます。

また後で何か議論になるかもしれませんが、とりあえず次に。

○関委員 非常に興味深い話ばかりで、たくさん話したいことがあるので、長くなり過ぎたら止めてください。

大きく3点、今まで御意見を伺いながら考えた点があります。

1つは、先ほど香山委員が話された、働きたくない人を働かすべきではないのではないかという問題提起についてです。働きたくない場合はどうしようかというのは非常に難しい問題だと思うのですけれども、これについては、3つ少し考えなければならないことがあると思っています。

1点目は、先ほど来話してきたように、人口構成が大きく変わってきていますので、60代とか70代初めというのは、支えられる世代ではなく、支える側に回らないと世の中がやっていけないという観点からすると、働きたくないということで働かないことが許されていいのだろうかと少し思います。

ただ、2点目として、今までのように若いうちは夜まで働いている男性を考えると、60歳になったら疲れ果ててしまうというのはやはりそうであって、そういう社会においては、その方たちにもっと働いてくださいというのはちょっと酷かなとも思います。ということで、長く働くためには、休み休み働くというような、男性も女性も家庭生活と両立できるような働き方が前提ではないかと思います。

資料からみても老後に向けて学習とかの準備をしているかというと、していない方が多いです。忙しいとそういった準備もできないわけで、例えば5年に1回は半年間ぐらい全員が休めるといった制度も良いのではないでしょうか。その間に遊んでもいいですし、ボランティアをしてもいいですし、自己啓発をしてもいい。いろいろな形で自分の多様な生き方、1つただ今の仕事をしているということではない生き方を若いうちから模索していれば、より長く働くこともできるのではないかと思います。

3点目は、先ほどからいろいろな共助の話が出てきておりますが、だれが支えるか支えられるかという話をしたときに、金銭、つまりお金の面で支えあうという話のみならず、人にとっては、心の支え合いというのがすごく大事な要素であると思います。自己実現の要求とか、尊厳がより重要になってくるというお話も香山委員からありましたが、そういった意味でも、支えたり、支え合ったりということを考えるに当たっては、心の支え合いにより注目していかなければならないと思っております。

勿論これは60歳、65歳以降の方々以外もそういった部分でお互い助け合えられる働き方なり、生き方ができるといいのですが、まずは、団塊の世代の方に期待したいと思います。今までの働き方と同じような働き方では疲れてしまいそうな世代ですし、違う働き方ということで、社会貢献ですとか、心の支え合いにつながる働き方という多様な働き方をする。つまり、若いうちは所得のために主に働くとしても、65歳などを過ぎたら、もう少し自己実現だとか、社会のために働くという要素が増えてもいいのではないかと思います。

次に、全体としての2点目ですけれども、先ほど年齢による差別はよくないという話がありました。私自身も差別のないエイジフリー社会というのはいいと考えていますが、同様に年齢による保障というのも、ある点では重要ではないかと思っています。年齢で差別をしない、多様性を生かす制度と年齢を理由に保障する制度は、対立するような側面もあるし、対立しない側面もあるので、そこをどう両立させるかをうまく考えていかなければならないと思っています。

つまり、年齢によって差別をしないということは、ニーズに基づく保障をすることになります。そうすると例えば年金で言えば、所得の少ない人、お金のない人だけに年金を出すという考え方になります。高額所得者には年金は要らないという考え方をとると、年をとったときに、自分はお金がないから年金をもらうという形なり、心の安定とか、平穏が保たれるでしょうか。ある一定の年齢になったら、みんながもらえるのだから私ももらっているという方が、もしかして幸せなのではないかという意味で、制度によっては年齢によって保障するということも重要ではないかと思います。差別禁止と保障のバランスをどうとっていくかということを考えないといけないと思っています。

次に大きな3点目として、先ほど園田委員が示された3番目の図を私も大変興味深く拝見させていただきました。アメリカに長期ケア退職者コミュニティ(CCRC)というものがあるという話は皆様よく御存じかと思います。フロリダとか、カリフォルニアとか暖かい地域に、サンシティといった高齢者のコミュニティがあります。そういったアメリカの高齢者のコミュニティがどういうものかというと、1つのコミュニティの中に多様な施設があります。まず高齢者住宅があり、高齢者住宅に住めなくなった人は老人ホームに行き、そこでも生活できなくなった人は病院に行き、最後は教会にという、全部を1つにしたコミュニティです。それを日本では地域でつくれたらいいのではないかと思っています。アメリカのように広大な土地があるわけでもないので、何か1つのコミュニティをつくるというのではなく、実際の地域をコミュニティにしてしまうわけです。

アメリカの高齢者コミュニティの特徴は何かというと、真ん中に大きな食堂があって、そこで毎日1回は一緒に食事をする点です。そこで顔を合わせていろいろな話をして、このコミュニティでどんな活動をしていきましょうかとか、そういった情報交換もします。日本にも老人ホームに食堂がありますが、地域の中で、高齢者が集まれる食堂をつくって、そこで高齢者が元気に生活しているかということをチェックしたりしてはどうでしょうか。本当は震災の後、仮設住宅にそういった機能があるといいと思っていたのですが、そうするともっと情報交換ができるのかなと思います。ほかには例えば、コミュニティでとても便利なのは、高齢者だとパソコンが分からなくなったり、うまくネットがつながらなかったり、電球が切れたといったときに、ちょっと電話をすれば誰かが手伝いに来てくれる仕組みです。それも地域の電気屋さんと予め包括的な契約をして、そうしたサービスを提供してもらうという風に、現在、その地域にあるものをもっと組み合わせてコミュニティにしてしまうという発想があったらいいのではないかと思っております。

○清家座長 ありがとうございました。

では、香山委員、お願いします。

○香山委員 皆さんから大体いろいろなお話は出たと思うんですが、私から短く3つだけお話したいと思います。

1点目はアウトリーチということをお話したいと思います。

今、いろいろな委員からも居場所づくりだとか、こちらから出ていく場所というお話も、高齢者の食堂とか、とてもおもしろい点が出たと思うんですが、この問題を考えるのは、震災後のいろいろな復興の問題を考えるとそれがある意味、1つのモデルになっているのかなと思うんです。

内閣府の参与の湯浅誠さんなども仮設住宅の近辺に、関委員がおっしゃったサロンのようなものを、コミュニティみたいなものをつくっても、なかなか男性が出てこない。女性で割とコミュニケーション能力が高いというか、ふだんからおしゃべりするような女性は出てきていろいろお話をするんだけれども、仕事を失ってしまった男性などは、そこにも出てきてくれないというお話も聞いたことがあります。

そうなってしまうと、勿論高齢者の方もそういう方が少なくないと思うんですけれども、こっちから出ていって、どうですかとか、こっちから御用聞きに行くというような、いわゆるアウトリーチ型の支援というのもどうしても必要になってくるのかなと思います。

仮設住宅でも厚労省の方で健康生活サポーターというんですか、そういう制度をつくられて、これから仮設住宅に高齢者とか、いろいろな方たちの健康状態などを聞きながら生活の支援をするという事業を進めていくというのを新聞で見たことがあるんですけれども、そのようなこちらからいろいろ出ていって、いろいろなお話を聞いたり、アドバイスをするという役割の人も多分、高齢者支援でも必要になってくると思います。

とは言え、そういう人たちは実はいたわけで、それは多分、地域の民生委員の人がこれまではそういった役割を担っていたんだと思います。でも、これも皆さん御存じのように民生委員はなかなか今、なり手がいないとか、あれは無給という制度なので、それもあってかあるいは非常に責任が重かったり、大変な仕事なので、なかなか新しい方がならず、人数が減っているというお話もよく知られていることです。

公営住宅などでは、それもライフサポートアドバイザーと言うんですか、公営住宅で高齢者用の公営住宅に出かけていって、そこで生活相談に乗るという資格などもあって、NPO法人などでLSAをいろいろ派遣しているところもあると思うんですけれども、そういった何かこちらから派遣というか、出かけていって、何か必要なことはないかとか、相談にいろいろ乗ったり、サービスにつなぐという、そういう役割の人たちというのもこれからどうしても必要になるのかなと思います。

2点目ですけれども、これも皆様たちのお話で出ていたと思うんですけれども、私も今日、この高齢社会対策の主要施策というのを御説明いただいて、とても不勉強ですが、率直な意見として、こんなにあったんだという、まず最初の感想で、こんなにいろいろなことが行われていたとはよく知らなかったと。本当にお恥ずかしいですが。きっとそれぞれにいろいろなサービスがあって、使えるものとかもたくさんあっただろうなと、本当に改めてというか、初めて知った思いなんです。

私が知らないということもあるかもしれませんけれども、多分、多くの方たちも知らず、特に利用させる当事者の方や家族の方の多くは知らないことが多いんだと思います。なので、こちらから御用聞きに行くだけではなくて、あそこに駆け込めば何とかなる。いろいろなこれも使えますよとか、こういう対策がありますよ、こういうサービスがありますよというのを、そこに行けばとにかく、先ほどから縦割りというお話も出ていますが、それを超えて何かにつないでもらえる。あるいはNPOとか、民間のサービスも含めていろいろ紹介してくれたり、使える制度を教えてもらえるというところがあればなと思います。

私の分野では、皆さんこれも御存じだと思いますけれども、イタリアという国が精神病床を廃止したという、病棟をゼロにしたということはよく知られていますが、それがどうして可能になっているかというと、私もイタリアに行ったことはないので、聞くだけ聞いたりしたことだけですけれども、地域に拠点となる精神医療センターという非常にしっかりしたものがあり、そこには医師だけではなくて、看護師やソーシャルワーカーあるいは雇用の関係の人とか、いろいろな職種の人たちがそこに詰めていて、そこに行けばとにかく障害を持った方が今、必要としているいろいろなケアが一気に受けられるという拠点をしっかり整えたということがあるということはよく聞きます。何かそれに似たような、高齢者でも勿論、今、地域包括支援センターがある種、それに似た役割を果たしているところもあるとは思うんですが、そこへ行けば何とかなるというところが必要かなと思いました。

最後にもう一つだけ、高齢者の場合、だれかが支える、特に今日の御説明でも、どうしても家族が支えるというところが多いと思うんですけれども、支える側を支えるというか、そういったことも必要になってくると思います。私のところにも今、介護問題で非常にくたくたになり、いわゆる介護鬱の状況になって駆け込んで来られる方たちが、これは女性だけではなくて男性あるいは今、私のところでとても多いのは、両親は仕事を持って働いていて、フリーターの孫がおじいちゃん、おばあちゃんの介護を押し付けられているというか、担わされていて、孫たちが、あなたは仕事もしていないんだからせめて介護しなさいという感じで介護をしていて、心身ともに疲弊してしまっているというケースなども目立っています。

今回、震災でも支援者も被災者であるという言い方もされて、いろいろなボランティアですとか、救助に当たった公的な仕事の人たちの心のケアなどというのもようやく今回の大震災でも少し注目をされつつありますけれども、本当にそういうふうに高齢者の方たちを支援する家族や、もしかしたらNPOの方、あるいは実は自治体などで社会福祉にかかわっていらっしゃる公務員の方もうつに陥って、私の病院に来られる方も多くて、福祉の最前線におられる方たちの疲弊が非常に大変なことになっているなというのはひしひしと感じております。そういう支える側の人たちを支えるという、どこまでやればいいのかという問題がありますけれども、そういった視点というのも織り込んでもらえればなと思っています。

以上です。

○清家座長 ありがとうございました。

ただいま4人の委員からお話をいただいたところでございますが、先ほどの弘兼委員からの資料も含めて、何か委員相互で御質問とか。

○関委員 先生はいいんですか。

○清家座長 私は時間があれば。

よろしいですか。もしあれば。

○園田委員 ちょっとだけいいですか。

関委員がおっしゃったアメリカのリタイアメントコミュニティというのは、いろいろなサイズがありますけれども、わざわざ3,000人とかを囲い込むんです。私は実は公営住宅地の研究をしているんですが、自然発生的リタイアメントコミュニティになっているんです。日本人はそれをすごくペシミスティックに限界集落という名前を付けてしまうんですが、アメリカの50歳以上の人たちが何千人というのは、日本の郊外に行くとたくさんあります。ですから、アメリカ的にポジティブに考えると、自然発生的リタイアメントコミュニティ、NORCというNaturally Occurring Retirement Communityですから、本物にそうなるように楽しい要素とか、先ほど来、香山委員とかがおっしゃっているような、何かあったときの駆け込み寺とか、あるいは閉じこもっている人にアウトリーチみたいなことをすれば、全然最初の資本投下をしなくても日本の中ではそういうものが実現可能だというのが1点です。

弘兼委員の提起というのはなかなかおもしろいと思ったんですが、ただ、有償ボランティアというよりも、男性をメインにするんだったら、むしろ社会的起業をリタイアしたときぐらいからやって、リスクをとってもらうという、そういうわくわくどきどきした仕掛けの方がおもしろいのではないかと思いました。

もう一点、弘兼委員の世代を超えた進めで、子どもとお年寄りが同居するということですが、ちょっとだけ引っ掛かった点を言うと、これも先入観で、三世代でおじいちゃん、おばあちゃん、孫ということですが、日本は三世代ではないんです。おじいちゃん、おばあちゃんは80歳とか85歳ですから、子どもというのは、60歳とか65歳で、その子どもというと、もう30代後半なんですね。そうすると、実は昭和の時代の三世代というのが幻想になっていて、孫とひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんの関係が多分ここのイメージなので、そこも相当常識を変えないと問題が見えてこないのではないかというのがちょっと引っ掛かった点です。

○清家座長 わかりました。

ありがとうございます。

ほかによろしゅうございますか。

では、関委員。

○関委員 先ほど香山委員の方からアウトリーチという話がありまして、そのとおりだと私も思います。同様に、最初に意識改革をという話をしましたけれども、意識改革をするためには、人口構成がどうだとか、そういう話だけではなく、世の中の社会保障制度なり、いろいろな制度がどうなっているかということの理解が足りないとしっかりとできないと思います。香山委員が資料4にある各種の高齢社会対策の施策を御存じなかったというのは、当然であるとともに象徴的なことで、世の中のほとんどの方に各種の制度が周知されていない点にやはり問題があります。それは何がいけないかというと、うまく各制度を世の中に伝えられていない。そういう意味では、政府の広報、例えばテレビだとか、ネットとかを使って、もっと制度がどうなっているかということをうまく分かりやすく宣伝していく点にもっと力を割いていってもいいのかなと思いました。

○清家座長 ありがとうございました。

まだいろいろ御意見もあるかと思いますが、そろそろ時間になりましたので、今日の議論はこのぐらいにさせていただきたいと思います。

私の方から特にとりまとめということはございませんけれども、私どもの目指すべき社会というのは、高齢社会に限らず、最初に森委員が言われた、すべての人が尊厳を持って生活ができる社会ということだろうと思います。その中でしかし尊厳をどのように保つかというのは、社会の構造が大きく変わるとその在り方というのは変わってまいります。

たまたま今、ここにいる、4人の委員は大学生を教えているわけですが、今の大学生がちょうど生まれたころというのは、65歳以上の高齢者は人口の10人に1人ぐらいだったわけです。しかし、彼らが卒業していくころには人口の4人に1人が65歳以上の高齢者になって、そして彼らが働き盛りのころは3人に1人、彼ら自身が高齢者になるころには40%ということですから、5人のうち2人が高齢者になるわけで、そういう面では、先ほどから議論が出ているように、そもそも65歳以上を高齢者と考えるということ自体もそういうときには抜本的に考えなければいけない。

その中で、高齢者あるいは高齢社会を支える仕組みとして、今までは社会保険を中心とする共助、そこから漏れた場合は公助というか、政府の直接的な支援が中心だったわけですが、これからは、1つは、先ほどの図にありました、自助といいますか、これはある面で言えば、市場メカニズムを通じた尊厳のある生活ができるようにするということ。

もう一つ、今日、随分いろいろな委員からお話が出てきた互助というのですか、コミュニティを中心とした互助。共助と公助も勿論これから大切でございますが、市場メカニズムを通じた自助あるいはコミュニティを通じた互助というものも併せならが、今、言いました構造変化の中で、本当の意味で尊厳のある高齢社会をつくっていくという形で新しい大綱をまとめていったらどうかというのが皆様方の御意見ではなかったかと思います。

それでは、今日の議論はこのぐらいにさせていただきまして、今後の予定につきまして事務局から短く御説明をいただきます。

○原口参事官 最後に事務方から御説明します。

資料7にございますとおり、本検討会は全体で4回の会議を予定しておりますけれども、10月以降年内2回、年明け2回を考えております。次回につきましては、11月25日金曜日10時からを予定しております。欠席される場合には事前に御資料等を提出いただければ、御紹介したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、本日は初会合ですので、蓮舫大臣よりごあいさつがございます。

カメラが入りますので、しばらくお待ちください。

(カメラ入室)

○蓮舫特命担当大臣 初回から長時間に及び御議論をありがとうございます。

改めまして、お疲れ様でございます。

担当しております蓮舫でございます。

今日は、「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」、第1回目ということでございますが、委員の皆様方におかれましては、本当にお忙しい中、貴重なお時間をいただきながら、しかも、来年の2月までにはおまとめをいただきたいという、非常に御無理なお願いをしているわけではございますが、高齢社会対策大綱は、平成13年12月28日に閣議決定をされて、実にそれから10年間見直しが行われておりませんでした。この間の10年間の御高齢の方たちをめぐる環境の変化というのは言わずもがなだとは思っております。

先ほどお話がありましたけれども、65歳以上の方がこの国の人口構成に占める割合。実は、先日、高齢社会対策会議、すべての閣僚が入って官邸で高齢社会対策会議を開催したときに野田総理があいさつで言って非常に印象的な言葉が、社会保障制度の根幹ができた昭和36年は40、50人で1人の御高齢者を支えていた、いわゆる胴上げ型。それが今では3人に1人で支える、いわゆる騎馬戦型。これが今後は1対1、いわゆる肩車型になっていくと。

確かにそう考えると、御高齢者が人口の構成の中で占める割合は増えてまいります。ただ、それが本当にどういう社会になるのかというのが実はまだ、我々も全員が経験したこともないわけですから、併せて社会保障制度の在り方も見直しをしていく。それと、閣僚の中からは、今、御議論があったように、65歳を高齢者の線引きにするのが本当に適切なのかという御議論もありました。あるいは非常に前向きに、例えば鹿野農水大臣は、高齢者の知恵を生かしていくための、そういう前向きなことはできないのか。それを受けて総理はある国では、御高齢者はまさに地域の図書館と呼ばれている。こういうことを活かせないだろうかと、極めて前向きな御意見もあったところでございます。

是非皆様方におかれましては、この国の将来、御高齢者の皆様方の知恵、知見、経験を十分に活用して、社会が本当に「新しい公共」という形で御高齢者の皆様方に支えていただけるための、そのための大綱をつくっていただきたい。そのためには、私どもの事務局、そして我々、私も政務三役も全力でその成果物を形にしていきたいと思っておりますので、これからも是非皆様方の御議論、闊達な御審議をお願い申し上げ、一言ごあいさつに代えさせていただきます。

是非よろしくお願いします。

ありがとうございました。

○清家座長 大臣、力強いごあいさつをどうもありがとうございました。

次回以降は本日の議論を踏まえまして、事務局から大綱の基本方針に関する論点の案をお示しいただきました上で、今後の高齢社会対策の在り方の検討を進めてまいりたいと思っております。

それでは、本日の会議はこれで終了させていただきます。

皆様方、長時間、本当にありがとうございました。