勝山 勲さん
~70歳から独学で習得した油絵で人生を謳歌~

名前(年齢) かつやま いさお
勝山 勲さん(85歳)
地域 長野県須坂市
活動概要 一枚の絵に魅せられて、70歳にして独学で油絵を習得し、風景や動物、人物などを写実的な作品に仕上げている。震災などの出来事を風化させないように世界に一枚だけの油絵を残そうと描き続けている。
表章の類型 中高年から一年発起して、物事を成し遂げた事例
キーワード 趣味/油絵/個展

(注)年齢は、平成25年4月1日時点

活動のきっかけ

東京消防庁ハイパーレスキュー隊「命尊し」の作品

一枚の絵に魅せられて

 70歳になったら完全退職し何か好きなことを一生懸命やろうと考えていました。平成10年(70歳)、市の嘱託職員として公園管理をしていた時、事務所のカレンダーにカモシカの水彩画が掛かっており、カレンダーの裏にカモシカを描いて家に持ち帰ったところ、奥様から絵を描くことを勧められたことをきっかけに、独学で油絵を描き始めようと決心しました。初めての経験でありながら油彩で描いてみると、写真とは異なる世界にただ一点しかない存在であることに気づき、残された人生をさまざまなテーマで描き続けようとする意欲に駆り立てられました。

活動内容や現在の活動状況

「2日目の朝」の作品


「奇跡の一本松」の作品と勝山さん(右から2人目)

震災や出来事を風化させない

 平成18年10月(78歳)、平成16年10月に起こった新潟県中越地震で東京消防庁ハイパーレスキュー隊の活躍をテレビで観て、「命尊し」と題して50号の油彩画を完成させました。そして、これを機に多くの作品を自宅に残すだけではなく、また、出来事を風化させないよう、絵にして後世に残したいとの思いを込めて関係先へ寄贈することを決めました。東京消防庁ハイパーレスキュー隊を描いた作品「命尊し」は、東京消防庁へ寄贈され、庁舎内に飾られています。
 平成22年3月11日に起きた東日本大震災後には、テレビや新聞で報道される被災地の状況に心悩まされ、絵に描き残しておこうとの思いが一層強くなりました。「2日後の朝」と題し、一人の少女が寒さの中で毛布にくるまって家族や友だちの安否に心寄せている姿を描きました。続いて、懸命に救助活動を行っている自衛隊員の姿を「命をさがせ」と題して50号の作品に描きました。この作品は平成25年2月に陸上自衛隊多賀城駐屯地(宮城県多賀城市)に寄贈され、隊員が絵を観るたびに当時の記憶をいつまでも心に刻み続けられるようにと、平成25年10月完成の多賀城駐屯地新庁舎の玄関に飾られることになりました。
 また、岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」は、勝山さんの心を動かし、高齢の自分は被災地に行っても何もできないが、せめて絵を描くことで貢献したい、災害を風化させたくないという思いが50号の作品を完成させました。この作品は陸前高田市に寄贈され、庁舎内に飾られています。
 150点を超える作品を完成させた喜びと共に、美術展などにも出展し、多くの人から感想を聞くことにも喜びを感じています。また、入選や賞などを受賞することが励みにもなっており、日々新たな気持ちで見る者、聞くものに関心を抱き、絵と向き合う第二の人生を謳歌しています。

ポイント、工夫している点

「世界に1点だけの絵」を残すことで社会貢献

 勝山さんが描く油彩画は、風景、動物、人物、さらにはテレビや新聞で見た出来事など、テーマは多岐にわたります。特に技法というものではなく、心に留まったままを表現すること、細部まで丁寧に表現すること、写実的に表現すること、描いた絵が世界に一つしかないことに喜びを覚えており、それらが絵に込められています。

勝山さんが描いた「愛孫」の作品

 友人や知人がボランティアで準備を進め、平成25年1月に雪の降る中で第1回個展を開催し、満85歳の誕生日を迎える勝山さんへの最大のプレゼントとなりました。これを期して、元気である限り絵を描き続けようと励まされたそうです。
 〔本人インタビュー〕
 個展を開いていただいたことに感謝しています。多くの人に支えられて絵を描くことができたと思います。人と人とのつながりを大切にしてこそ絵を描き続けられるのだと勇気づけられました。この感謝の気持ちを大切に、世界で1点だけの絵を描き続けていきます。そして、これからも楽しく絵を描き続けていくことを通して、多くの人たちに貢献できればと願っています。